- 2018.02.14
- 2024.11.26
- #持ち帰り残業
持ち帰り残業で残業代が出る?判断基準と3つの対処方法を徹底解説
この記事を読んで理解できること
- 持ち帰り残業とは?その発生しがちな状況
- 持ち帰り残業でも残業になるか分かる判断基準と具体例
- 持ち帰り残業をなんとかしたい!そんな場合の対処方法
あなたは、以下のような悩み・疑問をお持ちではありませんか?
持ち帰り残業とは、
- 会社で仕事が終わらないので、自主的に仕事を持ち帰った
- 業務上仕方なく仕事を持ち帰った
などのように、本来会社で行うべき残業を持ち帰って行うことを言います。
あなたも持ち帰り残業をしているなら、「仕事をしていることには変わりないのだから、残業代が出て欲しい」と思っているのではないでしょうか。
しかし、結論から言うと、原則的に持ち帰り残業は労働時間にはならないことが多いため、残業代は発生しない可能性が高いです。
ただし、場合によっては持ち帰り残業でも「残業」とみなされ、残業代請求できるケースもあります。
ここでポイントなのが、持ち帰り残業を証明する「証拠」を集めておくことです。
そこで、この記事では、まずは持ち帰り残業とはどのようなものなのか解説し、次に持ち帰り残業でも「残業代が発生するケース」についてお伝えします。
また、持ち帰り残業をなんとかしたい場合の対処方法についても解説します。
最後まで読んで、持ち帰り残業で損しないための知識を学んでください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■持ち帰り残業とは
本来会社で残業して行うべき仕事を、自宅に持ち帰って行うこと。
下記の場合で発生しやすい。
- 会社で残業が禁止されている社員
- 長時間残業せざるを得ない業務量の職場
■持ち帰り残業で、残業代が請求できる場合
持ち帰り残業は原則、残業代は出ないが、下記の場合は残業代が請求できる可能性がある。
①担当業務を期限までに処理しないと、会社から不利益な扱いを受ける
②自宅に持ち帰って仕事をしなければ、期限に業務を処理できないこと
(例)午後10時に消灯してそれ以後自宅に持ち帰らなければならない
③社員が自宅に持ち帰って仕事をしていることを、使用者が認識していること
■持ち帰り残業の対処方法
- できるだけ会社で終わるように仕事を工夫する
- 残業代がしっかり出る会社に転職する
- 退職前から、後で残業代請求できるように証拠を収集しておく
1章:持ち帰り残業とは?その発生しがちな状況
- あなたの持ち帰り残業が違法なのかどうか
- あなたの持ち帰り残業に、残業代は出るのか
これらについて正しく判断するためには、まずは「持ち帰り残業」に関する基本的な知識が必要です。
まずは、
- 持ち帰り残業とはどのようなものなのか
- 持ち帰り残業はどのような状況で発生しがちなのか
などについて解説します。
それより先に、持ち帰り残業の残業代が出るケースについて知りたい場合は、2章から読んでください。
1-1:持ち帰り残業とは
持ち帰り残業とは、本来会社で残業して行うべき仕事を、自宅に持ち帰って行うことを言います。
たとえば、
- 会社では残業が禁止されているため、仕事が終わらないと自宅でも仕事をしなければならない
- 会社でも残業しているがあまりにも遅くなるため、仕方なく持ち帰って自宅でも仕事している
- 自宅で仕事をする方が仕事がはかどるため、自主的に持ち帰って仕事をしている
などが持ち帰り残業です。
持ち帰り残業には、大きく分けて2つのものがあります。
①自主的に行なっている場合
②会社の業務命令や、業務上仕方なく行なっている場合
①の場合は、自分の判断で持ち帰り残業しているため、労働時間にはカウントされず、残業代は発生しません。ただし、②の場合は、持ち帰り残業をしている証拠があれば、残業代を後から請求できることもあります。詳しい判断基準については、2章で解説します。
1-2:持ち帰り残業が発生しがちな状況
持ち帰り残業は、
- 残業が禁止されている職場
- 長時間残業せざるを得ない業務量の職場
で発生しがちです。
これらの状況は、会社が社員に適正な金額の残業代を支払わないために、意図的に作り出していることもありますので、注意してください。
それぞれの状況について、簡単に解説します。
【残業が禁止されている職場】
例えば、残業しなければ終わらないような量や納期の仕事が指示されていて、
- 会社での残業が禁止されている
- 会社で残業できない雰囲気がある
という場合は、持ち帰り残業が発生しがちです。
注意してほしいのは、あなたの会社は適正な金額の残業代を社員に支払わずに済ますために、社員が持ち帰り残業せざるを得ない状況を作っている可能性があるということです。
経営者は、社員に残業させていることを指摘されても、
「社員が自主的に自宅に持ち帰って仕事しているだけだ」
と言い訳できると思っているのです。
【長時間残業せざるを得ない業務量の職場】
業務上あまりに業務量が多いために、長時間残業せざるを得ない職場でも、持ち帰り残業が発生しがちです。
たとえば、以下のような職場では長時間残業が多い傾向があります。
●業務量が多い職種
プログラマー・SE、デザイナー、保育士、教師、塾講師など職種では、持ち帰り残業が発生しやすいようです。
なぜなら、プログラマー・SE、デザイナーなどの仕事は、一人で行う業務量が多く、しかも基本的に場所に縛られず作業できるために、「自宅でも作業しよう」としがちだからです。
保育士、教師、塾講師などは、授業や行事の準備で、一人で作業しなければならない仕事の量が多く、しかも授業後しか作業時間が取れないために、自宅に持ち帰って仕事をせざるを得ないという事情があります。
そのため、これらの職種では持ち帰り残業が発生しやすいようです。
しかし、これらのように業務量が多い職種であっても、業務上せざるを得なかった持ち帰り残業は、「労働時間」としてカウントされる可能性があります。
●管理職
管理職も持ち帰り残業が発生しがちです。
管理職は、一般的に労働基準法上の残業の規制の対象外になると考えられています。そのため、会社は管理職にはどれだけ残業をさせても残業代を支払う必要がないと考え、管理職を長時間働かせることがあります。
会社からの帰りが遅くなり、しかも「会社で残業しても、家で仕事をしても残業代が出ない」という理由から、持ち帰り残業をする人が多いようです。
しかし、管理職の場合は、そもそも法律上の管理職である「管理監督者」の要件を満たしていなければ、労働基準法上の規定の対象になり、残業代が出なければ違法です。
あなたが管理職の場合は、以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
「名ばかり管理職」
2章:持ち帰り残業でも残業になるか分かる判断基準と具体例
先ほども触れたように、持ち帰り残業は基本的に労働時間にカウントされないため、残業代は発生しません。
しかし、場合によっては残業代が出なければ違法であることもあります。
そこで、まずは、あなたの持ち帰り残業が残業に当たるのかどうか判断するチェックリストをやってみましょう。
そのあとに、
- 持ち帰り残業が残業になるかどうか判断する基準
- 持ち帰り残業で残業代が出るケース、出ないケースの例
について紹介します。
まずはチェックリストからやってみてください。
2-1:持ち帰り残業が残業に当たるか分かるチェックリスト
それでは、以下のチェックリストをやってみてください。
【持ち帰り残業が残業に当たるか分かるチェックリスト】
①担当業務を期限までに処理しないと、会社から不利益な扱いを受ける
②自宅に持ち帰って仕事をしなければ、期限に業務を処理できないこと
(例)午後10時に消灯してそれ以後自宅に持ち帰らなければならない
③社員が自宅に持ち帰って仕事をしていることを、使用者が認識していること
これらの項目に1つでも当てはまる場合は、あなたの持ち帰り残業は、残業にあたる可能性があります。
それでは、もう少し詳しく、持ち帰り残業が残業になるかどうか判断する、判断基準を解説します。
2-2:持ち帰り残業が残業になるか分かる判断基準
持ち帰り残業が残業として認められるかどうかは、その持ち帰り残業が、労働時間としてカウントされるかどうかで決まります。
労働時間としてカウントされる基準とは、その労働した時間が、
「使用者の指揮命令下に置かれている」時間
であったかどうかというものです。
「使用者」とは、あなたの会社の上司などの、あなたの業務の指示を行う人のことです。
「指揮命令下」とは、業務の指示があったかどうかということです。
つまり、会社の命令のもとで働いた、もしくは命令があったとみなされるような状況で働いた時間は、会社にいるかどうかに関係なく、すべて労働時間としてカウントされるということです。
そのため、チェックリストで紹介した以下のケースも、残業になるのです。
①担当業務を期限までに処理しないと、会社から不利益な扱いを受ける
②自宅に持ち帰って仕事をしなければ、期限に業務を処理できないこと
(例)午後10時に消灯してそれ以後自宅に持ち帰らなければならない
③社員が自宅に持ち帰って仕事をしていることを、使用者が認識していること
①~③に多く該当すれば残業になる可能性が高まり、その場合残業代が出なければ違法です。
では、実際に持ち帰り残業が残業とみなされ、残業代が出たケースと、残業代が出なかったケースをご紹介します。
2-3:持ち帰り残業が残業と認められたケース
持ち帰り残業が、残業と認められたケースから紹介します。
【持ち帰り残業が残業と認められたケース】
短期間でとても一人では終わらないような業務を押し付けられたため、持ち帰って残業せざるを得ず、労災認定をめぐって裁判になった事件があります。この事件では、社員の持ち帰り残業が業務上不可欠であり、「使用者の指揮命令下」に置かれていたとみなされたため、裁判で残業になると認められました。
(甲府労基署長(潤工社)事件・甲府地判平成23年7月26日)
このように、
- 持ち帰り残業をせざるを得ない状況だった
- 持ち帰り残業が「使用者の指揮命令下」だった
持ち帰り残業が残業と認められなかった事件もあります。
(医療法人社団明芳会(R病院)事件・東京地半平成26年3月26日労判1095号5頁)
この事件では、その社員には会社での残業が認められていたこと、自宅に持ち帰るほどの作業量はなかったとみなされたため、労働時間にはならないとされました。
3章:持ち帰り残業をなんとかしたい!そんな場合の対処方法
あなたに持ち帰り残業がある場合、
- できるだけ会社で終わるように仕事を工夫する
- 残業代がしっかり出る会社に転職する
- 退職前から、後で残業代請求できるように証拠を収集しておく
などの方法で対処することができます。
それぞれの方法について順番に解説します。
3-1:できるだけ会社で仕事が終わるように仕事を工夫する
あなたに持ち帰り残業がある場合、すぐにできる対処方法が、仕事を持ち帰る必要がないように、仕事が早く終わる工夫をしてみることです。
例えば、以下のような方法が考えられます。
- 自分で仕事を効率化する
- 仕事を一人で抱え込まない
- 平日の夜に予定を入れる
それぞれについて解説します。
3-1-1:自分で仕事を効率化する
持ち帰り残業を減らすために、一番取りかかりやすいことからご紹介します。
仕事を効率的にできるように工夫して、同じ仕事でも効率的に終わるようにするのは、今すぐにでもはじめられることではないでしょうか。
たとえば、
- ルーティン作業はストップウォッチなどで時間を測って少しでも短くしていく
- 仕事をすぐに取りかかれるように細分化する
- 細分化した仕事に優先順位を付けて、計画的に進めていく
などの方法が考えられます。
これらの方法を意識して行うだけで、業務にかかる時間を短くし、持ち帰り残業を減らすことができる可能性があります。
3-1-2:自分だけで抱え込まない
あなたが持ち帰り残業してしまうのは、あなたが一人で抱えきれないほどの量の仕事を抱えているからかもしれません。
あなたは「この仕事はすべて自分でやらなければいけない」と思っているかもしれませんが、会社とは社員の間で分担して仕事をするところです。
そのため、思い切って同僚などに、
「この仕事やってくれないかな?」
と提案してみるのも一つの選択肢です。
また、頼まれた仕事をすべてOKせず、よく考えてから受け入れる、もしくは断る勇気を持つようにすることも、あなたの仕事量を減らす工夫の一つです。
3-1-3:平日の夜に予定を入れる
仕事の後に何も予定がないと、定時を過ぎたら自宅に仕事を持ち帰って、ずるずると続けてしまう、ということになりかねません。
平日の夜に友人や恋人と会う約束を入れたり、習い事の予定を入れたりしておくと、「仕事を早く終わらせなければ」という気持ちになり、持ち帰り残業を減らすことにつながります。
また、仕事以外の時間があればリフレッシュできて、仕事にもメリハリがつくでしょう。
もちろんこれは、自分の工夫で早く帰れるようにできる職場であることが前提です。
そもそも早く帰れる空気がなかったり、とても定時では終わらないような仕事量を押しつけられているとしたら、別の手段で解決する必要があります。
3-2:残業代がしっかり出る会社に転職する
そもそも、持ち帰り残業の原因は、あなたの業務量が多すぎることである可能性があります。
本来なら、社員の業務量の管理は会社が行うべきです。
そのため、あなたが自分一人では持ち帰り残業を改善できない場合、問題はあなたの会社にあると考えられます。
そこで、「持ち帰り残業を減らして、働いた分の残業代はしっかりもらいたい」という場合は、いっそ今の会社から、
- 業務管理がしっかり行われている
- 残業代がしっかり出る
という「ホワイト企業」に転職することをおすすめします。
残業の管理がずさんなブラック企業を避けるためには、転職活動の段階でブラック企業を見分けることが必要です。
ブラック企業の見分け方については、以下の記事を参考にしてください。
5分で分かる!選考〜入社の全ての段階から見るブラック企業の見分け方
さらに、もう一点知っておいて欲しいことがあります。
それは、持ち帰り残業が会社の指揮命令下であったことを示せれば、残業代を請求できることがあるということです。
3-3:退職前から、後で残業代請求できるように証拠を収集しておく
退職後に会社に残業代を請求する場合、その残業が「指揮命令下」にあったことを示すための、証拠が必要です。
2章では、持ち帰り残業でも残業代が発生する可能性が高い状況として、以下の3つを紹介しましたので、それぞれのケースで必要な証拠を紹介します。
①担当業務を期限までに処理しないと、会社から不利益な扱いを受ける
【証拠になるもの】
期限内に処理しなければ会社から、減給や降格などの不利益扱いを受けることを示すもの
- 業務上の指示書
- メール
【具体例】
「〇〇を××日の×時までに完了してください。できなければ△△のペナルティが発生する可能性があります。」というメールなど。
【ポイント】
業務の指示書やメールなどは、会社側から削除・改善されることがないように、コピーや写真にとっておきましょう。
②自宅に持ち帰って仕事をしなければ、期限に業務を処理できないこと
【証拠になるもの】
- 就業規則
- メール
- 日報
【具体例】
- 「○時以降は消灯する」と記載された就業規則のコピーやメールの文面
- 仕事量を示すことができる業務日報や納期がわかるスケジュールの記録
【ポイント】
業務日報などは正確に書かないこともあるかもしれません。しかし、証拠として残すためにはできるだけ毎日正確に記入し、それを証拠にできるようにコピーや写真にとって持っておきましょう。
③社員が自宅に持ち帰って仕事をしていることを、使用者が認識していること
【証拠になるもの】
- メール
- 録音
【具体例】
使用者(上司など)が、あなたの持ち帰り残業を認識していることを示すもの
「会社で終わらないなら自宅に持ち帰って仕事しろ」
というような意味のメールや、上司の発言の録音
【ポイント】
持ち帰り残業を上司が認識していることを示すには、できるだけ多くの証拠を集めておく必要があります。
まとめ:持ち帰り残業について
いかがでしたか?
最後にこの記事の内容をまとめます。
まず、持ち帰り残業とは、
本来会社で残業して行うべき仕事を、自宅に持ち帰って行うこと
です。
- 会社で残業が禁止されている社員
- 長時間残業せざるを得ない業務量の職場
などの場合で発生しやすいです。
持ち帰り残業は、原則、残業代は出ませんが、
「使用者の指揮命令下に置かれている」時間
であることが認められれば、残業代が請求できることがあります。
具体的には、
①担当業務を期限までに処理しないと、会社から不利益な扱いを受ける
②自宅に持ち帰って仕事をしなければ、期限に業務を処理できないこと
(例)午後10時に消灯してそれ以後自宅に持ち帰らなければならない
③社員が自宅に持ち帰って仕事をしていることを、使用者が認識していること
などの場合は残業になり、残業代が発生する可能性があります。
持ち帰り残業をなんとかしたい場合の対処方法としては、
- できるだけ会社で終わるように仕事を工夫する
- 残業代がしっかり出る会社に転職する
- 退職前から、後で残業代請求できるように証拠を収集しておく
というものがあります。
正しい対処方法を知って、損しないように行動していきましょう。
【参考記事一覧】
転職する場合、再びブラック企業に入ってしまうことを避けるために、以下の記事を参考にして、ブラック企業とホワイト企業を見分けましょう。