- 2024.03.25
- 2024.12.11
- #トラック運転手辞めたい
トラック運転手を辞めたい?弁護士が教える退職の基準と損しない辞め方
この記事を読んで理解できること
- トラック運転手をすぐに辞めた方がいい場合
- トラック運転手を辞めたくても辞められない理由・悩み
- トラック運転手が転職しやすい理由と転職して後悔する人の特徴
- 会社を確実かつ円滑に辞める方法
- 退職後に未払い残業代を請求することもできる
あなたは、
「トラック運転手は仕事が辛いからもう辞めたい」
「トラック運転手は給料が安いから辞めたい」
「辞めたいけど、理由があって辞められない」
などとお考えではないですか?
トラック運転手の仕事は長時間拘束されて、過酷な割に給料が安いなど、不満や不安を抱えている方も多いです。
また、もっと条件のいい会社で働きたいと、転職を希望される方も多いと思います。
実際に、令和3年の厚生労働省の調査では、トラック運転手と各産業全体の1か月の平均労働時間を比較してみると、トラック運転手の方が26時間以上長く働いています。
その反面、平均年収はトラック運転手の方が、各産業の平均より40万円以上低くなっています。
さらに、トラック運転手の仕事が「辛い、辞めたい」と思っている人の一部は、違法な環境で働かされている可能性があります。
例えば、
「月80時間を超えるような長時間残業が日常的になっている」
「残業代や給料がごまかされている」
「仕事が原因で体や心の健康に影響が出ている」
といったケースも多いです。
多くの人は、法律に関する専門的な知識を持っていないため、知らないうちに違法な環境で働いているかもしれません。
そこでこの記事では、1章ではトラック運転手をすぐに辞めた方がいい場合について、2章ではトラック運転手を辞めたくても辞められない理由や悩みを、3章では辞めて転職するプラス材料と後悔するパターンについて解説します。
さらに、4章では会社を確実かつ円滑に辞める方法を、5章では退職後に未払い残業代を請求する方法などについて解説します。
最後までしっかり読んで、今後の行動や仕事選びに役立ててください。
目次
1章:トラック運転手をすぐに辞めた方がいい場合
トラック運転手をすぐにやめた方がいい場合としては、次の7つがあげられます。
- 給料が低すぎて残業代が未払い
- 労働時間や拘束時間が長すぎる
- 仕事が原因で健康に影響が出ている
- 体力的に仕事が続けられない
- 事故や遅配などの自己負担額が大きい会社
- トラックが古く点検や整備もしっかりしていない
- 事故やミスが多い
それぞれ解説していきます。
1-1:給料が低すぎて残業代が未払い
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、トラック運転手の給与について、以下のような結果が出ています。
これを見て分かるように、トラック運転手の平均月額給与は「約33万円」です。
これは、残業代や休日手当も含んだ額面の給与です。
平均年収は「約446万円」で、従業員1000人以上の大企業では年収は「約490万円」になっています。
それでは、各産業全体の平均給与も見てみましょう。
これを見ると、平均月額給与は「約33万5,000円」で、平均年収は「約489万円」になっています。
トラック運転手の平均給与は、各産業全体の平均よりも少なく、特に年間賞与に差が見られ、会社の規模が大きくなるほど年収の差は広がっています。
また、運送会社の中には、
- 給料を分割で支払う
- 給料を給料日に支払わず滞納する
- 残業しているのに、残業代が一切出ない
- みなし残業代制や歩合給制を理由に、残業代がごまかされる
という会社も多く存在します。
これは、運送業界では、長い間トラック運転手が個人事業主のように扱われ、労働時間ではなく仕事量で給料を決めるような慣習があったからだと考えられます。
しかし、あなたと会社との関係が雇用契約なら、どんな理由があっても、給料や残業代の全額もしくは一部が支払われないことは、違法です。
そのため、そのようなブラック運送会社はすぐに辞めて、退職後に給料、残業代を請求することをおすすめします。
トラック運転手の給料や残業代について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
トラック運転手の平均給料は32万円!その実態と仕組みを弁護士が解説
1-2:労働時間や拘束時間が長すぎる
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、トラック運転手の労働時間について、以下のような結果が出ています。
これを見て分かるように、トラック運転手の平均残業時間は月に「28時間」、合計労働時間は「202時間」であることが分かります。
これは、1日当たり9.2時間弱の労働をしている計算です(月22日出勤の場合)。
それでは、同じ調査の各産業全体を見てみると、以下のような結果が出ています。
これを見ると、各産業全体の平均残業時間は月に「11時間」、合計労働時間は「176時間」であることが分かります。
1か月の平均労働時間を比較してみると、トラック運転手は各産業全体より26時間以上長く働いているのです。
もしあなたが、この調査に比べて異常な長時間労働が続くような会社で働いているなら、その会社を辞めるべきです。
なぜなら、労働基準法上、労働時間には上限があり、それを超えた労働は「違法」だからです。
労働基準法では、労働時間について、「1日8時間・週40時間まで」と決められています。36協定(※)が会社と社員の間で締結されている場合は、1日8時間・週40時間を超えて働くこともできますが、それでも、月45時間が残業の上限です。
※36協定とは、会社と社員の間で残業を可能にするために締結される協定のことです。
さらに、トラック運転手の場合は、
- 1日の勤務終了後、次の勤務までの間に原則として8時間以上の休息期間が必要
- 1日の拘束時間は原則として13時間まで、例外的には16時間まで許される
など、トラック運転手特有の基準も、法律で規定されています。
これは、トラック運転手という職業柄、長時間労働で疲労が蓄積されると、死亡事故にも繋がりかねないからです。
そのため、このようなルールを守らず、あなたに長時間労働を強いるような会社は、
- 危機意識、安全対策が薄い
- 社員をモノ扱いして酷使している
というブラック企業です。
もしこのような会社に在籍しているなら、すぐにでも辞めるための行動をはじめましょう。
1-3:仕事が原因で健康に影響が出ている
もしあなたが、トラック運転手の仕事の影響で、心身に何らかの健康障害が出ている場合は、できるだけ早く仕事を辞めるべきです。
トラック運転手は、長時間労働や体力を使うことが多いことから、心身への負担が重い仕事です。
そのため、トラック運転手は他の仕事と比較して、労働災害保険(労災)の支給数が非常に高いのです。
労働災害保険(労災保険)とは、業務中や通勤中に起こったことが原因で、病気や怪我になった時に、国が支給する保険のことです。
この支給が多いほど、「健康に悪影響を及ぼす過酷な仕事」であると考えることができます。
次の調査結果を見てみてください。
出典:厚生労働省「別添資料1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況(令和3年度)」より引用
これは、「脳・心臓疾患」の労働災害保険の支給状況に関するデータですが、トラック運転手が分類される「運輸業・郵便業」は、令和2年、3年共にワースト1位であることが分かります。
さらに次のデータでは、トラック運転手が分類される「道路貨物運送業」が、支給決定件数で他の業種にかなりの差をつけて1位になっています。
また別の調査によると、トラック運転手の「死傷災害における事故の型別災害発生状況」は、次のようになっています。
- 墜落・転落:28%
- 動作の反動・ 無理な動作:16%
- 転倒:16%
- はさまれ・巻き込まれ:11%
- 激突:8%
- 交通事故(道路):5%
- その他:16%
※ここでの死傷災害とは、死亡や4日以上休業した怪我の数。
出典:厚生労働省「陸上貨物運送事業における労働災害発生状況」から引用
このように、トラック運転手は長時間労働だけでなく、日常的に怪我や死亡事故の危険にさらされており、実際に多くの人が健康への影響を受けています。
もしあなたも健康に悪影響が出ている場合は、それ以上悪化しないうちにトラック運転手を辞めることをおすすめします。
1-4:体力的に仕事が続けられない
トラック運転手は、
- 長時間運転し続けなければならない
- 自分で荷物の積み下ろしをしなければならないことがある
- エリア配送等の場合、走り回って配達しなければならない
など体力を使う仕事も多いです。
荷物の積み下ろし作業は、
- フォークリフト
- 手作業
の2パターンがあります。
フォークリフトの場合体力は消耗しませんが、それなりの技術力が必要ですし、そもそもフォークリフトの免許を持っていなければ扱うこともできません。
また、手作業で積み下ろしする場合は、体力面の消耗が非常に大きくなり、特に夏場の荷台に入っての作業は、過酷なものとなります。
そのため、もしあなたが「体力的に続けられない」と感じている場合は、トラック運転手の仕事を辞めるのも一つの選択肢です。
1-5:事故や遅配などの自己負担額が大きい会社
交通事故や商品の破損、配送の遅れなどによる損害が出た場合に、自己負担額が大きい会社は、すぐに辞めた方がいいです。
損害が出た場合の負担は、あくまで運転手の過失分のみであり、会社がトラック運転手に全額を負担させることは、労働基準監督署により禁止されています。
また損害の規模にかかわらず、遅配した場合の罰金などを取り決めて、その都度給与から天引きされる場合は、ブラックな運送会社といえるため、すぐに辞めることをおすすめします。
1-6:トラックが古く点検や整備もしっかりしていない
会社のトラックが古かったり、点検や整備もしっかりしていないブラックな運送会社は、すぐに辞めることをおすすめします。
事業用のトラックは、3か月、12か月ごとの定期点検が法律で義務付けられています。
しかし、定期点検や整備が疎かになったままで長時間の乗車勤務を続けている場合は、車両トラブルや事故につながる可能性が高いです。
もし乗車中に車両トラブルから事故が発生し、大きなケガや被害者が出た場合は、今後の人生にも大きな影響が出ます。
そのため、日々の点検・整備を怠っている会社は、すぐに辞めるべきです。
1-7:事故やミスが多い
もしあなたが、事故やミスによるトラブルが多い場合は、トラック運転手には向いていませんので、大きな事故につながる前に辞めることをおすすめします。
なぜなら、トラック運転手は危険と隣り合わせの仕事であり、万が一事故を起こしてしまった場合、周囲の人や車も巻き込んでしまう可能性もあるからです。
それだけ危険な仕事なのですから、注意していても事故やミスがなくならない、何年も続けているのに毎年事故を起こしてしまう、といった場合は、他の仕事に転職するべきだといえます。
2章:トラック運転手を辞めたくても辞められない理由・悩み
トラック運転手を辞めたくても辞められない理由・悩みとしてにありがちなのが、次にあげる4つです。
- 運転手以外の仕事を経験していない
- 会社に借金がある
- 会社から修理費用を請求されている
- 会社から損害賠償請求されている
それぞれ、詳しく解説します。
2-1:運転手以外の仕事を経験していない
トラック運転手に多いのが、この仕事以外経験していないため、辞めたいのに辞められないと思っているケースです。
「人付き合いが苦手だからトラック運転手以外できない」と思っている人もいるようです。
しかし、1章でも解説したように、違法な状況で働いている、もしくは仕事の影響で健康障害が出ている場合は、そのまま今の仕事を続ければ、あなたにはデメリットしかありません。
たとえ運送会社でしか働いたことがなくても、ブラックな運送会社や、健康障害が出るほど消耗する仕事ばかりではありません。
まずは、今の会社を辞めることを優先して、自分に合った会社、仕事を見つけてください。
2-2:会社に借金がある
トラック運転手に多いのが、会社に対して借金があり、
- 借金があるため会社から辞めさせない
- 借金を一括で返済しないと退職させない
と言われているために、会社を辞められないというケースです。
しかし、民法では、従業員は退職を申し出てから2週間すれば会社を辞めることができるので(627条1項)、会社は社員の借金を理由に、社員の退職を拒否して社員の身分を拘束することはできません。
法律上は、会社に対する借金は退職後に返済することも可能ですので、会社と退職後に返済することを話し合った上で退職するか、弁護士に依頼して自分の代わりに交渉してもらうことをおすすめします。
また、残業代請求をすると、借金より残業代請求の金額の方が上回ることが多いため、残業代で借金の返済ができるどころか、貯金ができる可能性もあります。
2-3:会社から修理費用を請求されている
トラック運転手に多いのが、辞めたいと言ったら、会社から昔の事故の修理費用を請求されて、会社を辞められないというケースです。
しかし、あなたが備品を壊してしまったとしても、通常は会社が保険に入っているため、あなた個人に請求されることはありません。
会社が保険に入っていない場合は請求されることがありますが、労働者の業務上のミスに基づく損害賠償請求は、次のように、過去の判例では制限されています。
① 労働者に故意または過失がなければならないこと(裁判例の中には、重過失がなければならないと判断されたものもあります)
② 故意または過失があったとしても、すべての損害を賠償する必要はないこと
以上のように、退職(辞職)時に会社から修理費を請求されても、多額の賠償が必要になることは、ほとんどないのです。
2-4:会社から損害賠償請求されている
辞めると言ったら、会社から「損害賠償請求する」と言われてしまった、というケースもあります。
しかし、会社を辞めることを理由に、社員に損害賠償請求することはできません。
また、社員の都合で退職することに対して、違約金や損害賠償を求める契約は無効になります。
そのため、このような場合も会社に退職届を配達証明付き内容証明郵便で送り、引き継ぎ作業をすれば、問題なく退職することができます。
他にも、次のようなケースがよくあります。
「お前が辞めたら会社が忙しくなるから辞めさせない」
「お前がやっていた仕事は誰がやることになるんだ」
などと言われ、会社を辞められないというケースがあります。
しかし、このような引き止めにあったとしても、会社に退職の意思を伝えてから2週間後には退職することができます。
このような理由で退職が拒否された場合も、退職届を内容証明で会社に送り、引き継ぎをすれば、問題なく退職することが可能です。
また、退職時に会社から損害賠償請求されても、多額の賠償が必要になることは、ほとんどないのです。
このように、もしあなたが辞めたいのに辞められないと思っていても、実は辞められるケースの方が多いのです。
3章:トラック運転手が転職しやすい理由と転職して後悔する人の特徴
トラック運転手を辞めて転職を考えた場合、トラック運転手は転職しやすいという一面があります。
また、転職して後悔する人には、よく見られる特徴があります。
それぞれ解説していきます。
3-1:トラック運転手が転職しやすい理由
トラック運転手が転職しやすい理由としては、次の3つがあげられます。
- 運送業界は人手不足で売り手市場
- 条件が良い会社が増えている
- ドライバー経験は次に活かしやすい
近年、ネットショッピングを利用して買い物をする人が増えたことで、宅配便の量が急増しているため、トラック運転手の業務量も大幅に増えています。
そのため、人手不足を感じている運送会社の数は大きく増加していて、売り手市場となっています。
全日本トラック協会の調査によると、令和4年6月時点の「貨物自動車運転者」の有効求人倍率は「2.01」で、全職業の有効求人倍率「1.09」のほぼ倍となっています。
その結果、運送社も人員確保のために、給料や福利厚生だけでなく車両や設備等も改善しているため、条件の良い会社が増えています。
さらに、大型免許を取得している場合は、大型トラックの運転手が特に不足しているため、給与面でもアップが期待できます。
また、トラック運転手としてのドライバー経験は、バス運転手やタクシー運転手など、運転技能を生かせる職種も他にあります。
3-2:転職して後悔する人によく見られる特徴
転職して後悔する人によく見られる特徴は、次の2つです。
- 働き出したばかりで経験が少ない
- なんとなく向いていないと感じている
それでは、順番に解説します。
3-2-1:働き出したばかりで経験が少ない
転職して後悔する人の特徴の一つとして、働きだしたばかりで経験が少ないことがあげられます。
もしあなたが「トラック運転手を辞めたい」と思っていても、まだ仕事をはじめて1年程度等で経験が少ない場合は、まだ辞めるべきではないかもしれません。
どのような仕事でも最初は辛く感じることが多く、最初は仕事の内容や技術、運転時の危機意識などをたたき込むために、周囲も厳しく対応することが多いからです。
そのため、もし、
- 異常な長時間労働
- 給料や残業代が未払い
- 健康に悪影響が出ている
などといった理由でない場合は、もう少し続けて、それから再度仕事の適性を考えてみることをおすすめします。
3-2-2:なんとなく向いていないと感じている
トラック運転手が「なんとなく向いていないと感じている」といった理由だけで辞めてしまうのは、転職で後悔する人によくある特徴です。
はっきりした動機もなく辞めてしまった場合、次の仕事でも同じことを繰り返す可能性が高いため、まだ仕事を辞めるべきではありません。
またトラック運転手は、仕事の過酷さの一方で、特別な資格や学歴、実績がなくてもある程度稼ぐことができる魅力があります。
そのため、簡単に辞めてしまうのは、あなたにとって損になる可能性が高いです。
コラム:トラック運転手を辞める前に試せる4つのこと
トラック運転手を辞める前に、もう一度、本当に辞めるべきかどうか、検討する機会を作ってみることも有効です。
例えば、次の4つの選択肢があります。
- 有給休暇を取得して心身を休める
- 休職する
- 友人などに相談してみる
- 辞めたい理由を自己分析する
できれば、自分の状況や考えを整理し、客観的に考えてみましょう。
それでも、辞めるのがベストな選択肢だと思う場合は、できるだけ円滑・穏便な方法で会社を辞めましょう。
4章:会社を確実かつ円滑に辞める方法
会社を辞める場合に、会社との間でのトラブルを避け、あなたが損しないように手続きを進めるためには、これから紹介する「労働基準法にのっとった退職の手続き」を覚えておくことが大事です。
退職手続きの流れは、次のようになっています。
退職までの流れについて、順番に解説していきます。
4-1:退職意思を伝える
まずは、会社に対して「退職願」や「退職届」を出して、退職する意思を伝える必要があります。
「退職願」とは、社員が会社に「退職させてください」と願い出るものです。
一方で、「退職届」とは、会社に対して一方的に「退職します」と宣言するものです。
そのため、退職願が受理されず、辞めることができなかったときは退職届を書いて、会社に渡す(送る)必要があります。
たいていの場合、2週間前までに退職届を提出することで、法律上は辞めることが可能です。
ただし、会社も引き継ぎや人員補充などのために時間が必要ですので、円満に退職するなら1ヶ月以上前に退職意思を伝えることをおすすめします。
退職届には、詳しい退職の事情などを書く必要はありません。
会社によってフォーマットが用意されていることもありますが、なければ次のものを参考にしてください。
《退職届フォーマット》
退職届
私事、
一身上の都合により、来る令和○○年○月○日をもって退職致します。
令和○○年○月○日
○○事業部○課 退職太郎 印
○○株式会社 代表取締役○○殿
4-2:有給休暇を消化する
労働者は、有給休暇を取得する権利を持っています。
そのため、条件を満たしていれば、誰もが申請して取得することができます。
- 雇い入れの日から6ヶ月以上勤務
- 全労働日の8割以上出勤
有給休暇は、次の流れに沿って申請・取得することが可能です。
有給休暇の申請を会社は原則断ることができないため、堂々と申請して、すべての日数を消化して辞めましょう。
場合によっては、退職時に消化しきれなかった有給休暇を会社が買い取ってくれることもあります。
その場合、残っている有給休暇の日数分の買取価格が支払われます。
ただし、有給休暇の買取は例外的なもので、法律上の規定もありません。
そのため、あくまでも有給休暇は、消化してから退職することを前提に考えておきましょう。
4-3:すぐに転職しない場合は失業保険申請、社会保険・年金手続き
すぐに次の会社への入社が決まっている場合、退職後にやるべきことは必要書類を転職先に提出するだけです。
しかし、まだ転職先が決まっていないなどの場合は、失業保険を受給できる可能性がありますので、まずはその手続きを行いましょう。
失業保険は、
- 退職前に2年以上雇用保険に加入していた
- 積極的に求職活動をしている
- 転職先が決まっていない
などの条件に当てはまる場合、受給することができます。
失業保険の受給について詳しく知りたい場合は、次の記事を参考にしてください。
失業保険とは?受給までの手続きと失業保険額・受給期間を弁護士が解説
次の会社に入るまでブランクがある場合は、健康保険を変更する手続きが必要になります。
その選択肢としては、図の通り、
- 家族の扶養に入る
- 退職した会社の健康保険を「任意継続」する
- 自治体の窓口に行って「国民健康保険」への加入に変更する
の3つがあります。
国民健康保険に入らなければ、再就職するまでの間に病気や怪我をした場合、病院でかかった医療費を「全額」自分で支払わなければなりません。
加入していれば3割しか負担しなくていいため、必ず役所に行き加入するようにしましょう。
もし、「保険料を支払う余裕がない」という場合は、あなたに失業保険の受給資格があれば、国民健康保険の保険料の免除申請ができます。
失業保険の受給期間中は、健康保険の保険料を大幅に減らすことができるのです。
次の会社に入社するまでにブランクがある場合は、年金も変更の手続きを行う必要があります。
手続きとは、会社員の種別である「第2号被保険者」から、「第1号被保険者」に種別を変更する手続き(種別変更)を行うものです。
種別変更の手続きを行わないと、次の会社に入社するまでの間に「年金の未納期間」が発生し、将来受給できる年金額が減ってしまいます。
そのため、退職後は14日以内に、自治体の年金窓口で種別変更の手続きを行いましょう。
会社を辞める前にやるべきことについて理解することができたでしょうか?
最後に、会社を辞める場合、退職後にやるべきことを紹介します。
5章:退職後に未払い残業代を請求することもできる
1章で解説したように、ブラックな運送会社などで残業代が未払いの場合は、退職後に未払残業代を請求することもできます。
この章では、未払い残業代の簡単な計算方法と、残業代の請求を弁護士に依頼する流れについて解説します。
5-1:未払い残業代や深夜手当の計算方法
運送会社を辞める場合、未払いの残業代や深夜手当、休日手当等を請求することもできます。
例えば、
- 基本給25万円
- 1か月平均所定労働時間170時間
1か月平均所定労働時間とは、会社によって定められた1か月の平均労働時間のことで、170時間前後であることが一般的です。
- 月の残業の合計:80時間
- 月の深夜労働の合計:28時間
上記の場合は、
- 1か月の残業代
(25万円÷170時間)×1.25倍×80時間=14万7000円
- 1か月の深夜手当
(25万円÷170時間)×0.25倍×28時間=1万290円
と計算でき、合計金額は15万7290円にもなります。
残業代や深夜手当は、3年分までさかのぼって請求できるため、
15万7290円×36ヶ月=566万2440円
と高額になります。
トラック運転手の場合、荷待ち時間が労働時間にカウントされ、高額な未払い残業代が発生するケースも珍しくありません。
そのため、他の職種よりも残業代が高額になる可能性が高いです。
トラック運転手の残業代のルールや計算方法、請求する方法などについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【トラック運転手向け】残業代請求の全手順と正しい残業代の計算方法
5-2:残業代の請求は弁護士に依頼しよう
残業代の計算や会社との交渉は、専門的な知識が必要なため、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に相談するというと
「裁判みたいな大事になるのはちょっと・・・」
「費用だけで100万円くらいかかるのでは?」
と考えてしまう人もいるかもしれません。
しかし、弁護士に頼む=裁判ではありません。
残業手当請求のためにいきなり裁判になることは少なく、多くの場合「交渉」や「労働審判」という形で会社に対して残業手当を請求していきます。
また、残業代請求に強い「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
弁護士に依頼した場合、
- 交渉
- 労働審判
- 訴訟(裁判)
という流れで、解決に向けて手続きが進められていきます。その内容について順番に解説しています。
5-2-1:ほとんどこれで解決!弁護士と会社の「交渉」
交渉とは、弁護士が会社との間に入って、電話・書面・対面で直接会社と話し合い、トラブルの解決を図るものです。
弁護士があなたからヒアリングした内容をもとに交渉するため、あなたが会社に出向いたり会社の人と会う必要はありません。
また、あなたが在職中で、これから退職を考えている場合、実際に交渉を開始する時期については相談可能です。
つまり、会社にばれないようにこっそり準備を進め、退職と同時に残業代を請求し、交渉を開始するということも可能です。
交渉で合意に至らなかった場合は、労働審判や訴訟に進むことになります。
5-2-2:交渉で解決しなかった場合は「労働審判」
交渉で決着が付かなかった場合は、労働審判を申し立てます。
労働審判とは、裁判所に行き、あなたと会社・裁判官などの専門家で問題の内容を確認し、解決の方法を探す方法です。
裁判よりも手続きが簡単で費用も少なく、解決までの期間も短いのが特徴で、1回目で決着するパターンも多いです。
最初の1回のみはあなたも行く必要がありますが、弁護士に依頼すれば2回目以降は参加する必要がないことが多いです。
労働審判は以下のような流れで、解決まで進められます。
第1回労働審判で解決されれば、申立てから1〜2か月程度、第2回、第3回まで延びれば1か月〜2か月程度期間も延びることになります。
労働審判は、最大3回までと決められているため、裁判のように何回も裁判所に行ったり、長期化することがないのが特徴です。
多くの場合、「交渉」か「労働審判」で決着が付きますが、労働審判において決定されたことに不服がある場合は、「訴訟(裁判)」へ移行します。5-2-3:最後の手段が「訴訟(裁判)」
5-2-3:最後の手段が「訴訟(裁判)」
訴訟(裁判)は労働審判と違い、何回までという制限がなく、長期に渡り争い続ける可能性があります。
ただしあなたは、本人尋問を除けば、ほとんど出廷する必要がありません。
訴訟(裁判)では、裁判所で「原告(あなたもしくは、あなたが依頼した弁護士)」と「被告(会社)」が主張し合い、裁判官が判決を下します。
訴訟の流れは、次のようになっています。
最高裁まで行くことはほとんどないため、多くは地方裁判所までの1〜2年程度で終わるようです。
ただし、先ほどお伝えした通り、裁判まで行くことはほとんどなく労働審判で決着がつきます。
このように、弁護士を利用して訴えれば、あなたが思うよりも手間・時間・お金をかけずに、残業代を請求することができるのです。
まとめ
最後にもう一度、今回の内容を振り返ります。
- 給料が低すぎて残業代が未払い
- 労働時間や拘束時間が長すぎる
- 仕事が原因で健康に影響が出ている
- 体力的に仕事が続けられない
- 事故や遅配などの自己負担額が大きい会社
- トラックが古く点検や整備もしっかりしていない
- 事故やミスが多い
- トラック運転手以外の仕事の経験がない
- 会社に借金がある
- 会社から修理費用を請求されている
- 会社から損害賠償請求されている
- 運送業界は人手不足で売り手市場
- 条件が良い会社が増えている
- ドライバー経験は次に活かしやすい
未払い残業代の請求は、弁護士に依頼して早めに行動しましょう。