- 更新日:2024.09.23
- #残業代請求報復
【残業代請求への3つの報復】報復を避ける方法と対抗手段を徹底解説
この記事を読んで理解できること
- 残業代を請求した場合に予想される3つの報復と対処法
- 残業代請求の報復を避ける2つの対策
- 万が一報復された時のために証拠を集めよう
- 残業代請求の手続きの流れ
あなたは、残業代を請求したいけれど、
「会社から報復されると怖い」
「報復される可能性ってあるのかな?」
「報復されるとしたら、どうしたら良いんだろう?」
などとお悩みではありませんか?
私のこれまでの弁護士として労働問題に積極的に取り組んできた経験上、残業代を請求したからといって、会社から報復をさせることは非常に稀です。
なぜなら、わざわざ報復することは、会社にとっては何のメリットもないからです。
それでも、万が一報復をされたらと思うと、請求することをためらってしまいますよね。
しかし、実は報復されても、法的な手段に訴えることができますし、報復されることを事前に避けるように手続きすることも可能です。
そこでこの記事では、まずは残業代請求した場合に予想される3つの報復とその対処法を紹介し、次に報復を避けるための2つの対策を紹介します。
さらに、万が一報復を受けたときのために、証拠を記録するポイントを解説します。
この記事の内容を実践して、報復されないように残業代請求の手続きをはじめましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■残業代を請求した場合に、会社から受ける可能性がある報復
- 社内での嫌がらせ・パワハラ
- 解雇や不利益な扱い方をする
- 理由を付けて損害賠償請求する
■会社からの報復を避けるための方法
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
- 退職まで会社にバレないように手続きを進める
■万が一報復を受けた場合はに集めておくべき証拠
- メールや書面の文面
- スマホやICレコーダーでの音声の録音
- スマホで撮影した動画
- 損害賠償請求された書面
- 解雇や社内での処分、減給、不当な異動
- 精神的な被害(うつ病、適応障害など)
目次
1章:残業代を請求した場合に予想される3つの報復と対処法
会社に対して残業代を請求する場合、普通の会社では報復されることなどほとんどあり得ません。
しかし、一部のブラック企業は、請求した社員に報復するために、
- 社内での嫌がらせ・パワハラ
- 解雇や、社内で不利益な扱い方をする
- 理由を付けて損害賠償請求する
などの手段を採ることがあります。
私の経験上も、このようなケースが稀にありました。
そこで、まずはこれらの報復はどのようなものか、どのように対処すべきかお伝えします。
報復を避ける手段を知りたい場合は、2章以降をお読みください。
1-1:社内での嫌がらせ・パワハラ
在職中に残業代を請求することで、
- 残業代を請求したことを他の社員にも知らされ、人間関係から切り離される
- 上司や同僚から無視される
- 自分勝手だ、強欲だと暴言を受ける
- 理不尽な量や納期、内容の仕事を押しつけられる
などといった嫌がらせ・いじめやパワハラを、報復として受ける可能性もゼロではありません。
しかし、こうしたことを会社が放置していると、会社に責任が追及される可能性があります。
なぜなら、会社には社員が安全に労働できるように配慮する義務(職場環境配慮義務)があるため、社員が理不尽な扱いを受けないように、配慮しなければならないからです。
そのため、もしこうした行為を受けている場合は、
・労働局の相談窓口に相談する
・本社や上層部、社内の相談窓口に知らせる
などの対応を取ることで、その状況を変えられる可能性があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
【職場いじめの4つの相談先】相談時のポイントといじめの証拠の具体例
さらに、嫌がらせやパワハラの結果あなたが精神的、もしくは身体的なダメージを負ってしまった場合は、損害賠償請求する選択肢もあります。
損害賠償請求したい場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。
1-2:解雇や不利益な扱い方をする
在職中に残業代を請求したことで、報復として、
- 解雇する
- 契約更新をしない(契約社員の場合)
- 雇用契約を正社員からアルバイト・パートに変更させる
- 降格、減給する
- 昇進、昇格などの人事上の評価で、不利益な算定をする
- 不利益な配置転換をする
などのことを行うブラック企業も存在するようです。
しかし、残業代を請求したことを理由に、上記のような解雇や不利益な扱いをすることは認められません。
万が一、残業代を請求したことを理由にこうした不利益な扱いをされた場合は、労働審判(※)や訴訟(裁判)という裁判所を通した手続きによって、撤回を求めることができます。
※労働審判とは、労働問題を解決するために裁判所で行われる、訴訟(裁判)よりも簡単な手続きです。
これらの対抗手段を採りたい場合は、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
1-3:理由を付けて損害賠償請求する
残業代を請求すると、会社から報復として損害賠償請求され、「損害賠償請求を取り下げて欲しかったら、未払い残業代請求を取り下げろ」と言われるケースが、稀にあります。
しかし、これはほとんどの場合認められません。
なぜなら、会社が社員に高額の損害賠償請求をすることは、たいていの場合認められないからです。
また、仮に請求できたとしても相当な減額がされます。
たとえば、以下のようなケースがよくあります。
【会社の備品を壊してしまったため損害賠償請求されるケース】
「会社の備品(運送業のトラックなどに多い)を壊したから、損害賠償請求する」と言われるケースもあります。
また、営業職等でも、「社用車を運転中に事故を起こした場合に、修理費の3割を本人負担として請求する」と雇用契約書に盛り込まれている、というようなケースもあります。
しかし、あなたが備品を壊してしまったとしても、通常は会社が保険に入っているため、あなた個人に請求されることはありません。
会社が保険に入っていない場合は請求されることがありますが、労働者の業務上のミスに基づく損害賠償請求は、以下のように、過去の判例では制限されています。
①労働者に故意または重過失がなければならない
②故意または重過失があったとしても、すべての損害を賠償する必要はない
以上のように、会社から損害賠償請求されても、多額の賠償が必要になることは、ほとんどないのです。つまり、会社の報復が認められるケースはほとんどありません。
2章:残業代請求の報復を避ける2つの対策
残業代請求時に報復を避けるためのポイントは、以下の2つです。
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
- 退職まで会社にバレないように手続きを進め
それでは、順番に解説します。
2-1:残業代請求に強い弁護士に依頼する
残業代請求の報復を避けるためには、残業代請求に強い弁護士に依頼することです。
残業代請求に強い弁護士に依頼することで、
- 法律の専門家を代理人にすることで、会社にプレッシャーを与えることができる
- 会社が何らかの報復をしてきたとしても、弁護士に対応して貰える
というメリットがあります。
ポイントは、「残業代請求に強い弁護士」に依頼するということです。
実は、弁護士にも「不倫」「交通事故」「労働問題」のように専門分野があり、自分の専門以外には無知である弁護士も多いです。
そのため、もし残業代請求の経験が少ない弁護士に依頼すると、会社から報復を受けた場合に、適切な対処法や迅速な解決法を知らない可能性もあります。
報復された場合に、弁護士が適切な対処法を取れないと、
- 請求額が大幅に減額される
- 請求に失敗し、1円も取り返せない
という可能性も考えられます。
残業代請求に強い弁護士なら、そのようなリスクは最小限にできます。
残業代請求に強い弁護士を探す上ではポイントがありますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用
2-2:退職まで会社にバレないように手続きを進める
残業代請求の報復リスクを避けるためには、「会社にバレないように手続きを進める」ということも大事なポイントです。
1章でお伝えしたように、在職中に請求して会社にバレるてしまうと、会社から何らかの報復をされる可能性もあるからです。
会社にバレないように手続きを進めるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
残業代請求を弁護士に依頼すると、あなたが退職するまでは、会社にバレないように手続きを進め、会社を退職した後にすぐに請求手続きを開始できるようにすることも可能です。
その場合、在職中のあなたは、
- 弁護士に現状を相談、報告する
- 有効な証拠をこっそり集めておく
という作業を行うだけで、退職後すぐに手続きを開始できます。
3章:万が一報復された時のために証拠を集めよう
1章では、会社から何らかの報復をされた場合には、
- 労働審判
- 訴訟(裁判)
などの法的な手段を通じて、報復に対抗できることをお伝えしました。
しかし、報復に対抗するためには、労働基準監督署や裁判所、弁護士等の専門家の力を借りなければなりません。
その場合、
「あなたが不当な報復を受けていること」
を証明できなければなりません。
なぜなら、証明できなければ、
- 会社が「報復なんてしていない」と主張した場合に、反論できない
- 弁護士等の第三者に、報復されている事実を客観的に示すことができない
という理由があるからです。
そのため、証拠を集めておく必要があるのです。集めておくべき証拠には、
①報復の事実が確認できる証拠
②実際に発生した被害が確認できる証拠
の2つがあります。両方あれば、弁護士等の第三者に相談する時に、よりスムーズにその後の対応を進めて貰うことができます。
3-1:報復の事実が確認できる証拠
報復の事実が確認できる証拠とは、具体的には以下のようなものです。
- メールや書面の文面
→嫌がらせ、パワハラや不利益扱いが行われたことが確認できるメールや書面の文面を、印刷、データのダウンロード、もしくはスマホで撮影し保存したもの。 - スマホやICレコーダーでの音声の録音
→嫌がらせ、パワハラや不利益な扱いを行われたことが確認できる、上司や同僚の発言を録音し、保存したもの - スマホで撮影した動画
→同じく、嫌がらせやパワハラ、不利益な扱いを受けた場合に、それを撮影した動画 - 損害賠償請求された書面
→損害賠償請求された場合、もしくは損害賠償請求すると脅された場合、それが分かるメールや書面を印刷、データのダウンロード、写真撮影などを保存したもの
こうした証拠を、できるだけ継続的に記録しておくことで、報復を受けていたことが認められやすくなります。
3-2:実際に発生した被害が確認できる証拠
実際に発生した被害とは、
- 解雇や社内での処分、減給、不当な異動
- 精神的な被害(うつ病、適応障害など)
などのことです。
報復によって、あなたに具体的にどのような被害が発生したのか、明らかにできる証拠がある必要があります。
具体的には、以下のような証拠があると良いです。
- 解雇や社内での処分、減給、不当な異動
→これらがあなたに通知されたメールや書面、給与明細などの印刷したもの、撮影した画像データなど - 精神的な被害(うつ病、適応障害など)
→病院から発行された診断書
4章:残業代請求の手続きの流れ
残業代請求には、
- 自分で請求する方法
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する方法
の2つの方法があります。
どちらも同じではなく、以下のようにメリット・デメリットがあります。
さらに、手続きの流れも以下のように違いがあります。
請求方法によってあなたが取り返せる金額や、あなたの手間や時間、心理的なストレス等大きな違いがありますので、注意してください。
請求方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【在職中でも退職後でもOK】残業代を請求するための完全マニュアル
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
そもそも、残業代を請求しても、会社から報復を受ける可能性は非常に稀です。
ただし、以下のような報復をされる可能性はゼロではありません。
- 社内での嫌がらせ・パワハラ
- 解雇や不利益な扱い方をする
- 理由を付けて損害賠償請求する
これらには、最終的には、
- 労働審判
- 訴訟(裁判)
といった法的な対抗手段をとることができます。
報復を避けるためには、
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
- 退職まで会社にバレないように手続きを進める
という手段をとることをおすすめします。
万が一報復を受けた場合は、以下の証拠を集めておくと、対抗手段をとるときによりスムーズになります。
- メールや書面の文面
- スマホやICレコーダーでの音声の録音
- スマホで撮影した動画
- 損害賠償請求された書面
- 解雇や社内での処分、減給、不当な異動
- 精神的な被害(うつ病、適応障害など)
報復は避けることが可能ですので、専門家の助言に従って適切な方法で請求手続きを進めていきましょう。