
「就職・転職したいけどブラック企業には入りたくない!」
このような考えを持つのは当たり前のことです。
しかし、多くのブラック企業は「本音」と「建前」を使い分け、選考の段階では良い面ばかり見せるため、ブラック企業を見抜くことは難しいのも事実です。
そこでこの記事では、
- 選考〜入社の各段階で、ブラック企業を正確に見分ける方法
- 転職してしまう前にやるべき、会社に未払い残業代を請求する方法
などについて詳しく解説します。
最後までしっかり読んで、就職・転職を成功させるための知識を身につけましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■ブラック企業の見分け方
【求人・インターネット上の情報での見分け方】
- 常に求人をかけている
- みなし残業・裁量労働制での採用と書かれている
- 長時間のみなし残業がある
- 仕事内容が不明確
- ネット上で悪い口コミばかりが出る
【説明会・選考での見分け方】
- 説明会で「やる気」「情熱」など精神論が多い
- 面接でやたらと体力の有無を聞かれる
- その場で内定が出る
- いつから来られる?と聞かれる
- 夜遅くや休日にも電話が繋がる
【雇用契約締結時の見分け方】
- 求人票と雇用契約の内容が異なる
- 裁量のある職種じゃないのに裁量労働制
【入社後の見分け方】
- 朝礼で社訓を唱えさせられる
- 研修時の給料が出ないor異常に低い
- パワハラ・セクハラが横行している
■ブラック企業だった場合にやるべき行動
- 自分で内容証明を会社に送る
- 労働基準監督署に申告する
- 弁護士に依頼する
目次
1章:選考〜入社の4つの段階別に見るブラック企業の見分け方
ブラック企業の見分け方をみていく前に、ブラック企業の定義について知っておきましょう。
実は、ブラック企業について政府は正式に定義していませんが、当サイト(ハタラクエスト)では、
“従業員を採用してから辞めさせるまで都合の良いように働かせ続けて、会社だけが儲けようとする会社のこと”
と定義しています。
- 求人情報やインターネットから情報収集する段階
- 説明会・選考の段階
- 雇用契約を締結する段階
- 入社後の段階
という4つに分けてお伝えします。
1−1:求人情報からの見分け方
説明会に行ったり、選考を受けたりする前に、就職・転職サイトの情報や企業のサイト、インターネット上の口コミサイトなどから情報を集めることは多いと思います。
この段階では、以下のような特徴を持つ会社を見分けるべきです。
- 離職率が高くて常に求人をかけている
- みなし残業代制、裁量労働制での採用になっている
- 長時間のみなし残業時間が規定されている
- 仕事内容が不明確
- ネット上で悪い口コミばかりが出る
1つずつみていきましょう。
【離職率が高くて常に求人をかけている】
常に求人をかけている企業は、離職率の高いブラック企業である可能性があります。そのため、定期的に検索してみて、
- どのくらいのペースで求人を出しているか
- 求人に期限をつけているか
などをチェックしてみましょう。
また、離職率に関する情報は、
- 四季報
- 転職系口コミサイト
- 企業規模と採用人数を照らし合わせてみる
などの方法でもチェックできますので、ぜひ調べてみてください。
【みなし残業・裁量労働制での採用と書かれている】
法律上、
- 1日8時間を超えて働く時間
- 週40時間を超えて働く時間
は、会社は社員に残業代を払わなければならないと決められています。
しかし、この規定を守らずに社員をサービス残業させている会社は多く、未払いの残業代をごまかす手口として、
- みなし残業代制(固定残業代制)
- 裁量労働制
などが利用されることがあります。
どんなにメリットがあるような書き方がされていたとしても、求人票にこれらの制度で採用されると書かれていたら、ブラック企業である可能性を疑いましょう。
ただし、この制度を採用しているからといって必ずブラック企業であるということではありません。詳細は直接会社の担当者から聞き出すか、インターネット上から情報収集して確認しましょう。
- 実際に働いている社員の労働時間はどのくらいが平均なのか
- みなし残業代制でも、決められた時間を超えて働いた場合は残業代が払われるのか
などを聞き出しましょう。
【長時間のみなし残業代が規定されている】
長時間のみなし残業代をあらかじめ規定しておくこと自体は、違法ではありません。しかし、たとえば、
「残業手当あり(みなし残業95時間分)」
などと書かれていたら、基本的に毎月最低それだけの残業があると考えられるため、長時間残業が常態化しているブラック企業であると考えられます。
【仕事内容が不明確】
「飛び込み営業」を「企画営業」「ソリューション営業」と称したり、クレーム対応を「カスタマーサポート」「ヘルプデスク」等と書き換えて提示する会社があります。
本当の業務内容を隠して、ごまかした表現で業務内容を記載している会社は、ブラック企業を疑った方がいいかもしれません。
【ネット上で悪い口コミばかりが出る】
インターネットの情報が全てではありませんし、必ずしも真実とは言えませんが、やはり評判の良くない会社には問題がある可能性があります。
インターネット上で情報収集する上で参照する価値があるのは、
- Vorkers
- 転職会議
- カイシャの評判
などの、もともとその会社にいた会社員が書いている、転職者向けの口コミサイトです。
一方であまり参考にならないのが、
- 匿名掲示板
- 個人のブログ
- 転職サービスを複数紹介しているランキングサイト
などです。
匿名性の高いサイトでは、個人が私怨で意図的に悪い情報を書いている可能性がありますし、ランキングサイトなどは、転職サービスに誘導するために、正確ではない情報を書いていることがあるため注意してください。
他にも、厚生労働省では、長時間労働や賃金不払いなど労働関係法令に違反した企業の一覧を作成し、公式サイトで公表しています。
参照)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html
次に、説明会や選考に進んだ段階での見分け方について、ご紹介します。
1−2:説明会・選考からの見分け方
インターネット上などの求人情報よりも、実際に説明会に足を運んだり選考を受ける段階で、直接会社の人と会う場面の方が、正確にブラック企業を見分けることができます。
説明会や選考の段階での見分け方には、以下のようなものがあります。
- 説明会で「やる気」「情熱」など精神論が多い
- 面接官の質問内容がズレている
- その場で内定が出る
- いつから来られる?と聞かれる
- 夜遅くや休日にも電話が繋がる
1つずつ解説します。
【説明会で「やる気」「情熱」など精神論が多い】
ブラック企業は精神論を駆使して社員を洗脳し、会社のために自分の命を削って働く社員を選別します。
そのため説明会でも、
- やる気、情熱のある社員が多い
- みんなで助け合って働く
- 社員は家族
- 高い志を持とう
などの精神論をイメージしてしまうキーワードが多用されていたら要注意です。他にも、
- 会社の良い面しか紹介してくれない
- 勤務時間や残業時間の長さについては濁される
- 先輩社員が若手ばかり
なども、説明会での要チェックのポイントです。
- 忙しい時期の残業時間はどのくらいになるのか
- 離職率はどのくらいなのか(平均勤続年数はどのくらいなのか)
- 何歳くらいの人が多いのか(すぐに辞める人は多くないか)
などについて、ぜひ質問してみてください。
【体力の有無をやたら聞いてくる】
御社では××のような仕事をしたいと思っています!
しかし、ブラック企業は、使い倒せる社員を集めることに必死なので、
「いかにあなたに体力があるのか」
などをやたらと聞いてくることがあります。面接でこのような質問をされた場合は、ブラック企業である可能性を疑いましょう。
【その場で内定が出る】
本来ならば、人事担当者に内定者を決める権限があったとしても、社長なり専務なりの最終的な決済を取らなければ内定が出ることはありません。
その場で内定を出すのは、判断する時間を与えずあなたを拘束するという意図があるからで、ブラック企業のよく使う手口なのです。
【いつから来られる?と聞かれる】
即日入社を望まれる場合も注意が必要です。
【夜遅くや休日にも電話が繋がる】
長時間残業や休日出勤は、ブラック企業にもっとも多い特徴です。
そのため、
- 就業時間外にもかかわらず、夜遅くや休日に電話をかけたら繋がる
- 会社の電気が夜遅くや休日でもついている
などの会社は避けた方がいいでしょう。
1−3:雇用契約からの見分け方
雇用契約を締結する段階では、もっとも正確にブラック企業を見分けることができます。正しい判断基準を持っていれば、「雇用契約書」からブラック企業を見分けることができるからです。
雇用契約書から見分けるポイントとしては、以下のものがあります。
- 求人票と雇用契約の内容が異なる
- 裁量のある職種じゃないのに裁量労働制
1つずつみていきましょう。
【求人票と雇用契約の内容が異なる】
ブラック企業は求人時の条件を良く見せておいて、雇用契約を結ぶ段階になって、異なる条件で契約を結ぼうとする手口を使います。
たとえば、
- 一般社員での採用のはずが管理職採用になっている
- 通常の雇用契約のはずが固定残業代制、裁量労働制などになっている
- 基本給が少なくなっている
などがあれば、明らかに条件が変わっていることが分かると思います。
そのような場合は、会社に変わった理由を聞くか、その会社に入社することを避けるべきです。また、そもそも残業代が明記されていないという場合も要注意です。
雇用契約を締結するときは、しっかりと条件を確認するようにしましょう。
【裁量のある職種じゃないのに裁量労働制】
ブラック企業に多いのが、プログラマーなどの自己の業務に裁量がなく、上司の指示のもとに働くにもかかわらず、裁量労働制が適用されているケースです。
裁量労働制は、自分の業務内容や勤務時間を自分の裁量で決めることができる、
- コピーライター
- システムエンジニア
- 証券アナリスト
などの一部の職種の人に適用される制度です。そのため、上司から指示された通りに働くことが要求されるプログラマーなどで裁量労働制が適用されていたら違法です。
もしあなたがプログラマーなどの職種であるにもかかわらず、裁量労働制が適用されていたら、その会社がブラック企業である可能性を疑いましょう。
1−4:入社後の見分け方
入社後すぐでも、その会社がブラック企業であるかどうかは、以下のような特徴から判断できます。
- 朝礼で社訓を唱えさせられる
- 研修時の給料が出ないor異常に低い
- パワハラ・セクハラが横行している
もしこれらの特徴に当てはまっていたら、早急に転職することを検討しましょう。
1つずつ解説します。
【朝礼で社訓を唱えさせられる】
ブラック企業は、都合良くこき使う社員に育てるために、「洗脳」する手口を使います。その手段として、朝礼などで社訓を大声で唱えさせ、声が小さい社員を罵倒したりします。
これには、
- 従順な社員を育てる
- 使いやすい社員を選別する
という意図があります。
あなたの会社でもこのような慣行があれば、要注意です。
【研修時の給料が出ないor異常に低い】
- 研修中は無給
- 研修中の給料が異常に低い(例:1日3000円など)
- 遠方での研修で交通費のみしか出ない
- 研修中に退職したら研修にかかった費用を請求する契約書にサインを求められる
これらの手口は「違法」ですので、もしこれらのことが求められた場合はブラック企業です。
【パワハラ・セクハラが横行している】
入社した会社で、
- 上司が高圧的で逆らえない
- 女性が性的に嫌がるような行為が多い
といった特徴があったら要注意です。
2章:会社を辞める前にはじめるべき「未払い残業代」を請求する2つの方法
多くの会社が、社員の残業代をごまかして不当に低く支払っている実情があります。そのため、あなたの残業代も計算してみると、実は未払いのものが数十万円、もしくは数百万円もある可能性があります。
そのため、転職する前に残業代を会社に請求する準備をはじめることをおすすめします。
そこでここでは、残業代を取り返すためにできる
・自分で会社に請求する
・弁護士に依頼して請求してもらう
という2つの方法について解説します。
この2つの方法には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
それではみていきましょう。
2−1:自分で請求する方法には2つのものがある
- 会社に配達証明付き内容証明を送る
- 労働基準監督署に相談する
という2つの方法があります。
【自分で会社に内容証明を送って請求する】
自分で会社に残業代を請求するためには、会社に「配達証明付き内容証明郵便」で、請求書を送る必要があります。
内容証明とは、差し出した日付、差出人の住所・氏名、宛先の住所・氏名、文書に書かれた内容を、日本郵便が証明してくれる手紙の一種です。
また、配達証明とは配達先や配達した日付を証明してくれる郵便の仕組みのことです。
私は○○年○○月○○日,貴社に入社し,○○年○○月○○日に退社した者です
私は,平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日(以下「請求期間」とします。)まで,貴社に対し,合計■時間の時間外労働を提供いたしましたが,貴社からは,一切,割増賃金のお支払いただいておりません。
よって,私は,貴社に対し,請求期間内の未払割増賃金の合計額である★円の支払を請求いたしますので,本書面到達後1週間以内に,以下の口座に振り込む方法によるお支払をお願いいたします。
○○銀行○○支店
○○預金(普通・定期などの別)
口座番号○○
口座名義人○○
なお,本書面到達後を1週間を過ぎても貴社から何らご連絡いただけない場合は,やむを得ず労働基準監督署への申告,訴訟の手段をとらせていただくことをあらかじめ申し添えます。
―――――――――――――――――――
内容証明で請求書などを送ることで、会社は「届いてない」と言い張っても、郵便局が届いたことを証明してくれます。これが内容証明です。
ただし、自分で会社に内容証明を送って残業代を請求しても、会社側にも顧問弁護士が付いていて、うまく丸め込まれてしまう可能性が高いです。つまり、あなたが残業代を請求しても、1円も取り戻せない可能性があります。
【労働基準監督署に申告する】
なぜなら、労働基準監督署は、労働基準法に違反している会社の行為を「正す」機関であり、残業代を取り返してくれる機関ではないからです。
労働基準監督署は慢性的な人員不足であるため、過労死や労働災害などの「人命に関わる問題」が優先して処理されます。そのため、「残業代の未払い」では、動いてもらえない可能性が高いです。
そこで、残業代を取り返す場合には、最初から弁護士に依頼することをオススメします。
2-2:より多く取り戻すために弁護士に相談しよう
弁護士に依頼した場合、
- 交渉
- 労働審判
- 訴訟(裁判)
という流れで残業代請求の手続きが進められます。
実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟(裁判)」になることは少ないです。ほとんどのケースで、交渉の段階で解決されるため、期間・手間も少なく解決することができます。
おそらくあなたが心配しているであろう「費用」の面でも、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
2-3:残業代請求に強い弁護士を選ぶのが大切
ここまで残業代請求の方法を解説しましたが、いかがだったでしょうか?
弁護士に依頼する場合、注意点があります。それは、「残業代請求に強い弁護士」を選ぶことが重要ということです。
失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用
残業代請求の方法・流れについて、理解できたでしょうか?
最後に、残業代を請求する上で注意しなければならない、2つの大事なポイントについてお伝えします。
3章:要注意!残業代請求時の2つのポイント
残業代を請求するときには、
- まずは有効な証拠を集める
- 3年の時効が成立する前に行動をはじめる
という2つのことに注意する必要があります。
それぞれ解説します。
3−1:残業代を請求するために集めるべき証拠
残業代の証拠として有効なものを、勤怠管理している会社と勤怠管理していない会社に分けて紹介します。
【勤怠管理している会社で有効な証拠】
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
【勤怠管理していない会社で有効な証拠】
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もオススメ)
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)
証拠としての有効性が認められる可能性が最も高いのは、①の本人の筆跡が確認できる「手書き」の証拠です。③の家族へのメールなどは、証拠として認められる可能性が低いため、できるだけ手書きの記録を残すことをオススメします。
証拠は、できれば3年分あることが望ましいですが、なければ半月分でもかまわないので、できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。
【保存版】知らないと損する?残業代請求する為に揃えておくべき証拠
3−2:3年の時効が成立する前に行動を開始しよう
もう一点注意してもらいたいのが、残業代請求には3年という時効があると言うことです。時効を過ぎると、残業代は二度と取り返すことができなくなってしまいます。
そのため、未払いの残業代を取り返したい場合は、すぐに行動を始める必要があるのです。
残業代請求の時効について、詳しくは以下の記事を参照してください。
残業代請求の時効は3年!時効を止める3つの手段と具体的な手続きの流れ
まとめ:ブラック企業の見分け方
いかがでしたか?
最後にもう一度、今回の内容をまとめます。
ブラック企業を見分けるポイントは、以下の16個です。
【求人・インターネット上の情報での見分け方】
- 常に求人をかけている
- みなし残業・裁量労働制での採用と書かれている
- 長時間のみなし残業がある
- 仕事内容が不明確
- ネット上で悪い口コミばかりが出る
【説明会・選考での見分け方】
- 説明会で「やる気」「情熱」など精神論が多い
- 面接でやたらと体力の有無を聞かれる
- その場で内定が出る
- いつから来られる?と聞かれる
- 夜遅くや休日にも電話が繋がる
【雇用契約締結時の見分け方】
- 求人票と雇用契約の内容が異なる
- 裁量のある職種じゃないのに裁量労働制
【入社後の見分け方】
- 朝礼で社訓を唱えさせられる
- 研修時の給料が出ないor異常に低い
- パワハラ・セクハラが横行している
ただし、以上のポイントに当てはまらなくてもブラック企業である可能性はありますので、ちょっとでも気になることがあれば疑うようにしましょう。
また、転職してしまう前に、
・自分で内容証明を会社に送る
・労働基準監督署に申告する
・弁護士に依頼する
といった手段で、会社に対して未払いの残業代を請求することをおすすめします。
できるだけ良い会社に就職するために、すぐに行動を開始しましょう。
【内部リンク一覧】
失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用