早出で残業代が132万円も増える?すぐに分かる残業代をもらう方法

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

早出で残業代が132万円も増える?すぐに分かる残業代をもらう方法
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 早出でも残業代は支払われるべき!
  • 残業代をもらうために証拠を集めよう
  • 残業代をもらうためにすぐに行動しよう

「また今日も7:30出社・・・こんなに早く来てるのに残業代は出ないのか・・・」

あなたは残業代が払われないのに早出を強制されて、辛い思いをしていませんか?

あなたは経営者に早出は当たり前のこと」などと言われているかもしれませんが、本音では経営者はこのように思っているのです。

「朝早く来て頑張った方が早く出世できるよ。」
「早出が労働時間になるなんてバカな社員は知らないから、適当なこと言っておけば残業代を払わない分だけ儲けが増えるぜ!
「社員に残業代なんか払いたくねえなあ。 あ、夜働かせるんじゃなくて朝働かせればよくね?」
「みんな夜遅くまで仕事してもらってごめんね。 これからは働き方改革として、夜は早く帰る。 その代わり朝少し早く来て仕事しよう! 朝早く来て仕事をする人が優秀なビジネスマンなんだよ。」
早く来て働かせれば、これまで通り長時間働かせられるから何も変わんねーよ! 」

残念ながら経営者はこのように考えて、あなたをこき使おうとしているかもしれません。

実は、早出出勤でもその分の労働時間がカウントされて残業代をもらうことができる可能性が高いのです。

なぜなら、従業員に早出出勤させて残業代を払わないのは違法だからです。

早出で仕事をはじめた場合も、働き出してから8時間を超えた時間は残業時間になりますので、その分の残業代は支払われるべきなのです。

この記事を読むことで、どういう場合に早出でも残業時間と認められるのか分かり、残業代をもらうためにはどうすれば良いのか、具体的な方法が分かります。

違法な早出残業の場合は、過去3年分までさかのぼって残業代をもらえる権利があります。

しっかり最後まで読んで、働いたお金を取り戻しましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■早出でも労働時間としてカウントされるケース

  • 会社からの業務の指示があった。
  • 明示的な指示はなかったが業務上やむを得ず働いた。

早出でも働き出してから8時間を超えたら残業代が出る。

■早出でも労働時間としてカウントされる例

  1. 着替えの時間
    就業前の制服や作業服に着替える時間
  2. 開店準備
    飲食店で開店時間までの間、掃除をしたり開店の準備のため仕込みをしたりする時間
  3. 朝の体操や朝礼
    始業前の全員参加のラジオ体操や、朝礼の時間

8時間以上働いてるのに「早出だから残業代が出ない」は違法。

■早出の明らかな命令がない場合

明らかな命令がなくても「早出しなければできないような業務があった」「始業前に時間がかかる準備があった」などの場合で、早出が労働時間として認められる可能性がある。

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:早出でも残業代は支払われるべき!

「毎日早出してもらうけど、早出は残業じゃないから残業代は出ないよ」

そんなことを言われていたら違法です。

通常の就業時間外でも労働時間にカウントされるのは以下の2つの場合です。

  • 会社からの業務の指示があった。
  • 明示的な指示はなかったが業務上やむを得ず働いた。

そして、早出しても働き出してから8時間を超えた時間は残業時間になります。

それでは、詳しく解説します。

1-1:会社の指示があれば早出も労働時間

たとえば、以下のような時間は労働時間とみなされることがあります。

  1. 着替えの時間
    就業前の制服や作業服に着替える時間
  2. 開店準備
    飲食店で開店時間までの間、掃除をしたり開店の準備のため仕込みをしたりする時間
  3. 朝の体操や朝礼
    始業前の全員参加のラジオ体操や、朝礼の時間

すこし難しい言い方をすると、労働時間とみなされるのは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」です。

「使用者」とは会社のことです。

つまり、会社から「今日は残って仕事をしなさい」と業務命令で残業を指示されていた場合や、はっきり残業を指示されてなくても残業せざるを得なかった場合、残業した時間が労働時間とみなされるのです。

それでは早出出勤した場合はどうなるのでしょうか。

「仕事が終わらないなら明日から1時間早く来て取りかかりなさい」

あなたも上司からこんなことを言われたことがありませんか?

このようなことを言われていたら、上司の指示で早出しているため、早出出勤した時間が労働時間としてカウントされます。

早出が、業務命令として指示されているため、会社の指揮命令下に置かれているとみなされるからです。

また、終業時間後の労働が禁止されているが、とても仕事が終わらないため、自主的に早出して仕事をするケースも考えられます。

こうした場合も、早出した分も労働時間とみなされます。

はっきりとした業務命令はなくても、業務時間内に終わらないような仕事を指示されていた場合、これも会社の命令のもとに働いていたと考えることができるからです。

労働時間とみなされる時間

それでは、早出出勤しているときはどの時間が残業時間としてカウントされるのでしょうか。

【コラム】「早めに来てメールチェック」は労働?

ここまでご紹介したのは、社長や上司などの指示の下で早出させられていた場合です。

以下に紹介するような自発的な早出出勤の場合は、労働時間とはみなされません。

  • 始業時間より早くにきて新聞を読んでいた
  • 毎日始業15分前に来て、コーヒーを飲みながらメールチェックしている
  • 研修中に早めに来てその日の内容を予習した

これらはやむを得ない早出ではないし、業務命令があったわけでもありません。

そのため、労働時間とはみなされないことが多いようです。

1-2:早出から8時間を超えたところから残業

早出残業について知って頂くために、まずは残業時間が発生する仕組みについて解説します。

残業時間は、以下の2つのどちらか一方を超えた部分のすべての時間が当てはまります。

  1. 1日の労働時間の8時間を超えた部分
    たとえば、始業時間が9:00で終業時間が18:00(休み時間1時間)の会社の場合、9:00から働き始めたら、18:00を超えた時間がすべて残業時間になります。
  2. 1週間の労働時間が40時間を超えた部分

    月曜日〜金曜日の5日間、毎日9:00〜18:00まで働いたとすると、金曜日の18:00で1週間の労働時間の合計が40時間になります。

    そのため、一日8時間勤務の人が平日すべて出勤した場合、土曜日に少しでも出勤すると労働時間が40時間を超えるため、土曜日の労働時間のすべてが残業時間になります。

サービス残業の画像

①と②のどちらか一方でも当てはまれば、その時間が残業時間になるのです。

そしてこれを超えた残業時間については、会社は割増賃金を払うことが法律で決められています。(割増賃金についてはコラム参照)

そのため、原則これを超えた時間働かせて、残業代を支払わないのは違法なのです。

これは、早出でも当然同じことです。

たとえば、9:00から始業の会社でも8:00から出勤するように言われていた場合、17:00以降が残業時間になります(休み時間1時間を前提)。

8:00から働いているため、17:00より後も労働した場合で、労働時間が8時間を超えるからです。

早出で残業の起算点が早まる

もちろん7:00に出勤していれば16:00を超えた時間が残業時間、6:30なら15:30と、残業時間の起算点がどんどん早くなります。

つまり、早出しても働き出した時間から8時間までが通常の労働時間となり、それを超えた部分から残業時間になるのです。

就業規則で労働時間が9:00〜18:00に定められていても、1時間前に仕事をはじめていたら、8:00から労働時間にカウントします。

残業時間にカウントされるのは、就業規則で定められた終業時間後の労働だけではないのです。

【コラム】割増賃金とは?

1日8時間、週40時間のどちらかを超える労働時間は、原則的に残業時間として「割増賃金」が支払われます。

割増賃金とは、あなたの普段の時給に「割増率」がかけられた賃金のことです。

割増率には中小企業の場合、以下の4種類があると覚えてください。

  • 通常の残業時間:1.25倍
  • 法定休日(週1日は必ず休まなければならない日):1.35倍
  • 通常の深夜残業(22:00〜翌朝5:00):1.5倍
  • 法定休日の深夜残業:1.6倍

時給1,000円の人なら、通常の残業時間は1,250円、通常の深夜残業は1,500円、その週の7日目(法定休日)に働いている場合は1,350円、7日目の深夜まで働いた場合は1,600円になります。

2章:残業代をもらうために証拠を集めよう

早出も労働時間としてカウントされることが分ったでしょうか?

実際に早出が労働時間として認められた判例もあり、あなたも行動を起こせば残業代がもらえる可能性が高いです!

そして、残業代をもらうためには「証拠を集める」必要がありますので、何が有効な証拠になるのか知っておく必要があります。

それでは、

  • 早出が労働時間として認められた判例
  • 集めるべき有効な証拠

について詳しく解説します。

2-1:早出が裁判例上労働時間として認められたケース

2-1-1:制服の着用

早出出勤が労働時間として認められた判例に「三菱重工業長崎造船所事件※」があります。

この判例は、作業服・保護具を始業時刻の前に着る時間と、終業時刻後に脱ぐ時間を労働時間としたものでした。


※三菱重工業長崎造船所事件(最判平成12年3月19日民集54巻3号801頁)

2-1-2:銀行での金庫の開扉

銀行での金庫の開扉のための早出出勤が労働時間として認められた判例に「京都銀行事件※」があります。

この事件は、当時の京都銀行では毎朝の始業時間前に金庫を開けることが業務として行われていたため、その時間が早出出勤とみなされ、残業代の支払いが認められたというものでした。

このように、早出出勤であったとしても、早出の分、未払いの残業代を取り戻すことが裁判例上も認められることもあるのです。

なお、ここに載ってない早出についても労働時間として認められないものではなく、結局、「使用者の指揮命令下に置かれている」場合は労働時間になり、残業代は発生します。

さて、残業代を払ってもらうためには、早出して働いていることが分かる証拠がなければなりません。

証拠を集めるためには、どんなものが証拠になるのか知っておく必要があります。

それでは、残業代をもらう上で有効な証拠になるものについて、詳しく見ていきましょう。

※京都銀行事件(大阪高判平成13年6月28日労判811号)

2-2:まずは証拠を集めよう!

2-2-1:会社から明らかな命令があった場合

会社からはっきりと業務命令があった場合の証拠としては、以下のものが有効です。

①就業規則
始業時間より会社に早く来ることが就業規則に書かれていた場合。

証拠として就業規則をコピーして保管しておくことをおすすめします。

②業務命令が記載されたメール・書面・ホワイトボードなど
上司などから早出出勤がメールで指示されていた場合。

社用パソコンに保存しているだけでは、消されてしまう可能性があります。

これもコピーして保管しておくと良いでしょう。

また、早出を指示する書面やホワイトボードがあればそれも保存しておくと重要な証拠になります。

2-2-2:会社から明らかな命令がなかった場合

会社からはっきりと業務命令がなかった場合でも、早出せざるを得なかった場合は、以下のようなものが有効な証拠になります。

①タイムカード
始業時間前にタイムカードを押している場合。

タイムカードも証拠として自分でコピーするか、写真に撮っておくと確実です。

②会社のパソコンの利用履歴
始業時間前にログインした記録が残っている場合。

パソコンの中にはログインの記録が残っていますので、ログが有効な証拠になります。

③入退館の記録
職場に入るときに入退館の記録をしている場合、その記録が労働時間を示す証拠になります。

④タコグラフ(タコメーター)
タクシードライバーや運送業の人の場合、タコグラフに運行記録が残っています。

これも有効な証拠になります。

⑤給与明細書
給与計算書に総労働時間が記録されていて、そこから残業時間が分かることがありますので、これも証拠として残しておきましょう。

⑥業務日報・運転日報
日報に早出で仕事をした記録を残している場合。

⑦メール・FAXの送信記録
始業時間前にメールやFAXを送信していた場合。

⑧制服、作業服などを着る時間が規定された指示書
始業時間より前に制服や作業服を着ることが、指示書などで指示されていた場合。

指示書も証拠としてコピーもしくは写真撮影しておくことをおすすめします。

⑨着るのに時間のかかる保護具等の写真
製造工場や屋外作業の現場などで働く人の場合、危険を避けるために保護具を着なければならない場合があります。

保護具は着るのに時間がかかりますので、保護具の写真などを撮っておけば、早出出勤の証拠として有効です。

⑩始業前の朝礼、体操、掃除などに参加しない場合のペナルティの証拠
朝の朝礼、体操、掃除などに参加することが、就業規則などに明示されてない場合でも、証拠にできる場合があります。

たとえば、朝礼に参加しないことでペナルティ(昇給・昇進できない、賞与を支給しないなど)がある場合、それを示すことができれば有効な証拠になります。

⑪仕事をしていた時間と業務内容の個人的な記録
日報には書いてなくても、例えば手書きの日記に書いておくことが証拠になります。

できるだけその日ごとにメモしてください。

⑫残業時間の計測アプリ
最近では、残業時間を計測できるアプリが増えているようです。

手書きやアプリの記録などは、ウソの時間を書くと証拠としてみなされず、かえって自分が不利になります。

必ず正確な時間を記録するようにしましょう。

証拠について、詳しくは「残業代 証拠」の記事をご覧ください。

3章:残業代をもらうためにすぐに行動しよう

残業代を払ってもらうためにあなたがやらなければならないのことは、以下のことです。

①自分の残業代がどれくらいになるのか把握する

②有効な証拠を集める

③弁護士に相談する

それでは、まずは計算方法から解説します。

3-1:2時間の早出で残業代は132万円増える!?

実際にもらうことができる残業代はどれくらいになるのでしょうか?

残業時間には、原則的に、時給に1.25倍の割増率がかけられた金額が残業代として支払われます(詳しくは1−1で解説しました)。

残業時間には1.25倍の割増率がかけられる

たとえば、時給1,000円で働いている人の場合、残業代は1,250円になります(深夜残業や休日出勤がなかった場合)。

仮に毎日30分早出出勤していて、1ヶ月に22日出勤日があった場合、1ヶ月の早出出勤分の労働時間は30分×22日=11時間になります。1年間では264時間です。

これに残業時間の1,250円をかけると、合計33万円の残業代がもらえることが分かります。

早出が1日1時間なら66万円、2時間なら132万円もの残業代をもらえるはずなのです。

もちろん早出以外の残業があれば、それ以上の金額をもらう権利があります。

早出分の労働時間も入れることで、これだけ大きな金額をもらうことができるのです。

しっかりともらうための証拠を集める重要性がよく分かるのではないでしょうか。

時給ではなく月給で賃金が支払われている場合は、以下の計算式で時給を計算することができます。

  • 1ヶ月の平均所定労働時間=(365日−年間休日)÷12ヶ月×8時間
  • 時給=月給(税引き前)÷1ヶ月の平均所定労働時間

「1ヶ月の平均所定労働時間」とは、会社の定める労働時間の平均のことです。

年間休日が250日の人の場合、1ヶ月の平均所定労働時間は166.66時間です。

税引き前の月給をこれで割ると、月給の人も自分の時給を計算することができます。

月給に入れることができる手当については、以下の表をご覧ください。

基礎時給に入れられる手当・入れられない手当

残業代の計算方法について、詳しくはこちらの記事をお読みください。

残業代の時給をごまかす「3つの手口」と残業代の「正しい計算方法」

3-2:弁護士に頼むことで認められやすくなる

法律上、早出出勤も労働時間としてカウントされること、その分の残業代をもらうことができることが分かったと思います。

しかし、相手は早出出勤を手口として使うブラック企業です。

個人的に交渉しても「早出だから残業代は払わないよ」などと、会社から丸め込まれてしまう可能性がありま

そこで、残業代請求に強い弁護士に頼むことをおすすめします。プロに頼むことで、より確実に残業代をもらうことができる可能性があるのです。

3-3:残業代がさかのぼってもらえるのは3年間

残業代請求の時効は給料支給日から「3年」と決められており、3年よりも前の残業代分はもらえなくなってしまいます。

つまり、毎月、給料日であった日に、3年前の1か月分の残業代が消滅しているのです。

残業代を多くもらいたい場合は、早めに行動するのがとても大事なのです。

まとめ:早出の残業代

どんな場合に早出でも残業代をもらうことができるのか、お分かり頂けたでしょうか。

最後に、もう一度今回学んだ内容をまとめてみました。

  • 早出でも働き出してから8時間を超えたら残業代が出る。
  • 8時間以上働いてるのに「早出だから残業代が出ない」は違法。
  • 明らかな命令がなくても「早出しなければできないような業務があった」「始業前に時間がかかる準備があった」などの場合で、早出が労働時間として認められる可能性がある。
  • 早出で働いた証拠になる「就業規則」「業務指示のメール」「正確な手書きのメモ」などを集めるのが大事。

残業代をもらうためには、まずは証拠を集めること、時効が3年なので早めに行動することが重要です。

あなたも早出出勤を利用する手口に騙されないよう、気をつけてくださいね。

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