【不当解雇は違法?】4つの相談先と解決までの流れを弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- 不当解雇とはどんなもの?
- 不当解雇の相談窓口はココ!
- どんなことを相談するの?
- 賠償金が取れたケース・取れなかったケース
会社から突然の解雇通告…驚くとともに、「これからどうしよう」と不安にもなります。
・何年も働いてきた派遣先をいきなり切られた
・産休を取りたいと言ったら解雇された
・上司とそりが合わず「能力の欠如」を理由に解雇された
こういった解雇をする企業は、ブラック企業といっても過言ではないのです。
このように一方的に解雇することは、すべて違法です。
このような違法な解雇のことを「不当解雇」と呼びます。
では、あなたが不当解雇をされてしまったら、どこに相談をすればよいのでしょうか。
この記事では
. どのような解雇が不当解雇にあたるか
・不当解雇で相談すべき窓口とは
・もう迷わない!スムーズに相談するための相談内容一覧
・賠償金がほしい…実際に取れたケース・取れなかったケース
についてご説明していきます。
不当解雇にあたれば、会社からお金をもらうこともできますので、「自分の解雇は不当解雇かも…」と思ったら、相談に行きましょう!
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
不当解雇を相談したい場合は、下記のポイントを押さえた上で行動してください。
■不当解雇の例
- 解雇予告手当なく直前に解雇を通告することはNG
- きちんとした理由なく解雇することはNG
■不当解雇の相談先
- 労働組合に相談する【大企業向け】
- 都道府県の相談窓口を利用する【自分で動ける人向け】
- 労働基準監督署に相談する
- 弁護士に相談する【おすすめ】
■不当解雇の相談先で相談できること
- まず相談すべきは「解雇理由証明書」がないこと
- 「会社に残りたい」ということも相談可
- 解雇予告手当や賃金請求も相談可能
1章:不当解雇とはどんなもの?
解雇にはいくつかの種類がありますが、共通して言えるのは
・解雇予告手当なく直前に解雇を通告することはNG
・きちんとした理由なく解雇することはNG
ということです。では、具体的にどのような内容であれば解雇が不当だといえるのでしょうか。
1-1:「明日から来なくていいよ」こんな突然の解雇はNG
解雇と一口にいっても、法律上は4つの種類に分けられます。それぞれについて簡単に説明すると
・普通解雇
→会社の都合で行われる解雇のこと
・諭旨(ゆし)解雇
→懲戒解雇よりワンランク低い解雇のこと
懲戒解雇と異なり、退職金が支払われることが多い
・懲戒解雇
→横領や無断欠席など就業規則に反するようなことをした場合
・整理解雇
→リストラにより解雇される場合
というように分けられます。ここでは主に、会社から一方的に解雇される場合である3種類の解雇(普通解雇・懲戒解雇・整理解雇)を念頭において説明していきましょう。
このような解雇をする場合には、2つの大きなルールがあります。それは
・30日前に解雇予告をすること
・解雇にきちんとした理由がある
ことです。
まず、30日前の予告について具体的に見ていきましょう。
(例)8月31日に解雇予告が行われた場合
→9月30日の午後12時(10月1日の午前0時)までは解雇することができない
ただし、解雇予告には例外があり、予告に代わって「解雇予告手当」というお金をもらうこともできます。この場合には、事前に予告をせずとも、あなたを解雇することができます。
では、解雇予告手当はいくらもらうことができるのでしょうか?具体的な計算式を見てみましょう。
(直前3か月に支払われた賃金総額)÷(3か月間の歴日数)×(解雇予告の短縮日数分)
(例)Aさんのケース
給料:月給20万円(3か月で60万円)
解雇予告日:3月25日
解雇日:20日後(短縮10日)
Aさんの場合は、
60万円÷90日×短縮10日=66,666円
となり、解雇予告手当として「66,666円」を会社からもらうことができます。
※歴日数の計算
12月 31日間
1月 31日間
2月 28日間 計90日
次に、解雇にきちんとした理由があるという点についてです。
解雇をするためには、必ず理由が必要です。
そして、その理由は「やむを得ないことをしているから仕方ないな」と思える程度のものでなければならないのです。
次の章では、「こんな理由では解雇できない!」というケースを見ていきましょう。
1-2:こんな理由では解雇できない
では、どのようなケースだと解雇ができないのでしょうか。具体的な例を見てみましょう。
【普通解雇】…会社の都合で行われる解雇のこと
・妊娠を理由とした解雇
→妊娠を理由に解雇をすることは法律で禁じられています
・能力が平均的な社員に達していない
→これだけでは解雇の理由として十分ではありません
・営業成績が悪い
→これだけでは解雇の理由として十分ではありません
・病気になったが、仕事ができる程度に回復している
→仕事ができるほど回復している場合には、法律上、解雇は簡単に認められません
【懲戒解雇】…横領や無断欠席など就業規則に反するようなことをした場合
・犯罪歴を秘密にして就職した
→仕事には直接関係がなく、積極的に嘘をついているわけでもないのであれば、解雇の理由にあたりません
・精神病にかかり無断欠席している
→休職規定がある場合,休職などを勧めず、病気を理由にしていきなり解雇することはできません
・髪色が明るい
→これだけでは解雇の理由にあたりません
・プライベートで痴漢の嫌疑で逮捕されてしまった
→正式な公判請求に至らない(起訴猶予,罰金刑)場合のように、悪質性が高くなければ、痴漢で逮捕されたというだけでは解雇の理由がありません
【整理解雇】…リストラにより解雇される場合
・事業の縮小のためリストラしているはずなのに,新規採用を行っている
・希望退職募集をしていない
・役員の給与をカットせず、いきなりリストラを行った
・職場で嫌われている人から解雇していく
・解雇される人の基準が明確でない。
・労働者全体に対し,十分な説明や話合いをせず、リストラを始める
【コラム】解雇予告の方法
-
法律上、解雇予告の方法について決まりはありません。そのため、口頭で「30日後にやめてください」というのも法律上はなんら問題ないのです。
しかし、口頭の場合、後々「言った/言わない」が問題になることもあります。解雇予告をされたら、必ず書面をもらうようにしましょう。
2章:不当解雇の相談窓口はココ!
不当解雇をされてしまったら、まずは誰かに相談をしたいところです。
「でも、法律の相談するのってお金がかかるでしょ…」
そんな方でも大丈夫です。
全国には、お金がかからずに相談できる窓口がいくつかあります。
不当解雇されてしまったら、すぐに相談に行きましょう。
2-1: 労働組合に相談する【大企業向け】
不当解雇をされてしまった場合の相談先として、まず、労働組合が挙げられます。
そもそも、労働組合とは、労働条件を良くするための団体のことです。
この団体は、あなたの代わりに、不当解雇について会社と話し合いをしてくれます。
労働組合は会社や地域ごとに作られていますので、身近なところを探してみてください。
【メリット】
労働組合に相談すると、組合があなたに代わって会社と交渉をしてくれます。
そのため、自分だけで会社と戦うよりも、スムーズに交渉できます。
【デメリット】
労働組合の交渉では、基本的には解雇予告手当など多少のお金をもらえるにすぎません。
会社に戻りたい場合や、賠償金が欲しい場合などは、弁護士に相談するのが良いでしょう。
2-2 :都道府県の相談窓口を利用する【自分で動ける人向け】
手軽に相談できる窓口のひとつとして、都道府県の相談窓口が挙げられます。
例えば、東京都には「東京都労働相談情報センター」というものがあり、労働問題全般について相談にのってくれます。
下記のリンクを参考に、各自治体に問い合わせてみましょう。
【メリット】
都道府県の相談窓口に相談すると、センターが会社とあなたの間に立って、話し合いのお手伝いをしてくれます。費用なども発生しません。
【デメリット】
結局は自分と話し合わなければならないので、精神的な負担があります。
2-3:労働基準監督署に相談する
ほかにも労働基準監督署に相談するという方法もあります。
労働基準監督署とは、「残業代がでない」など、違法な労働条件を改善するための組織です。
労働基準監督署は、「解雇が不当である」とわかれば、立ち入り検査や指導を行ってくれます。
具体的な相談方法ですが、労働基準監督署には総合労働相談コーナーがあり、ここで不当解雇について相談を受けることができます。
電話でも相談を受け付けていますので、労基署が遠いという方は電話相談を利用すると良いでしょう。
ただし、受付時間が短い(多くの自治体では17時まで)点には注意してください。
【メリット】
相談にお金はかかりませんし、相談内容が会社にもれることもありません。
【デメリット】
ここで注意がふたつあります。
現実的に、労働基準監督署は個人の不当解雇問題ではなかなか動いてくれません。
また、労働基準監督署に相談しても、もとの職場に復帰することはできません。
そのため、あまりおすすめできる方法ではないのです。
2-4 :弁護士に相談する【おすすめ】
不当解雇されてしまった場合に、もっとも良い方法は弁護士に相談するという方法です。
弁護士であれば、後ほどご説明するように、さまざまな解決方法をとることができるからです。
また、弁護士と言うと裁判のイメージが強いですが、弁護士に相談したからと言っていきなり裁判になるわけではありません。
まずは弁護士があなたに代わり、会社に対して交渉をしたり、労働審判をしてくれたりします。その上で、裁判へと進んでいきます。
では、弁護士に頼むと、どのような解決が望めるのでしょうか。
弁護士に頼んだ場合には、以下のような解決方法があります。
・解雇予告手当…30日前の解雇予告に代わり、会社が支払うお金のこと
・逸失利益…本来なら働けたはずの利益のこと
・元の職場への復帰
他の方法に比べてバリエーションも豊かなので、あなたにとってベストな結果を残すことも望めます。
では、どのように弁護士を選べば良いのでしょうか?
弁護士を選ぶポイントは4つあります。
・労働問題に強い弁護士であることをHPに書いているか
・電話で労働問題について自信をもってこたえているか
・あなたの話をしっかり聞いてくれるか
・費用を明らかにしてくれるか
不当解雇の問題を解決するルートは、いくつかあります。
そのため、あなたがどうしたいのかをよく聞いてくれる弁護士を選びましょう。
また、弁護士費用は高額になりがちなので、着手金無料、完全成果報酬制の弁護士を選ぶようにすると安心です。
詳しくはこちらもご参照ください。
弁護士が解説!ブラック企業を訴える方法と弁護士選びの5つの注意点
最近では、法テラスや自治体の相談会など、無料で弁護士に相談ができる機会も増えています。
あまりハードルが高いと思わずに、まずは弁護士に相談してみましょう。
【コラム】法テラスとは
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法テラスとは、無料で法律相談ができる窓口のことです。もし実際に弁護士に依頼することになれば、弁護士費用を立て替えてくれる制度もあります。
ただし、費用がかからないということもあり、相談までにかなりの時間を要しますので注意しましょう。
3章 :どんなことを相談するの?
では、相談窓口に行ったらどのようなことを相談すれば良いのでしょうか。
ここでは、スムーズに相談ができるように、窓口で相談すべきことをまとめてみました。
相談から解決に至るように、相談すべきことを抑えておきましょう。
3-1:まず相談すべきは「解雇理由証明書」がないこと
解雇理由証明書とは、解雇日や解雇理由、会社の名前などが入った書面のことです。
解雇理由証明書は、会社が自ら率先して出さなければならないものではないですが、後々解雇をめぐってトラブルになるため、発行する会社が多くなっています。
【解雇理由証明書はこちら】
この解雇理由証明書ですが、実は重要なものです。
なぜかというと、自分のせいで会社を辞めたのではなく、「会社都合で辞めさせられました」ということを証明する書面になるからです。
これは雇用保険をもらう際に大切になってきますので、必ずもらってください。
万が一、解雇理由証明書がもらえない場合には、相談窓口で相談をしてみましょう。
相談先が会社に対し、交渉をしてくれます。
解雇予告通知書はあなたが「ほしい」といえば必ず発行しなければならないものなので、まともな企業であればスムーズに発行してもらえます。
【コラム】失業保険
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不当解雇の場合には、失業保険をもらうこともできます。
そもそも、失業保険とは、失業中にもらえるお金のことです。これはハローワークで手続きすることができます。
失業保険をもらえる期間は、退職の理由で変わってきます。辞職した場合に比べ、会社理由の解雇の方が、長く保険をもらうことができます。
3-2:「会社に残りたい」ということも相談可
人によっては、どうしても会社に戻りたいという場合もあるでしょう。
どこの窓口でもそのような相談には乗ってくれますし、ほとんどの機関では会社に対し交渉もしてくれます。
しかし、いったんあなたをクビにした会社が自ら解雇の撤回に応じることはほとんどなく、実効性がないというのが現状です。
そこで、もし会社に戻りたいのであれば、弁護士を付けた上で裁判をすることをおすすめします。
裁判では「地位確認の訴え」といって「あなたは○○社の社員として働いていいですよ」というお墨付きをもらうことができます。
ただし、ここで注意がふたつ。
まず「地位確認の訴え」は、不当解雇の場合にしか認められません。
法律に従った解雇の場合には、これはできないのです。
もうひとつ注意してもらいたいのが、「請求が認められたからといって、本当に会社に戻れるのか」という問題です。
いったんクビになると、やはり会社には居づらくなります。
それでも本当にあなたは会社に戻りたいでしょうか?その点をしっかり考えておきましょう。
また,仮に裁判で勝ったとしても,それは裁判で勝った時に従業員であることが確認されるだけであり,裁判後にまた解雇される可能性はずっと残るのです。
一度,会社に対して訴訟をした従業員に会社にいてほしいと思う会社は非常に少ないので結局また解雇されることが多いようです。
そこで,会社に戻るというのではなく、会社とスパッと縁を切り,解決金をもらう方が賢明です。
3-3:お金が欲しい
「不当解雇が悔しいから、せめてお金がほしい!」
このような場合、いくつかお金を取る方法が存在します。
相談窓口によっては、難しい方法もあるので、相談先と相談内容はしっかり確認しておきましょう。
3-3-1: いきなり解雇された…そんなときは解雇予告手当
解雇予告手当とは、30日前に解雇予告をする代わりに、会社があなたにお金を払うというもので、法律により支払うことが決められています。
会社はお金を払わなければなりませんが、すぐに解雇をできるため、この手段をとることがあります。
ここで問題は、解雇予告手当を払わない会社があるということです。
もしも解雇予告がないにもかかわらず、手当が出ていない場合には、相談窓口にいって相談をしてみましょう。
また、自分で解雇予告手当を請求する方法もあります。
それは、配達証明付き内容証明郵便を送るという方法です。
内容証明郵便とは、「誰が、いつ、どんな内容の」郵便を出したのかを、郵便局が公的に証明してくれる郵便のことです。
すでに会社を辞めてしまっている場合、会社との関係が悪化することもありませんので、一度内容証明郵便を出してみてはいかがでしょうか。
【おすすめの相談先】都道府県や労働基準監督局
解雇予告手当は自分でも請求できるものなので、相談だけなら、無料の機関である都道府県や労働基準監督局がおすすめです。
3-3-2 :賃金請求
不当解雇をされてしまった場合には、解雇されている期間の賃金請求をすることができます。
解雇されなければ本来はお給料をもらえたはずです。
不当な解雇があったために,本来もらえたはずの給料をもらえていないだけです。
そのため「働き続けていたらもらえたお金」を請求することができるのです。
【コラム】不当解雇についての弁護士の選び方
不当解雇について相談する場合、必ず労働問題を重点的に扱っている弁護士に依頼しましょう。
弁護士によって得意分野や普段扱っている業務が異なるため、労働問題を扱っていない人だとスムーズにいかなくなることがあるからです。
4章:賠償金が取れたケース・取れなかったケース
不当解雇を理由としてお金が取れるケースとは、いったいどのような場合なのでしょうか。ここでは、実際に賠償金が取れた例、取れなかった例をご紹介していきます。
4-1:賠償金が取れた例
・大学院を卒業した従業員が、「能力が低い」「協調性がない」などの理由から解雇された。(セガ・エンタープライゼス事件)
→能力が低いという理由は不十分。解雇は無効なので働き続けて良い。その分の賃金の支払いも認める。
・システムエンジニアが派遣先で電子メールを私的に利用したため、解雇された。(トラストシステム事件)
→電子メールの私的利用だけでは解雇できない。そのため、解雇は無効であり、賃金を払わなければならない。
4-2:賠償金が取れなかった例
・働く予定だった保育所の業務について、会社が委託を受けられなくなってしまった。そのため、解雇された。(わいわいランド事件)
→委託を受けられず、職場がなくなってしまったので、解雇はやむを得ない。そのため、損害賠償は認められない。
まとめ:不当解雇の相談
この記事では、
・突然の解雇や理由のない解雇はできない
・相談先としては、労働組合、都道府県、労働基準監督局、弁護士がある
|
労働組合 |
都道府県 |
労働基準監督局 |
弁護士 |
相談費用 |
無料 |
無料 |
無料 |
1時間5000円~が相場。法テラスは無料 |
メリット |
必ず交渉してくれる |
あなたとの交渉を仲介してくれる |
窓口が多く相談がしやすい |
様々な選択肢が取れる |
デメリット |
お金は取りにくい |
自分で交渉しないといけない |
実効性がない |
お金がかかる |
・窓口に相談することで解雇を撤回せたり、お金をとることができる
・解雇の状態によっては慰謝料が取れることもある
ということを解説してきました。
不当解雇をされてしまった場合、「次の仕事が見つかるか」「生活費をどうするか」など不安になる人が多いと思います。
しかし、まずは落ち着いて、相談窓口に向かいましょう。相談窓口では、解雇に関することならなんでも受け付けていますので、失業保険などの話も聞いてきましょう。