ほぼ違法!管理職に残業代が出ない理由と残業代を取り返す3つの方法

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

ほぼ違法!管理職に残業代が出ない理由と残業代を取り返す3つの方法
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 管理職の残業代が出ない理由は「管理職」と「管理監督者」が混同されているため
  • 自分が管理監督者かどうか判断しよう
  • 泣き寝入りはダメ!弁護士に依頼して残業代を取り返そう
  • 残業代請求を行う上で押さえるべき2つのポイント

あなたは、管理職に残業代が出ないことを、

「管理職だから仕方が無い」

と諦めていませんか?

管理職に残業代が出ないのは、

「会社は、法律上の管理職の規定である『管理監督者』の人には、残業代を払う必要がない」

という例外が、会社によって悪用されているからです。

実は、管理職であるからと言って法律上の「管理監督者」とみなされるわけではなく、ほとんどの管理職の人は、本来、残業代をもらう権利を持っています。

会社のために汗水垂らして働いたのに、残業代が不当に未払いにされているなんて許せませんよね。

そこでこの記事では、

  • 混同してはいけない「管理職」と法律上の「管理監督者」の違い
  • 会社が管理監督者の規定を悪用する意図
  • 違法な場合に残業代を取り返すための、具体的な方法と流れ

などについて詳しく解説します。

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:管理職の残業代が出ない理由は「管理職」と「管理監督者」が混同されているため

管理職に残業代が出ない理由は、会社が決める「管理職」と、法律上の意味での「管理監督者」が混同して使われているからです。

本来ならば、管理監督者の要素を満たしていなければ、残業代が出ないのは違法になります。

1-1:「管理職」と「管理監督者」は混同されがち

労働基準法41条2号は、「管理監督者」について、一般的な労働者に適用される残業代や休日労働についての規定が適用されないと規定しています。

つまり、「管理監督者」は、一般的な労働者と異なる扱いを受ける法律上の用語です。

法律上の意味での「管理監督者」に該当する場合に、残業代や休日割増賃金が発生しなくなります。

一方で「管理職」は、法律上の用語ではなく、会社が独自で決める社内の役職に過ぎません。

会社が「管理職」に任命しても、それが法律上の意味での「管理監督者」に該当しなければ一般的な労働者と同じく残業代や休日割増賃金を支払わなければならないのです。

会社が決める「管理職」と、法律上の意味での「管理監督者」の違いを正確に理解している労働者は、ほとんどいません。

そのため、「管理職」と「管理監督者」を混同して、「管理職」には残業代を払わなくて良いという間違った認識が広まっているのです。

1-2:「管理監督者」の3つの判断要素

法律上の意味での「管理監督者」の要素として、次の3つが挙げられます。

  • 経営者に近い責任・権限を持っている
  • 勤務時間を自分で決める権限を持っている
  • 残業代を出す必要がないほどの高い対偶を受けている

これらの要素を満たしていなければ、法律上の意味での「管理監督者」には該当せず、会社が決めただけの「名ばかり管理職」になる可能性が高いです。

管理職の要素を満たしていなければ名ばかり管理職

管理監督者とみなされるためには、これらの3つの要素の「すべて」に当てはまる必要があります。

実際には、ほとんどの管理職の人が、管理監督者の要素を満たせないはずです。

そのため、ほぼすべての管理監督者扱いされている人は、残業代を請求できる可能性が非常に高いです。

それぞれの詳細は以下のとおりです。

  • 経営者に近い責任・権限を持っている
    役員会に出席するなど経営方針の意思決定に携わる立場にある
    アルバイトやパートの採用権限など人事に関する権限がある
    会社の重要部署における人事・経営の管理権限がある

など、経営者と一体的な立場にいえるような場合でなければ経営者に近い責任・権限を持っているとはいえません。

  • 勤務時間を自分で決める権限を持っている
    管理監督者に労働時間の規定が適用されないのは、時間を問わず職務上の対応を求められるため、労働時間の規制になじまないためです。
    そのため、管理監督者といえるためには、勤務時間に拘束されず自分の意思で勤務時間を決められる権限がなくてはなりません。
    会社に勤務時間を管理されていたり、遅刻、早退、欠勤によるペナルティを受けたりする立場の場合には、管理監督者には当たりません。
  • 残業代を出す必要がないほどの高い対偶を受けている
    ここでの高い対偶とは、他の社員に比べて時間単価で高い賃金が支給されていることを意味します。
    他の社員に比べて給与や賞与が高額でも、その分だけ労働時間が長いのであれば高い対偶とはいえません。
    一般的に、基本給は他の社員と同等で、わずかな役職手当を支給するだけの場合には管理監督者とはいえないでしょう。
    ただし、対偶による判断はあいまいな部分も多いため、他2つの判断要素に比べると決定的な要素とはいえません。あくまで補足的なものと考えてください。

【会社が管理職を管理監督者扱いにする理由】
会社が管理職を管理監督者と混同するのは、人件費の節約という目的があるためです。

ブラック企業は人件費を抑えるために、意図的に名ばかり管理職を作りだしています。管理職であるあなたに残業代が払われていないとしたら、それは会社の手口である可能性が高いのです。

会社が管理職に残業代を払わない意図は、主に以下の2つです。

【残業代を払わないことを正当化するため】
「管理職は残業代なし」と勘違いしている社員が多いことを利用することで、残業代が払われないことに対して社員から文句が出ないようにしてしまう意図があります。

管理職の残業代をゼロにすることで、会社は人件費を抑えることができます。

【社員の責任感を強める】
管理職扱いすることには、社員の責任感を強める効果もあります。「店長」や「部長」「課長」という役職を付けることで、社員は役職に見合った責任を果たそうとします。

ブラック企業としては、「責任だけ与えて対価は払わずに働かせる」という、とても都合の良い手口なのです。

あなたが管理監督者なのかどうか、自分だけで判断するのが難しい場合はあるでしょう。そこで、あなたが管理監督者かどうか分かる、詳しい判断基準を紹介します。

2章:自分が管理監督者かどうか判断しよう

管理監督者の3つの要素を知っただけでは、自分が管理監督者かどうか判断するのは難しいです。

そこで、ここでは自分が管理監督者かどうか判断する上で参考にできる、チェックリストと過去の判例を紹介します。

2-1:管理監督者or名ばかり管理職?チェックリスト

下記のチェックリストから、自分がいくつ当てはまるか数えてみましょう。

チェックリストに当てはまる数が多いほど、あなたは管理監督者ではなく、「肩書きだけの管理職」=「名ばかり管理職」である可能性が高いです。

名ばかり管理職チェックリスト

1〜2つ  :名ばかり管理職である可能性が高い
3つ以上:名ばかり管理職である可能性が極めて高い

3つ以上当てはまる人は、名ばかり管理職である可能性が極めて高いです。
もしあなたが名ばかり管理職で、残業代が出ていないとしたら、会社は違法行為をしていることになり、残業代を取り返すことができる可能性が高いです。

2-2:名ばかり管理職と認定されたケース

まだ管理監督者かどうか判断が難しいという場合は、これから紹介する判例を参考にしてください。名ばかり管理職とみなされた判例

管理監督者とみなされた判例

一部の例外的な社員のみが、管理監督者と認められることがイメージできると思います。

名ばかり管理職である可能性がある場合は、これから紹介する方法で、会社に残業代を請求することをオススメします。

管理職で残業代がゼロにされている場合、請求できる残業代の金額は、あなたが思っているよりも高額になる可能性が高いです。

残業代は、

残業代=(月給÷所定労働時間)×割増率×残業時間

という計算式で簡単に計算できます。

仮に、月給25万円、毎月100時間の残業を2年続けていたとしたら、請求できる残業代の金額は約353万円にもなります。

これだけの金額を請求できるのですから、泣き寝入りするのは大損なのです。

残業代の詳しい計算方法については、以下の記事を参照してください。

【図解で分かる】残業代の正しい計算3ステップを弁護士が解説

3章:泣き寝入りはダメ!弁護士に依頼して残業代を取り返そう

会社から残業代を取り返す方法には、以下の2つがあります。

  • 自分で直接会社に請求する
  • 弁護士に依頼して請求する

2つの方法を比べると、以下のようなメリット・デメリットがあります。

残業代請求を自分でやる場合と弁護士に依頼する場合の違い

そのため、弁護士に頼って残業代請求をする方法をオススメします。

これから、弁護士に依頼し、請求手続きを進める方法について解説します。

これまでたくさんの残業代請求に携わってきた筆者の考えでは、自分で請求する方法には、「手間がかかる一方で、残業代を取り返せない可能性が高い」というデメリットがあります。

3-1:弁護士へ依頼する方法の流れ

残業代をより高額かつ確実に取り返すためには、弁護士に依頼することが最もオススメです。

なぜなら、残業代の計算や手続きは、専門的な知識が必要なため、1人で戦っては会社側の弁護士に負けてしまうからです。

弁護士に依頼した場合、以下のような流れで残業代が回収されます。

残業代請求を弁護士に依頼する流れ

実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟(裁判)」になることは少ないです。

おそらくあなたが心配しているであろう「費用」の面でも、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。

弁護士に依頼した場合の、

  • 交渉
  • 労働審判
  • 訴訟(裁判)

という3つの手段について、詳しく解説します。

3-1-1:ほとんどはこれで解決!弁護士が会社と「交渉」

交渉とは、弁護士が会社との間に入って、電話・書面・対面で直接会社と交渉してトラブルの解決を図るものです。

交渉の場合、弁護士は、あなたからヒアリングした内容をもとに交渉しますので、あなたは会社に電話やメールをしたり、出向く必要はありません。

また、あなたが在職中で、これから退職を考えている場合、実際に交渉を開始する時期については、相談可能です。そのため、弁護士に相談していることが会社にばれることはありません。

交渉は、弁護士と会社との間で、当事者間での合意によるトラブルの解決がゴールであり、合意できた場合は、あなたに会社から未払いの残業代が支払われることになります。

合意に至らなかった場合に、労働審判や訴訟(裁判)に進むことになります。

3-1-2:交渉で解決しなかったときの解決方法「労働審判」

交渉で決着が付かなかった場合、労働審判を行います。

労働裁判とは、裁判所に行き、会社・あなた・裁判官などの専門家で問題の内容を確認し、解決の方法を探す訴訟(裁判)よりも簡単な方法です。

労働審判では、最低1回は裁判所に出向く必要がありますが、会社側の人と入れ替わりで部屋に入って話し合う形式のため、直接顔を合わせることはありません。

労働審判の場合は、解決するまで以下のような流れで進みます。

労働審判の流れ

第1回労働審判で解決されれば、申立てから1〜2ヶ月程度、第2回、第3回まで延びれば1ヶ月〜2ヶ月程度期間も延びることになります。

労働審判の回数は、最大3回までと決められているため、裁判のように何回も裁判所に行ったり、長期化することがないのが特徴です。

あなたも初回の労働審判のみは参加する必要がありますが、それ以降は参加しなくて良い場合もあります。

多くの場合、「交渉」か「労働審判」で決着が付きますが、労働審判において決定されたことに不服がある場合は、訴訟(裁判)へ移行します。

3-1-3:最後の手段は「訴訟(裁判)」

訴訟(裁判)は労働審判と違い、何回までという制限がなく、長期に渡り争い続ける可能性があります。

ただし、あなたはほとんど出廷する必要がありません。行く必要があるのは本人尋問のときだけです。

訴訟(裁判)では、裁判所で「原告(あなたもしくは、あなたが依頼した弁護士)」と「被告(会社)」が主張し合い、裁判官が判決を下します。

訴訟の流れはこのようになっています。

訴訟(裁判)の流れ

最高裁まで行くことはほとんどないため、多くは地方裁判所までの1〜2年程度で終わるようです。

裁判所で「原告(あなたもしくは、あなたが依頼した弁護士)」と「被告(会社)」が主張し合い、裁判官が判決を下します。

裁判になると数年単位で争うこともありますが、先ほどお伝えした通り、ほとんどは裁判まで行くことはなく、交渉・労働審判で解決します。

このように、弁護士に相談すれば、あなたが思うよりも手間・時間・お金をかけずに、残業代を請求することができるのです。

3-2:残業代請求に強い弁護士に依頼することが重要!

3章では残業代請求の方法を解説しましたが、いかがだったでしょうか?結論としては、より確実かつ円滑に残業代を取り返すためには、「弁護士に依頼する」ことが最もオススメの方法です。

ただし、ここで、注意点があります。

それは、「残業代請求に強い弁護士」を選ぶことが重要ということです。

あなたは「弁護士さんは全員法律の知識があるのだから、誰でも良いのでは?」と思うかもしれません。

しかし、実際は法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の専門分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いのです。

弁護士の選び方や相談の流れ、かかる費用については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説

4章:残業代請求を行う上で押さえるべき2つのポイント

残業代請求の具体的な方法について、理解することはできたでしょうか。

最後に、残業代を請求する上で必ず知っておかなければならない2つのポイントについて解説します。

4-1:残業代請求のために集めるべき証拠一覧

残業代を請求するためには、まずは自分で証拠を集めることをおすすめします。

証拠集めも、弁護士に依頼することもできます。

しかし、弁護士が証拠を要求しても提出しない悪質な会社が存在するため、会社に在籍しているうちに、自分で証拠を集めておくことで、残業代請求の成功の確率が高まります。

残業代の証拠として有効なものを、勤怠管理している会社と勤怠管理していない会社に分けて紹介します。

【勤怠管理している会社で有効な証拠】

  1. タイムカード
  2. 会社のパソコンの利用履歴
  3. 業務日報
  4. 運転日報
  5. メール・FAXの送信記録
  6. シフト表

【勤怠管理していない会社で有効な証拠】

  1. 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もオススメ)
  2. 残業時間の計測アプリ
  3. 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)

証拠としての有効性が認められる可能性が最も高いのは、①の本人の筆跡が確認できる「手書き」の証拠です。

③の家族へのメールなどは、証拠として認められる可能性が低いため、できるだけ手書きの記録を残すことをオススメします。

証拠は、できれば3年分あることが望ましいですが、なければ半月分でもかまわないので、できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。

最も有力な証拠になり得る「手書き」の証拠ですが、注意しなければならないのは「ウソ」を絶対に書かないことです。

ウソの内容が発覚すれば、信用が疑われて不利になってしまうからです。

そのため、証拠はたとえば「20時30分」ではなく「20時27分」のように、できるだけ正確に記録するようにしましょう。

集めるべき証拠について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル

4-2:残業代請求には3年の時効がある!行動は早めに

もう一点注意してもらいたいのが、残業代請求には3年という時効があると言うことです。時効を過ぎると、残業代は二度と取り返すことができなくなってしまいます。

そのため、未払いの残業代を取り返したい場合は、すぐに行動を始める必要があるのです。

残業代請求の時効について、詳しくは以下の記事を参照してください。

残業代請求の時効は3年!時効を止める方法や注意点、例外などを解説

まとめ:管理職に残業代が出ない理由と残業代の請求方法

いかがだったでしょうか?

最後にもう一度、この記事の内容をまとめます。

この記事でもっとも大事なことは、管理職に残業代が出ない理由は、会社が意図的に「管理職」「管理監督者」を混同させているからだということです。

管理監督者の要素としては、

  • 経営者に近い強い責任・権限を持っている
  • 就業時間が自由で、自分で決めることができる
  • 他の社員と比べて突出して高い待遇(給料など)を受けている

という3つが挙げられ、実際にはほとんどの管理職の人は、残業代をもらう権利を持っています。

そこで、オススメなのは「完全成功報酬制」の弁護士に依頼して残業代を請求することです。

請求するためには、以下のような証拠を集めておくことが大事です。

  1. タイムカード
  2. 会社のパソコンの利用履歴
  3. 業務日報
  4. 運転日報
  5. メール・FAXの送信記録
  6. シフト表
  7. 手書きの勤務時間・業務内容の記録
  8. 残業時間の計測アプリ
  9. 家族に帰宅を知らせるメール

1円でも多くの残業代を取り返すために、早めに行動を開始しましょう。

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会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

弁護士法人新橋第一法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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