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5分で分かる!懲戒解雇で退職金を貰う条件と方法―チェックリスト付き

QUEST法律事務所

代表弁護士住川 佳祐

懲戒解雇で退職金がもらえるか心配な男性

「懲戒解雇されてしまったら、退職金ももらえない」

あなたはこのように思っていませんか?

確かに、「懲戒解雇の場合には退職金を支払わない」という就業規則・退職金規定を置いている会社がほとんどです。しかし、このような規定があっても、実際には退職金をもらえるケースがあるのです。

そのため、懲戒解雇されたからと言って、退職金がもらえるかどうかを確認せずに辞めてしまうのは非常にもったいないと言えます。

そこで、この記事では、

・退職金の仕組み
・懲戒解雇されても退職金がもらえる条件
・実際に退職金をもらう方法

について解説します。

懲戒解雇された場合も、しっかり退職金を受け取りましょう!

懲戒解雇の退職金に関するポイント


1章 法律的に見る退職金の仕組み

実は、退職金は法律によって決められた権利ではありません。

就業規則や退職金規定に「○○の場合、退職金を支払う」と書かれ、その条件を満たして初めて退職金をもらうことができるのです。

社員
うちの会社の就業規則には「退職金を支給する」と書いてあるから、絶対退職金がもらえるんだな!

ところが、ほとんどの就業規則や退職金規定にはこのような条文が置いてあります。

第○条 (退職金の不支給要件)
1. 次の各号の一に該当する者については、退職金を支給しない。但し、事情により 第 10 条に規程する自己都合退職金支給率を適用して算定した退職金の支給額を、 減額して支給することもある。
① 就業規則に定める懲戒規程に基づき懲戒解雇された者
②(略)

この規定があると、あなたと会社は「懲戒解雇した場合、退職金は支払いません」という内容の契約を結んだことになります。

そのため、会社は懲戒解雇をされたあなたに対し、退職金を支払う義務を負わないのです。


2章 懲戒解雇をされても退職金をもらえることがある

懲戒解雇をされたからと言って、退職金をあきらめてはいけません。解雇の理由によっては、退職金がもらえることもあるのです。

2-1 退職金がもらえる条件

懲戒解雇になった場合でも、退職金をもらえることがあります。

ここでは簡単なフローチャートを用意しましたので、まずは自分で確認してみましょう。

懲戒解雇時に退職金がもらえるか分かるチャート

ここからは、フローチャートの内容について説明してきましょう。

①退職金を支払わない・減額する条件について、就業規則や退職金規定に定めがない

まずは、「懲戒解雇の場合には退職金を支払わない・減額する」ということが就業規則や退職金規定に書かれているかを確認しましょう。

もしもこのような記載がないのなら、会社はあなたに退職金を支払わないといけません。

社員
どうして就業規則や退職金規定で定める必要があるの?

最初に説明したとおり、退職金をもらうためには就業規則や退職規定に退職金の定めがあることが必要です。

そして、いったん退職金についての規定を置いたら、あなたと会社の間で「退職金を支払う」という契約をしたことになります。

にもかかわらず、会社が勝手に退職金をカットしたら、一方的な契約違反になってしまいます。これでは、退職金がもらえると思っていた社員も困ってしまいます。

そのため、退職金を減らしたり、支給しない条件をあらかじめ書いておく必要があるのです。

②あなたの行為が会社での頑張りを打ち消すほど悪質な場合

「懲戒解雇した場合、退職金を支払わない」

このような規定があるからといって、常に退職金がもらえなくなるわけではありません。

懲戒解雇された場合でも、その理由が「今までの頑張りを打ち消すほど悪質な場合」でなければ、裁判所は退職金の支払いを認めているのです。

社員
どうして退職金がもらえるの?
弁護士
そもそも、退職金には賃金の後払いのような性格や「長い間頑張ったことに報いてほめたたえる」という意味があるからです。

今までの頑張りに対して退職金が支払われるのであれば、これを打ち消すほど悪いことをしなければ、退職金をもらう権利は残ります。

社員
じゃあ、実際にどのようなケースでは、退職金が支払われたんだろう?

2-2 懲戒解雇でも退職金が出た事例・出なかった事例

では、実際のケースではどのような場合に退職金が支払われたのでしょうか。

【退職金が支払われたケース|鉄道会社の社員が電車で痴漢】
ある鉄道会社は、電車内での痴漢撲滅に取り組んでいました。そのような中で、まさかの自社社員Xが電車で女子高生に痴漢を働いたのです。社員の一人が身元引受のために警察署にいって聞かされたのは…「Xさんは、これが初犯ではありません。」実は、Xは以前にも数回痴漢で捕まっていたのです。
「痴漢撲滅キャンペーンをしている会社の社員が痴漢をするなんて、あるまじき行為!」
会社はXを懲戒解雇とし、退職金を支払いませんでした。

 

→裁判所は、
・Xの行為は信用できないものであるが、会社の信頼を裏切ったとまではいえない
・今まで20年間の勤務態度は良かった

ことから、本来の退職金の3割を認めました。
(東京高判平成15年12月11日)

弁護士
会社に対する裏切りの程度が強くない場合には、退職金を支払わないといけないのです。

例えば、業務上の横領や背任のように、会社に対して犯罪を行った場合には、会社に対する裏切りの程度は強いと言えます。

しかし、プライベートな犯罪は、会社に対して直接関係がありません。そのため、今回のケースでは裏切りの程度は強くないと判断されたのです。

弁護士
ただし、やはり悪いことをしているには変わりないので、退職金の減額はされてしまいます。
社員
プライベートな犯罪なら、何をしても退職金がもらえるのかな。

【退職金が支払われなかったケース|高校職員が酒気帯び運転】
高校職員のYは町内の夏祭りの打ち合わせ会で飲酒(瓶ビール2本、缶酎ハイ2本)をし、そのまま運転をしたことで検挙されました。本人は飲酒運転をしたことを学校に報告しなかったのですが、匿名の電話があったため、これが明るみに出ました。
この結果、Yは免職になり「非違行為」をしたとして2500万円の退職金がもらえませんでした。
(名古屋高裁平成25年9月5日)

 

→裁判所は、
・39年間の勤務態度に問題はない
としつつも、
・運転時のアルコール濃度が最下限の3倍を超えており、悪質な飲酒運転であったこと
飲酒運転の撲滅を指導する立場にありながら、飲酒運転をしたこと
・高校の生徒や保護者など、地域社会の信頼を損ねたこと
から、退職金の支払いを認めませんでした。

このケースも、Yがしたのはプライベートな犯罪です。しかし、退職金の支払いは一切認められませんでした。

弁護士
このケースでも、裏切りの程度がポイントになります。

Yは学校の先生だったので、生徒や地域の人のお手本にならないといけない立場にあります。飲酒運転をするということは、このような人たちの信頼を損ね、学校に対する強い裏切りと言えます。

弁護士
このように、裁判所は、解雇の理由となった事情が会社に対する裏切りになるかをさまざまな要素から判断しています。

では、実際に退職金を請求する場合には、どのようなアクションを起こしていけばよいのでしょうか。


3章 退職金をもらおう!今からできる対処法

実際に退職金請求をする場合の流れや証拠について説明します。

3-1 弁護士に相談してからの流れ

懲戒解雇での退職金の請求の流れ

退職金を請求するためにもっとも良い方法は弁護士に相談することです。弁護士でないと、本当に退職金がもらえるケースなのか判断が難しいからです。

弁護士
最近は相談料無料の弁護士事務所も増えています。まずは相談に行きましょう。

弁護士に依頼すれば、会社は「交渉」の段階で退職金の支払いに応じることが多いです。

労働審判に進むこともありますが、「訴訟(裁判)」と比べれば、はるかに短い時間・手間で退職金を取り戻すことができます。

弁護士
退職金は、退職金の支払い日から5年で時効にかかり消滅します。

もし万が一、弁護士に相談した結果、退職金をもらえないと言われたとしても、未払いになっている残業代があれば支払ってもらえる可能性があります。

残業代の請求については、以下の記事を参照してください。

時効を迎える前にアクションを!未払い残業代を請求するベストな方法とは?

3-2 そろえておくべき証拠一覧

退職金を請求する場合には、以下の証拠を集めておきましょう。

・就業規則
・退職金規定
・退職金について記載された雇用契約書
・退職金が支給されることを示したメール、書面、録音
・退職金が支払われる旨、記載された求人票

弁護士
手元に就業規則や退職金規定がなくても、弁護士であれば開示請求をすることができます。

退職金の具体的な計算方法や相場については、以下の記事を参照して下さい。

退職金とは?退職金の正しい意味や平均相場、もらい方までを徹底解説


まとめ

いかがだったでしょうか。最後に簡単にまとめてみましょう。

【退職金がもらえる条件】
①退職金を支払わない・減額する条件について、就業規則や退職金規定に定めがない
②②あなたの行為が会社での頑張りを打ち消すほど悪質な場合

【退職金をもらう方法】
・弁護士に相談し、交渉→労働審判→裁判の順で進めていく。
・以下のような証拠をそろえておくと相談がスムーズに進む。

・就業規則
・退職金規定
・退職金について記載された雇用契約書
・退職金が支給されることを示したメール、書面、録音
・退職金が支払われる旨、記載された求人票

自分のケースでは退職金がもらえるのか、判断がつかないこともあるでしょう。そのようなときも、まずは軽い気持ちで弁護士に相談してみましょう。