懲戒解雇でも失業保険は貰える!必要な書類や全手順と不利な点を解説
この記事を読んで理解できること
- 懲戒解雇されても失業保険は貰える
- 懲戒解雇の場合、金額・受給日数・給付制限期間などで不利になりがち
- 懲戒解雇されたあなたが失業保険を受け取るまでの全手順
- 失業保険以外でお金を受け取るための選択肢
会社に勤めていると、事故や能力不足などの理由で懲戒解雇になることがあります。
懲戒解雇は社員自身に非があることがほとんどなので、退職金や再就職の際に不利になることもあるのです。
このようなときにまず不安になるのが
「今後の生活費をどうするか」
ということではないでしょうか。
あなたは「私が悪いのだから、失業保険ももらえないのだろうか」と思っているかもしれません。
安心してください。
懲戒解雇をされても失業保険はもらえるのです。
なぜならば、失業保険は失業者の生活のためのお金であり、会社を辞めた理由によらず受け取ることができるからです。
この記事では、
・懲戒解雇をされた場合に失業保険がもらえる理由
・失業保険をもらう上でのデメリット
・失業保険の受給方法
について説明します。
懲戒解雇をされたからと言ってあきらめずに、きちんと失業保険を受給しましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■懲戒解雇でも失業保険をもらうことができる
■懲戒解雇の場合には退職理由が自己都合になるため、失業保険をもらう際に以下の3つの点で不利になる
①受給期間
②給付制限
③金額
■懲戒解雇されて失業保険を受け取るまでの手順
- 離職|必要なものを準備
- 失業保険の申請|ハローワークへ行く
- 受給説明会|ビデオ鑑賞と書類の交付
- 失業認定|忘れずにハローワークへ
- 受給|振込
■懲戒解雇後の行動のポイント
・失業保険を最大限貰うには、早めの手続きが重要
・可能であれば①退職金②未払いの残業代を請求する
目次
1章 懲戒解雇されても失業保険は貰える
はじめに結論を言ってしまうと、懲戒解雇された場合でも失業保険をもらうことはできます。
なぜならば、失業保険の目的が「失業した人について、再就職まで一定期間の生活を保障すること」にあるからです。
懲戒解雇の場合でも、職を失うという意味で、この目的があてはまります。
そのため、懲戒解雇された場合でも失業保険をもらうことができるのです。
ただし、退職して失業保険を貰う場合に比べて、懲戒解雇されて失業保険をもらう場合にはいくつかの不利益があります。
2章 懲戒解雇の場合、金額・受給日数・給付制限期間などで不利になりがち
懲戒解雇され、自己都合で失業保険をもらう場合には
①受給期間
②給付制限
③金額
の面で、懲戒解雇されなかった人より不利になります。
①受給期間
懲戒解雇の場合には、離職の理由が「自己都合」となります。
【表】自己都合と会社都合の受給期間の違い
②給付制限期間
実は、失業保険は申請したらすぐにもらえるというわけではありません。
失業保険の申請をしてから7日間は失業保険を受け取ることができないのです。
これを「待期期間」と言います。
さらに、自己都合退職の場合には、給付制限期間(3か月)も足されます。
【図】自己都合と会社都合の受給までの時間差
③金額
このような給付期間の差から、自己都合と会社都合では実際にもらえる金額も変わってきます。
例を見てみましょう。
(例)Aさんのケース
6カ月の給与合計:120万円
年齢:46歳
勤続年数:26年
《自己都合の場合》
710,953円もらえる
《会社都合の場合》
1, 564,096円もらえる
自己都合の場合にもらえる額は、会社都合の場合に比べ、およそ半分になってしまいます。
*失業保険の計算方法について、詳しくは以下の記事を参照してください。
失業保険とは?貰える金額から手続きの方法、受給資格などを徹底解説
次章では、失業保険をもらうまでの具体的な手順について見ていきましょう。
3章 懲戒解雇されたあなたが失業保険を受け取るまでの全手順
ここでは、失業保険を受け取るまでの具体的な流れについて説明します。
【図】失業保険を受給するまでの流れ
3-1 離職|必要なものを準備
会社を辞めるときには、会社から以下のものを貰いましょう。
【会社からもらうもの】
・雇用保険被保険者離職票
「離職票1」と「離職票2」の2種類があります。
【画像】離職票1
【画像】離職票2
*会社から離職票がもらえなかったとき
離職から2週間を過ぎても離職票が届かないときは、ハローワークに事情を説明してください。ハローワークの担当が会社に催促してくれます。
・雇用保険者被保険者証
雇用保険に入っていたことを証明する書類のことです。
即日解雇の場合、「明日から会社に来なくてもいい」と言われることがあります。その場合、後日で良いので、会社から必ず書類を貰ってください。
また、自分でも以下のものを用意しましょう。
【自分で用意するもの】
・印鑑
書類の訂正に使います。
・写真
縦3㎝×横2.5㎝のものを用意してください。
・普通預金通帳
失業保険の振込先にするものを準備しましょう。本人名義のものに限ります。
・マイナンバーを確認できる書類
マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれかを用意してください。
・本人確認書類
運転免許証、パスポート、身体障碍者手帳などが必要です。保険証など顔写真がない場合には、本人確認書類が2点必要になります。
3-2 失業保険の申請|ハローワークへ行く
失業保険の申請は、自分の住んでいる地区を担当するハローワークで行います。
3-1で挙げたものを必ず持参して下さい。
まず、窓口でハローワークの情報に登録してもらいます。
これは、失業保険をもらうために必要な、求職の申し込み手続きになります。
次に、失業保険の窓口へ行って、離職票を提出しましょう。
【コラム】自己都合を会社都合にできる?
会社理由に変更してもらいたい場合には、ハローワークの窓口に以下の証拠を持っていきましょう。
・解雇通知書
・就業規則
・上司とのやり取りを録音したデータ
※解雇通知書については、以下の記事を参照してください。
貰わないと損をする!解雇通知書の役割と貰えなかった場合の対処法
「懲戒解雇に納得できない」という場合には、あわせて以下の記事を参照してください。
【不当解雇は違法?】4つの相談先と解決までの流れを弁護士が解説
3-3 受給説明会|ビデオ鑑賞と書類の交付
手続きをしてから7~10日後に雇用保険受給者初回説明会が行われます。
ここでは2時間程度のビデオを見ます。
これに出席しないと、以後の手続きが受けられませんので、必ず参加しましょう。
説明会が終わると、雇用保険受給資格証と失業認定申告書が配られます。
そして、次にハローワークに行く日(失業認定日)が指定されます。
3-4 失業認定|忘れずにハローワークへ
指定された失業認定日にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出します。
求職活動とは、説明会に出席したり、資格試験を受けたり、履歴書を書いて送ることを言います。
起業準備やハローワークのパソコンで検索をしただけでは求職活動とみなされないので注意しましょう。
「就活をしているけれど、失業中である」と認められ、失業認定を受けることで、はじめて給付金をもらう権利が生じます。
3-5 受給|振込
失業認定日から、原則5営業日後に指定した口座に失業保険のお金が振り込まれます。
これ以降失業保険をもらうときは、1か月ごとに3-4、3-5の手続きを繰り返します。
なお、失業保険をもらえる期間は、原則として離職の翌日から1年間になります。
この期間を過ぎると、失業保険がもらえません。
4章 失業保険以外でお金を受け取るための選択肢
失業保険をもらう以外にお金を受け取る方法としては、①退職金と②未払い残業代の請求があります。
4-1 退職金
会社の就業規則や退職金規定に、退職金規定についての定めがある場合、あなたは退職金をもらうことができます。
そもそも、退職金は賃金の後払いのような性格や、「長い間頑張って働いたことに報いてほめたたえる」という意味があります。
そのため、懲戒解雇の理由が、今までの頑張りを打ち消してしまうほど悪質でなければ、解雇された者も退職金をもらえるのです。
懲戒解雇された場合の退職金については、以下の記事をあわせて参照してください。
5分で分かる!懲戒解雇で退職金を貰う条件と方法―チェックリスト付き
4-2 残業代請求
未払いの残業代がある場合は、退職前・後を問わず、会社に支払いを請求することができます。
未払い残業代はあなたが思った以上に高額になることもありますので、いくらになるのか確認することをおすすめします。
なお、残業代は最後の給料発生日から3年で時効にかかり、消滅してしまいます。
請求したい場合には、早めに行動に移しましょう。
【退職後でも可!】残業代請求の2つの方法と在職中から集めることができる証拠
まとめ
いかがだったでしょうか。最後に簡単にまとめてみましょう。
・懲戒解雇でも失業保険をもらうことができる
・懲戒解雇の場合には退職理由が自己都合になるので、失業保険をもらう際に以下の3つの点で不利になる
①受給期間
②給付制限
③金額
・失業保険の手続きはハローワークで行う
・失業保険を最大限貰うには、早めの手続きが重要
・可能であれば①退職金②未払いの残業代を請求する
懲戒解雇されたからと言って、失業保険をもらわないのはもったいないです。すぐに手続きを始めましょう。