「管理職の残業代ゼロ」はほぼ違法!判断基準から解決策まで徹底解説

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 管理職でもほとんどの場合は残業代が出る!
  • 「名ばかり管理職」を悪用するブラック企業の意図
  • 管理職に対し、役職手当を残業代の代わりに払って人件費を抑える手口
  • 残業代を会社から取り戻すための明日からできる方法

「会社から役職を付けられてから残業代が出なくなった。これだけ残業しているのに、残業代が出ないなんて納得できない!」

あなたもこのようなことでお悩みではありませんか?

実は、ほとんどの「管理職」扱いされている人は「名ばかり管理職」であり、残業代をもらうことができます。

しかし、ブラック企業は以下のような意図で、わざとあなたを「管理職」扱いにして、残業代を払っていない可能性があります。

従業員を「名ばかり管理職」にして、残業代を払わないブラック企業の手口は違法です。

実は、会社から役職を付けられただけでは、管理職とはみなされません。法律上の「管理監督者」の基準を満たしていなければ、残業代が払われなければならないのです。

そのため、会社に請求することで、残業代を取り戻すことができる可能性があります。

そこで今回は、

  • 管理監督者とみなされるために満たすべき要件
  • ブラック企業が使う残業代を払わない手口
  • 自分が「名ばかり管理職」なのか、簡単に判断できるチェックリスト
  • 会社から残業代を取り戻すための、具体的な方法

について、簡単に分かるように解説しています。

しっかり最後まで読んで、名ばかり管理職だったら残業代が出るということを理解し、残業代を取り戻すための方法を学びましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■管理職でも残業代が出ないのは違法であることが多い

法律上の管理監督者とみなされるための要素を満たしていない人は、残業代をもらうことができます。

■管理監督者とみなされる3つの要素

  1. 残業代を出す必要がないほどの高い待遇を受けている
  2. 勤務時間が自由
  3. 経営者に近い権限・責任を持ってい

■従業員が名ばかり管理職にされてしまう理由

  • 残業代をゼロにして人件費を抑えるため
  • 管理職扱いして責任感を強めさせるため
  • 役職手当を残業代の代わりに払って、残業代を「払ったこと」にするため

あなたも名ばかり管理職であれば、証拠を集めて弁護士に依頼することで、残業代を取り戻すことができる可能性があります。

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

1章:管理職でもほとんどの場合は残業代が出る!

残業代を出さなくて良いとされているのは、法律上「管理監督者」とみなされる、ごく一部の人のことで、管理監督者扱いされるためには厳しい要件を満たす必要があります。
 
そのため、会社から管理職としてみなされている多くの人は、「名ばかり管理職」であり、残業代を請求する権利があります。
 

「管理監督者」とみなされるためには、

  • 非常に高い待遇を受けている
  • 勤務時間を自分で決める権限を持っている
  • 経営者に近い権限、責任を持っている

という要件のすべてを満たす必要があります。

まずは「名ばかり管理職チェックリスト」で、自分が名ばかり管理職ではないかどうか、確認してください。

1-1:まずはチェック!名ばかり管理職チェックリスト

それでは、さっそく以下のチェックリストから、自分がいくつ当てはまるか確認してみてください。チェックリストに当てはまる数が多いほど、あなたは名ばかり管理職である可能性が高いです。

出退勤の時間を自分で自由に決めることができない

役職手当が少額である(0円~3万円など)

取締役会など、重要事項を決定する会議に出席できない

社員の募集・採用の可否を決める権限を持っていない

社員の昇進・昇給を自分の判断で決めることができない

会社全体の経営方針を決めることができない

新商品の開発を独自に行う権限を持っていない

遅刻したら賃金が控除される

一般社員と比べて十分に高い賃金をもらっていない

管理職になって、それ以前よりも賃金が下がった

1〜2つ:名ばかり管理職の可能性が高い

3つ以上:名ばかり管理職である可能性が極めて高い

いくつ当てはまりましたか?3つ以上当てはまる人は、名ばかり管理職である可能性が極めて高いです。つまり、そのような人に対して、会社は残業代を払わなければなりません。

あなたも未払いになっている残業代がある場合は、適切な行動を取ることで取り戻すことができる可能性がありますので、すぐに行動することをおすすめします。

1-2:会社の言う「管理職」と法律上の管理監督者は異なる

 「チェックリストを見る限り、自分は名ばかり管理職みたいだ。」

そう思った場合は、これから、

  • 法律上の「管理監督者」とはどういうものなのか。
  • どんな場合が「名ばかり管理職」なのか。

について詳しく解説しますので、「管理監督者」と「名ばかり管理職」についての正しい知識を身につけてください。

法律上の「管理監督者」として扱われるためには、「店長」「部長」といった役職が付いているだけではダメで、「経営者と一体的立場」にある必要があります。

具体的には、以下の要件のすべてを満たす必要があり、これらの条件1つでもに当てはまらなければ、あなたは「名ばかり管理職」です。

①経営者に近い権限・責任を持っている

もし、あなたが法律上の管理監督者にあたる人ならば、以下のような責任・権限を持っているはずです。

  • 経営者に近い立場にいる
  • 従業員の採用や解雇、部署の立上げなどの権限を持っている。
  • 経営方針の意思決定に携われる。

つまり、商品サービスの内容や品質、商品の価格、取引先の選定など会社の重要なことがらを自分の権限で決められるような、社内でも例外的な人が管理監督者として扱われるということであり、そうでなければあなたは「名ばかり管理職」です。

②勤務時間を自分で決める権限を持っている

管理監督者は、立場上、時間を選ばずに対応することが求められているため、働く時間が自由である必要があります。

経営者に近い強い責任を持っているため、会社のためには時間や土日に関係なく出勤して働かなければならないからです。

そのため、勤務時間が決められており、自分の勤務時間を自分の裁量で決める権限を持っていない場合は、「名ばかり管理職」です。

③残業代を出す必要がないほどの高い待遇を受けている

管理監督者とみなされるには、残業して残業代が支払われないことに見合うほどの好待遇をうけていることが1つの要件になります。

たとえば、「他の社員に比べて非常に高い賃金をもらっている」というのが一つの目安です。

数万円の役職手当がつくくらいでは、管理監督者の地位にふさわしい賃金とは言えません。一般社員と比べて、とても高い待遇受けていないのであれば「名ばかり管理職」であり、残業代が出ないのは違法です。

名ばかり管理職と管理監督者の比較

1-3:管理監督者とみなされた事例・みなされなかった事例

「管理監督者」として扱われるのが、経営者に近い立場にある社員のみであることが分かったと思います。

先ほど解説した要件に照らし合わせて、以下の表にある「名ばかり管理職とみなされた事例・管理監督者と認められた事例」を読んでみてください。「

管理監督者」と認められるのが、一部の例外的な社員のみであることが分かります。

名ばかり管理職とみなされた判例

管理監督者とみなされた判例

この2つの事例のように、ある程度の規模の会社において代表者に近いような人でないと、管理監督者とは認められないのです。

あなたの場合は、どちらの立場に近そうでしょうか?

2章:「名ばかり管理職」を悪用するブラック企業の意図

「管理監督者」とみなされるには、厳しい要件を満たす必要があることが分かったと思います。では、なぜブラック企業は「名ばかり管理職」を作り出そうとするのでしょうか。

「役職付きになったんだから、馬車馬のように働いてくれよ。残業代は出さないけどな。」
 
こんな行為が許されるはずがありません。ブラック企業が「名ばかり管理職」を作りだして、違法に社員を働かせる意図には以下の3つがあります。

【残業代ゼロで働かせて人件費を抑える】

多くの会社員の人は「管理職になると残業代が出ない」と思っているようです。そのため、ブラック企業はそんな社員の無知を利用し、管理職とみなして残業代を払わず、人件費を不当に少なくして働かせようとします。

【社員の責任感を強める】

管理職扱いすることには、社員の責任感を強める効果もあります。「店長」や「部長」「課長」という役職を付けることで、社員は役職に見合った責任を果たそうとします。

会社側としては、「責任だけ与えて対価は払わずに働かせる」という、とても都合の良い手口なのです。

ブラック企業が社員を「名ばかり管理職」にして、こき使う手口について理解できたでしょうか。

ブラック企業が使う手口には、もう一つあります。

それが、役職手当を残業代の代わりに払うことで、少ない残業代で社員を働かせようとする手口です。

3章:管理職に対し、役職手当を残業代の代わりに払って人件費を抑える手口

管理職扱いされている人に対しては「役職手当」という固定手当が払われていることがあります。

「役職手当」は、本来その職責に見合った対価として払われるものですが、ブラック企業では「残業代の対価」として払われることがあります。

つまり、どれだけ残業しても毎月数万円の役職手当しか出さず、人件費を抑える手段として使われることがあるのです。

しかし、就業規則や賃金規定に「役職手当を残業代として支払う」という記載があったからといって、ただちに役職手当が残業代となるわけではありません。

役職手当について、詳しくは以下の記事を参照してください。

「役職手当があっても残業代が出る!その理由と方法を弁護士が徹底解説」

ここまでで「自分も役職をつけられることで、会社から不当に残業代を払われていないみたいだ」と思った人は、これから解説する「残業代を取り返す方法」をしっかりと読んで、実践してください。 

4章:残業代を会社から取り戻すための明日からできる方法

残業代を取り返すためにあなたがやらなければならないのことは、以下のことです。

  1. 自分の残業代がどれくらいになるのか把握する
  2. 有効な証拠を集める
  3. 弁護士に相談する

それでは、まずは計算方法から解説しましょう

4-1:簡単にできる「本当の残業代」を計算する方法

残業代は、以下の計算式で簡単に計算することができます。

管理職扱いされていて残業代がまったく払われていないという場合は、残業した時間を全て「残業時間」に入れて計算しましょう。

①残業時間の時給=基礎時給×割増率

基礎時給とは、時給制の人は普段通りの時給、月給制の人の場合、月給を1ヶ月の「所定労働時間(=約170時間)」で割ったものです。これに、以下の4種類の割増率のどれか適切なものをかけたのが残業時間の時給です。

  • 通常の残業時間:1.25倍
  • 法定休日(週1日は必ず休まなければならない日):1.35倍
  • 通常の深夜残業(22:00〜翌朝5:00):1.5倍
  • 法定休日の深夜残業:1.6倍

②残業代=残業時間×残業時間の時給(割増賃金)

残業時間とは、「1日8時間」もしくは「週40時間」を超えて働いた時間のことです。それに①の「残業時間の時給」をかけたものが、あなたが本来払われるべき残業代です。

詳しくは、以下の記事を参照してください。

「残業代の時給をごまかす「3つの手口」と残業代の「正しい計算方法」」

4-2 証拠を集めて弁護士に相談しよう

本来自分がもらえるはずの残業代がどのくらいあるのか分かったら、次に行うべきは、それを取り戻すための方法です。

そのために、まずは「有効な証拠」を集める必要があります。

残業代の証拠として有効なのは、以下のようなものです。

【勤怠管理している会社で有効な証拠】

  1. タイムカード
  2. 会社のパソコンの利用履歴
  3. 業務日報
  4. 運転日報
  5. メール・FAXの送信記録
  6. シフト表

これらの証拠になるものについて、会社から証拠隠滅されないように、パソコンからデータをダウンロードしたり、シフト表や日報は写真に撮ったりして、保存しておきましょう。

また、これらの証拠になるものがなくても、諦める必要はありません。

タイムカードを置いていなかったり、日報をつけないような勤怠管理してない会社でも、以下のようなものが証拠になり得ます。

【勤怠管理していない会社で有効な証拠】

  1. 手書きの勤務時間・業務内容の記録
  2. 残業時間の計測アプリ
  3. 家族に帰宅を知らせるメール

できれば2年分の証拠があることが望ましいですが、なければ半月分でもかまわないので、できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。

詳しい証拠の集め方については【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアルの記事を参照してみてください。

さて、以上のような証拠を集めたら、残業代をもらうために会社と交渉をする必要があります。

しかし、会社側にも専門家がついているため、個人的に交渉しても丸め込まれてしまう可能性があります。

そのため、残業代請求に強い弁護士に頼むことをおすすめします。

残業代の請求方法について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説

残業代を請求できるのは「2年間」と決められています。

2年を過ぎるともらうことができなくなりますので、まずは証拠を集めてすぐにプロに相談しましょう。

まとめ:管理職の残業代

いかがだったでしょうか?最後にもう一度今回の内容をまとめます。

この記事でもっとも大事なことは、

「法律上の管理監督者とみなされるための要件を満たしていない人は、残業代をもらうことができる」

ということです。

そして、その要件とは、

  1. 残業代を出す必要がないほどの高い待遇を受けている
  2. 勤務時間が自由
  3. 経営者に近い権限・責任を持ってい

という3つで、どれか1つでも満たしていなければ「名ばかり管理職」です。

ブラック企業が、従業員を「名ばかり管理職」にしてしまうのは、

  • 残業代をゼロにして人件費を抑えるため
  • 管理職扱いして責任感を強めさせるため
  • 役職手当を残業代の代わりに払って、残業代を「払ったこと」にするため

などの目的があります。

最後にもう一度チェックリストを見てみましょう。チェックリストに当てはまる数が多いほど、あなたは名ばかり管理職である可能性が高いです。

出退勤の時間を自分で自由に決めることができない

役職手当が少額である(0円~3万円など)

取締役会など、重要事項を決定する会議に出席できない

社員の募集・採用の可否を決める権限を持っていない

社員の昇進・昇給を自分の判断で決めることができない

会社全体の経営方針を決めることができない

新商品の開発を独自に行う権限を持っていない

遅刻したら賃金が控除される

一般社員と比べて十分に高い賃金をもらっていない

管理職になって、それ以前よりも賃金が下がった

もし、あなたも名ばかり管理職であれば、証拠を集めて弁護士に依頼することで、残業代を取り戻すことができる可能性があります。3年以上前の残業代は時効で取り返せなくなるため、すぐに行動を始めることをおすすめします。

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会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

弁護士法人新橋第一法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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