不当解雇で訴えたい!慰謝料請求の手順と戦い方を弁護士が徹底解説
この記事を読んで理解できること
- 気になる!慰謝料はいくらもらえるの?
- 会社に請求がしたい!
- それでもお金が欲しいときは
ブラック企業の中には、「不当解雇」をするところがあります。不当解雇とは、きちんとした理由もなく解雇をすることです。
不当解雇をされてしまったら、あなたはこのようなことを考えるでしょう。
不当解雇をされた場合、会社に対してやり返す方法があります。
そのひとつが
「慰謝料請求をする」
という方法です。慰謝料という言葉は、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
これは会社からお金を取ることができるため、とても良い方法のように思えます。
しかし、実際に慰謝料請求をするのはなかなか難しいのです。
そのため、慰謝料請求をするためには、入念な準備が必要です。
また、慰謝料請求以外の方法を考えておく必要もあります。慰謝料請求以外の方法としては、
・解雇予告手当
・賃金請求
などがあります。
この記事では、
・あなたは理解している?そもそも慰謝料とは
・知りたい!慰謝料の相場
・慰謝料を請求する3つの方法
・しっかり考えよう!慰謝料請求のメリット・デメリット
・お金がほしいときは○○をする
という内容を説明していきますので、慰謝料請求やその他の方法をしっかりと比較検討しましょう。
不当解雇をされてしまった場合、ただされるがままになるのはもったいないです。
会社に対して、しっかりやり返してやりましょう!
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■不当解雇の慰謝料相場は10万円~20万円程度
不当解雇で慰謝料請求することにはメリットだけでなくデメリットもあります。
■不当解雇で慰謝料請求するメリット
- 慰謝料が認められれば、会社からお金をもらうことができる
- 慰謝料が認められる=会社が悪いという社会的評価が得られる
■不当解雇で慰謝料請求するデメリット
- 最終的に慰謝料を得るためには、時間がかかる
- 裁判まで行く可能性が高く、お金がかかる
- 慰謝料は認められにくい
具体的には下記のような方法で慰謝料請求できます。
■不当解雇で慰謝料を請求する方法
- 裁判外で直接請求する
- 審判や裁判を利用する
目次
1章:気になる!慰謝料はいくらもらえるの?
会社を不当解雇された場合、会社にやり返す一つの手として「慰謝料をする」という方法があります。
これは、会社に対し、お金を請求することです。
1-1:知っているようで知らない「慰謝料の話」
「相手の浮気で離婚するから、慰謝料請求したの」
「傷ついたから、慰謝料を払え!」
このように、慰謝料という言葉は耳にすることの多い法律用語です。しかし、「慰謝料」とは、そもそもどんなお金のことを言うのでしょうか。
慰謝料とは、簡単に言うと
「精神的苦痛に対する賠償金」
のことをいいます。ただし、単に「心が傷ついたからお金を払え!」ということはできません。
何らかの「権利」が侵害されないと、賠償金は発生しないのです。
不当解雇の場合でも、基本的には、ただ「クビになった」というだけでは権利侵害は認められません。
「人としての尊厳を踏みにじった(=人格権の侵害)」と言えるほどでないと、賠償金は認められにくいのが現状です。
【コラム】民法709条「不法行為」
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慰謝料という言葉は、法律に書かれている言葉ではありません。法律上は「不法行為による賠償金」の一種にあたり、民法709条に定めが置かれています。
不法行為と言えるためには、以下の条件が必要になります。
①故意・過失
→わかっていて、またはうっかりして相手を傷つけたこと
➁損害の発生
→加害者が行為をして、損害が生じたこと
③権利侵害
→あなたの「身体の安全」「財産上の権利」など、何らかの権利が侵害されたこと
④因果関係
→加害者の行為と、権利侵害の間に十分な関係があること
1-2:知りたい!慰謝料の相場
では、不当解雇で慰謝料請求が認められる場合、どのくらいもらうことができるのでしょうか。
個々のケースによって、金額が異なるため、一概には言えませんが、一般的には
10万円~20万円
が相場となります。
1-3:しっかり考えよう!慰謝料請求のメリット・デメリット
慰謝料請求をするのには、メリットも、デメリットもあるのです。
メリット・デメリットを抑えて、慰謝料請求についてしっかり考えてください。
【メリット】
・慰謝料が認められれば、会社からお金をもらうことができる
→お金をもらうことができれば、「会社にやり返すことができた!」と思えます。
・慰謝料が認められる=会社が悪いという社会的評価が得られる
→「あの会社は悪いことをするんだ」という社会的評価を得られます
【デメリット】
・最終的に慰謝料を得るためには、時間がかかる
→会社はなかなか慰謝料を払うことを認めません。
・裁判まで行く可能性が高く、お金がかかる
→コストが慰謝料を上回ってしまうことも考えられます。
・慰謝料は認められにくい
→最初にご説明したように、不当解雇で権利侵害は認められにくいので、裁判でも、慰謝料はなかなか認められません。
このように、慰謝料が認められにくいのが実情です。そのため、お金が欲しい場合には、他の方法も検討する必要があります。
他の方法としては
・解雇予告手当
・賃金請求
があります。
解雇予告手当、賃金請求については4章で説明していますので、そちらをご覧ください。
なお,不当解雇をするような会社では、サービス残業が横行している可能性が高いので、別途残業代請求ができる可能性が高いです。
会社に対して,金銭を請求する場合、残業代請求の選択肢も視野に入れましょう。
残業代請求については、こちらのページを参照してください。
残業代が出ないのは違法!会社から残業代を取り戻す2つの方法とは?
では、「慰謝料請求をしたい!」と言う場合には、どのような流れで請求すれば良いのでしょうか?
次の章では、実際に慰謝料請求をしていくことを念頭において、解説していきます。
2章:会社に請求がしたい!
実際に慰謝料請求をする場合、どのように請求していけばいいのでしょうか?
この章では、
・具体的な慰謝料請求の方法
・慰謝料請求に必要なモノ
・実際に慰謝料請求が認められたケース・認められなかったケース
について解説していきます。しっかり読んで、慰謝料請求のイメージを固めてください。
2-1:会社に慰謝料請求をする2つの方法
慰謝料請求の方法には、2つの方法があります。
・裁判外で直接請求する
・審判や裁判を利用する
順番に内容を見ていきましょう。
2-1-1:まずは会社に直接請求する
まず最初は、「直接相手に請求する」という方法が挙げられます。
電話をしたり、書面を送ったりして「慰謝料を請求したい」というのでもいいでしょう。
【コラム】証拠を残すには内容証明郵便を使う
内容証明郵便とは「誰が、いつ、どのような内容の書面を出したのか」を郵便局が公的に証明してくれる郵便のことを言います。
自分で慰謝料を請求する場合、配達証明付き内容証明郵便を利用すると、自動的に証拠が残ることになります。そのため、しっかりと証拠を残したい方にはおすすめの方法です。
【内容証明郵便とは】
2-1-2:最後の手段!労働審判&裁判
最後の手段は、労働審判や裁判を起こすことです。
労働審判とは、審判員と裁判官のもとで、労働関係のもめごとを解決することを言います。
とても簡単に言うと、「第三者をはさんだ話し合い」です。労働審判は、平均して70日ほどで終わるため、裁判より早く終えることができるのが特徴です。
審判がうまくいかないときには、裁判へと進みます。裁判は、より厳格な判断がされる分、時間がかかってしまいます。
この段階までくると、法律のプロの意見を聞いた方が賢明です。弁護士をつけるようにしましょう。
2-2:慰謝料請求に必要なものはコレ
慰謝料請求をする場合に必要なものは、以下の通りです。
・解雇通知書
解雇の日付や解雇の理由が書かれた書面です。解雇通知書はあなたが「ほしい」と言えば、会社は必ず出さなければなりません。失業保険を受給する際にも必要になってきますので、退職前に必ず入手しておきましょう。
・日記やメールなど
解雇までの経緯を示す書面が必要です。
・ICレコーダーで録音した音声
暴言を吐かれたり、解雇の際に何か言われた場合には、録音しておくと良いでしょう。
2-3:慰謝料請求が認められたケース・認められないケース
実際に不当解雇に対し慰謝料請求が認められたケース、認められなかったケースも見てみましょう。
【慰謝料請求が認められたケース】
・Aさんは上司から「ホテルに行こう」などとセクハラを受け、弁護士に解決を依頼し、示談をした。しかし、上司は「弁護士に脅されている」などと言ったため、Aさんと言い争いになった。会社は、私的な争いを蒸し返したとし、職場の秩序を乱したことを理由に解雇した。
→Aさんの解雇は理由のない解雇であり、無効である。Aさんは解雇によって安定した収入を失い、再就職できるか不安になったのだから、慰謝料が認められる。(慰謝料30万円)
【慰謝料請求が認められなかったケース】
・Bさんはベンチャー企業の求人に応募し、採用された。しかし、入社から間もなく、社長が会社に訪れた際に、社長に対して声を出さずにあいさつをしたとして、解雇されてしまった。
→解雇をすることは相当でないから、解雇は無効である。しかし、特に権利侵害はないことから、慰謝料請求は認められない。
3章:それでもお金が欲しいときは
そんなあなたには、ふたつの方法を教えます。それは、
・解雇予告手当をもらう
・賃金をもらう
です。
3-1:ポイントは30日前の予告!「解雇予告手当をもらおう
解雇予告手当とは、30日前に解雇予告をする代わりに、会社があなたにお金を払うというものです。
「解雇します」と言われてから30日以内に解雇されてしまった場合には、解雇予告手当を請求することができます。
では、解雇予告手当はいくらもらうことができるのでしょうか?
具体的な計算式を見てみましょう。
【月給や年俸制の場合】
(直前3か月に支払われた賃金総額)÷(3か月間の歴日数)×(解雇予告の短縮日数分)
(例)月給20万円のAさんが、3月25日に「20日後に解雇します」と言われ、解雇された(短縮10日)
→60万円÷90日×短縮10日=66,666円
※歴日数の計算
12月 31日間
1月 31日間
2月 28日間 計90日
【日給や時間給、出来高払いの場合】
(直前3か月に支払われた賃金総額)÷(その期間に働いた日数)×60%×(解雇予告の短縮日数分)
(例)日給5,000円のBさんは、解雇前3か月で60日働き、30万円を得た。解雇予告もされずに、いきなり解雇されてしまった。
→30万円÷60×0.6×30=9万円
3-2: 解雇が無効なら…賃金請求ができる
裁判では、「不当解雇が認められない=会社の社員である」ということを争うことができます。
そして、これが認められた場合、会社は本来支払うべき賃金を払う必要があります。
これを「バックペイ」と呼びます。
バックペイは、
自分の月給×解雇されていた期間
だけもらうことができます。
ただし、失業期間中にアルバイトをしている場合には、もらえるお金が少なくなることもあるので注意が必要です。
まとめ:不当解雇の慰謝料
この記事では、
・不当解雇の慰謝料の相場は、10万円~20万円
・慰謝料を請求する方法には、直接請求、審判&裁判がある
・慰謝料請求で会社に一矢報いることもできるが、現実には難しい
・慰謝料請求の代わりに、お金をもらうという道がある
・どうしてもお金が欲しい場合には、解雇予告手当をもらう方法もある
・不当解雇が無効であれば賃金をもらうことができる
・残業代請求をして,不当解雇をする会社に対し,お金を請求するという別の方法がある。
ということをご説明してきました。
不当解雇をされてしまった人の中には、泣き寝入りしてしまう人もたくさんいます。
しかし、解雇が不当であれば、会社からお金をもらい、やり返すこともできるのです。
不当解雇を不満に思うのなら、すぐにでもお金をもらうための準備を始めましょう!