
あなたは、
「これってセクハラかも!どうしたら止めさせられるの!?」
「セクハラが嫌だから会社に行きたくない!どこに相談すればいいんだろう?」
「セクハラしてくる相手を許せない!お金って請求できるの?」
そんな悩みをお持ちではありませんか?
相手は、あなたがセクハラを誰にも言わすに黙っているだろうと思って、以下のように考えているかもしれません。
こいつはちょっとくらい下ネタを言ったりボディタッチしたりしても、笑って流してくれる。これからはもうちょっとエスカレートさせても大丈夫そうだな……
○○ちゃん、今日も可愛いね〜!今日は仕事何時で終わるのかな?終わったら二人で飲みに行こうよ。
は、はい。分かりました…
こんなセクハラクソ親父と飲みになんか行きたくないけど、断ったら会社で居場所がなくなってしまうかも…
あなたが行動を起こさない限り、相手はあなたへの行為を止めることはありません。
しかし、どんな理由があっても、あなたが「セクハラ」だと感じるような行為を受けているとしたら、それは不法行為とみなされる可能性が高いです。そのため、本人や会社に対して損害賠償請求をして、お金を払わせることができる可能性があります。
そこで今回は、自分がされているセクハラが「不法行為」であることが分かる判断基準について解説し、それを相談することができる3つの相談先についてお伝えします。
また、セクハラを止めさせて相手に慰謝料を請求したいという人に向けて、具体的な方法についてご紹介します。
しっかり最後まで読んで、セクハラをしてくる相手に仕返しする方法を学んでください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
会社でセクハラを受けている場合は、下記のポイントを押さえた上で行動してください。
■不法行為である可能性が高いと判断できる5種類のセクハラ
- 職場で性的な言動を受ける。
- 職場で体を触れたり、性的な画像や動画が見えるようにされていたりする。
- しつこく恋愛関係を求められる。
- 飲み会、宴会で性的な言動、行為を受けた。
- 上下関係・職権を悪用して性的な関係を求められた。
■セクハラの相談先
- 社内窓口・人事課
- 行政の窓口(都道府県労働局雇用環境・均等部)
- セクハラ専門のNPO
■セクハラを止めさせ、お金を請求するための方法
- 加害者に対して自分で内容証明郵便を送る。
- 弁護士に依頼して損害賠償請求をする。
目次
1章:あなたが受けているのはセクハラ?判断するための基準とチェックリスト
それではさっそく、セクハラについて簡単に説明し、自分でチェックできる「セクハラセルフチェック」を紹介します。それから、会社でセクハラと判断される行為について解説します。
1-1:セクハラの「定義」と2つの「タイプ」
【セクハラの定義】
セクハラについて、法律では以下のように定義されています。
職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること
(男女雇用機会均等法)
あなたが性的な言動などを受け、それを拒否することで不利益を被っていたり、強いストレスを感じてあなたの働く意欲が著しく低下していたりするのであれば、それはセクハラだと定義されています。
セクハラとは、あなたが不快に感じる性的な言動などを受け、それに拒否・抵抗するとあなたに不利益が発生する、もしくはあなたが働きにくくなるような行為のことです。
【セクハラの2つのタイプ】
さらに、厚生労働省は、以下のようにセクハラを2つのタイプに分類しています。
【対価型セクハラ】
職場の地位を利用して性的な関係を強要する。さらに拒否した相手には「減給」「降格」などの不利益を負わせるもの。
【環境型セクハラ】
性的な関係を直接的に要求することはなくても、職場内で性的な発言・行為をして、働く人たちを不快にさせ、職場の環境を損なうもの。
あなたが受けているのが「対価型セクハラ」であった場合、それは明らかにセクハラであり、不法行為とみなされる可能性が高いと判断できます。環境型セクハラは判断が難しいですが、あなたが不快に感じているのであれば、それはセクハラであり、なんらかの対処方法をとらなければなりません。
とは言っても、これだけで判断することは難しいかもしれません。そこで、これから紹介する「セクハラ・セルフチェック」で自己判断してみてください。
1-2:セクハラ・チェックリストで自己診断しよう
【性的に不快にさせる発言】
- 自分の身体的特徴を話題にされた、スリーサイズを聞かれた。
- 職場で性的な話題がよく出される。
- 体調の悪い日に「生理か」と言われた。
- 服装について性的な話題にされた。
- 性的な冗談を言われる。
- 私生活上の秘密等を暴露されたり、話題にされたりした。
【性的に不快にさせる行動】
- 身体をじっと見られる。
- スキンシップと言いつつ体に触られる。
- 雑誌のヌード写真を見せられた。
【恋愛関係を求める行為】
- 食事やデートにしつこく誘われた。
- 特に用事もないのにしつこくメールを送られる。
【飲み会・宴会での行為】
- 宴会で男性社員の裸踊りを見せられた。
- お酒のお酌やカラオケでのデュエットにしつこく誘われる。
【上下関係・職権を悪用した行為】
- 性的な関係を要求され、拒否したら不利益を被った。
- 人事考課を条件に性的な関係を求められた。
いかがでしたか?1つでも当てはまり、あなたが不快に感じているとしたら、それはセクハラであり、不法行為である可能性が高いです。
セクハラを我慢するだけでは、相手は行為をさらにエスカレートしていく可能性があります。そのため、すぐになんらかの行動を起こすことをおすすめします。行動方法については、後ほど詳しく解説します。
それでは、上記のチェックリストの内容について、より詳しく解説します。
1-3:会社でセクハラと判断される行為
セクハラとみなされる行為には、これから紹介する5つの種類のものがあります。
【性的に不快にさせる発言】
たとえば、あなたは以下のようなことを言われたことがありませんか?
「今日はスカートが短いね」
「今日も可愛いね」
「君は可愛くないな」
「愛嬌がないな」
「胸が大きいね」
こんなことを言われていたらセクハラです。また、私生活について職場で噂を流されたりすることもセクハラです。
契約社員に対して「エイズ検査を受けた方がいいんじゃない」「処女じゃないでしょう」などの発言がされたことがセクハラとみなされ、慰謝料請求が認められたケースがあります。
(東京セクハラ(T菓子)事件・東京高判平成20年9月10日労判969号13頁)
こうした言動については、本人が自覚していない可能性もあります。職場で笑いを取るため、コミュニケーションを取るために無意識に行っている言動かもしれませんが、あなたがそれを不快に思っているのであれば、それはセクハラであり、なんらかの行動を起こして相手に止めさせることをおすすめします。
【性的に不快にさせる行動】
たとえば、
- 体を触られる。
- 職場の目に見える所に性的な写真が置かれている。
- 目に見える所で性的な動画を閲覧している。
などの行為もセクハラとみなされ、不法行為と認められれば慰謝料請求ができる可能性があります。
女性社員数名に対して、手を握ったり、肩を抱いたり、自分の膝に座らせるなどの行為をしたことが、不法行為とみなされたケースがあります。
(東京地裁平成21年4月24日・労判987号48頁)
【恋愛関係を求める行為】
しつこく恋愛関係を求める行為もセクハラです。性的な言動や要求が無くても、しつこく誘われ、職場の立場や上下関係から断れない状況になることがあります。こうした場合も、証拠があればセクハラとして訴えることが可能です。
【飲み会・宴会での行為】
お酒が入っていたとしても、それを理由に性的な行為をすることは許されません。
職場の忘年会において、女性に対して体に抱きついたり、抱きついたまま撮影を強要したりした行為がセクハラと認められ、損害賠償請求されたケースがあります。
(広島地裁2007年3月13日判決)
このように、飲み会の場であってもセクハラとみなすことができ、会社に対して責任を追及できる可能性があります。
【上下関係・職権を悪用した行為】
上下関係や職権を悪用して、性的な行為を強要することはもちろんセクハラであり、損害賠償請求できる可能性が高いです。
会社の専務取締役の男性が、部下の女性に対してタクシー内でキスや性的な言動を行ったことから、男性や会社に対して損害賠償請求が認められたケースがあります。
(東京地裁2003年6月6日判決)
このケースでは、男性の行為が女性の「性的決定権の人格権」を侵害するもので、地位を利用して行われたものであるため、会社の「使用者責任」も認められました。地位を利用したセクハラはとても悪質であり、セクハラされる側のストレスも大きいと思われます。こうした行為に思い当たることがある場合は、すぐに訴えるための行動を始めることをおすすめします。
2章:セクハラを受けているときにとるべき行動方法
あなたは、自分が受けている行為がセクハラであるかとうか判断することができたでしょうか。
「自分が受けている行為がセクハラで、それが不法行為である可能性が高いことも分かったけれど、それをどうやって解決したらいいの?」
そんな疑問をお持ちだと思いますので、これからその解決策についてご紹介します。
会社を辞めず、事を荒立てず、ただセクハラを止めさせることができたらいい、という場合は、これから紹介する3つの相談先へ、まずは相談してみてください。相談先で適切な解決方法を教えてもらえる可能性があります。
また、とにかく相手にお金を請求したい、仕返しをしたいという場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
それでは、詳しく解説します。
2-1:セクハラを相談できる3つの相談先
セクハラを相談することができる相談先には、以下の3つがあります。
【①社内窓口】
大きな企業ならば、社内にセクハラの相談窓口があることが多いです。セクハラに悩んだときは、まずは社内窓口に相談するのが第一です。相談窓口がない場合も、相談できそうであれば人事の担当者に相談することをおすすめします。
会社には、セクハラを予防することや、もし起こってしまったときに適切に対処し、労働者が働きやすい環境を作ることが義務付けられています。そのため、会社に対して職場環境を変えるように要求することは、図々しいことではありません。常識的な会社なら、それでなんらかの対処をとってくれるはずです。
しかし、社内では相談しにくい、取り合ってもらえないということもあるかもしれません。そんな場合は、他の相談先に相談する必要があります。
【②行政の窓口】
社内で相談することが難しい場合は、行政の相談窓口に相談することができます。全国の都道府県には「都道府県労働局雇用環境・均等部」が設置されています。ここでは専門の相談員が、セクハラの問題解決をサポートしてくれますので、まずは電話で連絡を取り、悩みを伝え、これから取るべき行動の方法について教えてもらいましょう。
セクハラが発生した場合、行政は会社に対して職場環境を改善するように「是正勧告」を行うことが出来ます。会社が是正勧告に応じない場合は、「会社名の公表」の対象になるため、行政への相談で会社の行動を促すことが出来ます。
平成20年度の都道府県労働局へのセクハラに関する相談件数は「約2.5万件」だったのに対して、同年度に行われた行政からの是正勧告は、「約1.4万件」と、相談の半分以上は是正勧告の対象にされているため、行政の窓口への相談は、かなり有効です。
【③セクハラの相談ができるNPO】
セクハラのトラブルの問題解決を専門にしているNPOに相談する選択肢もあります。多くのNPOでは、無料での電話・メール・面談での相談を受け付けており、有料で問題の解決を依頼することもできるようです。
インターネットで調べるとたくさん出てきますので、気になる場合は調べてみてください。
セクハラに関して、職場環境を改善してほしいという場合は、まずは「社内窓口に相談」することを検討しましょう。それができない場合などは「行政の窓口に相談」する。行政が動いてくれなかった場合に、NPOに相談することを検討するといいでしょう。
ただし、相手に確実に仕返ししたい、お金を請求したいという場合は、これから紹介する2つの方法のどちらかで行動を起こすことをおすすめします。
2-2:セクハラを止めさせ、お金を請求するためにやるべきこと
「今すぐセクハラを止めさせたい」
「セクハラしてきていた人に損害賠償を請求してお金をもらいたい」
そんな場合は、
- 自分で内容証明郵便を送る
- 弁護士に依頼して損害賠償請求させる
という2つの選択肢があります。より確実に、円滑に解決したい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
それでは、これから詳しく解説します。
2-2-1:自分で相手に「内容証明」を送って損害賠償請求する
セクハラの場合は、自分で相手の家に「内容証明郵便」を送ることで、トラブルが個人で解決できることもあります。
(注)「内容証明郵便」とは、誰が・いつ・誰宛に・どんな内容の郵便を送ったのかということを、郵便局が証明してくれる郵便のこと。
内容証明郵便を送ると、相手が「そんなのうちには来ていない」としらを切っても、それがウソであることが証明できます。
内容証明郵便では、
- どんな行為を受けたのか
- いつ受けたのか
- それに対していくらの損害賠償を請求したいのか
ということについて、具体的に記載する必要があります。
相手はセクハラをしていることが、家族や会社にバレたくないと考えるのが普通です。内容証明を送ることがセクハラの抑止力になり、セクハラが行われていたことの証拠にもなります。加害者は訴訟まで持ち込みたくないと考えて、損害賠償請求に応じる可能性があります。
しかし、自分だけで相手と戦うことになるのは不安・怖い、という人もいるかもしれません。そこで、おすすめなのは、問題解決を弁護士に依頼し、自分の代わりに、相手との間に弁護士に入ってもらうことです。
2-2-2:弁護士に依頼して民事裁判でお金を払わせる方法
弁護士に依頼してできる方法は、「損害賠償請求」です。
「交渉」「民事裁判」や「労働審判」という手続きを使って、加害者に対してお金を請求することができます。
セクハラによってあなたの人格権が侵害されたとみなされる場合は、損害賠償請求することができます。この場合、弁護士が加害者との間に入って「交渉」を行い、和解に持ち込みます。セクハラの場合は、ほとんどが和解で解決します。ただし、交渉で和解に持ち込めないこともあり、そのような場合に、「訴訟」に移行せざるを得ません。
【セクハラが認められて損害賠償請求できた例】
①セクハラによって受けた精神的苦痛に対する慰謝料。
【事例】K化粧品販売事件(大分地判平成25年2月20日労経速2181号3頁)
研修会開催日の終日にわたって全身パーティーコスチュームを着用させて研修に参加させた事件。慰謝料20万円、弁護士費用2万円を認容。
②休業・退職を余儀なくされた場合は、働いていたら得られたはずの給料の一部(逸失利益)。
セクハラを原因として休職・退職し、働いていたら得られたはずの賃金を請求できる場合は、最大で数百万円程度までもらえる可能性もあります。
【事例】東京セクハラ(M商事)事件(東京地判平成11年3月12日労判760号23頁)
逸失利益が認められ、6ヶ月分の賃金と2ヶ月分の賞与(月給3ヶ月分)相当額が払われた。
【事例】青森セクハラ(バス運送業)事件(青森地判平成16年12月24日労判889号19頁)
被害者の再就職の必要性と困難さから、1年分の賃金相当額が支払われた。
③セクハラによって精神疾患(PTSDなど)になってしまった場合の治療費。
職場での地位や立場を利用して脅し、被害者と性的な関係を持ったり、被害者が妊娠し、中絶を強要したなどの特に悪質な場合は、最大で1000万円程度の損害賠償請求が認められるケースがあります。
具体的に、どのような流れで会社に損害賠償請求できるのかについては、以下の記事を参考にしてください。
弁護士が解説!ブラック企業を訴える方法と弁護士選びの5つの注意点
【コラム】会社に対してお金を請求することができることもある
会社にはセクハラの予防、もし起きたときに適切に対処することなど、労働者が働きやすい環境を作る義務があります。そのため、会社がセクハラが起きたことを知っていながら、適切な対処を怠っていた場合(就業環境配慮義務の怠り)は、会社に対してもお金を請求できることがあります。
また、会社がセクハラを放置していた場合などは、会社の代表個人に責任が発生するため、代表個人に対して損害賠償請求できることもあります。
3章:まずやらなければならないのは有効な証拠を集めること
弁護士に依頼する場合も、自分で請求したい場合も、加害者に損害賠償請求するためには、セクハラを立証できる証拠を集める必要があります。セクハラを受けている時は精神的に辛いかもしれませんが、相手にお金を請求するために、これから紹介する「証拠になるもの」をしっかり集めましょう。
3-1:セクハラの損害賠償請求で必要な証拠は「録音・動画・メール・診断書」
【音声の録音】
本来なら、相手に無断で音声を録音してはいけません。しかし、セクハラの被害を受けている場合などのやむを得ない場合は、性的な言動や体の関係を求める相手の声などを録音しておきましょう。
【動画】
同じく、加害者が性的な発言や行動をしているころを撮影することが可能なら、証拠として有効です。
【保存した電子メール】
セクハラの証拠になるようなメールがあれば、プリントアウトするかデータをダウンロードして保存しておきましょう。
【診断書】
医療機関を受診した場合は、診断書が証拠になります。
3-2:セクハラの損害賠償請求の時効は3年
セクハラの損害賠償請求には3年間の時効があります。3年より以前のセクハラに対して損害賠償請求はできなくなりますので、できるだけ早いうちに行動をはじめましょう。
まとめ:会社でのセクハラ
いかがだったでしょうか?
最後に今回の内容をもう一度振り返ります。
まず、セクハラとは、職場の地位を利用して性的な関係を要求し、それを拒否することで被害者が不利益を被ったり、働く意欲を失ってしまう行為のことです。
【不法行為である可能性が高いと判断できる5種類のセクハラ】
- 職場で性的な言動を受ける。
- 職場で体を触れたり、性的な画像や動画が見えるようにされていたりする。
- しつこく恋愛関係を求められる。
- 飲み会、宴会で性的な言動、行為を受けた。
- 上下関係・職権を悪用して性的な関係を求められた。
これらの行為は不法行為である可能性が高く、損害賠償請求できる可能性があります。
【セクハラの相談先】
- 社内窓口・人事課
- 行政の窓口(都道府県労働局雇用環境・均等部)
- セクハラ専門のNPO
【セクハラを止めさせ、お金を請求するための方法】
- 加害者に対して自分で内容証明郵便を送る。
- 弁護士に依頼して損害賠償請求をする。
【セクハラで損害賠償請求する場合に集めるべき証拠】
- 言動を録音した音声データ
- 言動・行為を撮影した動画データ
- 印刷・ダウンロードしたメールのデータ
- セクハラを原因に医療機関を受診した場合の診断書
セクハラで損害賠償請求できるのは3年までです。それより前のセクハラについて損害賠償請求はできなくなりますので、できるだけ早めに行動をはじめることをおすすめします。