- 2017.12.13
- 2024.10.28
- #失業保険とは
失業保険とは?受給までの手続きと失業保険額・受給期間を弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- 失業保険とは
- 失業保険のもらい方
- 会社都合と自己都合でこれだけ違う失業保険
- 自己都合を会社都合に変える方法
失業保険とは「会社を辞めた時に国からもらえるお金のこと」を言います。
この記事では、失業保険の正しい意味や失業保険のもらい方、そして、より長く失業保険をもらうために、離職理由を会社都合にする方法について解説しています。
この記事を読んで失業保険のもらい方をマスターしましょう!
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■失業保険とは
- 雇用保険の「基本手当」のこと
- 失業保険は1日あたり、離職備直前6か月の1日分の給与の50%~80%をもらえる
- ハローワークで申請することが必要
■失業保険の受給期間
- 離職した理由や年齢、雇用保険の被保険者期間などで決まる。
- 離職理由は「会社都合」の方が、より長く・多く失業保険をもらえる。
※「自己都合」と決定されても「会社都合」にしてほしい場合は審査請求することができる。
目次
1章:失業保険とは
まずは、失業保険の正しい意味と失業保険がもらえる条件をおさえます。
1-1:失業保険の正しい意味
実は、失業保険とは正しい用語ではありません。
正確には、雇用保険の「基本手当(いわゆる失業等給付)」のことを一般に失業保険と呼んでいます。
これは、再就職まで生活ができるように、国が出すお金になります。
失業保険の対象者は以下の通りです。
■対象者
①やめた会社が雇用保険に加入していたこと
②ハローワークを使って再就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、仕事がないこと
③離職の日以前2年間に、雇用保険に入っていた期間が通算して12か月以上あること
*倒産や解雇などにより離職した場合は、離職の日以前1年間に、雇用保険に入っていた期間が通算して6か月以上あること
1-2:失業保険をもらうまでの全体の流れ
失業保険をもらうまでの全体の流れをおさえましょう。
2章:失業保険のもらい方
失業保険はどうやってもらうことができるのでしょうか。失業保険のもらい方について確認しましょう。
2-1:失業保険がもらうための必要書類
失業保険をもらうための必要書類は以下のとおりです。
■必要書類
《自分で用意するもの》
・雇用保険被保険者離職票
「離職票1」と「離職票2」の2種類があります。
まず離職票1は「資格喪失確認通知書(被保険者通知用)」と書かれた紙です。失業保険の給付金の振込先などを記入します。
*会社から離職票がもらえなかったとき
離職から2週間を過ぎても離職票が届かないときは、ハローワークに事情を説明しましょう。そうすると、ハローワークの担当から会社に催促がいきます。
【画像】離職票1
【画像】離職票2
・雇用保険被保険者証
雇用保険に入っていたことを証明する書類です。会社から渡されますので、大切に保管してください。
・印鑑
書類の作成、訂正に必要です。
・写真
縦3cm×横2.5㎝のものが必要になります。
・普通預金通帳
失業保険の振込に必要です。必ず本人名義のものを用意しましょう。
・マイナンバーを確認できる書類
マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれかが必要です。
・本人確認書類
運転免許証、パスポート、身体障碍者手帳などが必要です。公的医療保険の被保険者証、年金手帳、児童扶養手当証書を持っていく場合には、2点必要になりますので注意しましょう。
《ハローワークで入手するもの》
・求職申込書
この書類は「新しく仕事を探す意思があります」ということを証明してくれます。書き方はわからなければ、窓口で相談してください。
・ハローワークカード
ハローワークを利用する際に必要になるカードです。初めてハローワークで求職申込書を出したときにもらえます。
2-2:失業保険の申請はハローワークでできる
失業保険が手元にくるまで、順を追って流れを見てみましょう。
①離職~必要なものを準備する
2-1を参考に、失業保険を受給するために必要なものを揃えましょう。
特に、雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者離職票(2種類)は会社からもらうものですので、忘れないようにしてください。
②失業保険を申請する~ハローワークへ行く
失業保険の申請は、自分の住んでいる地区を担当するハローワークで行います。
2-1で挙げたものが必要になりますので、必ず持参して下さい。
窓口でハローワークの情報に登録してもらったら、今度は違う窓口に案内されます。
ここが失業保険の窓口になりますので、離職票を提出しましょう。
なお、法律上ここから7日間は失業保険を受け取ることができません。
あなたが本当に失業状態かどうかを調べるためです。これを「待期期間」と言います。
③受給説明会~再度ハローワークに行く
求職の申し込みをしてから7~10日後にハローワークに来るよう指示されます。
雇用保険受給者初回説明会といい、ここでは2時間程度のビデオを見ます。
説明会が終わると、雇用保険受給資格証と失業認定申告書がもらえ、次にハローワークに行く日(失業認定日)が決められます。
失業状態であるかを確認するため、説明会から7日間が経過した日に指定されます。そのため、説明会には必ず出席してください。
④失業認定~忘れずにハローワークへ行く
失業認定日にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出します。
ここで大切なのが、失業認定日の前日までにはハローワークへ行き、1回以上求職活動をしておく必要がある、ということです。
失業認定を受けると、はじめて給付金をもらう権利が生じます。
⑤受給~振込
失業認定日から原則として5営業日後に指定した口座に失業保険のお金が振り込まれます。
2回目以降失業保険をもらうときは、1か月ごとに④⑤の手続きを繰り返すことになります。
なお、手当を受けられる期間は、原則として離職の翌日から1年間です。
この期間を過ぎると、給付日数を残していてもそれ以上、手当を受けられません。
とにかく、早めの手続きが肝心なのです。
2-3:失業保険のもらえる額
【失業保険の計算方法】
①基本手当日額を計算する
離職票2の「賃金額の計」を上から6か月分足します。ただし、対象となるのは1ヶ月に11日以上働いた月のみです。
*離職票が手元にない場合、賃金には「基本給」にプラスして以下のものを含めてください。
・残業手当・営業手当
・通勤手当
・住宅手当
※退職金 や解雇予告手当、賞与(ボーナスなど) はここでの賃金に含まれません。
(例)月給30万円のAさん
→30万+30万+30万+30万+30万+30万=180万円
②賃金日額を出す
①で出した額を180日で割ります。これが賃金日額です。
(例)180万円÷180日=1万円
③1日にもらえる失業保険の額を出す
年齢と賃金日額を表にあてはめて、1日にもらえる失業保険の額を出します。
表中のA、Bは表の下に計算式を用意しています。
(例)賃金日額1万円、62歳のAさん
→表の「4,580円~10,460円」と「60歳以上65歳未満」が交差するところをみると「賃金日額×45パーセント」となっているので
1万円×0.45=4500円
Aさんは失業保険として1日4500円をもらえる
3章:会社都合と自己都合でこれだけ違う失業保険
3-1:3か月の給付制限期間
【図】自己都合と会社都合の受給までの時間差
先ほど説明した通り、失業保険の申請をしてから7日間は、失業保険を受け取ることができません。
これを「待期期間」と呼びます。
待期期間は、会社都合の場合でも、自己都合の場合でも、一律7日間です。
しかし、自己都合退職の場合には、これに加えて給付制限期間(3か月)という期間があります。
会社都合退職の場合の方が、失業保険をもらえるまでの期間が3か月も長いのです。
3-2:失業保険の受給期間
失業保険の基本手当の給付日数は、離職した理由や、年齢、雇用保険を被保険者であった期間などによって決まります。
ここで、失業保険の受給期間一覧を見てみましょう。
《受給期間一覧》
【特定受給者とは】
- 倒産などの理由
(1)会社が倒産した
(2)1か月に30人以上の離職or同じ事業主の元で雇用保険に入っている人のうち3分の1を超える人が離職した
(3)事業所の廃止
(4)事業所の移転により、通勤することが難しくなった
- 解雇などの理由
(1)解雇(自分が理由なものを除く。
(2)労働契約を結んだ時に明示された労働条件が、実際の労働条件と著しく異なる場合
(3)賃金未払いが以下のような場合
・連続2か月以上、賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった
・離職の直前6か月の間のいずれかに3か月あった
(4)従前の賃金の85%以下まで賃金カットされた
(5)離職の直前6か月間のうち、
[1]いずれか連続する3か月で45時間の残業
[2]いずれか1か月で100時間の残業
[3]いずれか連続する2か月以上の期間の残業を平均して1か月で80時間を超える残業が行われたため
(6)職種転換などに際し、会社が必要な配慮を行わなかった
(7)契約を更新して3年以上働いているときに、労働契約が更新されなかった場合
(8)期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(7)に該当する者を除く。)
(9)パワハラやセクハラを受けた
(10)退職勧奨により退職した
(11)会社のせいで行われた休業が、引き続き3か月以上となった
(12)事業所の業務が法令に違反した
就職困難者とは
・身体障碍者
・知的障碍者
・精神障碍者
・刑法等の規定により保護観察に付された人
・社会的事情により就職が著しく阻害されている人
のことを言います。
3-3:こんなに違う!もらえる金額の差
離職理由が会社都合の場合には、失業保険がもらえる期間が長くなりますので、トータルでもらえる金額も多くなります。ここでは一例を見てみましょう。
(例)Aさんのデータ
6か月間の給与合計:120万円
年齢:46歳
勤続年数:26年
Aさんの賃金日額は120万÷180日=6,666円となる
2-3を参照するとAさんは表中Aにあたるので、(-3×6,666円×6,666円+69,980×6,666円)÷70,300
=4739円
Aさんは1日当たり4739円をもらえる
*1-3の表
《自己都合の場合》
1日あたり4739円×150日間(勤続年数が20年を超えている場合)
=710,953円もらえる
《会社都合の場合》
1日あたり4739円×330日間
=1564,096円もらえる
賃金額、年齢、被保険者期間によって具体的な額は変わりますが、自己都合より会社都合の方がもらえる額が大きいことがわかります。
4章:自己都合を会社都合に変える方法
失業保険をもらうとき、離職理由が何であるかを最終的に決めるのはハローワークです。
《賃金カット》
賃金カットにより、今までの賃金の85%未満になってしまったため、離職した場合
■必要な証拠
・給与明細
・預金通帳
・上司との話し合いを録音したICレコーダー
賃金カットをされた場合には、カット前の賃金との差額を請求することが可能です。賃金カットをされた場合には、以下の記事も併せて確認しましょう。
→
《長時間残業》
離職の直前6か月のうち
・いずれか連続する3か月で45時間の残業
・いずれか1か月で100時間の残業
・いずれか連続する2か月以上の残業時間を平均して80時間以上の残業
をしたために離職した場合
■証拠
・タイムカード
・会社のパソコンの利用履歴
・業務日報
・運転日報
・メール・FAXの送信記録
・シフト表
長時間残業をした場合には、未払いの残業代が残っていることがあります。失業等給付に加えて、残業代も獲得しましょう。
《セクハラやパワハラ》
性的な言動を受け、会社で働きづらく感じて離職した(セクハラ)場合や、身体的・精神的な暴力、暴言を吐かれた(パワハラ)場合
■証拠
・セクハラ行為やパワハラ行為を録音したもの、メール
・病院の診断書
セクハラをされた場合には、こちらの記事も併せて読みましょう。
会社でセクハラされた!セクハラの判断基準と3つの相談先とは?
パワハラをされた場合にはこちらの記事も併せて読みましょう。
《解雇》
会社から一方的にクビにされた場合
■証拠
・解雇通知書
・就業規則
・上司とのやり取りを録音した音声データ
あなたのされた解雇は、不当なものではありませんでしたか?以下の記事を読み、不当解雇に立ち向かいましょう!
《期間の定めのある労働契約が更新されなかった》
期間の定めのある労働契約を結んでいたにもかかわらず
・3年以上継続雇用されていたのに更新されなかった
・契約締結の時には「更新します」と明示されたのに、実際には更新されなかった
場合
■証拠
・雇用契約書
・雇い止めの理由についての証明書
・勤続年数や更新回数がわかる書類
あなたの雇止めは本当に適法でしょうか?以下の記事で確認してみましょう。
→リンク「雇止め とは」
4-1:失業保険の認定に不服がある場合
失業保険の認定が行われ、「自己都合」とされてしまった場合には、審査請求をしましょう。
■誰に申し立てるの?
あなたが住んでいる都道府県の雇用保険審査官(都道府県労働局)
→連絡先については、労働局のホームページ、または「雇用保険審査官○○県」などのキーワードで検索しましょう。また、ハローワークを通じて審査請求をすることもできるので、審査請求をしたい場合はハローワークの職員に尋ねてみてください。
■期間
処分のあったことを知った日の翌日から3か月以内
■結果はどうなるの?
審査請求が終わると、「請求却下」(あなたの請求は認められません)または「処分の取り消し」(あなたの請求が認められました)のどちらかが決定され、結果が郵送されます。
■裁判をする場合
まずは審査請求をしましょう。審査請求に対する決定が出て、それでも不服がある場合にはじめて裁判になります。
まとめ:失業保険について
失業保険の正しい知識は身についたでしょうか?最後に簡単におさらいしてみましょう。
・失業保険とは雇用保険の「基本手当(いわゆる失業等給付)」のこと
・失業保険は、1日当たり、離職日直前の6カ月で1日にもらっていた給与の50~80%をもらえる
・失業保険はハローワークで申請することができる
・失業保険の受給期間は、離職した理由や、年齢、雇用保険を被保険者であった期間などによって決まる
・離職理由は自己都合より会社都合の方が、より長く・多く失業保険をもらえる
・いったん自己都合と決定されたが、やはり会社都合にしてほしいときは審査請求をする
失業保険の手続きは簡単にすることができます。早速ハローワークに行って、申請をしてきましょう!
*参考サイト
賃金カットとは?5分でわかる!賃金カットへの2つの対処法と失業保険の話
【不当解雇は違法?】4つの相談先と解決までの流れを弁護士が解説