
あなたは、トラック運転手の労働時間について、
「労働時間は平均何時間くらいなんだろう?」
「労働時間に関するルールはあるのかな?」
「労働時間が違法な場合の対処法を知りたい」
と思っていませんか?
トラック運転手は長時間労働になりがちな職業ですので、自分自身の労働時間は長いのか、違法ではないのか気になりますよね。
結論から言えば、トラック運転手の労働時間は平均210時間(月)程度というデータがあります。
しかし、実際にはもっと長時間であるのが実態で、中には「違法」な状況で働いている人も少なくないと思われます。
なぜなら、実は「荷待ち時間」や「点呼」「渋滞による遅れ」などの時間も、労働時間にカウントすることができ、それらをカウントせずに不当に低い賃金で働かされているトラック運転手が多く見受けられるからです。
そのため、あなたが知っておくべきなのは、トラック運転手の労働時間の正しいルールと違法性の判断基準です。
そこでこの記事では、まずはトラック運転手の労働時間の実態について紹介し、次にトラック運転手の労働時間に関する労働基準法上のルールについて詳しく解説します。
さらに、違法な長時間労働をしている場合の対処法についてもお伝えします。
この記事から正しい知識をしっかり得て、今後の仕事生活に活用してください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■トラック運転手の労働時間の実態
■トラック運転手の拘束時間、労働時間、休憩時間
■労働時間が違法な場合の対処法
- 労働基準監督署への相談
- 他の運送会社への転職
目次
1章:トラック運転手の労働時間は平均210時間!実態と長時間労働の理由を解説
トラック運転手は労働時間が長時間になりがちです。
あなたもトラック運転手として働いているなら、まずは、
「トラック運転手の労働時間は何時間くらいなのか」
「トラック運転手の労働時間が長時間化しがちなのはナゼなのか」
について確認することをおすすめします。
そこでまずは、
- トラック運転手の労働時間の実態
- トラック運転手の労働時間が長時間化しがちな理由
について、順番に解説します。
1−1:トラック運転手の労働時間の実態
厚生労働省による、業界・職種別の労働時間や給与の調査「賃金構造統計調査」によると、平成29年のトラック運転手の労働時間は以下のようになっています。
これをみて分かるように、トラック運転手の労働時間の平均は、月「210時間」です。さらに、最も労働時間が長いのは30代前半の「215時間」であることが分かります。これは、1日にすると大体10時間労働していることになります(月22日出勤の場合)。
残業は、最も多い30代前半で月に38時間あることが分かります。これは、1日当たりに2時間弱の残業がある計算です。
そこで、次に会社だけでなくトラック運転手それぞれも調査されたデータを見てみましょう。
《車種別に見た1運行の拘束時間と内訳》
2章で詳しく解説しますが、トラック運転手の場合は、労働時間は以下のように決められています。
つまり、
拘束時間–休憩時間=労働時間
になるのです。
そこで上記のデータを見ると、1日の平均拘束時間が「12時間26分」、1日の平均休憩時間が「1時間26分」ですので、
12時間26分-1時間26分=11時間
と、1日あたりの労働時間は11時間程度になることが分かります。
月の出勤日が22日だとすると、
22日×11時間=242時間
となり、賃金構造統計調査の結果よりも労働時間は長くなる結果になります。
1−2:トラック運転手の労働時間が長時間化しがちな3つの理由
トラック運転手の労働時間が長時間化しがちなのには、以下のような理由があります。
- 荷待ち時間の発生
- 道路状況による影響
- 人手不足
それぞれ、簡単に解説します。
1−2−1:荷待ち時間の発生
トラック運転手の場合、運転時間以外にも荷待ち時間が発生するのが一般的です。
先ほどの調査を見ると、荷待ち時間は、トラックの種類全体の平均で、1日「48分」発生しています。
特にトラックが大型になるほど荷待ち時間が長くなる傾向があり、大型トラックで平均「51分」、トレーラーの場合は平均「1時間1分」も発生しています。
毎日1時間前後、1ヶ月で20時間前後も荷待ち時間が発生するのですから、これがトラック運転手の労働時間が長時間化する原因の1つになっているのです。
しかも、運送会社の中には「荷待ち時間は労働時間とはカウントしない」と主張し、荷待ち時間によって残業になっても「残業代が出ない」ということもあります。その場合「長時間労働・低賃金」という悪質な労働環境になっていることがあります。
1−2−2:道路状況による影響
トラック運転手の場合、労働時間の大半が運転時間です。
先ほどの調査を見ると、1日の平均で運転時間は「6時間31分」もあるのです。
そのため、渋滞が発生していたり、何らかの事情でコースを変更しなければならなかったりすると、労働時間が大幅に伸びてしまうことがあります。
このように、道路状況によって労働時間が影響されるというのも、労働時間が長時間化する原因の1つです。
1−2−3:人手不足
トラック運転手が不足していることも、トラック運転手の労働時間が長時間化してしまう原因の1つです。
運送会社への調査によると、トラック運転手が不足していると考えている会社は、全体の「68.8%」も存在しています。
《トラック運転手の不足状況》
※国土交通省「トラック運送状況の実態調査結果」
そして、運送会社は運転手が不足した場合に、以下のようなことで対応しています。
この結果を見て分かるように、トラック運転手が不足している場合は、運転手の早出、休日出勤や、下請け、傭車(※)で対応することも多いのです。そのため、人手不足がトラック運転手の長時間労働の原因になっているのです。
※傭車とは、自社の仕事を下請けや個人の運送業者に依頼することで、人手不足に対応することです。
2章:こんな場合は違法!トラック運転手の労働時間の法的なルール
トラック運転手は、長時間労働になりがちなだけでなく、違法な状況で労働させられていることも多いです。
そのため、重要なのは労働時間についてルールをしっかり理解した上で働くことです。
それでは、トラック運転手の労働時間のルールについて詳しく解説します。
2−1:トラック運転手の拘束時間
先ほども簡単に触れましたが、トラック運転手の場合は「拘束時間」「労働時間」「休憩時間」のそれぞれを区別して把握する必要があります。
トラック運転手の場合、始業から終業までの時間を「拘束時間」として考えます。この拘束時間の中に、労働時間と休憩時間があります。
上記のルールに違反すると違法ですので、3章でお伝えする対処法を実践することをおすすめします。
2−2:トラック運転手の労働時間
さらに、先ほどの図に示したとおり、労働時間の中には「作業時間」と「手待ち時間(荷待ち時間)」があります。
作業時間とは、
- 運転
- トラックの整備
- 荷物の積み下ろし
- 事務作業
など、なんらかの業務を遂行している時間のことです。
手待ち時間(荷待ち時間)とは、荷物の積み卸しのために待機している時間のことです。
運送会社の中には、
「手待ち時間(荷待ち時間)は労働時間ではなく休憩時間だ」
と運転手に伝えていることもありますが、法律上のルールでは手待ち時間(荷待ち時間)も労働時間になるのです。
手待ち時間(荷待ち時間)も労働時間にカウントすることで、残業代が増えるケースも多いです。そのため、自分の場合はしっかり労働時間をがカウントされているか確認することをおすすめします。
2−3:トラック運転手の休憩時間
拘束時間のうち、休憩時間は労働時間とは区別されます。そのため、休憩時間は労働時間としてカウントされません。
ただし、運送会社の中には、
「休憩を取ると仕事が終わらないような過密スケジュールであるため、休憩が取得できない」
「実際には休憩を取得できていないのに、休憩を取得していることにされる」
という会社もあります。
しかし、休憩中に実際に休憩していたと言えない場合は、休憩ではなく労働時間としてカウントされることがあります。
労働基準法上、休憩は、
- 労働時間が6時間以内の場合:ナシ
- 労働時間が6時間を超えて8時間まで:45分以上
- 労働時間が8時間を超える:1時間以上
というルール通りに取得できなければならず、しかも以下の条件を満たしていなければ違法です。
《休憩時間の3つの原則》
- 休憩は労働時間の途中で与えられる
- 休憩中は労働から解放されている必要がある
休憩について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
労働基準法上の45分・60分の休憩の「3つの原則」正しいルールを解説
3章:労働時間が違法な場合の2つの対処法
あなたが違法な状況で働いている場合、これから紹介する対処法を実践することをおすすめします。
なぜなら、違法な会社で働き続けると、
- 長時間労働で疲労が蓄積され、健康に影響する
- 本来もらえるはずの残業代や休日手当がもらえず、大きな損をしてしまう
という可能性があるからです。
そこで、
- 労働基準監督署に相談する
- きちんとルールを守る運送会社に転職する
という対処法を解説します。
3−1:労働基準監督署に相談する
あなたが、
- 会社の違法行為を暴きたい
- 会社に何らかのダメージを与えたい
- 異常な長時間労働など、違法な状況を改善して欲しい
という場合、労働基準監督署に相談するという選択肢があります。
- 会社の行為や自分の状況について、法律上正しいアドバイスをもらえる
- 会社の違法行為が明らかな場合、会社に対して「調査」「是正勧告」などの対応が取られる
ということが期待できます。
※是正勧告とは、会社に対して「違法な状況を改善しなさい」と命令することです。
ただし、労働基準監督署に相談しても、実際に何らかの対応を取ってくれるとは限りません。なぜなら、会社が全国に400万社あるのに対して、労働基準監督官の数は3000人程度であり、明らかに人員不足だからです。
そのため、「残業代を取り返したい」などの要求よりも、労働災害や危険作業など人命に関わる相談が優先され、あなたの相談では動いてもらえない可能性も高いです。
3−2:別の運送会社に転職する
「今の状況から抜け出したい」
「労働の対価として、しっかり残業代、休日手当、深夜手当などをもらいたい」
という場合、きちんと法律上のルールを守る運送会社に転職することをおすすめします。
きちんとルールを守る運送会社に転職することで、
- 働き過ぎによる健康への影響を避けられる
- 仕事とプライベートを両立できる
- 残業代、休日手当、深夜手当をしっかりもらい、賃金が上がる
などのことが期待できます。
さらに、転職時には元の会社に残業代を請求することもできます。
労働問題にも積極的に取り組んできた私の経験上、たくさんのトラック運転手の方から残業代の請求を依頼して頂いています。トラック運転手は、残業代をごまかされるケースがとても多いのです。
残業代請求を検討している場合は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
この記事だけ読めばOK!トラック運転手の正しい残業代と取り返す方法
まとめ
いかがでしたか?
最後にもう一度今回の内容を振り返ってみましょう。
まず、トラック運転手の労働時間の実態は以下のようになっています。
トラック運転手の拘束時間、労働時間、休憩時間について、以下のようになっています。
労働時間が違法な場合は、
- 労働基準監督署への相談
- 他の運送会社への転職
という対処法を実践することをおすすめします。
労働時間のルールを正しく覚え、損しない働き方を実践していきましょう。
【参考記事一覧】
労働基準法上の休憩について、詳しくは以下の記事で解説しています。
労働基準法上の45分・60分の休憩の「3つの原則」正しいルールを解説
トラック運転手の残業代の実態やルール、取り返す方法などについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。