徹底解説!残業代の業界別平均と、あなたがもらうべき本当の残業代
この記事を読んで理解できること
- あなたの残業代は適正?業界平均と違法性チェックで判断してみよう
- 残業代をごまかすブラック企業の5つの手口
- 残業代を取り戻すために、まずは証拠集めをはじめよう
あなたは、毎日遅くまで働いているのにもかかわらず、払われている残業代が少なく、
「自分の残業代は平均より少ないんじゃないだろうか?」
と考えたことがありませんか?
ブラック企業は、表面上はうまいことを良いながら、本音ではあなたを安くこき使うことしか考えていません。
もし、あなたの残業代が平均より大きく下回るとしたら、あなたは会社から残業代をごまかされている可能性があります。
ただし、ブラック企業は残業時間や残業代を巧妙にごまかしているため、残業代の業界平均も実態を正確に反映していません。
そのため、残業代の平均額は参考程度にし、「あなたが本来もらうべき残業代がもらえているかどうか」を、残業時間・残業代が発生する仕組みを理解し、自分で判断することが重要です。
そこでこの記事では、
- まずは知っておくべき、業界別の残業代&残業時間の時給の平均ランキング
- あなたの残業代が適正に払われているのか、すぐに判断できるチェックリスト
- ブラック企業が残業代をごまかすために使う5つの手口
- 残業代を取り戻すためにやるべき行動
などについて、解説しています。
最後まで読んで、あなたの本来の残業代を取り戻すためにやるべきことを、しっかり理解してください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■残業代の全業界の平均額は「約2万6,000円」(※厚生労働省調査)
あくまで平均額であるため、あなたのもらっている金額と単純比較はできません。しかし、統計の残業代や残業時間の時給と大きく異なるという場合は、残業代が適正に払われていない可能性が高いです。
■ブラック企業が残業代をごまかす手口
- みなし残業で社員を違法に働かせる
- 名ばかり店長(管理職)で社員を違法に働かせる
- 専門職を違法に働かせる
- 年俸制で社員を違法に働かせる
- 自宅で仕事をさせて社員を違法に働かせる
残業代が平均より大きく少ない、ごまかされているという場合は、証拠を集める、弁護士に相談するといった行動を起こすことが大事です。
目次
1章:あなたの残業代は適正?業界平均と違法性チェックで判断してみよう
あなたが残業の多い会社で働いている場合、自分の残業代が平均と比べて多いのか、少ないのか、自分の残業代は不当に抑えられてはいないか、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
あなたの残業代が適正に払われているかどう判断するために、
- 残業代を業界平均額と比べてみる
- あなたに払われている残業代が適正かどうか「違法性チェックリスト」で判断する
というつのことを行うことをおすすめします。
そこで、まずは残業代の業界別平均額をご紹介します。
1-1:16の業界の残業代平均ランキング
では、さっそく業界別の残業代の業界別の平均額をご覧ください。
※「厚生労働省 毎月勤労統計調査2017年6月確報」から作成
もっとも残業代の平均額が少ないのが「教育、学習支援業」で、もっとも多いのが「電気・ガス業」であることが分かります。全業界の平均は「約2万6,000円」です。
1-2:20代の業界別残業代の平均ランキング
そこで、次に転職サイト「DODA」の「決定版!一目でわかる20代の残業事情」の調査から、20代の業界別残業事情を見てみましょう。
こちらの調査では、IT業界がもっとも残業代が高く、医療・医薬業界がもっとも残業代が少ないことが分かります。また、建築・不動産業界や、小売り・外食業界などは、残業時間のわりに残業代が少ないことが分かります。
また、全業界を通じて、残業代を残業時間で割ると、「残業時間の時給」がとても小さいことが分かります。
1-3:業界別、残業代の時給ランキング
残業代は「残業の時給×残業時間」で計算できます。そこで、業界別の「残業時間(法定外残業時間)の時給」のランキングをご紹介します。
残業時間の時給は、基礎時給に「1.25〜1.6」をかけた金額です。深夜残業や法定休日の出勤ではない、通常の残業時間の場合「1.25倍」がかけられます。表の「残業代の時給」の列は、「基礎時給×1.25」の金額を表しています。
これが、残業した場合に、残業時間にかけられるべき時給です。
あくまで平均額であるため、あなたのもらっている金額と単純比較はできません。しかし、統計の残業代や残業時間の時給と大きく異なるという場合は、残業代が適正に払われていない可能性が高いと考えた方が良いでしょう。
「自分の残業代が平均額より高かった」というあなたも、安心できません。
そこで、もらっている残業代が平均よりも高かった方も低かった方も、これから紹介する「残業代未払い違法性チェックリスト」を使って、自分の残業代の払われ方の違法性を判断してください。
1-4:残業代未払い違法性チェックリスト
以下のチェックリストから、あなたの残業代未払いについての違法性が判断できます。いくつ当てはまるか数えながらチェックしてください。分からないものは飛ばして構いません。
- 就業規則がないorどこにあるか分からない
- 36協定の内容が確認できないor36協定が締結されてない
- 残業代の全部or一部が払われない
- 残業手当、営業手当、業務手当などで残業代が払われているが、不当に少ない
- どんなに長時間残業しても残業代が変わらない
- 労働時間の割に給料が異常に低い
- タイムカードなど労働時間を管理する仕組みが無い
- タイムカードを打刻した後に、社内や自宅・カフェなどで残業させられている
- 「サービス残業するのが当然」のような空気がある
- 時給換算で、職場のあるエリアの最低賃金以下になる
- 「管理職」を理由に残業代が払われない
- やたらと役職付きの従業員がいる
- フレックスタイム制を理由に残業代が払われない
- 変形労働時間制を理由に残業代が払われない
- 年俸制を理由に残業代が払われない
- 裁量労働制を理由に残業代が払われない
あなたはいくつ当てはまりましたか?それでは下記で確認してください。
1〜3:違法性★★
残業代がごまかされている可能性があります。
4〜6:違法性★★★★
ほぼ間違いなく、残業代がごまかされています。
7〜9:違法性★★★★★
残業代がごまかされています。行動するための準備を始めましょう。
10以上:測定不能
この記事を最後まで読んで、紹介している方法で今すぐ行動を始めてください。
いかがでしたか?当てはまった数が多かった場合、あなたは会社から残業代をごまかされている可能性が高いです。では、いったいどのようにしてあなたの残業代はごまかされているのでしょうか。これから詳しく解説します。
2章:残業代をごまかすブラック企業の5つの手口
自分の残業代の払われ方に、違法性がありそうだと感じているあなたは、これから紹介する「ブラック企業の5つの手口」を読んでみてください。
ブラック企業は、利益を出すために、人件費ごまかして従業員をこき使おうとしています。具体的には、以下のような手口を使います。
- みなし残業で社員を違法に働かせる
- 名ばかり店長(管理職)で社員を違法に働かせる
- 専門職を違法に働かせる
- 年俸制で社員を違法に働かせる
- 自宅で仕事をさせて社員を違法に働かせる
こうしたブラック企業の使う手口を理解することで、自分がどんな手口で騙されているのか理解でき、3章から説明する「これから取るべき行動」を、より深く理解できるようになります。
それでは、5つの手口について詳しく解説します。
2-1:みなし残業で社員を違法に働かせる
1つ目は、みなし残業代(固定残業代)という手口です。
※以下、単に「みなし残業代」と呼ぶことにします。
みなし残業代は、一般的に2種類の方法があり、
- 「固定手当型」
- 「基本給組込型」
と言われています。
これらは、毎月一定の金額を「残業代の代わり」という名目で支払うことで、不当に安く抑えようとするブラック企業の手口です。
この手口の悪質な点は、 ブラック企業はきちんと残業代を支払っていないにもかかわらず、 従業員に「仕事がちょっとキツイけど残業代が出るだけマシか」と思わせる場合がある点です。
さらに、入社時に「うちの業界は残業代が出ないけど、我が社は残業代が出るから同年代の人よりも少し給料が高いよ」と言われ、従業員は満足に思っていたりするひどい場合もあります。
それぞれについて解説していきます。
2-1-1:固定手当を悪用した手口
あなたの給与明細にも、こんな項目はありませんか?
「残業手当」「営業手当」「役職手当」「役付手当」「業務手当」「地域手当」「職務手当」「調整手当」etc.
これらの手当のことを一般的には「固定手当」と言い、毎月の基本給にプラスして支払われている方も多いと思います。
ブラック企業は、これらの固定手当について「残業代の代わりだ」「これが残業代だ」と主張することがあります。
これらの手当を残業代という扱いにして、一律の金額で手当として支払うのは、専門家から見ると違法になるケースがあります。
つまり、あなたは、残業代が1円も支払われていないのに、支払われていると思っている可能性があります。
あなたが無知であるのを良いことに残業代だとして、あなたを丸め込んでいる場合があるのです。
2-1-2:基本給組込型の手口
「基本給組み込み型の手口」は、ブラック企業が求人をかける際に使われることがある手口です。「基本給の中に45時間分の残業代が含まれている」などと主張し、給料に残業代の金額を上乗せすることで、他の会社よりも給料を高く見せようとすることがあります。
しかし実態は、 他の会社よりも基本給が少ない上に、○○時間以上の残業をしたとしても、 追加で残業代をもらえることが少なく、違法になるケースもあるのです。
つまりブラック企業としては、 この手口を使うことで、
- 入社を希望する人が増える
- 低賃金で長時間労働させられる
というつの意味でおいしいのです。
これは、社員が就業規則(賃金規程)をほとんど確認しないことを逆手に取った、 「会社ができるだけ残業代を払わずに済むような条項」を就業規則(賃金規程)に巧妙に組み込む手口です。
具体的には、以下のような条項を盛り込んでおくのです。
第●条
「基本給には、固定割増賃金として、法定労働時間を超える労働40時間分の残業手当を含む。」
普通は就業規則(賃金規程)を注意して見ないことが多いため、 このような条項を知らず、あなたが“知らないうちに”残業代が払われているものとして扱われてしまうことがあるのです。
2-2:名ばかり店長(管理職)で社員を違法に働かせる
2つ目は、労働基準法41条2号にある、 「管理監督者」には残業代を払わなくて良いということを濫用して、 店長や部長など、「名ばかりの管理職」の肩書を与えて社員を低賃金で違法に働かせる手口です。
例えば、飲食店などでは「店長」、一般的な企業では「課長」や「部長」などの名称を付して悪用されています。
多くの方が誤解していますが、 実は「店長」「部長」「課長」といった役職が付いているだけでは 「管理監督者」にはなりません。「管理監督者」扱いされるためには、以下の条件を満たしていることが必要です。
■管理監督者の条件
- 社員の採用や解雇を決定する権限がある
- 出勤や退勤の時間を自由に決められる
- 会社の他の従業員より突出して待遇が良い
- 商品やサービスの内容の決定権がある
- 経営方針の意思決定に携わることができる
こうした条件に一つでも当てはまらない方は「名ばかり管理職」であり、残業代をもらう権利を持っています。
しかし、ブラック企業では管理職の役職だけ与えて、 「管理監督者」でないにもかかわらず、 「役職者だから残業代はつかない」と認識させることで残業代を払わないことがあります。
ひどい場合には「飲食店の店長なのにアルバイトよりも給料が低い」というケースも起こり得ます。
役職があるだけでは「管理監督者」ではないので、 「管理監督者」に該当しなければ、きちんと残業代は払われるべきです。
2-3:専門職を違法に働かせる
3つ目は、システムエンジニアや弁護士、コピーライターなどの専門職に適用できる、 「裁量労働制」を悪用して社員を違法に働かせる手口です。
この「裁量労働制」が適用される業務の中に「情報処理システムを開発する人」というものがあるため「エンジニア」において悪用されることがあります。
IT業界では、「情報処理システムを開発する人」だけでなく、「プログラムを書く人」もまとめて「エンジニア」というくくりにされる場合があります。
そのことを利用して、職種が「エンジニア」というだけで、実際には、仕事の自由度がないにもかかわらず、裁量労働制を利用して雇用し、残業代を払わずに不当に働かせていることがあるのです。
しかし、「エンジニア」の中でも、上長の管理下でプログラムを書くような人には、 裁量労働制が適用されない場合があります。
つまり、プログラムを書くだけの「エンジニア」は、残業代をもらえる可能性があるのです。
このように「裁量労働制」は、IT業界における「エンジニア」という言葉の曖昧さを利用して、「残業代を払わずに社員をこき使うための手口」である場合があるので注意が必要です。
2-4:年俸制で社員を違法に働かせる
4つ目の手口は、「年俸制だから残業代は出ないよ」と騙して違法に働かせる手口です。
世間一般では「年俸制」と聞くと、プロスポーツ選手などをイメージして、
「年俸制の場合は、1年間の給料が決まっているので残業代が出ない」
と思い込んでいる方もいらっしゃるようです。
しかし、決められた時間を超えて働いた時間は、残業代が出なければなりません。
このように、労働者が年俸制について正しく理解していないことをよいことに、 ブラック企業では、残業代を支払わらなくて済むための手段として、 年俸制を悪用する場合があるのです。
2-5:自宅で仕事をさせて社員を違法に働かせる
5つ目の手口は、タイムカードを切らせた上で自宅作業を強要することで、 自宅やカフェなどで作業(以下、まとめて「自宅作業」と言います。)させ、 社員を違法に働かせる手口です。
もし、社員や弁護士などから残業代を請求されたとき、 ブラック企業は
と主張することで、残業代の支払いを回避しようとするのがこの手口です。
しかし、自宅での作業だとしても、実際には会社の圧力により作業せざるを得ない場合は、 会社に拘束されていると言えるため、残業代が発生するのです。
通常、企業の側で、社員の仕事量を調整し、就業時間内で仕事が終わるように努力する責任があります。
しかし、ブラック企業は、過剰な量の仕事を社員に課した上で、 残業の証拠が残らない自宅作業をさせることで残業代請求を封じ込め、 結果、安い賃金で最大限の成果を得ようとする場合があるのです。
あなたの会社では、ここで紹介したような手口に当てはまることが行われていませんか?
もし思い当たることがあるなら、あなたも残業代がごまかされている可能性が高いです。
そこで、残業代がごまかされている可能性のあるあなたは、これから紹介する講堂を、すぐにはじめることをおすすめします。
3章:残業代を取り戻すために、まずは証拠集めをはじめよう
残業代をもらうための方法はご理解頂けたでしょうか。残業代を確実に取り戻すために、まずあなたにやってほしいことがあります。
それが、残業代がごまかされていることを示す「証拠」を集めることです。
残業代を取り戻すためには、「自分で会社に請求する」もしくは、「弁護士に依頼して、弁護士に会社との間に入ってもらって取り戻す」というつの選択肢があります。
(残業代を取り戻すための方法について、詳しくは、「残業代が出ないのは違法!会社から残業代を取り戻す2つの方法とは?」の記事を参照してください。)
しかし、どちらの方法をとるにしても、残業していたことを示す証拠が必要です。
3-1:残業代をもらうために有効な証拠
未払いの残業代を請求する上で有効な証拠は、以下のものです。
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
これらの証拠になるものについて、パソコンからデータをダウンロードしたり、シフト表や日報は写真に撮ったりして、会社から証拠隠滅されても大丈夫なように、保存しておくようにしましょう。
「うちの会社は労働時間の管理をしっかり行っていないから、こんな証拠は集められそうにない……」と思ったあなたも、心配いりません。以下のようなものも、有効な証拠になります。
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
できれば、残業代をさかのぼって請求できる3年分の証拠があると望ましいです。しかし、それが無理なら半月分でもかまいません。できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。
ただし、注意点があります。勤怠管理してない会社なら、自分で記録したものも有効な証拠になるとお伝えしました。
そのとき、絶対に「ウソ」を書いてはいけません。
意図的に実際に働いた時間と異なることを書くと、それがばれてしまった時に、証拠の信用性が疑われて不利になってしまいます。また、意図的にウソを書いたわけではなくても、記録した内容に誤りがあると、記録が虚偽と認定されるリスクがあります。
そのため、勤怠の時間を後日まとめて記録したり、退勤の時間を「20:30」など切りの良い時間で記録したりせず、毎日記録し、「20:39」など1分単位で残すことが大切です。
3-2:残業代がさかのぼってもらえるのは3年間
残業代請求の時効は「3年」と決められています。つまり3年よりも前の残業代分はもらえなくなってしまいます。
残業代をもらいたい場合は、自分が損することのないように、できるだけ早くから行動しはじめましょう。
まとめ:残業代の業界平均とあなたの残業代は?
今回は、
- あなたの残業代の業界平均との比較
- あなたの残業代の違法性チェック
- ブラック企業が残業代をごまかす5つの手口
について解説してきましたが、いかがでしたか?
今回、もっともお伝えしたいポイントは、以下の点です。
ブラック企業が残業代をごまかす手口は、主に以下の5つです。
- みなし残業で社員を違法に働かせる
- 名ばかり店長(管理職)で社員を違法に働かせる
- 専門職を違法に働かせる
- 年俸制で社員を違法に働かせる
- 自宅で仕事をさせて社員を違法に働かせる
あなたが本来の残業代を取り戻すためには、まずは以下の証拠を集めることが必要です。
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
残業代を取り戻せるのは3年という時効があるため、できるだけ早く行動をはじめましょう。