- 2024.03.25
- 2024.11.18
- #トラック運転手休み
【トラック運転手の休みの実態】休みのルールや違法な時の対処法を解説
この記事を読んで理解できること
- トラック運転手の休みの実態
- トラック運転手の休みのルール
- トラック運転手の種類ごとの休み
- 違法に休みがない場合の対処法
あなたは、
「トラック運転手の休みはどれくらい?」
「トラック運転手の休みのルールが知りたい」
「トラック運転手は有給休暇が取れるのだろうか?」
などとお考えではないですか?
結論から言えば、現在のトラック運転手の労働環境では、休みが少なく休日出勤も多いという実態があります。
近年、ネットショッピングの利用が増え宅配便の量が急増し、トラック運転手の業務量も大幅に増えていますが、実際は6割以上の運送会社がトラック運転手の慢性的な人手不足に悩んでいるからです。
しかし、トラック運転手にも労働基準法上のルールがあるため、異常に休みが少ない場合は、「違法」である可能性があります。
そこでこの記事では、トラック運転手の休みの実態と休みのルールについて詳しく解説します。
さらに、トラック運転手の中でも休みが取りやすい職種、取りにくい職種についても紹介します。
最後までしっかり読んで、働き方で損しないように行動していきましょう。
1章:トラック運転手の休みの実態
トラック運転手の休みの実態とはどんなものなのか、項目としては次の3つがあげられます。
- 年間休日の平均
- 週休と年末年始の休み
- 休日出勤
それぞれ解説していきます。
1-1:年間休日の平均
トラック運転手の年間休日の平均は、運転するトラックの大きさや輸送距離、会社規模等によって異なるため、明確なデータは示されていません。
ただ、厚生労働省の平成30年の「就労条件総合調査」によると、全産業の労働者1人平均年間休日総数は「113.7日」となっていますが、運輸業・郵便業では「106.6日」と少なくなっています。
また、令和4年の「就労条件総合調査」によると、労働者 1 人平均年間休日総数は「115.3 日」となっていて、平成30年の調査より増えていますが、産業別のデータは示されていません。
最近では大手の運送会社を中心として、トラック運転手の労働環境の改善も進んでいますが、いまだに慢性的な人手不足が続いているため、なかなか年間休日数を増やせない会社が多いです。
1-2:週休と年末年始
令和3年の国土交通省の調査によると、トラック運転手の休日の実態について、以下のような結果が出ています。
これを見ると、トラック運転手の約1割が、1週間に1日の休日も取れなかったという実態が分かります。
また、車種別に見ると、大型トラックほど休日を取得できないトラック運転手の割合が11.6%と高く、普通トラックは3.2%とかなり少ないことが分かります。
現在の運送業界は、完全週休2日制で土日祝日休みとしている会社もある一方で、週休2日どころか週休1日がやっと取れるか、といった会社も少なくないというのが実態です。
法律上、会社は少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりませんが、もし守られていない場合は違法となります。
次に、トラック運転手の場合は、その職種によって、土日休みが取得できないケースがあります。
例えば、小型トラックのエリア配送は、定期運行が多く労働時間のずれが発生しにくいため、休みが取りやすく、土日の休みも取れることがあります。
しかし先の調査結果にもあるように、大型・長距離のトラック運転手ほど休みが少なく、土日の休みも取得しにくいのが現状です。
特に食品輸送などは、どんな時期でも頻繁に運送する必要があるため、土日祝日やGW、盆正月も、ローテーションで休日を取得します。
そのため、休日は週に1日程度で、さらに取得できる曜日もバラバラ、年末年始もまとまった休みがない、という実態があるようです。
1-3:休日出勤
トラック運転手は、不規則な勤務体系になることが多いうえに、天候や道路状況、荷主・荷受け先の都合で拘束時間が伸びる場合もあるため、勤務シフトが組みにくいのが現状です。
また、運送会社は、トラック運転手の慢性的な人手不足のため、配送の依頼を受けた際に運転手が不足している場合の対応が求められます。
その場合、令和3年の「トラック輸送状況の実態調査結果」によると、次の図のような回答が得られました。
この調査によると、ドライバーが不足している時の対応として、平成27年の調査に比べて「ドライバーの早出残業で対応」の件数が最も増えており、次に「ドライバーの休日出勤で対応」が増えています。
実際会社の勤務シフトによって、最低限の休日数が確保されていたとしても、配送の都合で休日を取ることが難しい場合もあります。
また、会社によっては、休日出勤しなければ立ち行かないという会社もあるようですが、休日出勤は2週間に1回までと定められているので、休日出勤が続くようであれば違法となります。
このようにトラック運転手は、その会社や職種によっては、違法な状況で働かされる場合があります。
そのため、休みをしっかり取りたい場合は、3章で解説する運送会社を選んで就職・転職することをおすすめします。
それではこれから、トラック運転手の休みのルールについて、詳しく解説していきます。
2章:トラック運転手の休みのルール
トラック運転手の場合は、変則的な勤務体系が多いため、休みについて他の職種とは異なるルールが適用されます。
そのため、しっかり把握していない場合は、知らず知らずのうちに違法な状況で働かされている可能性があります。
トラック運転手の休みのルールを知る項目としては、次の5つがあげられます。
- ドライバーの拘束時間と休息期間
- トラック運転手の具体的な休日のルール
- トラック運転手の休日出勤ルールと賃金
- トラック運転手の有給休暇
- トラック運転手は休み方が不規則になる場合がある
それぞれ解説していきます。
2-1:ドライバーの拘束時間と休息期間
トラック運転手の休みのルールを把握するためには、まずは「拘束時間」と「休息期間」についてのルールを知っておく必要があります。
拘束時間とは、1回の勤務における、始業から終業までの労働時間と休憩時間を合わせた時間のことです。
休憩時間には、仮眠の時間も含まれます。
拘束時間は、原則として1日13時間までとなっていますが、16時間までなら延長可能です。
また、拘束時間が15時間を超えることが出来る日数は、1週間に2回までとなっています。
次に、1か月の拘束時間は293時間までで、労使協定がある場合は、最大320時間まで延長が可能です。
ただし、拘束時間が320時間まで延長できるのは、1年間に6か月までで、1年間の総拘束時間は3,516時間(293時間×12か月)までとなっています。
休息期間とは、トラック運転手が連続して労働し続けることがないように設定されている、勤務と次の勤務の間の自由な時間のことです。
休息期間には、生活時間として睡眠時間も含まれます。
休息期間は、勤務終了後8時間以上の連続した時間が1休息になります。
もしあなたが、休息期間8時間未満で働かされている場合は、違法となるため、労働基準監督署に相談することをおすすめします。
労働基準監督署とは、労働基準法にのっとって会社を監督・指導する行政機関のことで、無料で相談できます。
2-2:トラック運転手の休日のルール
次に、トラック運転手の、休日のルールについて紹介します。
休日には、法定休日といわれる労働基準法上で定められた休日と、労使間の取り決めなどによって定められた法定外休日があります。
会社が社員に与える法定外休日は、会社ごとにルールが異なるため、ここでは法定休日のルールを解説します。
トラック運転手の場合、休日は必ず「休息期間+24時間の連続した時間」として考えます。
つまり、休息期間は原則として 8 時間以上確保されなければならないため、休日は「休息期間 8 時間+24時間=32時間」以上の連続した時間となります。
もし拘束時間が延びて、休日が32時間に満たない場合は、違法となります。
2-3:トラック運転手の休日出勤ルールと賃金
さらに、トラック運転手には、休日出勤に関するルールもあります。
先に解説したように、法律上どんな仕事でも週に1日以上の休日(法定休日)を取ることが義務づけられていますが、労使間で残業や休日出勤を認める協定(36協定)を締結している場合は、残業や休日出勤も可能になります。
ただし、トラック運転手の場合は、労働の負担が重くならないように、休日出勤は2週間に1回までと定められています。
また、休日出勤を行った場合は、通常の賃金より割増しされ、法定休日の割増率は「1.35」と定められていて、法定外休日の場合は「1.00」ないし「1.25」となり会社の就業規則等によって異なります。
もし休みが一切取得できなかったり、休日出勤しても休日手当が出ていなかったら違法ですので、労働基準監督署や弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。
2-4:トラック運転手の有給休暇
有給休暇については「会社の許可がないと取得できない」と誤解されることが多いようですが、実は有給休暇は、会社に申請すれば必ず取得することができます。
なぜなら、有給休暇は法律上、以下の日数が与えられることが決められているからです。
会社は、社員からの有給休暇の申請を拒否することができません。
もし、有給休暇を取得するとペナルティが与えられるようなことがあれば、違法です。
2-5:トラック運転手は休み方が不規則になる場合がある
トラック運転手は、複数の取引先を相手とするため、平日、土日など曜日に関係なく稼働することが求められます。
そのため、多くの会社では、トラック運転手の勤務をシフト制としており、休み方が不規則になる場合があります。
2-5-1:週休2日の場合
週休2日制とは、年間を通して、月に1回以上週2日の休みがあることを言います。
つまり、1か月のうち、1週でも2日休みの週があれば、他の週は1日しかなくても週休2日となるのです。
トラック運転手の多くは、シフト制の不規則な休み方で働いており、週休2日の場合でも、完全週休2日で働いている人は多くありません。
2-5-2:週休1日の場合
トラック運転手の中には、月に1回以上週2日の休みがある週休2日制ですらなく、週休1日で働いている方も多くいます。
労働基準法は、毎週1日もしくは4週間を通じて4日以上の休みを与えなければならないと規定しています。
週休1日の少ない休みで働いているトラック運転手の方も、休日が4週間を通じて4日を下回る場合は違法労働となるため注意が必要です。
3章:トラック運転手の種類ごとの休み
トラック運転手は、配送距離や会社の規模など、その種類ごとに休みに特徴があります。
主な種類分けとして、次の3つがあげられます。
- 短距離、中距離の配送業務
- 長距離トラック運転手
- 大手の運送会社
それぞれ解説していきます。
3-1:短距離、中距離の配送業務
短距離、中距離の配送業務を行うトラック運転手は、休みが取りやすい傾向があるようです。
なぜなら、短距離、中距離の配送は1度の運転距離があまり長くないため、道路状況や天候、荷受人の都合などで多少のズレが生じても、大幅に仕事の時間が延びることはないからです。
そのため、勤務スケジュールも調整しやすく、乗務員の変更も容易なため、休みや有給休暇も取りやすいといえます。
3-2:長距離トラック運転手
長距離トラック運転手の場合は、運転する距離が長いため、労働時間も長時間になるので、休みが取りづらい傾向があります。
また、配送距離が長く、土日祝日に関係なく運転業務が継続するため、勤務スケジュールの調整も限られてきます。
そのため、もしあなたが休みを取りやすい仕事がしたい場合は、トラック運転手の中でも短距離、中距離の仕事を選ぶことをおすすめします。
3-3:大手の運送会社
大手の運送会社のトラック運転手も、休みを取りやすい傾向があります。
その理由としては、次の2つです。
①トラック運転手が多いため
大手の方がトラック運転手の数が多く、業務量もシステムで管理されているため、急に業務が発生したり事故で仕事が長時間化したりしても、人員の量で対応が可能です。
業務の調整が柔軟であるため、休みも取りやすくなります。
②コンプライアンスがあるため
大手の運送会社の場合、トラック運転手を違法に働かせ、それが明るみになると、企業イメージが傷つきます。
大手の会社ほどコンプライアンスを大事にせざるを得ないため、休みが違法に取れない状況で働かせられる可能性は低いはずです。
一方で、規模の小さい中小企業だと、
- 社員が少ないため、イレギュラーに対応することが難しい
- 社員数が少ないため、違法に働かせても告発されないようにコントロールできる
などの理由から、休みが取りにくいことも多いようです。
もちろん休みが取れるかどうかは、会社によって異なりますので、詳しくは面接時などに効いてみることをおすすめします。
それでは最後に、違法に休みがない場合の、対処法を解説します。
4章:違法に休みがない場合の対処法
2章でお伝えした通り、
- 休息期間が8時間に満たない
- 休日が休息期間とプラスしても32時間に満たない
- 法定休日の労働(休日出勤)が毎週ある
- 有給休暇の取得を拒否される
など違法な勤務状況の場合は、なんらかの行動をおこして現状を変えることをおすすめします。
違法な場合の対処方法としては、次の3つがあげられます。
- 会社に相談する
- 労働基準監督署に相談する
- ホワイトな運送会社に転職する
それぞれ解説します。
4-1:会社に相談する
今の会社の勤務状況が、休日のルールを守られていない場合は、まずは会社の社長や上司に相談することも有効な対処法です。
会社側が違法と知って業務を行わせている場合もありますが、業務の改善に取り組むきっかけになる場合もあります。
なぜなら、運送業界も人手不足が続き、働き方改革も進んでいるため、会社側も生き残っていくためには、労働環境の改善に取り組む必要があるからです。
4-2:労働基準監督署に相談する
もし、違法な勤務体制で働かされている現状を変えたい場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。
労働基準監督署とは、労働基準法にのっとって会社を監督・指導する行政機関です。
労働基準監督署は、労働者からの相談や申告(※)を受けると、労働基準法にのっとったアドバイスをしてくれたり、会社の違法行為が認められる場合は、会社への立ち入り調査や「こう改善しなさい」という是正勧告をしてくれる可能性があります。
ただし、労働基準監督署は、労働者からのすべての申告で動くわけではありません。
それは、全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約2400人しかおらず、明らかに人員不足だからです。
そのため、危険作業や労働災害などの「人命に関わる問題」などが優先して処理されるため、直ちに動いてもらえないことが少なくありません。
4-3:ホワイトな運送会社に転職する
もう一つの選択肢は、しっかり休みが取れるホワイトな運送会社に転職することです。
「休みが取れないからといって転職するのは、ちょっと抵抗がある」
と思われるかもしれませんが、今の会社に在籍したままでは現状は変わりません。
そのまま違法な状況で働かせられ続けると、疲労が回復できず重大な事故を起こしてしまう危険性もあります。
また、最近では運転手不足や働き方改革の影響で、休日や給料など運転手の待遇を見直す運送会社も増えています。
そのため、できるだけホワイトな運送会社を探して、就職・転職することをおすすめします。
ブラックな運送会社、ホワイトな運送会社の見分け方について、詳しくは以下の記事で解説しています。
ブラックな運送業の実態と見分ける7つの判断基準や対処法を弁護士が解説
まとめ
最後に今回の内容を振り返りましょう。
- トラック運転手の約1割は、1週間に1日も休日がない
- トラック運転手は土日休みが取得できないケースも多い
- 大型・長距離トラックほど休みが取りにくく、土日の休みも取得しにくい
- 休息期間
→拘束時間と拘束時間の間に、8時間以上の休息期間が必要 - 休日
→拘束時間8時間+休日24時間=32時間が取得できなければならない
→休日出勤は2週間に1日まで - 有給休暇
→申請すれば必ず取得できる
- 短距離、中距離の運送会社
- 大手の運送会社
- 会社に相談する
- 労働基準監督署に相談する
- ホワイトな運送会社に転職する
この記事の内容をしっかり覚えて、損しないように行動していきましょう。