【やさしく解説】トラック業界2024年問題のドライバーへの影響と対応策

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

【やさしく解説】トラック業界2024年問題のドライバーへの影響と対応策
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 物流・トラック業界の2024年問題とは
  • 2024年問題のドライバー個人への影響
  • 転職時に未払い残業代を請求することもできる

あなたは、

  • 物流・トラック業界の2024年問題について知りたい
  • 2024年問題のトラックドライバーへの影響が知りたい
  • 2024年問題で収入が減ったらどうしよう?

などとお考えではないですか?

結論から言うと、2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されるため、残業代が減って収入が減少する可能性があります。

全日本トラック業界が2022年10月に行ったアンケート調査では、時間外労働が年960時間を超えるドライバーは、全体で29.1%、長距離では38.6%いると回答されています。

時間外労働が年960時間を超えるドライバー

国土交通省:物流の2024年問題について

そのため、時間外労働の上限が年960時間に制限された場合、全体では約3割、長距離では約4割のドライバーが上限規制を超えた時間外労働は行えないため、収入が減ってしまう可能性があります。

そこでこの記事では、

1章で物流・トラック業界の2024年問題について、

2章では2024年問題のドライバー個人への影響について、

3章では転職時に未払い残業代を請求する方法について解説します。

最後までしっかり読んで、今後の行動や仕事選びに役立ててください。

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:物流・トラック業界の2024年問題とは

この1章では、物流・トラック業界の2024年問題について、法的な説明を簡単にしていきます。

トラックドライバーに具体的にどのような影響があるのか、まずその点が気になる方は、2章からお読みください。

物流・トラック業界の2024年問題と言われる中で最も大きな問題は、トラックドライバーの時間外労働の上限規制です。

時間外労働の上限規制が適用されることによって、労働時間が短くなり輸送能力が不足し、荷物が十分に運べなくなる可能性があります。

物流・トラック業界の2024年問題の概要としては、次の4つがあげられます。

  • 2024年4月から適用される時間外労働の上限規制
  • トラックドライバーの拘束時間が見直される
  • 勤務間インターバル制度が導入される
  • 働き方改革関連法によるその他の変更点

それぞれ解説していきます。

1-1:2024年4月から適用される時間外労働の上限規制

2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働の上限が、特別条項付き36協定を締結している場合でも「年960時間」となります。

特別条項付き36協定とは、「⽉45時間・年360時間」という残業時間の上限を超えた残業を可能にするために、会社と従業員との間で締結される協定のことです。

これまでトラックドライバーに対しては、時間外労働の上限規制の適用が猶予されてきたため、現状では(2023年3月末までは)今回の上限規制を超える長時間労働が認められています。

先に示したアンケート調査の結果では、2022年10月時点で全体では約3割、長距離では約4割のドライバーが「年960時間」を超えています。

そのため、2024年4月までに具体的な対応が行われない場合は、トラックドライバーの労働時間が減るため、国内物流の輸送能力が不足する可能性があります。

1-2:トラックドライバーの拘束時間が見直される

2024年4月からの時間外労働の上限規制の適用に合わせて、長時間労働・過重労働を防ぐための改善基準告示の見直しが行われました。

2024年4月以降の改善基準告示の見直し

トラックドライバーの場合、始業から終業までの時間を「拘束時間」として考えます。

この拘束時間の中に、労働時間と休憩時間があります。

終業から始業までの時間

2024年4月以降は、現行に対してこの拘束時間が減少するため、輸送能力が不足する可能性があります。

1-3:勤務間インターバル制度が導入される

勤務間インターバル制度とは、前業務の終業時刻から次の業務の始業時刻の間に、運転手の自由な生活時間として一定の休息時間を確保することです。

現行では、「継続8時間以上」となっていましたが、2024年4月以降は、「継続11時間を基本とし9時間を下限」と休息時間が延長されます。

そのため、これまで以上に配送スケジュールの管理・調整が必要になります。

1-4:働き方改革関連法によるその他の変更点

働き方改革関連法によるその他の変更点としては、次の2つがあげられます。

  • 月60時間を超える時間外労働の割増率の引上げ
  • 同一労働・同一賃金の適用

それぞれ解説していきます。

1-4-1:月60時間を超える時間外労働の割増率の引上げ

2023年4月1日から、中小企業の月60時間を超える時間外労働に対する割増率も、50%に引き上げられました。

割増率

そのため、月60時間以上の時間外労働を行っている場合は、2023年4月以降の残業代が、適正な割増率で計算されているか確認する必要があります。

さらに、時間外労働が深夜(22:00~5:00)の時間帯におよぶ場合は、

(時間外労働)1.5倍+(深夜労働)0.25倍=1.75倍

の割増率になるため、長距離ドライバーを抱える運送会社にとっては、人件費が大幅にアップする可能性があります。

そのため、運送会社によっては、ドライバーの人件費を抑えるために、月60時間を超える時間外労働が制限される可能性もあります。

1-4-2:同一労働・同一賃金の適用

働き方改革関連法では、同一労働・同一賃金が適用されています。

これは、同じ企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者の、待遇差をなくすことを目的としており、次の条件を守る必要があります。

  • 正社員と非正規雇用労働者で、基本給や賞与などの待遇に差をつけてはならない
  • 非正規雇用労働者から求めがあった場合には、待遇の差に関して理由を説明する必要がある

そのため、非正規雇用のドライバーを雇用している運送会社は、待遇の差が生じない合理的な給与体系や評価基準を設定する必要があります。

2章:2024年問題のドライバー個人への影響

物流・トラック業界の2024年問題のドライバー個人への影響として、次の4つがあげられます。

  • 労働時間が減り収入が減ってしまう
  • 休憩・休息時間が増え労働時間が管理される
  • 荷役作業の機械化や高速道路の利用が増える
  • 副業・転職のチャンスになる可能性がある

それぞれ解説していきます。

2-1:労働時間が減り収入が減ってしまう

ここまで解説したように、2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働の上限が「年960時間」となるため、2022年10月のアンケート調査では、長距離ドラーバーの約4割は、労働時間が減ることになります。

また、月60時間を超える時間外労働の割増率の引き上げのため、運送会社によっては人件費を抑えるために、各ドライバーの時間外労働を制限する可能性があります。

2-2:休憩時間・休息期間が増え労働時間が管理される

物流・トラック業界では、長時間労働・過重労働を防ぐために、トラックドライバーの拘束時間が見直されます。

そのため、トラックドライバーの拘束時間が短縮される一方、休憩時間・休息期間が増え、改善基準に沿って労働時間が管理されます。

また、1日の拘束時間は、最大で15時間、14時間超過は週2回までとなり、休息期間も最低9時間以上となるため、業務を離れた自由な時間が確保しやすくなります。

2-3:荷役作業の機械化や高速道路の利用が増える

物流・トラック業界の2024年問題では、トラックドライバーの労働時間が規制されるため、現行の輸送能力を維持するためには、荷役作業の機械化や高速道路の利用が増えることが考えられます。

また、荷主と運送会社の協力によって、荷役時間・荷待ち時間の短縮や、運行時間の大幅な削減を図ることが重要です。

一例としては、

  • 出荷・受け入れ体制の見直し
  • パレット化によるフォークリフト等の利用
  • リードタイムを設け積載率アップ
  • 空荷での高速道路の利用

などがあげられます。

2-4:副業・転職のチャンスになる可能性がある

物流・トラック業界の2024年問題によって、トラックドラーバーの労働条件・労働環境が変わり、労働時間が短縮され自由な時間が増加すると考えられます。

ただしそれだけでは、労働時間の短縮によって収入も減ってしまうため、運送会社によってはドライバー確保のため、副業を受け入れる可能性があります。

また運送会社としては、ドライバーの労働時間が制限され輸送能力が不足するため、売上や利益が減少する可能性が高くなります。

そのため、

  • 労働環境・労働条件を改善しドライバーを確保する
  • 業務管理・勤怠管理を強化する
  • 輸配送形態の切り替えやリードタイムを調整する
  • ITシステムを導入し効率化を図る
  • 荷主との連携と適正運賃の交渉

などの業務全般にわたる改善が重要になります。

これらの取り組みは、運送会社によって大きく異なるため、その成否は企業間で大きな差が生じる可能性があります。

また、輸送能力を維持するためドライバーの増員・人材確保は、どの運送会社も最も優先すべき課題となっています。

そのため、各運送会社のリサーチをしっかり行うことで、より良い労働条件・労働環境の職場に転職できる可能性が高まります。

3章:転職時に未払い残業代を請求することもできる

転職する際には、未払い残業代を請求することもできます。

トラックドライバーの場合は、荷役・荷待ち時間や渋滞に巻き込まれた時間などが、労働時間としてカウントされていないケースが多いです。

また、適正な割増率で残業代が計算されていない可能性もあります。

そのためこの章では、未払い残業代の簡単な計算方法と、残業代の請求を弁護士に依頼する流れについて解説します。

3-1:未払い残業代や深夜手当の計算方法

運送会社を転職するさいは、未払いの残業代や深夜手当、休日手当等を請求することもできます。

例えば、

  • 基本給25万円
  • 1か月平均所定労働時間170時間

1か月平均所定労働時間とは、会社によって定められた1か月の平均労働時間のことで、170時間前後であることが一般的です。

  • 月の残業の合計:80時間
  • 月の深夜労働の合計:28時間

上記の場合は、

  • 1か月の残業代

(25万円÷170時間)×1.5倍×80時間≒17万6,470円

  • 1か月の深夜手当

(25万円÷170時間)×0.25倍×28時間≒1万294円

となり、合計金額は18万6,764円にもなります。

残業代や深夜手当は、3年分までさかのぼって請求できるため、

18万6,764円×36か月=672万3,504円

と高額になります。

トラックドライバーの場合、荷待ち時間などが労働時間にカウントされ、高額な未払い残業代が発生するケースも珍しくありません。

そのため、他の職種よりも残業代が高額になる可能性が高いです。

トラックドライバーの残業代のルールや計算方法、請求する方法などについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

【トラック運転手向け】残業代請求の全手順と正しい残業代の計算方法

3-2:残業代の請求は弁護士に依頼しよう

未払い残業代を請求する手段としてもっとも有効なのが、弁護士に依頼する方法です。

実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟(裁判)」になることは少ないです。

おそらくあなたが心配しているであろう「費用」の面でも、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。

あなたが思っているよりも、弁護士に依頼する方法は、手間もお金もかからないのです。

弁護士に依頼した場合、未払い残業代の請求は、弁護士が会社と電話や書面で交渉するだけで解決することが多いです。

そのため、訴訟(裁判)のように手間や時間がかからないことがほとんどです。

転職の際に未払い残業代がある場合は、対処方法として最も効果的な、残業代請求に強い弁護士に依頼することをおすすめします。

会社から残業代を取り返すための方法の詳細については、以下の記事を参考にしてください。

失敗しない残業代請求!有効な証拠と請求方法、ブラック企業の対処法

まとめ:物流・トラック業界の2024年問題

最後にもう一度、今回の内容を振り返ります。

【物流・トラック業界の2024年問題の概要】

  • 2024年4月から適用される時間外労働の上限規制
  • トラックドライバーの拘束時間が見直される
  • 勤務間インターバル制度が導入される
  • 働き方改革関連法によるその他の変更点

【物流・トラック業界の2024年問題のドライバー個人への影響】

  • 労働時間が減り収入が減ってしまう
  • 休憩・休息時間が増え労働時間が管理される
  • 荷役作業の機械化や高速道路の利用が増える
  • 副業・転職のチャンスになる可能性がある 

【転職する際には、未払い残業代を請求することもできる】

トラックドライバーの場合、荷待ち時間などが労働時間にカウントされ、他の職種よりも残業代が高額になる可能性が高いです。

未払い残業代を請求する手段としてもっとも有効なのが、残業代請求に強い弁護士に依頼する方法です。

物流・トラック業界は、2024年問題によって、労働条件や働き方が大きく変わる可能性が高まります。

この記事の内容をしっかり理解して、今後の行動や仕事選びに役立ててください。

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会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

弁護士法人QUEST法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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