- 更新日:2024.08.20
- #モラハラ職場
職場で起きるモラハラとは?5つの事例と3つの対処方法を解説
この記事を読んで理解できること
- 職場のモラハラの基礎知識とチェックリスト
- 職場モラハラの4つの特徴と具体例
- 職場モラハラがもたらすリスク
- 職場モラハラへの対処法
あなたは、
「職場で受けた行為がモラハラかどうか判断したい」
「職場のモラハラの特徴や具体例が知りたい」
「職場のモラハラの対処法が知りたい」
などとお考えではないですか?
職場モラハラとは、職場内で繰り返される言葉や態度によって、人の人格や尊厳を傷つける行為のことで、分かりやすく言うと「職場の上司や同僚からのいじめ、嫌がらせ」になります。
モラハラは決して許されてはならないものですが、一方で受けている当事者が、
「自分が悪いのかも」
「このくらい我慢すべきなのかな」
と思い我慢し続けるケースも見受けられます。
もしあなたが、職場でモラハラの疑いのある行為を受けている場合は、この記事のチェックリストや具体例を参考にしてモラハラかどうか判断してください。
そしてモラハラにあたる場合は、そのまま悩んだり我慢せずに、モラハラへの対処法をしっかり理解し実践することが重要です。
そこでこの記事では、1章では職場のモラハラの基礎知識とチェックリストを、2章では職場のモラハラの4つの特徴を解説します。
さらに、3章では職場のモラハラがもたらすリスクを、4章では職場のモラハラへの対処法について解説します。
職場のモラハラの特徴やリスク、対処法をしっかり理解して、現状を改善するための行動を始めてください。
1章:職場のモラハラの基礎知識とチェックリスト
まずは、職場のモラハラの基礎知識と、職場における行為がモラハラにあたるか判断するためのチェックリストについて解説します。
1-1:職場のモラハラの基礎知識
そもそも、モラハラとは「モラルハラスメント」の略で、倫理や道徳に反して相手の人格や尊厳を傷つけ、精神的な苦痛を与える行為をいいます。
分かりやすく言うと、言葉や態度によって、相手に精神的な苦痛を与えるいじめや嫌がらせがモラハラです。
モラハラは、恋人や夫婦間で行われることも多いですが、職場で行われることも多いのです。
【モラハラとパワハラの違い】
パワハラは、職場での立場や権力など強い力関係を利用して、精神的・身体的な攻撃を行うことです。
これに対して、モラハラとはあくまで上下関係や力関係の強さに関係なく、精神的な攻撃を与えることです。
またモラハラは、加害者が悪意を持っておらず、相手に精神的苦痛を与えることを自覚していない場合もあるため表面化しづらいという特徴もあります。
1-2:職場モラハラのチェックリスト
職場モラハラのチェックリストは、次のようになります。
もし1つでも当てはまるものがあれば、あなたが受けている行為は職場モラハラである可能性があります。
【職場モラハラのチェックリスト】
□業務上必要な範囲を超えた、暴言やいやみ、侮辱、陰口がある
□職場の飲み会にいつも誘われなかったり、挨拶をしても無視され、人間関係から切り離されている
□私生活のことに立ち入られ、周囲の人にも言いふらされる
□仕事に必要なものや情報を与えてもらえなかったり、無理な仕事を押し付けられ、業務上大きな障害になっている
□加害者の行為によって、職場環境が悪化している
これらに該当する行為によって、あなた自身が精神的なダメージを感じている場合は、職場モラハラを受けていると言えます。
これから、職場モラハラの特徴とありがちな具体例を紹介します。
先に職場モラハラの対処法が知りたい場合は、4章をお読みください。
2章:職場モラハラの4つの特徴と具体例
職場モラハラの特徴として、次の4つがあげられます。
- 精神的な攻撃(暴言、いやみ、侮辱、陰口など)
- 人間関係からの切り離し(無視、誘わない、連絡しないなど)
- プライベートの持ち込み(私生活に立ち入る、暴くなど)
- 仕事の妨害(仕事を奪う、押しつける、必要な情報を与えないなど)
それぞれ解説します。
2-1:精神的な攻撃(暴言、いやみ、侮辱、陰口など)
「お前は本当に使えないやつだな。何で同じ給料もらってるんだ。」
- バカ、クズなどの暴言、侮辱行為
- 業務上必要な範囲を超えた、精神的苦痛を与える発言
こういったことを言われている場合、それは職場モラハラである可能性が高いです。
こういった行為は、公然と行われた場合は「侮辱罪」として刑事罰の対象になったり、加害者に損害賠償請求ができる可能性もあります。
加害者は、あなたを攻撃し責め立てることで精神的に優位に立ち、自分の方が優れた存在であるとアピールするために、こうした精神攻撃を行うことが多いようです。
しかし、こうした行為を受け続けていると「悪いのは自分」「我慢していれば良い」と一種の洗脳状態になり、気付かないうちに大きな精神的なストレスを抱えてしまっているケースもあります。
そのままの状況を放置すれば「精神疾患」「自殺」など取り返しの付かないことにも結びつきかねません。
そのため、もし思い当たることがあれば、4章で紹介する対処法を実践してください。
【事例】暴言でうつ病になったケース
実際にあった例として、「マネージャー失格などの言動」「他の従業員の面前での被害者の名誉に関わる不必要な質問」「班の分離」などから、被害者がストレスを抱えうつ病になったケースがありました。
このケースでは、慰謝料300万円と弁護士費用30万円が認められました。
(富国生命保険ほか事件・鳥取地米子支判平21.10.21労判996号28頁)
2-2:人間関係からの切り離し(無視、誘わない、連絡しないなど)
職場で次のような行為が続く場合、それは職場モラハラにあたる可能性があります。
- 挨拶や発言が日常的に無視されている
- 社員旅行や社内イベント、飲み会にまったく呼ばれない
- 業務上必要な連絡をしてくれない
加害者はこうした行為をすることで、自分が職場で影響力を持った人間であると主張しようとしていることが多いようです。
このように無視、誘わないといったことが続けば、被害者は「必要とされていない」と感じ、精神的な苦痛になっていきます。
とは言え、職場での無視や誘われないといったことを、第三者に証明することは難しいです。
上司からも「気のせいじゃないのか」「自分から積極的に話しかけてみなさい」などと言われ、対処に困ってしまうこともあるのではないかと思います。
そのため、この場合は「労働局」「弁護士」といった外部の専門家の力を借りることをおすすめします。
2-3:プライベートの持ち込み(私生活に立ち入る、暴くなど)
職場で意味もなくプライベートのことを持ち出され、それに対して周囲に暴かれる、侮辱されるといったことがある場合は職場モラハラといえます。
しかし、加害者本人は無自覚で、あなたが精神的な苦痛を受けていると思っていないことも多いようです。
加害者は、あなたのプライベートにまで立ち入ることで、あなたを都合良くコントロールしようという意図を持っていることが多いようです。
しかも、あなた個人のプライベートの問題であるため、理解する姿勢のない上司に相談しても「自分で嫌って言ったら良いだろう」「それの何が嫌なんだ」などと言われ、相手にされないこともあります。
そのため、こうした場合は「社内の相談窓口」や「弁護士」に相談するといった対処法が必要です。
2-4:仕事の妨害(仕事を奪う、押しつける、必要な情報を与えないなど)
職場で次のような行為が続く場合、それは職場モラハラにあたる可能性があります。
- とてもできない量の仕事を押しつけられる
- 仕事を奪われる
- 仕事をするために必要なものや情報を与えられない
- 仕事を直接妨害される
こうした仕事に関するモラハラは、あなたの業務に直接影響するため、仕事がスムーズに進まず社内の評価にも繋がるため特に追い詰められやすいです。
また加害者は、あなたが困っているのを見て憂さ晴らしをしようとしている場合もあります。
【事例】扇風機を当てられ続けたケース
実際に過去の判例には、嫌がらせ目的で被害者に冬場も扇風機の風を当て続け、精神的苦痛を与えたことや、別の被害者に殴打や中傷をしたことから、合計3名が損害賠償請求をしたケースがあります。
このケースでは、殴打と侮辱を受けた被害者は慰謝料10万円、扇風機の風を当てられ続けた被害者は慰謝料40万円、扇風機の風を当てられ続けた上、過重な叱責を受けて通院・休職した被害者は慰謝料60万円および休業損害+治療費が認められました。
(日本ファンド事件・東京地判平22.7.27労判1016号35頁)
3章:職場モラハラがもたらすリスク
先に解説したように、個人に対する暴言等のモラハラ行為は、「侮辱罪」や「名誉棄損罪」として加害者に損害賠償請求ができる可能性があります。
しかしその他にも、職場モラハラは、会社や職場にとっても大きなリスクをもたらす可能性があります。
主なリスクとしては、次の3つがあげられます。
- 会社が責任を問われる
- 離職率が高まる
- 職場のモチベーションが下がる
それぞれ解説していきます。
3-1:会社が責任を問われる
職場のモラハラについて、労働基準法等の法律で直接規定されたルールはありません。
しかし、会社には職場でのモラハラ、いじめ、パワハラ等を防止する義務がありますので、職場でのモラハラを放置している場合、会社が責任を問われるリスクがあります。
①職場環境配慮義務
会社には、従業員が安心して働ける環境をつくる義務がある、という「職場環境配慮義務」があります。
あなたがモラハラを受けているのに、会社が何の対策も取っていなければ、会社は職場環境配慮義務を怠っていることになり、会社に責任が問われることがあります。
②職場いじめ・パワハラ防止義務
会社は、職場でのモラハラ・いじめを防止する義務があり「モラハラ・いじめの調査」「防止策」「被害者への謝罪」「加害者への適切な措置」を行うべきとされています。
(川崎市水道局(いじめ自殺)事件・横浜地川崎支判平14.6.27労判833号61頁)
モラハラを放置していると、会社に対する損害賠償請求が認められることもあります。
3-2:職場のモチベーションが下がる
職場のモラハラは、モラハラ被害を受けた社員だけでなく、社内全体の職場環境も悪化するリスクがあります。
なぜなら、職場のモラハラは、周囲を巻き込んで自分の意見が正しいものだと主張し、精神的に優位に立つために行われることがあるからです。
例えば、不必要なほど大きな声で叱責したり、人前で侮辱する行為が続く場合、当然その職場の雰囲気は悪化するため社員のモチベーションを下げることになります。
さらに、こうしたモラハラが続くと「またはじまった」「いつものことだ」と悪い方向に日常化させてしまい、エスカレートするモラハラを誰も止められなくなってしまいます。
3-3:離職率が高まり人材確保が難しくなる
職場のモラハラが続くと、会社の離職率が高まり、入社した社員も働きにくい職場として定着率が下がる結果に繋がるリスクがあります。
ここまで解説したように、職場のモラハラが常態化してしまった場合、モラハラトラブルによる社員の休職や退職が増えることになります。
こうした情報は社外にも流れるケースが多いため、就職希望者が減り人材確保が難しくなる可能性があります。
さらに、今後もモラハラに対する関心は高まり、会社にもモラハラの防止や早期解決に向けた対応が求められるため、適切な対策を講じ社内にも周知し啓発する必要があります。
4章:職場モラハラへの対処法
職場でモラハラを受けている現状を変えるためには、以下の流れで対処を進めることが大事です。
それでは、順番に解説します。
4-1:職場モラハラの証拠を集める
まずは、職場でモラハラを受けていることを、第三者に証明できる証拠を集める必要があります。
なぜなら、証拠がなければ、いくらあなたが悲惨な目にあっていても、それを第三者に理解してもらうことが難しいからです。
モラハラの証拠を集めることができれば、第三者の力を借りることも容易になり、結果として現状を変えられる可能性が高まります。
証拠には、
- モラハラを受けていることが分かる証拠
- 被害が発生していることが分かる証拠
の2点あることが望ましいです。
①モラハラを受けていることが分かる証拠
モラハラを受けていることが分かる証拠としては、次のものがあげられます。
- 暴言、侮辱等の発言、電話の録音
- モラハラが分かる画像、動画
- メールやLINEの文面を印刷したもの
- 継続的かつ詳細に記録したメモ
これらをできるだけ多く残しておくことが、現状の解決に繋がります。
また、録音や録画、メールの文面等を残しておくだけでなく、それが「誰から」「いつ」「どこで」「どのように」行われたモラハラなのかが分かるように、詳細に記録したメモがあると良いです。
これらの証拠があれば、あなたが受けているモラハラや、相手の態度、精神状態がわかり、どのような精神的な攻撃を受けているのかが明らかになるからです。
②被害が発生していることが分かる証拠
モラハラで精神的なストレスを抱えて医療機関を受診した場合、
- カルテを取り寄せる
- 診断書をもらう
などによって、実際に被害が発生していることが証明できるようにしておきましょう。
ただし、診断書だけでは、あなたが受けている精神的なダメージの原因が、職場でのモラハラにあるのかどうか分かりません。
そのため、①②の証拠を合わせて残しておくことがポイントです。
4-2:相談する
証拠を集めたら、次にしかるべき窓口や公的機関に相談します。
相談先としては、次の3つがあげられます。
- 社内の相談窓口
- 労働局
- 労働問題に強い弁護士
順番に解説します。
4-2-1:社内の相談窓口や公的機関
ある程度の規模の会社なら、社内に
- ハラスメント相談窓口
- 社内カウンセラーの相談窓口
などがあると思います。
そうした社内の相談窓口があるなら、まずはそこに証拠を持って相談に行くことをおすすめします。
相談窓口に相談することで、これから社内でどのような対策を取ることができるか、人事担当者や上司も交えて、解決に向けて行動してもらえる可能性があります。
しかし、
「社内には怖くて相談できない」
「社内にバレたら怖い」
「会社にそんな窓口がない」
という場合は、次にあげる公的機関の窓口で相談することができます。
【みんなの人権110番】
法務省が設置した常設相談窓口で、モラハラなど様々な人権問題の相談を受け付けています。
みんなの人権110番: 0570-003-110
受付時間:平日午前8時30分から午後5時15分まで
電話は、最寄りの法務局・地方法務局につながり、相談は、法務局職員又は人権擁護委員が対応します。
4-2-2:労働局
労働局とは、労働問題の相談、解決のための行政機関で、各都道府県に存在し、労働者なら誰でも無料で相談することができます。
労働基準監督署が、労働基準法上の違法行為に関する監督、指導を行うのに対し、労働局の場合は、労働基準法と関係がない問題についても相談にのってくれます。
したがって、モラハラの相談にものってもらうことができるのです。
ただし、労働局は、強制的に会社を調査したり、加害者を直接監督・指導することはしてくれません。
労働局にお願いできるのは、
- 具体的なアドバイスをくれる
- 会社と被害者の間に入って「あっせん」という和解の場を設ける
ということだけです。
そのため、相談に行っても確実に解決してもらえるとは限りません。
また、職場のトラブルに関する相談は、厚生労働省の「総合労働相談コーナー」でも受け付けています。
各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などの379か所に設置されています。
職場のモラハラを確実に解決したいという場合は、次の方法をおすすめします。
4-2-3:労働問題に強い弁護士
より確実にモラハラを解決したい場合は、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
労働問題に強い弁護士の場合、
- 解決のための豊富なノウハウを持っている
- 確実に対処してくれる
- 損害賠償請求ができる可能性がある
というメリットがあります。
ポイントは、「労働問題に強い」弁護士ということです。
なぜなら、弁護士にも得意分野があり、弁護士によっては労働問題が苦手で、実績やノウハウが少ないことも多いからです。
労働問題に強い弁護士の選び方や相談の流れについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【保存版】手間、時間、お金をかけずに労働問題を解決するための全知識
4-3:加害者を訴える
さらに、
- 加害者をどうしても許せない
- モラハラのせいで休業した、退職した
- モラハラで精神疾患を発症した
という場合は、加害者を訴えて損害賠償請求することも可能です。
なぜなら、2章で解説したようにモラハラは「侮辱罪」といった犯罪になり得る行為だからです。
したがって、加害者のモラハラによってあなたが明らかに被害を受けており、それを証明できる場合は、加害者を訴えられる可能性があるのです。
まずは一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
最後に今回のポイントをまとめます。
【職場モラハラとは】
職場内で、言葉や態度によって相手の人格、尊厳を傷つけ、精神的な苦痛を与える行為
【職場モラハラのチェックリスト】
□業務上必要な範囲を超えた、暴言やいやみ、侮辱、陰口がある
□職場の飲み会にいつも誘われなかったり、挨拶をしても無視され、人間関係から切り離されている
□私生活のことに立ち入られ、周囲の人にも言いふらされる
□仕事に必要なものや情報を与えてもらえなかったり、無理な仕事を押し付けられ、業務上大きな障害になっている
□加害者の行為によって、職場環境が悪化している
【職場モラハラの証拠】
- 暴言、侮辱等の発言、電話の録音
- モラハラが分かる画像、動画
- メールやLINEの文面を印刷したもの
- 継続的かつ詳細に記録したメモ
- 診断書
職場のモラハラの特徴やリスク、対処法をしっかり理解して、現状を改善するための行動を始めてください。