ブラック企業の定義とは?弁護士が解説する9つの特徴ととるべき手段
この記事を読んで理解できること
- ブラック企業の定義と特徴
- ブラック企業に勤めている場合の対応策
- まずは証拠集めからはじめよう
- 就職・転職でブラック企業を見抜くポイント
あなたは、
「ブラック企業の定義が知りたい」
「うちの職場はブラックな気がするけど、どうだろう?」
などとお考えではないですか?
「自分の会社がブラックなのかどうか判断できない。」
そんな悩みを持つのは、あなただけではありません。
ブラック企業は、会社の利益のために従業員に対して次のような扱いをしています。
- 長時間労働が常習化している
- 名ばかり管理職で残業代が出ない
- 不当な出向や人事異動
では、自分がいる会社がブラック企業なのかどうかどうやって判断すれば良いのでしょうか。
そこでこの記事では、ブラック企業の定義とその特徴を解説し、ブラック企業チェックリストもご紹介します。
さらに、もしあなたがブラック企業に勤めている場合の対応策や、転職の際にブラック企業を見抜くポイントを解説していきます。
最後までしっかり読んで、今の環境から脱出するための第一歩を踏み出してください。
第1章:ブラック企業の定義と特徴
まず始めに、ブラック企業の定義と特徴、そしてブラック企業チェックリストについて解説していきます。
1-1:ブラック企業の定義
「ブラック企業」とは、どんな企業のことなのでしょうか?
実は、明確に定義があるわけではありませんが、厚生労働省の
「Q&A|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト」
では、下記のように記載されています。
「ブラック企業」ってどんな会社なの?
厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。
また、当サイト(クエストリーガルラボ)では、
「従業員を採用してから辞めさせるまで過酷な労働環境や低待遇で働かせ続けて、会社だけが儲けようとする企業のこと」
をブラック企業と呼んでいます。
1-2 :ブラック企業の特徴
次に、ブラック企業の特徴を、次の4つの項目に分けて解説していきます。
- 労働時間の特徴
- 賃金の特徴
- 人事関係の特徴
- 人間関係の特徴
- その他の特徴
1-2-1:労働時間の特徴
労働時間に関する特徴として、ブラック企業では長時間労働をさせられることがあげられます。
例えば、次のようなケースです。
- 会社側と従業員が「残業時間は最大○時間までにしますよ」という協定(36協定)を結んだにもかかわらず、会社がそれを破って長時間働かせた。
- そもそも残業時間に関する協定(36協定)自体結ばずに、長時間残業させた。
36協定を結ばずに長時間労働をさせることは違法ですし、協定を結んでいても協定で決めた時間以上働かせることも違法です。
36(サブロク)協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条に基づいて行われる手続きです。
会社が労働者に対して、法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合は、労働組合又は労働者の過半数を代表する者と書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。
36協定が締結された場合は、以下のように残業時間のルールが適用されます。
つまり、36協定が締結されている場合でも、⽉45時間・年360時間を超える残業時間は「違法」なのです。
ただし、上記の残業時間の上限を超えて残業している場合もあると思います。
実は、「特別条項付き36協定」を締結することで、上記の残業時間の上限を延長することができます。
【特別条項付き36協定で残業時間の上限を延長できる】
特別条項付き36協定とは、「⽉45時間・年360時間」という残業時間の上限を超えた残業を可能にするために、会社と従業員との間で締結される協定のことです。
ただし、月単位なら何時間でも残業時間が延長できますが、
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2~6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
- 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度
といった条件があります。
これらの条件を超えて、長時間労働を常習的に行わせていることが、ブラック企業の特徴といえます。
1-2-2:賃金の特徴
ブラック企業の賃金の特徴は、そもそも給料を払わなかったり、残業代を払わなかったりすることです。
ケースとしては、以下のようなものがあります。
- 給料の一部もしくは全部を払わない
- 残業代を払わない
- みなし残業代(固定残業代)で残業代をごまかす
- 残業時間をごまかす
- 給料が最低賃金以下
1、2はそもそも給料を払ってないので、もし該当する場合は、完全にブラック企業だといえます。
3の「みなし残業代(固定残業代)で残業代をごまかす」というのは、「残業手当」や「役職手当」「営業手当」などの「みなし残業代(固定残業代)」を払うことで残業代はすでに払ったことにするブラック企業のやり方です。
通常、固定残業代は「時間外手当○○円分」や「残業時間〇〇時間分」と決められています。
しかし、それ以上の残業時間が発生しても、追加の残業代が払われない場合が多く、ブラック企業がよく使う方法です。
4の「残業時間をごまかす」というのは、例えば、
- 定時でタイムカードを打刻させて残業させる
- 朝に早出させて働かせる
- 自宅で仕事をさせる
といったやり方です。
5の「給料が最低賃金以下」というのは、払っている給料を時給に直した場合に、その時給が「最低賃金以下」になっているというケースです。
月給制の方の場合、自分の給料が最低賃金以下になっていることに気付かないこともあるかもしれません。
3、4、5のケースはいずれも、残業時間や残業代に関する知識をあなたが持っていないことから、会社があなたのことを騙そうとして使っているのです。
このように、できるだけ安い給料で働かせようとするやり方は、ブラック企業の特徴といえます。
詳しくは、次の記事で解説しています。
【図解】残業代の時給の計算方法と損しないために注意すべきポイント
1-2-3:人事関係の特徴
次に、ブラック企業の人事関係の特徴を上げていきます。
ブラック企業では、次のような不当な出向や配置転換を命じられるケースがあります。
- 退職勧奨を拒否したら、遠い地方の営業所への配置転換を命じられた。
- 給料が大きく下がり、通勤時間も長くなる子会社への出向を命じられた。
意味のない配置転換や出向は拒否することができますし、違法である場合があります。
次に、ブラック企業が人件費を抑えるために使うのが、従業員を昇進させて「名ばかり管理職」にしてしまうやり方です。
法律上「管理監督者」という、いわゆる管理職にあたる人に対しては、残業代を払う必要がありません。
ブラック企業はこれを悪用して、ただの従業員を役職付きにすることで、残業代を払わないようにしようとするのです。
昇進という形で管理職扱いされても、実際は「名ばかり管理職」で残業代がもらえないのは違法です。
詳しくは以下の記事を参照してください。
名ばかり管理職チェックリスト!問題点と残業代の請求方法を弁護士が解説
次に、採用する際のブラック企業の大きな特徴として、必要以上に「大量採用」することがあげられます。
従業員を大量に入社させるやり方としては、以下のようなものが使われます。
- 求人時、残業代を含む給料を基本給であるかのよう載せて、採用時の給料を大きく見せる。
- 正社員として募集しているが、さまざまな理屈を使って契約社員として契約させる。
さらに、採用後も社内で苛烈な競争を作り出して、「使える人間」のみを残して辞めさせる、という手段も使われます。
ブラック企業は採用から辞めさせるまで、継続して従業員をこき使うテクニックを持っているのです。
1-2-4:人間関係の特徴
採用した従業員に対するパワハラが多いことも、ブラック企業の特徴です。
パワハラは、従業員を会社に都合の良いように「洗脳」することを目的として行われることがあります。
例えば、以下のように使われます。
- 「お前はダメだ」など、人格を否定する言葉を繰り返して従業員を精神的に追い込む
- とても達成できないような目標設定や課題を与えて、「できなければ責任をとれ」と脅される。
さらに、従業員がパワハラに耐え切れず辞めようとすると、辞めさせないケースもあります。
- 「お前を雇うのにいくらかかっているんだ」と言われる。
- 「後続が決まらないと辞められない」と言われる。
- 無理矢理辞めようとしても離職手続きを進めない。
- 「お前が辞めて出た分の損失は請求する」と損害賠償請求をにおわせて脅される。
また、パワハラは、従業員を自分から辞めさせるために行われることがあります。
例えば、以下のように使われます。
- 人格を否定する言葉を繰り返して従業員を精神的に追い込む
- とても達成できないような目標設定や、無理な課題を与える
- うつ病や適応障害になった従業員に退職を促す
従業員には自分から辞めてもらった方が会社としては都合が良いため、パワハラをして従業員が自分から辞めるように追い込んでいくのです。
こうして、従業員が辞めてしまうギリギリまで都合の良いようにこき使うのがブラック企業の特徴です。
1-2-5:その他の特徴
その他のブラック企業の特徴として、従業員の安全を確保せずに作業を行わせるケースがあります。
例えば、次のような事例があげられます。
- 高さ6.8mの屋根の端に手すり等を設けることなく請負人の労働者に作業を行わせた。
- 食品加工用圧縮機に覆い、囲い等を設けることなく労働者に作業を行わせた。
- トラクター・ショベルの運転を無資格の労働者に行わせた。
さらに、「労働災害」いわゆる「労災」について、中にはこんな事例もあります。
- 労働災害の発生状況を偽った報告書を労働基準監督署に提出した。
- 労働災害について、報告書を提出しなかった。
労働災害を正しく報告しないことは違法ですので、あなたも思い当たる経験があったら、あなたの会社はブラック企業である可能性があります。
このように、あなたも危険な現場で働かせられたり、無資格なのに資格が必要な労働をさせられたりしていませんか?
もしそんな経験があれば、あなたの会社もブラック企業です。
以上のようなやり方を従業員が入社してから辞めるまで継続して行い、従業員を安くこき使い、自分たちだけが儲けようとするのがブラック企業の特徴です。
1-3:ブラック企業チェックリスト
ここでは、「ブラック企業チェックリスト」として、次の15ポイントを上げています。
あなたの職場が、以下のポイントにいくつ当てはまるか数えてみてください。
- 毎日10時間以上働いている
- 週6日以上勤務日がある
- 労働時間の割に給料が異常に低い
- タイムカードなど労働時間を管理する仕組みが無い
- 「サービス残業するのが当然」のような空気がある
- 残業代の全部or一部が払われない
- 採用時と入社後で条件が異なる
- 離職率が異常に高い
- 上司から日常的に暴力・暴言を受ける
- うつ病などの精神疾患で休む人が多い
- やたらと役職付きの従業員がいる
- 辞めさせてくれないor自分から辞めさせようと仕向ける
- 危険な状況で作業させられる
- 資格の必要な仕事を無資格の人がやっている
- 不当な異動や出向がある
あなたの会社はいくつ当てはまりましたか?
それでは下の表を確認してください。
1〜3 | ブラック度★(これからも要注意) |
4〜6 | ブラック度★★(転職の検討が必要) |
7〜9 | ブラック度★★★(あなたの身が危険です) |
10以上 | ブラック度★★★★(今すぐ脱出してください!) |
ブラック度が高かった場合は、すぐに3章で紹介する行動を起こすことをおすすめします。
そうでない場合も、1つでも当てはまっていたら要注意です。
その環境を抜け出すためには、これから紹介する方法で、すぐに行動を起こすことをおすすめします。
第2章:ブラック企業に勤めている場合の対応策
あなたがブラック企業にいて、労働環境を変えさせたい場合や、会社に対して残業代や慰謝料を請求したい場合に、とるべき行動は以下の3つです。
- 現状の改善要求をする
- 労働基準監督署に申告する
- 未払い給料・残業代の請求を弁護士に依頼する
特に、労働問題に強い弁護士に相談すると、残業代をもらえる可能性が高くなり、手間もかからないためおすすめです。
それでは、1つずつ解説していきます。
2-1:現状の改善要求をする
もしあなたが、
「今ある不満さえなくなれば現在の会社に勤め続けたい」
「転職活動をするくらいなら現状に留まりたい」
という場合は、会社に改善要求をする必要があります。
その場合は、労働組合や労働基準監督署に相談しましょう。
もし、社内に労働組合がない場合は、個人で入ることのできる社外の労働組合を利用することもできます。
また、労働基準監督署では、労働者からの相談によって会社を調査することも可能です。
調査によってブラック企業であると判断された場合は、労働基準監督署から指導が入ることになるので、会社は改善を余儀なくされます。
2-2:労働基準監督署に申告する
あなたの職場で、これまでに説明してきたような違法な行為があった場合、労働基準監督署に申告するという選択肢もあります。
なぜなら、労働基準監督署は、労働基準法に違反している疑いのある会社を捜査することができるというとても大きな権限を持っているからです。
労働基準監督署に申告した場合、以下のような展開があります。
会社に知られたくない場合は、匿名での調査を依頼するもできます。
ただし、労働基準監督署に申告すれば必ず調査や是正勧告をしてくれるわけではありません。
申告によっては後回しにされることもあり、調査すらされない可能性もあります。
また、パワハラや不当解雇で、「慰謝料を請求したい」などといったケースには介入してくれません。
そこでおすすめなのが、労働問題に強い弁護士に依頼することです。
2-3:未払い給料・残業代の請求を弁護士に依頼する
ブラック企業に対する未払い給料・残業代の請求は、弁護士に依頼することをおすすめします。
「弁護士へ依頼する」というと、「訴訟」「裁判」など大げさなものをイメージする人が多いかもしれません。
また、「費用だけで100万円くらいかかるのでは?」と思っている人もいるでしょう。
しかし、実際にはほとんどが裁判にならずに解決されますし、費用も抑えて依頼できます。
弁護士に依頼した場合の流れは、以下のようになります。
- 交渉する
- 労働審判
- 訴訟(裁判)
順番に解説していきます。
2-3-1:交渉のイメージ
交渉は、弁護士が会社との間に入って、残業代の請求の場合はその請求書面を送ったり、電話で回収の督促をしたりします。
不当解雇などの場合も同じです。
弁護士が会社との間に入って、和解に持ち込みます。
交渉であれば、時間やお金の面での負担が少なくて済みます。
あなたからすると、普段通りの生活をしながら、ときどき弁護士と連絡をとって、数ヶ月後には和解金が自分の口座に振り込まれているというイメージです。
半分くらいは交渉で解決でき、手軽に解決することができます。
2-3-2:労働審判のイメージ
労働審判は、交渉で解決できなかったときに用いられることが多いです。
イメージとしては、裁判所を利用して、労働者側、会社側、裁判官の三者がそろって話し合うというものです。
労働審判の場合は、解決するまで以下のような流れで進みます。
第1回労働審判で解決されれば、申立てから1~2ヶ月程度で終了し、第2回、第3回まで延びれば1ヶ月〜2ヶ月程度期間も延びることになります。
労働審判の回数は、最大3回までと決められているため、裁判のように何回も裁判所に行ったり、長期化することがないのが特徴です。
あなたも初回の労働審判のみは参加する必要がありますが、弁護士に依頼すれば2回目以降は参加する必要がないことが多いです。
裁判になると費用や手間がかかるため、ブラック企業の経営者もできれば裁判はやりたくないと考えています。
そのため、多くの場合、「交渉」か「労働審判」で決着が付くので、労働審判の解決率は80%にもなります。
(出典:厚生労働省 透明かつ国政名労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会 資料「労働審判制度について」)
労働審判において決定されたことに不服がある場合は、訴訟(裁判)へ移行します。
2-3-3:訴訟のイメージ
労働審判は短い期間で裁判官が判断するため、ざっくりとした判断しかされません。
そこで、もっと厳格な判断を仰ぎたい場合は、訴訟を利用します。
訴訟のメリットは、残業代請求の場合は、残業代について年3%または14.6%の遅延損害金も含めて請求できるため、受け取る額も大きくなる点です。
残業代請求以外のケースでも、労働審判では解決できないような複雑な事案を解決することができたり、不当解雇の場合は、訴訟で判決が出るまでの間の給料を会社に出させる制度「賃金仮払い仮処分」の申立てができるというメリットがあります。
ただし、訴訟は時間が1年以上かかることが多く、その間の費用を弁護士に払い続けるので、金銭的・時間的負担が大きいです。
また、必ず勝てる保障もありませんし、結局和解で終わることも多いです。
そのため、訴訟までを考えるのであれば、着手金無料の弁護士事務所や、実際に残業代を回収できたときにその回収できた額から弁護士費用を払うという、「完全成功報酬制」をとる弁護士に依頼することがおすすめです。
第3章:まずは証拠集めからはじめよう
労働基準監督署に申告する場合も弁護士に頼む場合も、まずは証拠を集めることをおすすめします。
証拠集めを弁護士に依頼することもできますが、あとから弁護士が会社に請求しても、証拠を提出しない悪質な会社も存在します。
そのため、在籍しているうちから証拠を集めておくことが、残業代を請求するうえで最も有効な方法です。
そして、会社に対応させたい内容によって、必要となる証拠は異なります。
あなたのやりたい行動に適した証拠を集めることが、とても大事なのです。
それでは、まずは残業代をもらうために集めるべき証拠からお伝えします。
3-1:残業代を払ってもらうための証拠
残業代を払ってもらうため、また長時間労働やサービス残業を申告するために、証拠として有効なものには以下のものがあります。
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
これらの証拠になるものがなくても、諦める必要はありません。
タイムカードを置いてなかったり、日報をつけない、勤怠管理してない会社でも、以下のようなものが証拠になり得ます。
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
できれば3年分の証拠を集めることが望ましいですが、それが無理なら一部でもかまわないので、写真にとったりコピーをとったりして、できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。
3-2:パワハラ、不当な扱いを受けたときに集めるべき証拠
パワハラや不当な解雇を受けた場合、以下のような証拠が必要になります。
3-2-1:不当解雇の証拠
解雇が不当なことを証明するための証拠は、会社の言う解雇理由によって異なります。
・整理解雇の場合
会社の業績が極端に悪化してないことを示す証拠、自分が解雇された後に会社が新しく社員を募集していたことを示す求人票など。
・能力不足を理由にした解雇
営業成績を示す表の写真、自分が担当して作った成果物など。
・病気を理由にした解雇
病気がちでも働くことには問題がないことを示す診断書。
・懲戒解雇
解雇理由を詳しく確認できる「解雇理由証明書」。
不当解雇に関して詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。
3-2-2:パワハラの証拠
会社の上司などからパワハラを受けていた場合、以下のようなものを証拠として残しておくことが重要です。
・暴力を受けて怪我した場合
医師の診断書
・暴言を受けていた場合
ICレコーダー、スマホなどによる録音、メールを印刷したもの、パワハラを受けた日時や内容について詳細に記録したメモ
ただし、パワハラは客観的に証明することが難しいです。
労災として認定されるのは30%程度、慰謝料を請求してももらえるのは30万円前後が一般的のようです。
ただ、そのような会社は残業代もごまかしている可能性が高いです。
そのため、慰謝料請求よりも残業代の請求でお金をとる方が確実です。
証拠は正確なものがたくさんあるほど有効ですので、今の会社を辞めてしまう前に、少しずつコツコツと集めて、会社からお金を取り戻しましょう。
それでは、最後にこれから就職・転職するという人に向けて、ブラック企業を見抜くポイントをお伝えします。
4章:就職・転職でブラック企業を見抜くポイント
就職・転職でブラック企業を見抜くポイントは、次の3つです。
- 求人情報のポイント
- 面接時のポイント
- 自分で情報を集める場合のポイント
それぞれ解説していきます。
4-1:求人情報のポイント
就職・転職の際に、求人情報からブラック企業を見抜くポイントは、次の5つです。
- 常に求人をかけている
- 給与が不相応に高い
- 経歴、職歴を問わない
- みなし残業代制・裁量労働制での採用と書かれている
- 仕事内容が不明確
それぞれ解説していきます。
4-1-1:常に求人をかけている
2、3ヶ月も同じ求人を続けている企業は、社員がすぐに辞めてしまうことを前提にして、大量募集・大量採用を行っている可能性があります。
このような企業は、ブラック企業の可能性が高いといえます。
なぜなら、ブラック企業は、従業員を育てるつもりがなく、使い捨ての駒のように扱うため離職率が高くなるからです。
そのため、人手不足を解消するために、常に大量採用を行っているのです。
4-1-2:給与が不相応に高い
求人情報で、給与が不相応に同業他社より高い場合は、ブラック企業の可能性があります。
なぜなら、掲載されている金額には、「業績給」や「固定残業代」が含まれている場合があるからです。
例えば、「業績給」が含まれている場合は、厳しいノルマが課されるだけで、成績が上がらなければ低い基本給だけになってしまいます。
また、「固定残業代」が含まれる場合は、給与を多く見せかけることができますし、残業時間と金額が不明確な場合は、長時間の残業や超過分の残業代の未払いが生じる可能性があります。
4-1-3:経歴、職歴を問わない
「経歴、職歴を問いません」こういった求人を行っている企業は、ブラック企業の可能性があります。
なぜなら、門戸を広げてより多くの求職者を大量募集・大量採用して、人手不足を解消しようとしているからです。
また、とりあえず多くの求職者を集めて、その中から人物や学歴・職歴、資格などを見極めて選考するといった、会社都合の求人を行っている企業もあります。
こういった求人は、採用されたとしてもきちんと教育してもらえなかったり、根性論できつい仕事を強いられる可能性があります。
4-1-4:みなし残業代制・裁量労働制での採用と書かれている
みなし残業代制・裁量労働制での採用と書かれている求人は、はじめから残業が前提となっていて労働時間が長いブラック企業の可能性があります。
みなし残業制度とは、固定残業代制のことで、「一定の残業時間分の残業代を、最初から給料として払っておく制度」のことを言います。
例えば「みなし残業40時間」の場合は、月給には40時間分の残業代が既に含まれているため、他の企業より給料を多く見せることができます。
さらに、毎日2時間ほどの残業が始めから見込まれているだけでなく、
「うちはみなし残業制だから、残業しても残業代は出ない」
と、残業代を固定してごまかしている場合もあります。
裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ会社側と協定などで決めた時間を労働時間と「みなす」制度のことを言います。
例えば、会社側と1日のみなし労働時間を1日8時間と決めていた場合、働いた時間が10時間でも14時間でも、その日に働いた時間は8時間とみなされることになり、残業代は発生しません。
裁量労働制は本来、エンジニアやデザイナーなど専門性の高い業務にかかわる社員が対象とされていますが、ブラック企業では悪用されている場合があります。
裁量残業制については、次の記事で詳しく解説しています。
裁量労働制にも残業がある!制度の考え方と残業代が貰える条件を解説
4-1-5:仕事内容が不明確
仕事内容が不明確で詳しい説明がない場合は、注意が必要です。
例えば、
「カスタマーサポート」
「テレフォンアポインター」
「メンテナンスアドバイザー」
など、イメージの良さそうな職種が並べられていても、実際は
「クレーム電話の応対・処理係」
「営業の新規開拓のための電話係」
「住宅リフォームなどの個別営業」
といった単調でプレッシャーのかかる職種だったりするおそれがあります。
そのため、業務内容の詳しい説明がない場合は、詳しく調べるか直接確認することが重要です。
4-2:面接時のポイント
就職・転職の面接の際に、ブラック企業を見抜くポイントは、次の3つです。
- 面接官や社内の様子が異様
- 質問に対して曖昧な回答しかない
- その場で内定が出る
それぞれ解説していきます。
4-2-1:面接官や社内の様子が異様
面接の際に、面接官の態度が横柄だったり、社内の様子が暗く活気がなかったり、少しでも異様な感じがした場合は注意が必要です。
特に面接官の態度が悪い会社は、上司が部下に対して高圧的な態度をとることが常態化している場合が多いため、選考を辞退することをおすすめします。
4-2-2:質問に対して曖昧な回答しかない
業務内容や勤務形態、残業などに関するこちらの質問に対して、曖昧な回答しか得られない場合は、ブラック企業の可能性が高いです。
なぜなら、入社するまで会社としては、実情を隠しておきたい理由があると考えられるからです。
例えば、毎日の残業が日常化して「みなし残業制」が悪用されている状況だったり、ノルマやプレッシャーの厳しい業務内容が多い場合もあります。
面接の際は、職と人を求めるそれぞれの立場に上下はないので、気になることは全て質問することが重要です。
4-2-3:その場で内定が出る
面接の場ですぐに内定が出て承諾を求める企業は、ブラック企業の可能性が高いので注意が必要です。
なぜなら、ブラック企業は、従業員を育てるつもりがなく、使い捨ての駒のように扱うため、離職率が高く人手不足に陥っている企業が多いからです。
内定後すぐに承諾を求められる場合や、内定辞退を認めさせない企業は、ブラック企業ではないか再度面接状況や求人情報などを確認することをおすすめします。
4-3:自分で情報を集める場合のポイント
自分で企業の情報を集める方法としては、インターネットでその企業の口コミを調べたり、実際に夜間や休日に電話をかけてみることがあげられます。
ネットの口コミは、実際にその企業の社員や元社員が書いたものか確認できないため鵜呑みにはできませんが、あまり否定的な意見が多い場合はやはり注意が必要です。
さらに、深夜や休日に電話を掛けてもつながるようであれば、残業が常態化していることも考えられます。
まとめ:ブラック企業の定義
ブラック企業の特徴や、自分の会社がブラックだったときに脱出する方法についてご紹介しましたが、理解することができたでしょうか?
今回学んだことを忘れないために、もう一度ポイントを振り返りましょう。
ブラック企業の特徴
- 異常な長時間労働をさせる
- 給料や残業代を払わない
- 危険な状況で作業させる
- 労働災害をごまかす
- 大量に採用して入社後も激しく競争させる
- パワハラで精神的に追い込む
- 不当な出向や異動で都合の良いようにこき使う
- 名ばかり管理職にして残業代をゼロにする
- 辞めさせずに搾取し続ける
あなたがとるべき行動
- 証拠集め
- タイムカードや業務日報、残業時間を記録したメモ、メールのコピーや録音などの有効な証拠を集める
- 労働基準監督署に申告
労働環境の改善などを行政に訴えたい場合 - 弁護士へ依頼
会社に残業代や慰謝料を請求して確実に解決したい場合
この記事を読んだあなたは、すぐにでも行動を起こすことができます!
今の環境を変えるために、まずは証拠集めから始めてみてはいかがでしょうか?