
あなたは、今現在、強いられている「サービス残業」について以下のように思っていませんか?
ちゃんと働いたのに残業代が出ない、「サービス残業」を強いる会社は許せませんよね。
会社でサービス残業が当たり前になっていたりすると、自分の力ではどうしようもなく、「告発して改善しよう」と思う人も多いのではないかと思います。
サービス残業を告発する場合、告発先は労働基準監督署になります。
※労働基準監督署とは、労働基準法にのっとって全国の会社を監督・指導する行政機関のことです。
適切な方法をとれば、サービス残業を告発することで、会社にダメージを与えられる可能性があります。
なぜなら、残業代は、残業した分だけ正しい金額が支払われなければならないと労働基準法で決められており、サービス残業は違法だからです。
しかし、告発する前に、あなたの場合は「告発」という選択肢がベストなのかどうか判断しないと、
「告発したけど意味がなかった」
という結果にもなりかねません。
そこでこの記事では、まずは告発によって会社に与えられるダメージについて、次に告発することのあなたへのメリット・デメリットについて、そして、告発する具体的な方法や証拠を解説します。
さらに、告発にかわる手段としてサービス残業を弁護士に相談する方法をご紹介します。
最後までしっかり読んで、あなたにぴったりの行動方法を見つけてください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■サービス残業を労働基準監督署に告発することで、会社に与えられる影響
- 調査や勧告が行われることによる、心理的プレッシャーが与えられる
- 勧告によってサービス残業の是正、未払い残業代の支払いが命じられる
- 例外的に悪質な場合は経営者が逮捕される
■サービス残業を告発する3つの方法
- メールで告発する(労働基準関連情報メール窓口)
- 電話で告発する(労働条件相談ほっとライン)
- 訪問して告発する(労働基準監督署で申告)
■サービス残業の告発についてよくある疑問
- サービス残業を告発するメリット
→サービス残業の改善や未払い残業代の支払い - サービス残業の告発は匿名で可能か
→匿名で可能だが、匿名での告発で動いてもらえる可能性は低い - 退職後の告発が、転職先にバラされる嫌がらせをされる可能性はないか
→個人情報を第三者に伝えるのは違法であるため、嫌がらせされる可能性は低い
目次
1章:サービス残業の告発で会社に与えられる影響
サービス残業の告発とは、労働基準監督署への「申告」によって、会社のサービス残業という違法行為を、労働基準監督署になんらかの対応を求めるものです。
労働基準監督署への「申告」とは、単なる労働問題の相談ではなく、会社の違法行為が明らかである場合に、労働基準監督署に対応を求めることです。
サービス残業を「労働基準監督署」に告発すると、労働基準監督署は、
- 調査
- 是正勧告
- 逮捕
という対応を取る可能性があります。
これらの対応が取られることで、あなたの会社には、
- 調査や勧告が行われることによる、心理的プレッシャーが与えられる
- 勧告によってサービス残業の是正、未払い残業代の支払いが命じられる
- 例外的に悪質な場合は経営者が逮捕される
などの影響があります。
2章:サービス残業を告発する具体的な流れと方法
サービス残業を告発すると、
- 調査
- 是正勧告
- 逮捕
という流れで、労働基準監督署が動いていきます。
さらに、労働基準監督署にサービス残業を告発する方法には、以下の3つがあります。
- メールで告発する(労働基準関連情報メール窓口)
- 電話で告発する(労働条件相談ほっとライン)
- 訪問して告発する(労働基準監督署で申告)
まずは、労働基準監督署に告発した場合の流れから解説します。
2–1:労働基準監督署に告発した場合の流れ
労働基準監督署にサービス残業を告発すると、労働基準監督署は以下のような流れで対応を取る可能性があります。
①労働基準監督署が会社を調査
労働基準監督署があなたの申告から、まずは実態がどうなっているのか調査します。
調査では、原則的に予告なしで調査員が会社を訪れ、労働関係の帳簿の確認、責任者や労働者へのヒアリングなどが行われます。
調査が入るだけでも、あなたの会社にはある程度のプレッシャーを与えることができます。
②違法性があったら会社へ是正勧告
調査で違法性が確認できた場合に、それを改善させるために「これをやめなさい」「こう改善しなさい」という是正勧告をします。
労働基準監督署から是正勧告されれば、会社によってはそれだけでサービス残業を改善する可能性があります。
③従わなければ経営者を逮捕
再三の勧告でサービス残業が改善されなかった場合は、最終的には逮捕に踏み切ることもあります。
つまり、サービス残業を告発すると、最終的には経営者が逮捕される可能性もあるのです。
ただし、注意して欲しいのが、労働基準監督署が逮捕に踏み切るのは例外的な悪質なケースのみだということです。
その理由は、労働基準監督署が慢性的な人員不足であるためです。
全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約2400人しかいないのです。
そのため、危険作業や労働災害などの「人命に関わる問題」などが優先して処理されるため、「サービス残業」では、動いてもらえない可能性が高いのです。
実際、2016年の11月から2017年の10月までの1年間で、東京都内で、残業代の未払いで書類送検されたのはたったの4件のみです。
そのため、これから紹介する方法とポイントを押さえておいてください。
2–2:労働基準監督署に告発するための3つの方法
労働基準監督署への告発には、
- メールで告発
- 電話で告発
- 訪問して告発
という3つの方法がありますので、それぞれ解説します。
①メールで告発する(労働基準関連情報メール窓口)
サービス残業をメールで告発するには、「労働基準関連情報メール窓口」からメールを送りましょう。
メールですので、24時間いつでも相談可能です。
ただし、これはあくまでメール相談なので、立ち入り調査の参考程度にしか使われないようです。
実際に対応を求める場合は、他の方法で告発しましょう。
②電話で告発する(労働条件相談ほっとライン)
サービス残業を電話で告発するには、「労働条件相談ほっとライン(0120−811−610)」に電話しましょう。
平日の夜間(17時〜22時)、休日の昼間(10時〜17時)に電話が可能なので、平日は忙しいという人でも大丈夫です。
しかし、これもあくまで相談窓口であり、相談に対して一般的な解決方法などのアドバイスが行われるのみです。
そのため、労働基準監督署に調査・勧告を求める場合は、訪問しての申告がもっとも確実です。
③訪問して告発する(労働基準監督署で申告)
労働基準監督署は全国に321署もあります。そのため、あなたも最寄りの労働基準監督署に、直接訪問して申告することが可能です。
こちらから探すことができます。
ただし、労働基準監督署の受付時間は、平日の「8:30〜17:15」だけです。そのため、平日働いていて会社を休むことが難しい場合は、直接出向いて告発することは難しいかもしれません。
直接の訪問が可能なら、窓口で実名、連絡先を明らかにした上での「申告」であることを伝えましょう。
これが、最も労働基準監督署に動いてもらえる可能性が高い方法です。
なぜなら、先ほどもお伝えしたように労働基準監督署は慢性的な人員不足であるため、すべての案件で動くわけではないからです。
そこで、労働者が直接訪問し、実名で申告してくるほど「緊急性が高い」と認識され、動いてくれる可能性が高まるのです。
さらにもう一つポイントがあります。それが、証拠を持って告発に行くということです。
3章:告発するのに揃えておくべき証拠
サービス残業の告発で、労働基準監督署に動いてもらうためには、
- 残業代が未払いであることを示すこと
- 残業時間を示すこと
が必要です。
そのために、これらを明らかにできる証拠を集めておくことをおすすめします。
具体的には、以下のようなものを収集しておくといいでしょう。
【残業代が未払いであることを示す証拠】
- 雇用契約書
- 就業規則
- 賃金規定
- 給与明細
【残業時間を示す証拠】
【まず集めておきたい証拠】
- タイムカード
- シフト表
- 業務日報
- 運転日報
- タコグラフ(ドライバーなどの場合)
【ポイント】
日報などは、正確に書いていないことも多いと思います。
正確ではない記録が残っていると、労働基準監督署が調査に入っても、勧告などの対応ができない可能性があります。
また、タイムカードやシフト表は会社側が都合良く改ざんしている可能性もあります。
会社で、タイムカードなどの勤怠管理がなされていない場合や、タイムカードなどはあるけれども会社によって改ざんされているような場合は、以下のような証拠を集めるとよいでしょう。
【証拠になるようなものがない場合でも証拠にできるもの】
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
- 会社のパソコンの利用履歴
- メール・FAXの送信記録
【ポイント】
会社が勤怠管理をしていない場合に証拠として以外におススメなのは①です。
毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。
具体的な業務についても書くのがベストです。
③のメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。
ただし,労働基準監督署は,裁判所ではないので,タイムカードのような確実な証拠でなければやはり動かない傾向が強いです。
【証拠集めの注意点】
①できるだけ多くの証拠を集める。
証拠は、できるだけ毎日の記録を集めておくと良いでしょう。
②ウソの内容を書かない
「手書きのメモ」や「日報」など、残業時間を手書きで記録しておく方法もご紹介しましたが、その場合絶対に「ウソ」の内容のことを書いてはいけません。
証拠の中にウソの内容があると、あなたの証拠の信用性が疑われ、労働基準監督署が動いてくれても、会社に対して勧告などの対応ができない可能性があります。
それでは、告発しようと思っている人にありがちな疑問について解説します。
4章:サービス残業を告発することに関するありがちな疑問とその回答
サービス残業の告発について、以下のような疑問がありがちです。
- サービス残業を告発するメリットってどんなこと?
- サービス残業の告発は、匿名でできるのか?(会社にバレることはないか)
- 退職後の告発で、転職先に告発したことが言われないか?
それぞれについて解説します。
4–1:サービス残業を告発するメリットはサービス残業の改善と未払い残業代の支払い
サービス残業を告発したいと思っていても、具体的に自分にはどのようなメリットがあるのか、把握していない人も多いと思います。
サービス残業を告発すると、
- サービス残業が改善される
- 未払い残業代が支払われる
ということに、会社が対処する可能性があり、これがあなたのメリットになります。
しかし、労働基準監督署に告発しても、1章で触れたように、実際に動いてくれるとは限りません。
さらに、あなたの会社は、一時的に対処するのみで、また同じようにサービス残業を強いるようになるかもしれません。
そのため、労働基準監督署への告発では、現状を変えられる可能性は低いと考えておいた方が良いです。
4–2:サービス残業の告発は匿名でも可能だが効果は少ない
サービス残業を告発する場合、
「会社にバレたくない」
「匿名で告発したい」
と思う人は多いと思います。
結論から言うと、労働基準監督署への匿名での相談は可能です。
ただし、その場合はただの「情報提供」としてしか扱われず、労働基準監督署による調査や是正勧告は期待できません。
先ほど解説したように、労働基準監督署へ告発する方法には、
- メール
- 電話/FAX
- 訪問
の3つがあり、労働基準監督署が動いてくれる可能性があるのは、「訪問」による「実名」での申告です。
なぜなら、常に多数の案件を抱えている労働基準監督署を動かすためには、実名での訪問の方が、緊急性が高いと判断されるからです。
匿名で告発するなら、会社の行為が変わることは、期待しないでおきましょう。
4–3:退職後の告発で転職先に告発したことがバレることはない
基本的に、退職後に前にいた会社を告発したとしても、転職先の会社に「告発したこと」が伝えられることはありません。
なぜなら、個人情報保護法で、あなたの同意なくあなたの情報を第三者に伝えることは、違法であるとされているからです。
普通の会社は、法を犯してまで、自社の利益にもならない嫌がらせをしようとはしません。
さらに、あなたが告発したことを他社に伝えるということは、告発されるほどの行為をやっていたことを、みすみす公にすることでもあります。
普通の会社は、そのようなことをするとは考えられません。
これらの理由から、転職先に告発がバレることはないでしょう。
でも、告発ではあまり効果は期待できないんですよね。
それよりも、実は弁護士に相談した方があなたの味方になってくれるでしょう。
5章:弁護士に相談して残業代を請求することもできる
「サービス残業した分の残業代を取り返したい」
という場合は、告発よりも、弁護士に依頼して残業代を請求した方が、取り返せる可能性が高いです。
特に、残業代請求に強い弁護士なら、労働基準監督署と違ってすぐにあなたのために動いてくれ、責任を持ってやり遂げてくれるでしょう。
未払い残業代は、過去3年前の分まではさかのぼって請求することができるため、請求できる金額はあなたが思っているよりずっと大きくなる可能性があります。
(例)
- 月給:25万円
- 残業:月70時間
- 一月平均所定労働時間:170時間
※一月平均所定労働時間とは、会社が設定している月の平均労働時間のことで、大体170時間前後であることが多いです。
(25万円÷170時間)×1.25倍×70時間=12万8590円(1ヶ月の残業代)
2年分が請求できるとすると、
12万8590円×24ヶ月=308万6160円
ただし、弁護士なら誰でも良いわけではありません。
残業代請求に強い弁護士を選ぶことが大事です。
残業代請求を弁護士に依頼する方法や、弁護士の選び方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用
弁護士であれば、あなたの残業代をできるだけ多く回収してくれる可能性が高いですが、労基の場合、仮に動いてくれたとしても、全額回収できる可能性はほとんどないと思っておいた方が良いです。
まとめ:サービス残業を告発
いかがでしたか?
最後にもう一度、今回の内容を振り返ります。
まず、サービス残業を労働基準監督署に告発することで、会社には、
- 調査や勧告が行われることによる、心理的プレッシャーが与えられる
- 勧告によってサービス残業の是正、未払い残業代の支払いが命じられる
- 例外的に悪質な場合は経営者が逮捕される
などの影響を与えることができます。
【サービス残業を告発する3つの方法】
- メールで告発する(労働基準関連情報メール窓口)
- 電話で告発する(労働条件相談ほっとライン)
- 訪問して告発する(労働基準監督署で申告)
【告発に必要な証拠】
①残業代が未払いであることを示す証拠
- 雇用契約書
- 就業規則
- 賃金規定
- 給与明細
②残業時間を示す証拠
【まず集めておきたい証拠】
- タイムカード
- シフト表
- 業務日報
- 運転日報
- タコグラフ(ドライバーなどの場合)
【証拠になるようなものがない場合でも証拠にできるもの】
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
- 会社のパソコンの利用履歴
- メール・FAXの送信記録
【よくある疑問】
- サービス残業を告発するメリット
→サービス残業の改善や未払い残業代の支払い - サービス残業の告発は匿名で可能か
→匿名で可能だが、匿名での告発で動いてもらえる可能性は低い - 退職後の告発が、転職先にバラされる嫌がらせをされる可能性はないか
→個人情報を第三者に伝えるのは違法であるため、嫌がらせされる可能性は低い
サービス残業の分の未払い残業代を取り返したい場合は、告発より弁護士への依頼の方がおすすめです。
あなたの目的にあった方法で行動を始めていきましょう。
【参考記事一覧】
残業代請求を弁護士に依頼する場合の手続きの流れやかかる費用、弁護士選びのポイントなどについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。