
解雇通知書とは、解雇の内容が書かれた書面のことを言い、失業保険をもらったり、解雇は無効だと争う時に重要なものになってきます。
あまり知られていませんが、実は解雇通知書には2種類のものがあり、それぞれ使う場面が異なります。
そこで、この記事では2種類の解雇通知書の違いや、解雇通知書がもらえなかった場合の対処法、不当解雇された場合にあなたがやるべきことを説明します。
会社を去ってから後悔しないよう、この記事を読んで解雇通知書について知っておきましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■解雇予告通知書とは
解雇予告通知書には、2種類のものがあります。目的に応じてもらう必要があるので、注意しましょう。
■解雇予告通知書
・30日前の解雇予告を示すもの
・30日以前に解雇予告を受けなければ、解雇予告手当をもらえる
・必ず解雇理由をチェックする
■解雇理由証明書
・解雇の理由を示す書類
・会社は必ず発行しないといけない
・受け取ったら解雇理由をチェックする
→もらっていない場合は、すぐに会社に申し出る
■不当解雇を争う場合
①証拠を用意してください。
・解雇通知書(解雇予告通知書、解雇理由証明書)
・日記やメールなど
・ICレコーダーで録音した音声
②以下の窓口に相談に行きましょう。
・労働組合
・労働基準監督署
・都道府県の相談窓口
・弁護士
目次
1章:解雇通知書とは
解雇通知書とは、解雇をしたことや解雇の理由を示す書面のことです。これは、解雇を争う場合に証拠となる重要なものです。
解雇通知書と呼ばれるものには、大きくわけて2つのものがあります。それが①解雇予告通知書と②解雇理由証明書です。
1-1:解雇予告通知書|解雇の予告をするための書面
会社が社員を解雇する時には、原則として30日前に予告をしなければなりません。
この予告は口頭でも良いのですが、きちんと書面に残さないと、後々「言った・言わない」で争いになってしまいます。
そこで、解雇を予告するために渡す書類が「解雇予告通知書」になります。
解雇予告通知書の書き方について決まりはありませんが、ほとんどの解雇予告通知書には
①解雇する従業員の氏名
②解雇予告通知書の作成日
③社名・代表者名
④解雇する日
⑤「解雇します」という解雇の意思表示の文言
⑥解雇理由
⑦あなたの解雇理由が該当する就業規則の条文
が記載されています。
④解雇する日は、解雇予告通知書を渡された翌日から30日以上経った日を指定しないといけません。万が一、解雇日が30日未満になっている場合には、あなたは解雇予告手当を受け取る権利があります。
解雇予告手当は、以下の式を使って計算することができます。
*解雇予告手当の計算方法
(直前3か月に支払われた賃金総額)÷(3か月間の歴日数)×(解雇予告の短縮日数分)
(例)Aさんのケース
給料:月給20万円(3か月で60万円)
解雇予告日:3月25日
解雇日:20日後(短縮10日)
→60万円÷90日×短縮10日=66,666円
※歴日数の計算
12月 31日間
1月 31日間
2月 28日間 計90日
また、⑥解雇の理由については、本当にあなたが納得いくような理由が書かれているかを確認しましょう。
「身に覚えがないことが書かれている」
「経営難と書いてあるけれど、クビになったのは自分だけ」
など、解雇理由に納得できない場合、あなたの解雇は不当解雇にあたるかもしれません。不当解雇については3章で説明しますので、こちらを読んでください。
【コラム】解雇予告通知書が不要な場合
法律上、以下の場合には解雇予告通知書は不要とされています。
・解雇予告手当を支払う場合
・横領や無断欠勤で解雇されるなど、社員側に責任があって解雇になる場合
・日雇いの従業員で働き始めてから1か月以内に解雇する場合
・使用期間中の従業員で働き始めてから14日以内に解雇する場合
しかし、このような場合でも、
「会社が本当にあなたを解雇したのか」
「どうして解雇したのか」
を明らかにしておく必要があります。
そのため、解雇予告通知書がもらえなくても、1-2で説明する解雇理由証明書をもらうようにしましょう。
【まとめ】解雇予告通知書
・30日前の解雇予告を示すもの
・30日以前に解雇予告を受けなければ、解雇予告手当をもらえる
・必ず解雇理由をチェックする
1-2:解雇理由証明書|解雇の理由についてかかれた書面
解雇理由証明書とは、主に解雇の理由が書かれた書面になります。こちらも、決まった書き方はありませんので、会社ごとに違った書式で作られます。
解雇理由証明書は、あなたがほしいと言えば、会社は必ず発行しないといけません。これは法律により決められているからです。
※厚生労働省、東京労働局より引用
解雇理由証明書は、あなたがどうして解雇になったのかを証明するものです。そのため、単に就業規則の条文が書かれているだけでは足りないのです。
(良い例)
・心身の故障により業務に支障を来すため、就業規則65条により普通解雇する。
・女子社員に性的な言動を含むハラスメント行為をし、改善を求めたがこれが認められなかった。そのため、就業規則26条により懲戒解雇する。
(悪い例)
・就業規則38条によりあなたを解雇します。
・就業規則50条3号の「能力不足」にあたるため、普通解雇する。
解雇の理由として具体的な事実が書かれていない場合には、解雇理由証明書を会社に再発行してもらいましょう。
【コラム】通知書に書かれている理由が実際の退職理由と違うとき
失業保険の受給に当たっては、自己都合より会社都合の方が、受給期間が長くなるというメリットがあります。
失業保険をもらう際に退職の理由を決めるのは、ハローワークの担当者です。仮に解雇通知書の理由欄が「自己都合」になっていても、きちんと理由を説明すれば、会社都合で失業保険をもらうことができます。
ハローワークに手続きに行ったときには、退職の理由を説明するのを忘れないようにしましょう。
【まとめ】解雇理由証明書
・解雇の理由を示す書類
・会社は必ず発行しないといけない
・受け取ったら解雇理由をチェックする
2章:解雇通知書が貰えなかった場合の対処法
解雇通知書のうち、解雇予告通知書は必ず発行されるものではありません。そのため、会社からもらえなくてもそれほど問題はありません。
一方、解雇理由証明書は、あなたがほしいと言えば、会社は絶対に発行しなければなりません。これは、法律によって決まっているためです。
解雇理由証明書がなければ、会社がどうしてあなたを解雇したのがわからないからです。
そのため、あなたがまだ解雇理由証明書をもらっていないのであれば、すぐに会社に発行するよう申し出ましょう。
このとき、内容証明などを使わなくても、口頭でお願いすれば大丈夫です。
解雇通知書がないと、解雇を争うこともできませんので、会社に対して強気に出ましょう。
次章では、あなたが解雇に納得できず、不当解雇だと思ったときにすべきことを説明します。
3章:不当解雇だった場合にすべきこと
不当解雇を争いたいときは、証拠を用意し、窓口に相談に行きましょう。
3-1:不当解雇とは
不当解雇とは、以下のような解雇を指します。
①30日前の解雇予告なく解雇される
②解雇にきちんとした理由がない
①解雇予告については、1-1で説明したとおり、解雇予告手当というお金を払うことで、これを省略することができます。
②解雇にきちんとした理由がないとは、例えば
・妊娠を理由として解雇された
・改善の見込みはあるのに、営業成績が悪いとして解雇された
・病気になり、会社に復帰できるほど回復したが解雇された
・経営悪化を理由にして解雇されたが、会社は新規採用を行っている
などがあります。
3-2:不当解雇を争う場合に必要な証拠・相談先
不当解雇をされてしまったら、まず可能な限り証拠を集めましょう。役に立つ証拠としては、以下のようなものがあります。
・解雇通知書(解雇予告通知書、解雇理由証明書)
・日記やメールなど
解雇までの経緯を示す書面があるとよいでしょう。
・ICレコーダーで録音した音声
暴言を吐かれたり、解雇の際に何か言われた場合には、録音しておくと良いでしょう。
次に、証拠を持って相談に行きましょう。
相談先としては、以下の4つがあります。
・労働組合
給与や労働時間など、労働条件を良くする団体のこと。必ず会社が話し合いに応じてくれる一方、賠償金をもらったり、会社に戻りたい場合には向かない。
・労働基準監督署
会社が法律違反をしていないか取り締まるところ。会社に罰則を科すなど影響力も大きいが、個人の問題ではほとんど動いてくれない。
・都道府県の相談窓口
労働問題全体について、会社との話し合いのお手伝いをしてくれる。自分で話し合いの場に出ないといけないのがネック。
・弁護士
まずは会社と交渉をし、うまくいかなければ労働審判、裁判へと進む。多少お金はかかるものの、良い結果が出る可能性が高い。
相談先によって、さまざまなメリットやデメリットがありますが、最終的な結果の面から見ると弁護士がおすすめです。
解雇された場合の相談先について、詳しくは以下の記事を参照してください。
不当解雇された!4つの相談窓口と相談の仕方を弁護士が徹底解説
まとめ:解雇通知書について
いかがだったでしょうか。
最後に簡単にまとめてみましょう。
【解雇予告通知書とは】
解雇予告通知書には、2種類のものがあります。目的に応じてもらう必要があるので、注意しましょう。
【解雇予告通知書】
・30日前の解雇予告を示すもの
・30日以前に解雇予告を受けなければ、解雇予告手当をもらえる
・必ず解雇理由をチェックする
【解雇理由証明書】
・解雇の理由を示す書類
・会社は必ず発行しないといけない
・受け取ったら解雇理由をチェックする
→もらっていない場合は、すぐに会社に申し出る
【不当解雇を争う場合】
①証拠を用意してください。
・解雇通知書(解雇予告通知書、解雇理由証明書)
・日記やメールなど
・ICレコーダーで録音した音声
②以下の窓口に相談に行きましょう。
・労働組合
・労働基準監督署
・都道府県の相談窓口
・弁護士
失業保険の手続きなど、退職後には解雇通知書が必要となる場面が多々あります。会社を去る前に、解雇通知書をしっかりもらっておきましょう。