- 更新日:2024.09.18
- #残業代カット
【残業代カットされた】会社の手口とあなたが損をしないための対処法
この記事を読んで理解できること
- 残業代カットは違法!その理由と残業代をカットする会社の意図
- 残業代カットに対する損しないための3つの対処法
- 会社の使う残業代カットの手口
あなたは以下のような悩みはありませんか?
せっかく遅くまで働いて稼いだ残業代が会社からカットされると、会社に対して不信感を持ってしまいますよね。
残業代カットには「残業代が減額されること」と「残業代がそもそも支払われない」という2つのパターンがあります。
実は、どちらの場合であっても、残業代が適正な金額出ていなければ違法です。
「残業代の減額」は過去の裁判例で認められないとされていますし、「残業代がそもそも支払われない」のは、労働基準法違反になるからです。
では、なぜ会社は残業代カットするのでしょうか?勝手に残業代がカットされたらどのように対処したら良いのでしょうか?
この記事では、こんな悩みに応えるために、まずは残業代カットが違法な理由と会社の意図について、次にカットされた場合の3つの対処方法について、そしてあなたも騙されているかもしれない「残業代カットの手口」について詳しく解説します。
最後までしっかり読んで、残業代カットに対抗する知識を身につけましょう。
目次
1章:残業代カットは違法!その理由と残業代をカットする会社の意図
残業代カットの手口や対処方法を理解するために、まずは、正しい知識を得ることが必要です。
そこで、まずは残業代カットの法的な扱い、会社が残業代カットする意図について解説します。
そもそも、残業代カットには以下の2つの意味があります。
1.残業代をカット(減額)すること
2.そもそも残業代を支払わない(未払い)こと
です。
それぞれに分けて、
● 残業代カットの違法性
● 残業代をカットする会社の意図
について見ていきましょう。
1-1:残業代カットの法的な扱い
1.残業代をカット(減額)すること
2.そもそも残業代を支払わない(未払い)こと
のそれぞれの違法性を解説します。
① 残業代をカット(減額)することの違法性
「毎月支払われるはずの○万円の固定残業代が、今月は出ていない!なんで?」
残業代をカット(減額)されるケースとして多いのが、このように「固定残業代」がカットされることです。
例えば、固定残業代が月5万円支払われることが雇用契約で決められていた人が、残業が少なかった(固定残業代分の残業時間に満たなかった)月は、固定残業代が支払われない、もしくは減額される、ということがあります。
しかし、過去の裁判例では、固定残業代の合意をした以上、実際に行われた残業に基づいて計算した残業代の額が、あらかじめ定められた固定残業代の額に満たない場合であっても、固定残業代は減額されないとすべきと判断されました。
そのため、固定残業代がカット(減額)されることは認められないのです。
② そもそも残業代を支払わない(未払い)ことは違法
「うちの会社では残業代は出ない」
「〇〇手当が残業代のかわりだから、それ以上の残業代は出ない」
このようなことが言われて、適正な金額の残業代が支払われない会社は多いですが、このような行為は違法です。
残業代が支払われる基準になるのは、労働基準法です。
会社の就業規則や賃金規則ではありません。
そのため、あなたの残業代がそもそも出ていなかったり、適正な金額の残業代が出ていなければ、労働基準法に違反していることになるのです。
労働基準法では、残業代について以下のように規定されています。
(労働基準法37条項)
会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給にに「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。
また、
会社は、従業員に休日労働させた場合、通常の時給に「1.35倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。
※以上の文章は分かりやすいように改変しています。
社員には残業代をもらう権利があるのであり、本来出るべき残業代が出ないことは、この「37条」に違反することになるのです。
そのため、適正な金額の残業代が支払われないことは、違法なのです。
残業代の労働基準法上の規定について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
あなたの残業代は適正?労働基準法での残業代の定義・支払いのルールとは
では、なぜ会社は「残業代カット」という違法行為をするのでしょうか?
1-2:会社が残業代をカットする意図
「残業代をカット(減額)すること」
「そもそも残業代を支払わない(未払い)こと」
のどちらの残業代カットも、会社の意図は同じです。
それは「人件費を圧縮して会社の利益を増やす」ことです。
法律を守る普通の会社は、利益を増やすためには売り上げを増やしたり、経営を効率化したりします。
しかし、一部のブラック企業では、人件費をカットすることで経費を抑え、その分利益を増大しようとするのです。
残業代カットはその手段として使われることが多いのです。
なぜ利益増大のために残業代カットを使うのかというと、多くの社員が労働基準法に関する正しい知識を持っていないためです。
そのため、ブラック企業の経営者は、以下のように考えて、残業代カットを利益増大の手段として使うのです。
さらに、ブラック企業の経営者は、社員が残業代をカットされていることに不信感を持たないように、様々な巧妙な手口を使っています。
具体的な手口の内容について、3章で詳しく解説しています。
1-3:本来であれば残業代が発生するケース
「これだけ働いたのに残業が出ない、でもこれっておかしくない?」
このような不満や疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。
実際に悪質な企業は、あらゆる手口で従業員に本来支払うべき残業代をカットしようとしてきます。
そのため、従業員は「本来であれば残業代が発生するケース」を把握し、残業代をカットされないよう自衛する必要があります。
会社が使う手口の主な具体例は、以下のとおりです。
● 「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
● 在宅勤務であったため残業代を支払う義務はない
いずれももっともらしい理由だと誤解してしまいそうですが、実際にはどちらも残業代を支払わない理由としては認められません。
よって、残業代は問題なく請求できます。
上記2つの例については、3章で詳細を解説します。
2章:残業代カットに対する損しないための3つの対処法
残業代カットへの対処法は、以下の3つです。
● 会社に相談する
● 労働基準監督署に相談する
● 会社を辞めてカットされた残業代を請求する
これらの方法には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
なんとしてでも残業代を取り返したいという場合におすすめなのは、「会社を辞めて残業代を請求する」方法です。
2-1:会社に相談する
残業代がカットされていることについて、会社の上司などに相談することが可能なら、まずは直接相談してみましょう。
もし、
● 上司に言ってもはぐらかされる
● 上司から丸め込まれる
● そもそも上司に相談するのは怖い
などの場合は、自分が勤務していた支社や店舗ではなく、本社に直接連絡して相談することをおすすめします。
なぜなら、あなたの会社の上司が残業代をカットしていることを、本社は知らない可能性がある上、本社は問題になることを恐れて、あなたの上司よりも誠実な対応をしてくれる可能性があるからです。
しかし、
● そんなことできない!
● もう試した!
という場合は、これから紹介する他の方法を試してみてください。
2-2:労働基準監督署に相談する
残業代がカットされていることを、労働基準監督署に相談するという方法もあります。
労働基準監督署に相談すれば、具体的なアドバイスがもらえる可能性もあります。
ただし、相談するだけでは労働基準監督署は動いてくれず、アドバイスをもらえるのみです。
さらに、相談ではなく「申告」すれば、場合によっては解決することもあります。
※労働基準監督署への申告とは、単なる労働問題の相談ではなく、会社の違法行為が明らかである場合に、労働基準監督署に対応を求めることです。
労働基準監督署への申告は、以下のような流れで可能です。
このような流れで労働基準監督署に申告することができるのですが、この方法は「残業代を請求したい場合」は、あまりおすすめではありません。
また、労働基準監督署は、労働者からのすべての申告で動くわけではありません。
それは、全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約2400人しかおらず、明らかに人員不足だからです。
そのため、危険作業や労働災害などの「人命に関わる問題」などが優先して処理されるため、「残業代の未払い」では、動いてもらえない可能性が高いのです。
それより、何としても残業代を取り返したいという人は、会社を辞めて残業代を請求することをおすすめします。
2-3:退職を機に残業代を請求する2つの方法
残業代をカットされている場合、対処方法として最も効果的なのが、会社を辞めて、残業代が法律通りに出る会社を探して転職することです。
会社を辞めるという選択肢は、なかなか勇気がいるかもしれません。
しかし、残業代を勝手にカットするようなブラック企業に居続けても、あなたは会社から良いように使われ続けるだけではないでしょうか。
会社に残業代カットを相談したり、労働基準監督署に相談して是正勧告してもらうことができても、その場限りの対応で終わってしまう可能性もあります。
なぜなら、当たり前のように残業代をカットする「会社の空気」や、「上司の考え方」などは、簡単には変わらないからです。
そのため、残業代がきちんと出る“ホワイト企業”に転職するのがもっとも効果的な方法です。
会社を辞める場合、退職を機に、会社に未払い残業代を請求することができます。
残業代は、以下のように、あなたが思っているより高額になる可能性が高いため、請求しなければ大きな損になります。
そのため、退職するのであれば、必ず会社に請求することをおすすめします。
(請求できる残業代の例)
● 月給20万円
● 毎月80時間残業
● 月の残業代:11万7600円
の場合
残業代は3年分までさかのぼって請求できるため、
3年分の残業代の合計:423万3600円
※詳しい残業代の計算方法は、以下の記事をご覧ください。
それでは、残業代を請求する場合の2つの請求方法について解説します。
2-3-1:自分で会社に直接「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する
未払い残業代について、自分で会社に「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求するという方法があります。
内容証明とは、差し出した日付、差出人の住所・氏名、宛先の住所・氏名、文書に書かれた内容を、日本郵便が証明してくれる手紙の一種です。
そして、配達証明とは、配達した日付や宛名を証明してくれる郵便の制度です。
書面は以下のようなものです。
<内容証明ひな形>
私は○○年○○月○○日,貴社に入社し,○○年○○月○○日に退社した者です。
私は,平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日(以下「請求期間」とします。)まで,貴社に対し,合計■時間の時間外労働を提供いたしましたが,貴社からは,一切,割増賃金のお支払いただいておりません。
よって,私は,貴社に対し,請求期間内の未払割増賃金の合計額である★円の支払を請求いたしますので,本書面到達後1週間以内に,以下の口座に振り込む方法によるお支払をお願いいたします。
○○銀行○○支店
○○預金(普通・定期などの別)
口座番号○○
口座名義人○○
なお,本書面到達後を1週間を過ぎても貴社から何らご連絡いただけない場合は,やむを得ず訴訟を提起させていただくことをあらかじめ申し添えます。
「配達証明付き内容証明郵便」で会社に請求書を送ることで、会社は「そんなもの届いていない」としらばっくれることができなくなります。
「配達証明付き内容証明郵便」を送って残業代を請求する流れは、以下の4つのステップからなります。
1.証拠を集める
2.残業代を計算する
3.会社に配達証明付き内容証明郵便を送る
4.自分で会社と交渉する
会社に「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する方法は、必要な手続きの量が多いですので、詳しくは以下の記事を参照してください。
残業代を内容証明で請求!自分で出す方法と適切なタイミングを徹底解説
内容証明を送ると会社との交渉がスタートします。
運が良ければ、内容証明が届いた時点で支払いに応じる会社もあるかもしれません。
しかし、多くのブラック企業は、あなたになるべく残業代を払いたくないため、顧問弁護士等を介して減額の交渉をしてくるでしょう。
どの金額で折り合いがつくかは、あなた次第ですが、相手は、法律のプロである弁護士なので本来もらえる額より少ない金額で妥協しなくてはならない可能性が高いです。
また、一人で交渉してもブラック企業に対してはあまり圧力とならないため、相手にしてもらえず、内容証明を送っても無視されるという可能性もあります。
そんな場合は、次に紹介する「弁護士に依頼する」方法をおすすめします。
2-3-2:弁護士に依頼して請求(手間・時間がかからず回収金額が高くなる可能性アリ)
● より確実に残業代を取り返したい
● すでに会社を退職しているが、少しでも多くの残業代を取り返したい
● これから退職して残業代を取り返したいので、準備を始めたい
こんな場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、残業代の計算や交渉は、専門的な知識が必要になりますし、「すでに退職している」「これから準備を始める」という場合は、自分の知識だけでは円滑に手続きを進めることが、より難しいからです。
残業代請求を弁護士に依頼した場合の、詳しい手続きの流れや注意点について、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひご覧になってください。
【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説
残業代カットされた場合の対処方法について、理解することができましたか?
3章:会社の使う残業代カットの手口
あなたの会社では、以下のようなことが言われたり、されたりして残業代がカットされていませんか?
【残業代がカット(減額)された場合】
● 残業が少なかったことを理由に、固定残業代をカットする
【残業代がそもそも支払われていない、もしくは不当に少ない金額しか出ていない場合】
● 残業時間の端数を切り捨てる
● 早出出勤、待ち時間、片付け時間などが残業にカウントされない
● さぼってばかりで真面目に働いていない
● 残業は禁止していた
● 基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる
● 「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
● 年俸制なので残業代の支払い義務はない
● 残業代は歩合に含まれているので支払い済みである
● 変形労働時間制なので支払い義務はない
● フレックスタイム制なので支払い義務はない
これらを理由に残業代がカットされていたら違法です。
それぞれの手口について、詳しく解説します。
3-1:残業が少なかったことを理由に固定残業代をカットする
残業代をカット(減額)する手口には、このようなものがあります。
あなたも、実際の残業時間が少なく、実際の残業代が、固定残業代の金額に満たなかったことを理由に、固定残業代がカットされることがありませんか?
このような行為は、章で解説したように、過去の裁判例で認められないとされています。
そのため、あなたの会社がこのような行為をしていたら、あなたは後から残業代を請求することができます。
3-2:適正な金額の残業代を支払わない手口
そもそも、適正な金額の残業代を最初から支払わないでおこうとする会社の手口には、以下のものがあります。
3-2-1:残業時間の端数を切り捨てる
あなたの職場では、以下のような方法で勤怠管理がされていませんか?
残業の記録が、5分、15分、30分単位などになっていて、分単位ではない
このような行為は認められません。
なぜなら、日々の残業時間は1分単位で記録しなければならないからです。
そのため、あなたの会社で日々の残業の記録が分単位になっていなかったら、それはその分の残業時間をごまかし、残業代をカットする手口である可能性があります。
残業時間の端数切り捨ての例外が認められるのは、1ヶ月の残業の合計時間についてのみで、以下のように決められています。
【1ヶ月の残業、休日労働、深夜労働の端数】
● 合計時間のうち30分未満の端数は切り捨て
● 合計時間のうち30分以上は時間に切り上げ
あなたの日々の残業時間の端数が切り捨てられていたら、その分の残業代を請求することができます。
3-2-2:早出出勤、待ち時間、片付け時間などが残業にカウントされない
本来、以下の時間も労働時間としてカウントされます。
そのため、これらの時間が労働時間としてカウントされていなければ、あなたはその分の残業代を請求できる可能性があります。
● 準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
● 後始末時間:着替え、掃除、清身
● 休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
● 仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
● 待機時間:トラックの荷待ちの時間
● 仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
● 研修:会社からの指示で参加した研修
● 自宅の作業:会社の指示で自宅に持ち帰って仕事した時間
あなたの会社でも、これらの時間が労働時間としてカウントされていなければ、それは残業代カットの手口かもしれません。
3-2-3:さぼってばかりで真面目に働いていない
会社の経営者や上司から「さぼってばかりで、真面目に働いていない」などと言われていたとしても、具体的な証拠が無い場合、まったく効力を持ちません。
そのため、残業代支払い拒否の理由にはなりません。
したがって、こんなことを言われていたら、それは残業代カットの手口である可能性が高いです。
3-2-4:残業は禁止していた
残業禁止令を出しながら、
● 残業を行っているのを黙認する
● 残業しなければ終わらない大量の仕事を指示する
など明らかに残業を強要するような行動があった場合、いくら「残業は禁止」と口だけで言っていたとしても、残業代を支払う義務があります。
あなたがこれらのようなことを言われていたら、それは会社による残業代カットの手口である可能性があります。
3-2-5:基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる
● 残業代は基本給に組み込まれている
● ○○手当(営業手当、役職手当など)の形で残業代を支払っている
このように、残業代がみなし残業代や固定手当として支払われていても、残業代は発生します。
そのため、これらを理由に残業代が支払われていなければ違法です。詳しくは、以下の記事を参照してください。
3-2-6:「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
「管理職」や「店長」であることは、残業代が発生しない理由にはなりません。
確かに、労働基準法上、会社のサービスや採用などに大きな裁量を持っている人を労働基準法上「管理監督者」と呼び、深夜手当を除き、残業代を支払う必要がないとされています。
しかし、労働基準法上の管理監督者とみなされるには、非常に厳しい要素を満たす必要があり、ほとんどの「管理職」や「店長」の人は、労働基準法上の管理監督者ではありません。
このように、たいした裁量もないのに、「管理職」「店長」といった名前だけ与えられ、残業代の支払いをされていない人のことを「名ばかり管理職」と言います。
「名ばかり管理職」は、残業代カットの手口として使われることが多いですので、注意してください。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
名ばかり管理職チェックリスト!問題点と残業代の請求方法を弁護士が解説
3-2-7:年俸制なので残業代の支払い義務はない
年俸制であっても、基本給部分と残業代部分が明確に区分されていない場合は,残業代の支払い義務があります。
そのため、年俸制を理由に残業代が出ていなかったら、それは残業代カットの手口です。
年俸制について、詳しくは以下の記事を参照してください。
年棒制とは?正しい意味と悪用例!残業代を取り戻す方法を弁護士が解説
3-2-8:残業代は歩合に含まれているので支払い済みである
歩合給制であっても、歩合の内いくらが残業代として支払われているのか、明確に分けられていない場合は、残業代を別途支払う義務があります。
そのため、歩合給制であることを理由に残業代が支払われていなければ、それは残業代カットの手口であり、違法です。
歩合給制について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
歩合給制とは?正しい意味と違法なケース、未払残業代の計算方法を解説
3-2-9:変形労働時間制なので支払い義務はない
変形労働時間制とは、一定の期間を設定し、その期間内の特定の日や週について、法定労働時間を超える所定労働時間を設定することができる制度です。
たとえば、「4月の週目の週間所定労働時間を、45時間にする」のようなことができます。
正しく運用すれば、これ自体は違法ではありません。
しかし、多くのブラック企業は、変形労働制を違法に利用し、残業代カットの手口として使っていることが多いのが実情です。
変形労働時間制について、詳しくは以下の記事を参照してください。
3-2-10:フレックスタイム制なので支払い義務はない
フレックスタイム制とは、従業員が契約時間の範囲内で始業時刻と終業時刻を自由に設定できる制度のことです。
この場合も、契約時間を超えて働いた場合には残業代をもらう権利があります。
フレックスタイム制について、詳しくは以下の記事を参照してください。
フレックスタイム制とは?正しい使い方とメリデメや残業代の計算方法
3-2-11:在宅勤務であったため残業代を支払う義務はない
2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、在宅勤務を取り入れる企業が増加傾向にあるため、在宅ワーカーの数も同様に増えてきています。
ただ、なかには「在宅勤務は実際の労働時間を把握しにくい」という口実で、残業代の支払いを拒否された人もいるのではないでしょうか。
しかし在宅勤務の場合でも、使用者の指示により法定労働時間を超えて労働した分は、オフィス勤務の場合と同様に残業代は発生します。
なぜなら、単に「在宅勤務だから」という理由のみでは、残業代不払いの正当化はできないためです。
残業代が発生しないと認められるのは、労働者が事業場外で業務に従事し、かつ労働時間の計算が困難であるとして、事業場外みなし労働時間制(労基法38条の2)が適用される場合です。
具体的には、
➀ 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、
② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことをいずれも満たす場合に限られます。
詳しくはこちらをご参照ください。
自宅でテレワークを行う場合、「事業場外労働のみなし労働時間制」を利用できますか。
上記に該当する場合は、会社側の主張が通るため、残業代の請求は諦めるしかないでしょう。
とはいえ、現在はチャットツールや勤怠管理システムを導入する企業が増えてきているため、労働時間の計算が難しいと判断される可能性は低いです。
また、そもそも事業場外みなし労働制の導入には、下記の画像に記載されている要件を満たす必要があります。
つまり、実際に残業代の支払い拒否が認められるケースは限定的です。
普段からチャットや電話などの履歴を残しておき、万が一の際はこれらを証拠に残業代を請求しましょう。
まとめ:残業代カットの手口や対処方法
いかがでしたか?
最後にもう一度、今回の内容を振り返りましょう。
【残業代カットが違法な理由】
①残業代がカット(減額)されること
「実際の残業時間が少なく、残業代が固定残業代の金額に満たなかったことを理由に、固定残業代をカットする」のは認められないと、過去の判例で判断されているため
②残業代がそもそも支払われない(未払い)こと
(労働基準法37条項)
会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給にに「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。
↓
この法律に違反しているため
【会社が残業代をカットする意図】
● 利益増大のため
● 残業代カットに気づかない、法律に無知な社員が多いため
【残業代カットされた場合の3つの対処方法】
● 会社に相談する
● 労働基準監督署に相談する
● 退職して会社にカットされた残業代を請求する
【残業代カットの手口】
①残業代をカット(減額)する手口
● 固定残業代を、残業時間がみなし残業時間に満たなかったことを理由にカット(減額)する
②残業代を支払わない(未払い)手口
● 残業時間の端数を切り捨てる
● 早出出勤、待ち時間、片付け時間などが残業にカウントされない
● さぼってばかりで真面目に働いていない
● 残業は禁止していた
● 基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる
● 「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
● 年俸制なので残業代の支払い義務はない
● 残業代は歩合に含まれているので支払い済みである
● 変形労働時間制なので支払い義務はない
● フレックスタイム制なので支払い義務はない
カットされた残業代は、トータルでは数百万円という高額になる可能性があります。
今すぐ行動するつもりはなくても、この記事を何度も読んで、取り返すための方法を覚えておいてください。
【参考記事一覧】
残業代の労働基準法上での扱いについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
あなたの残業代は適正?労働基準法での残業代の定義・支払いのルールとは
以下の記事では残業代計算の詳しい方法について解説しています。
内容証明について詳しくは以下の記事で解説しています。
残業代を内容証明で請求!自分で出す方法と適切なタイミングを徹底解説
残業代請求を弁護士に依頼する方法と弁護士の選び方について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説
みなし残業代(固定残業代)について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
名ばかり管理職について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
名ばかり管理職チェックリスト!問題点と残業代の請求方法を弁護士が解説
年俸制、歩合給制、変形労働時間制、フレックスタイム制について詳しくは以下の記事をご覧ください。
年棒制とは?正しい意味と悪用例!残業代を取り戻す方法を弁護士が解説