- 2023.03.14
- 2025.03.26
- #トラック運転手残業代
【トラック運転手向け】残業代請求の全手順と正しい残業代の計算方法


この記事を読んで理解できること
- トラック運転手の残業代と残業時間
- トラック運転手の残業代をごまかすブラック企業の手口
- トラック運転手の残業代の計算方法と時効
- 残業代の請求は弁護士に依頼するのがおすすめ!
- 自分で集めておくと有利になる証拠
あなたは、
「トラック運転手でも残業代は出る?」
「今の会社で残業代が出ないのはなぜ?」
「本当の残業代はいくらなのか知りたい」
などとお考えではないですか?
「残業代が出ない」
「残業代が少ない」
というのは、トラック運転手にありがちな悩みですが、「会社から出ないと言われているから」と諦めてしまうのは間違いです。
なぜなら、トラック運転手にも残業と認められる時間がある場合は、会社は残業代を支払わなければならないことが、法律で決められているからです。
そのため、支払われていない残業代は、会社に請求することで取り返せる可能性が高いです。
特に、長距離のトラック運転手の場合は、請求できる金額は、あなたが予想しているよりずっと高額になる可能性があります。
例えば、月給20万円の人が、月100時間分の残業代が3年間未払いとみなされた場合、請求できる残業代は、簡単に計算しただけで500万円以上になります。
ただし、残業代請求を成功させるためには、“正しい対処法”を知っておくことがとても大事です。
そこで、この記事では、
- トラック運転手の残業代と残業時間について
- 残業代をごまかすブラック企業の手口
- トラック運転手の残業代の計算方法と時効
- 残業代の請求方法と集めておくと有利になる証拠
などについて解説します。
最後までしっかり読んで、未払いの残業代がある場合は、早めに行動することをおすすめします。
目次
1章:トラック運転手の残業代と残業時間
この章では、令和3年の厚生省の「賃金構造基本統計調査」を参考にして、トラック運転手の残業代と残業時間について紹介します。
- トラック運転手の残業代はいくら?
- トラック運転手の残業代と労働時間の仕組み
- 残業代が未払いになっていないかチェックしよう
それぞれ解説していきます。
1-1:トラック運転手の残業代はいくら?
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、トラック運転手の労働時間と超過労働給与額について、以下のような結果が出ています。
これを見ると、企業規模10人以上の場合、大型トラック運転手の平均残業時間(超過実労働時間数、注1)は月に「35時間」、残業代(超過労働給与額、注2)は「7万2000円」であることが分かります。
同様に、大型車を除くトラック運転手の場合は、平均残業時間は月に「33時間」、残業代(超過労働給与額)は「5万8200円」となっています。
この調査結果を見ると、会社規模やトラックの車種(大きさ)によって金額には差がありますが、残業時間に応じて残業代が支給されています。
注1:超過実労働時間数
事業所の就業規則などで定められた所定労働日における始業時刻から終業時刻までの時間以外に実際に労働した時間数及び所定休日において実際に労働した時間数をいう。
- 時間外勤務手当:所定労働日における所定労働時間外労働に対して支給される給与
- 深夜勤務手当:深夜の勤務に対して支給される給与
- 休日出勤手当:所定休日の勤務に対して支給される給与
- 宿日直手当:本来の職務外としての宿日直勤務に対して支給される給与
- 交替手当:臨時に交替制勤務の早番あるいは後番に対して支給される交替勤務給など、労働時間の位置により支給される給与
1-2:トラック運転手の残業と労働時間の仕組み
トラック運転手の場合、
- 渋滞に巻き込まれたため配送時間が長くなった
- 荷待ち時間が長引いてしまった
などの理由で残業することが多いと思います。
これらの時間も、実は労働時間と認められ、残業時間としてカウントされます。
そもそも「1日8時間・週40時間」のどちらか一方でも超えて働いた時間は、すべて残業時間になります。
トラック運転手の場合は、どこが休憩でどこが労働時間なのかが問題になることが多いですが、原則として「使用者の指揮命令下に置かれている時間」はすべて労働時間としてカウントされます。
そのため、その労働時間分も含めた賃金が、支払われなければ違法です。
つまり、会社から明確に「この時間働きなさい」と業務命令されていた時間や、明確に言われて命令されていなくても、業務上その時間働かざるを得なかった場合は、その時間のすべてが労働時間としてカウントされます。
1-3:残業代が未払いになっていないかチェックしよう
次に、あなたの残業代がごまかされていないか、判断してみる必要があります。
正確に判断するためには専門知識が必要になりますので、まずはおおまかにチェックしてみましょう。
以下のチェック項目に1つでも当てはまるものがあれば、あなたの会社は違法行為をしており、請求することで残業代を取り返すことができる可能性が高いです。
- 残業代が固定給で、どれだけ働いても金額が変わらない
- 歩合給を導入していることを理由に残業代が一切払われていない
- いろいろな名目の天引きがあり、残業代と相殺されている
1つでも当てはまるものがある場合は、ぜひ会社に残業代を請求することをおすすめします。
特に、「歩合給だから」などの理由で残業代が出ない場合は、ブラックな運送会社でよく使われる手口です。
それでは、ブラック企業がトラック運転手によく使う、残業代をごまかす手口についてご紹介します。
2章:トラック運転手の残業代をごまかすブラック企業の手口
ブラック企業がトラック運転手の残業代をごまかす手口には、以下のものがあります。
- 「荷待ち時間は労働時間ではない」と主張する
- 「歩合制だから残業代は出ない」と主張する
- 「請負だから残業代は出ない」と主張する
- 複雑な給与体系にしてごまかす
順番に解説します。
2-1:「荷待ち時間は労働時間ではない」と主張する
「荷待ち時間は休憩時間なんだから」と言って、労働時間と認めてもらえず、その分の賃金が支払われない場合があります。
トラック運転手の仕事をしている限り、どれだけ工夫しても、どうしても荷主の都合で「荷待ち時間」が発生します。
この時間を、会社から「労働時間じゃないから賃金は発生しない」と言われている場合、それは違法です。
なぜなら、過去の判例から、荷待ち時間は休憩時間ではなく、労働時間としてカウントされることになっているからです。
例えば、先にあげた荷待ち時間の場合も、
- 配送先から連絡があり次第対応する必要がある
- 複数のトラックが順番待ちのため随時移動が必要
- 積荷の温度管理が必要なためエンジンを停止できない
などの場合は、労働時間にあたる可能性が高いといえます。
そのため、残業代を請求するときには、この荷待ち時間も労働時間としてカウントして計算する必要があります。
荷待ち時間も入れた場合は、残業代が大幅にアップする可能性があります。
2-2:「歩合給制だから残業代は出ない」と主張する
「うちの会社では歩合給制を導入しているから、残業代は発生しないんだよ。」
これは、ブラック企業に多い、「歩合給制」を理由に「残業代が出ない」と主張する手口です。
歩合給制は、残業代の計算方法が特殊なだけで、残業代が出ない制度ではありません。
そのため、あなたの会社がこのようなことを主張し、残業しても残業代を出さない場合は違法ですので、残業代を請求して取り返すことができる可能性が高いです。
また、「歩合給」に残業代が含まれていると説明されて、残業代が支払われないことも多くあります。
この場合も、歩合給のうちいくらが残業代なのか社員にとって明確になっていない場合は、過去の最高裁判例によると「残業代が含まれる」ことが無効となります。
ただ漠然と、会社から「歩合給に残業代が含まれている」と言われたとしても、いくらが残業代なのかわかりません。
そのため、残業代が含まれると会社が説明していたとしても、無効ということになります。
つまり、結局残業代は、一銭も支払われていないことになります。
このような判断は、非常に難しいため、弁護士などの専門家に問い合わせるとよいでしょう。
2-3:「請負だから残業代は出ない」と主張する
トラック運転手に多いのが、会社との間で雇用契約ではなく「請負契約」を締結しているケースです。
しかし、形だけは請負契約だったとしても、
- 仕事を選ぶ自由がない
- 車両は会社が所有している
- 自分の裁量で業務を行う自由がない
- 給料が源泉徴収されている
などの場合は、労働基準法上の「労働者」に該当すると判断される可能性があります。
その場合、実態としては雇用契約と変わらないため、残業代を請求できることになります。
2-4:複雑な給与体系にしてごまかす
運送会社では、給与体系が複雑すぎて残業代が正しく支払われているかよく分からない場合が多いです。
これは、トラック運転手という職種が、特殊な勤務形態が必要とされるため、という理由もあります。
しかし、残業代の支払いを免れるためにわざと複雑にしているケースもあるため、社員は自分の残業代が、適正な金額が支払われているのか分からない、ということも多いです。
このような会社の場合は、残業代を不当に少なく支払っている可能性も高いです。
ただし、自分で残業代を計算するのは困難ですので、弁護士に依頼して計算してもらい、会社に請求することをおすすめします。
このように、ブラック企業は、社員が無知であることを利用して、少しでも安い賃金で長時間働かせようとします。
あなたも、長時間残業している場合は、請求すると高額の残業代を取り返せる可能性があります。
会社に請求できる金額は、あなたが思っているよりもずっと高額になることが多いです。
- 固定給20万円+歩合給10万円
- 残業時間100時間+1か月平均所定労働時間170時間=総労働時間270時間
※1か月平均所定労働時間とは、会社が定めた1か月の労働時間のことで、170時間前後であることが多い。
以上の条件の場合、1ヶ月の残業代は15万6250円になります。
詳しい計算方法については、3章で解説します。
残業代は3年分さかのぼって請求できるため、トータルでは562万5000円にもなります。
これだけの金額を、取り返すことができる可能性があるため、請求しなければ大きな損です。
3章:トラック運転手の残業代の計算方法と時効
あなたの残業代が適正な金額かどうか判断するためには、実際にあなたの残業代を計算してみる必要があります。
ただし、トラック運転手の場合は、残業代の計算方法が複雑になることが多いです。
トラック運転手の残業代を計算する場合、次の3つを理解することが大事です。
- トラック運転手の残業代計算方法
- 実は残業代をもらえる可能性がある3つの時間
- 残業代の請求は時効に注意
それぞれ解説していきます。
3-1:トラック運転手の残業代計算方法
トラック運転手の給与体系は、「固定給のみ」・「固定給+歩合給」のどちらかになっていることが多いです。
そこで、残業代の計算方法として、次の2つを解説します。
- 固定給のみの場合の計算
- 固定給+歩合給の場合の計算
3-1-1:固定給のみの場合の計算式
給与が固定給のみで歩合給が支払われていない場合、残業代は以下の計算式で計算できます。
①基礎時給を計算する
基礎時給とは、1時間当たりの賃金のことで、以下の式で計算できます。
1か月平均所定労働時間とは、会社で決められている1か月の労働時間のことで、170時間前後であることが多いです。
例えば、月給20万円、1か月平均所定労働時間170時間の場合
20万円÷170時間=基礎時給1176円
②割増率をかける
割増率には、以下の種類があります。
- 通常の残業:1.25倍
- 法定休日の労働:1.35倍
- 深夜残業:0.25+1.25=1.5倍
- 法定休日の深夜残業:0.25+1.35=1.6倍
深夜労働とは、「22時〜翌朝5時」の中で働いた時間のことです。
- 通常の残業:1176円×1.25=1470円
- 深夜労働:1176円×(0.25+1.0)=1470円
- 深夜残業:1176円×(0.25+1.25)=1764円
- 法定休日の労働:1176円×1.35=1587円
③残業時間をかける
残業時間は、先に解説したように、「1日8時間・週40時間」を超えて働いたすべての時間のことです。
例えば、基礎時給1176円、残業100時間(うち深夜残業20時間)の場合
1176円×1.25倍×80時間=11万7600円
1176円×1.5倍×20時間=3万5280円
11万7600円+3万5280円=15万2880円
給与体系が固定給のみの人の場合は、上記の例では、残業代は1か月で15万2880円になることが分かります。
残業代を請求する場合、3年分さかのぼって請求できるため、最大で、
15万2880円×36か月=550万3680円
にもなります。
3-1-2:固定給+歩合給の場合の残業代の計算方法
給与体系に歩合給の部分がある場合、基礎時給の計算方法が異なります。
①基礎時給を計算する
歩合給制の場合、基礎時給の計算方法は、次のようになります。
例えば、歩合給10万円、総労働時間が1か月平均所定労働時間170時間+残業100時間(うち深夜残業20時間)の合計270時間の場合
10万円÷270時間≒370円
②割増率をかける
次に、基礎時給に割増率をかけますが、歩合給の場合は「1.25倍」ではなく「0.25倍」をかけます。
深夜残業の場合は「0.5倍」になります。
370円×0.25倍=92.5円
370円×0.5倍=185円
③残業時間をかける
最後に、上記で計算したものに残業時間をかけます。
92.5円×80時間=7400円
185円×20時間=3700円
固定給+歩合給で残業代が支払われている場合は、
- 固定給部分の残業代を計算
- 歩合給部分の残業代を計算
- それぞれの残業代の金額を足す
という計算で、あなたが本来もらうべき残業代を計算することができます。
- 固定給20万円
- 歩合給10万円
- 月の残業時間100時間(うち深夜残業20時間)
固定給部分の残業代:15万2880円
歩合給部分の残業代:7400円+3700円=1万1100円
15万2880円+1万1100円=16万3980円
残業代を請求する場合、3年分さかのぼって請求できるため、最大で、
16万3980円×36か月=590万3280円
にもなります。
3-2:実は残業代をもらえる可能性がある3つの時間
実は、残業代をもらえる可能性がある時間は、先にあげた「荷待ち時間」の他に、「車両整備の時間」や「日報など報告書作成時間」を合わせた3つの時間があります。
この3つの時間を労働時間にカウントすることで、残業代計算に算入できる「残業時間」が増えるため、請求できる残業代の金額が大きくアップする可能性があります。
例えば、荷待ち時間をカウントして、残業時間が30時間アップした場合の残業代を計算してみます。
- 固定給20万円
- 歩合給10万円
- 月の残業時間130時間(うち深夜残業20時間)
- 総労働時間300時間
固定給部分の残業代:19万6980円
歩合給部分の残業代:1万2487円
19万6980円+1万2487円=20万9467円
3年分で、754万812円にもなります。
このように、荷待ち時間も労働時間としてカウントすることで、請求できる残業代は大幅にアップする可能性が高いです。
3-3:残業代の請求は時効に注意
残業代請求には、「3年」の時効があります。
つまり、給料日から3年がたつと時効が成立し、二度と取り返すことができなくなってしまいます。
時効の基準となるのは給料日で、3年前の給料日に支払われる予定だった残業代が、その3年後の日付で時効が成立し請求できなくなります。
そのため、毎月給料日がくるたびに、1か月分の残業代が消滅していきます。
従って、少しでも多くの残業代を取り返すためには、できるだけ早く行動を開始する必要があります。
残業代請求の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。
残業代請求の時効は3年!時効を止める方法や注意点、例外などを解説
ここまで解説してきたように、残業代の計算方法は、かなり面倒で難しい部分があり、歩合給も導入されている人の場合は、特に計算が複雑になります。
もし、間違った金額で請求すると交渉が失敗する場合もあるため、弁護士に依頼するのがおすすめです。
それでは、これから残業代の請求方法について詳しく解説します。
4章:残業代の請求は弁護士に依頼するのがおすすめ!
会社に残業代を請求する方法には、
- 自分で直接請求する方法
- 弁護士に依頼する方法
の2つがあります。
これらの方法では手続きの流れが異なり、それぞれ以下のような流れで進められていきます。
結論としては、これらの方法には以下のようなメリット・デメリットがあるため、弁護士に依頼することがもっともおすすめです。
なぜなら、自分で行う方法では大きな「手間」「時間」「心理的負担」が余計にかかるだけでなく、弁護士に頼む方が取り返すことができる金額が大きくなる可能性が高いからです。
とはいえ、「まずは自分で請求したい」という場合もあると思いますので、自分で請求する方法からご紹介します。
弁護士に依頼する方法が早く知りたい、という場合は「4-2:より多く取り戻すために弁護士に依頼しよう」をご覧ください。
4-1:自分でできる2つの方法の流れとポイント
自分で請求する方法には、
- 自分で直接会社に請求する
- 労働基準監督署に申告して解決を図る
という2つがあります。
それぞれの方法の流れについて解説します。
4-1-1:自分で会社に「配達証明付き内容証明郵便」を送って直接請求する
自分で会社に直接残業代を請求する場合、以下のように4つのステップで手続きを進めることになります。
① 未払いの残業代が存在することを証明できる証拠を集める
② 請求する残業代の金額を計算する
③ 会社に「配達証明付き内容証明郵便」を送って、時効を止める
④ 自分で会社と直接交渉する
ステップ③で内容証明を送ったところから、会社との交渉がスタートします。
運が良ければ、内容証明が届いた時点で支払いに応じる会社もあるかもしれません。
しかし、多くのブラック企業は、あなたになるべく残業代を払いたくないため、顧問弁護士等を介して減額の交渉をしてくるでしょう。
どの金額で折り合いがつくかは、あなた次第ですが、相手は、法律のプロである弁護士なので
- 本来もらえるはずの金額よりも少ない額で妥協しなければならない
- そもそも配達証明付き内容証明郵便を送ったことすら無視され、会社から相手にして貰えない
という可能性があります。
そんな場合は、次に紹介する「労働基準監督署」に相談するのも一つの選択肢です。
4-1-2:労働基準監督署に申告する
「労働基準監督署」とは、厚生労働省の出先機関で、労働基準法に基づいて会社を監督するところです。
給料の未払いは労働基準法違反のため、労働基準法に相談することで解決にいたる可能性もあります。
労働基準監督署への申告は、以下のような流れで可能です。
このような流れで労働基準監督署に申告することができるのですが、この方法は「残業代を請求したい場合」は、あまりおすすめではありません。
なぜなら、労働基準監督署は、労働基準法に違反している会社の行為を「正す」機関であり、あなたの残業代を取り返してくれる機関ではないからです。
そのため、残業代を請求したいというあなたのために積極的に動いてくれる可能性は低いのです。
また、労働基準監督署は、労働者からのすべての申告で動くわけではありません。
それは、全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約2400人しかおらず、明らかに人員不足だからです。
そのため、危険作業や労働災害などの「人命に関わる問題」などが優先して処理されるため、「残業代の未払い」では、動いてもらえない可能性が高いのです。
そこで、残業代を取り返す場合には、最初から弁護士に依頼することをおすすめします。
残業代請求を自分で行う方法について、詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧になってください。
残業代請求に失敗しないために!自分で請求するための4つのステップ
4-2:より多く取り戻すために弁護士に依頼しよう
残業代請求に成功する確率を上げるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、残業代の計算や交渉は、専門的な知識が必要なため、1人で戦っては会社側に負けてしまうおそれが大きいからです。
実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟(裁判)」になることは少ないです。
ほとんどが交渉や労働審判という、訴訟(裁判)よりも簡単な手続きで解決します。
また、弁護士に依頼すると、高いお金を払わないといけないというイメージがあるかもしれませんが、実はそうとも限りません。
残業代請求に強い「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
弁護士に依頼した場合、
- 交渉
- 労働審判
- 訴訟(裁判)
という流れで、解決に向けて手続きが進められていきます。
その内容について順番に解説します。
4-2-1:ほとんどこれで解決!弁護士と会社の「交渉」
交渉とは、弁護士が会社との間に入って、電話・書面・対面で直接会社と交渉してトラブルの解決を図るものです。
弁護士があなたからヒアリングした内容をもとに交渉するため、あなたが会社に出向いたり会社の人と会う必要はありません。
また、あなたが在職中で、これから退職を考えている場合、実際に交渉を開始する時期については相談可能です。
つまり、会社にばれないようにこっそり準備を進め、退職と同時に残業代を請求し、交渉を開始するということも可能です。
交渉で合意に至らなかった場合は、労働審判や訴訟に進むことになります。
4-2-2:交渉で解決しなかった場合は「労働審判」
交渉で決着が付かなかった場合は、労働審判を申し立てます。
労働審判とは、裁判所に行き、あなたと会社・裁判官などの専門家で問題の内容を確認し、解決の方法を探す方法です。
裁判よりも手続きが簡単で費用も少なく、解決までの期間も短いのが特徴で、1回目で決着するパターンも多いです。
最初の1回のみはあなたも行く必要がありますが、弁護士に依頼すれば2回目以降は参加する必要がないことが多いです。
労働審判は以下のような流れで、解決まで進められます。
第1回労働審判で解決されれば、申立てから1〜2か月程度、第2回、第3回まで延びれば1か月〜2か月程度期間も延びることになります。
労働審判は、最大3回までと決められているため、裁判のように何回も裁判所に行ったり、長期化することがないのが特徴です。
多くの場合、「交渉」か「労働審判」で決着が付きますが、労働審判において決定されたことに不服がある場合は、「訴訟(裁判)」へ移行します。
4-2-3:最後の手段が「訴訟(裁判)」
訴訟(裁判)は労働審判と違い、何回までという制限がなく、長期に渡り争い続ける可能性があります。
ただしあなたは、本人尋問を除けば、ほとんど出廷する必要がありません。
訴訟(裁判)では、裁判所で「原告(あなたもしくは、あなたが依頼した弁護士)」と「被告(会社)」が主張し合い、裁判官が判決を下します。
訴訟の流れはこのようになっています。
最高裁まで行くことはほとんどないため、多くは地方裁判所までの1〜2年程度で終わるようです。
裁判所で「原告(あなたもしくは、あなたが依頼した弁護士)」と「被告(会社)」が主張し合い、裁判官が判決を下します。
裁判になると数年単位で争うこともありますが、先ほどお伝えした通り裁判まで行くことはほとんどなく、多くの場合労働審判で決着がつきます。
このように、弁護士を利用して訴えれば、あなたが思うよりも手間・時間・お金をかけずに、残業代を請求することができるのです。
最後に、残業代請求を成功させるために必要な、集めるべき証拠について解説します。
5章:自分で集めておくと有利になる証拠
証拠集めは、まずは自分で行うことをおすすめします。
証拠集めも弁護士に依頼することは可能ですが、弁護士が証拠を要求しても提出しない悪質な会社もあるため、会社に在籍しているうちに、自分で証拠を集めておくことがより確実です。
集めるべき証拠には、「残業代が未払いであることを示す証拠」と「残業時間を示す証拠」を集める必要があります。
- 雇用契約書
- 就業規則
- 賃金規定
- シフト表
- 給与明細
- 賃金台帳
勤怠管理している会社で有効な証拠
- タイムカード
- タコグラフ
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
トラック運転手の場合、タコグラフがもっとも集めやすい証拠です。
平成29年3月31日までに、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上のすべての事業用トラックに、タコグラフを装着することが義務づけられているからです。
また、運転日報などの日報がある場合はそれもできるだけ在職中にコピーをとっておくとよいでしょう。
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
証拠として一番良いのは自分で記録しておくことで、毎日手書きで1分単位で時間を書きましょう。
具体的な業務についても書いておくことがベストです。
メールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。
証拠は、できれば3年分の証拠があることが望ましいですが、なければ一部でもかまいませんから、できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。
ただし、手書きの場合、絶対に「ウソ」の内容のことを書いてはいけません。
証拠の中にウソの内容があると、その証拠の信用性が疑われ、証拠として利用できなくなり、残業していた事実を証明できなくなる可能性があります。
そのため、証拠は「19時30分」ではなく、「19時27分」のように、1分単位で記録するようにし、正確に記録していることをアピールできるようにしておきましょう。
まとめ:トラック運転手の残業代
最後にもう一度、今回の内容を振り返ってみましょう。
まず、多くのトラック運転手は、会社から以下のようなことを言われて、残業代をごまかされていることがあります。
- 「荷待ち時間は労働時間ではない」と主張する
- 「歩合制だから残業代は出ない」と主張する
- 「請負だから残業代は出ない」と主張する
- 複雑な給与体系にしてごまかす
ただし、適切な手段で請求することで、残業代は取り返せる可能性が高いです。
- 自分で直接会社に「配達証明付き内容証明郵便」を送る
- 労働基準監督署に申告して解決を図る
- 弁護士に依頼して請求してもらう
残業代が未払いであることを示す証拠
- 雇用契約書
- 就業規則
- 賃金規定
- シフト表
- 給与明細
- 賃金台帳
- タイムカード
- タコグラフ
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
トラック運転手は、「荷待ち時間」も労働時間にカウントされるため、残業代は高額になる可能性があります。
時効が成立してしまう前に、行動を開始することをおすすめします。