【年俸制でも残業代が出る】その理由と残業代の計算方法を徹底解説

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

【年俸制でも残業代が出る】その理由と残業代の計算方法を徹底解説
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 年俸制でも残業代は出る!その理由を解説
  • 年俸制で残業代が出るケース・出ないケース
  • 年俸制における残業代の計算方法
  • 年俸制で残業代を請求する方法

年俸制で働いているあなたは、

「年俸制でも残業代って出るのかな?」
「年俸制なら残業代はいくらになるんだろう?」
「年俸制を理由に残業代が出ていないけれど、これって違法?」

などの疑問はありませんか?

年俸制とは、給与の額を1年単位で決める仕組みのことですが、一般的に「残業代が出ない仕組み」と誤解されていることも多いようです。

さらに、一部のブラック企業は、「年俸制は残業代が発生しない」と社員に誤った情報を伝えて、残業代をごまかすことすらあります。

そのため、あなたが年俸制の会社で働いているなら、「年俸制の正しい仕組み」について知っておくことが何より大事です。

そこでこの記事では、まずは年俸制でも残業代が出る理由と、年俸制で残業代が出るケース、出ないケースについて解説します。

さらに、年俸制の場合の残業代の計算方法と、未払い残業代がある場合の請求方法についてお伝えします。

最後までしっかり読んで、損しないように行動していきましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■年俸制の残業代のルール

→1日8時間、週40時間のどちらか一方を超えて働いた場合、残業代が発生する

■年俸制で残業代が出ないケース

  • 管理職の場合
  • みなし残業代制で、残業時間がみなし残業時間を超えない場合

■年俸制で残業代が出るケース

  • 外資系企業
  • ベンチャー企業

■年俸制の残業代の計算方法

残業代=基礎時給×割増率×残業時間

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:年俸制でも残業代は出る!その理由を解説

結論として年俸制でも残業代は出ますし、でなければそれは労働基準法に反しており、れっきとした違法行為です。

年俸制でも残業代が出る、出なければならない2つの理由をまずはみていきましょう。

理由①年俸制でも残業時間のルールは一緒であるため

そもそも、労働基準法では「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超えた労働が残業時間であると決められています。

これは、年俸制でも変わりません。

1日8時間・週40時間を超えたら残業

年俸制とは

「給与の額を1年単位で決める」

という給与の額の決め方に関する制度であり、残業時間のルールが異なるわけではないのです。

理由②労働基準法で、残業時間は残業代が発生すると決められているため

さらに、労働基準法では、残業時間には残業代が発生すると決められています。

(労働基準法37条1項)

会社は、従業員に残業させた場合、通常の時給に「1.25倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

また、

会社は、従業員に休日労働させた場合、通常の時給に「1.35倍」の割増率をかけた残業代を支払わなければならない。

※以上の説明は、分かりやすく改変しています。

上記のようなルールがあるため、年俸制を理由に「残業代が発生しない」というのは間違いです。

そのため、年俸制を理由に「残業代は出ない」と言われていたら、違法なのです。

2章:年俸制で残業代が出るケース・出ないケース

年俸制だと、

  • 管理職
  • 外資系
  • ベンチャー

などを理由に、「残業代が出ない」と思われていることがありますが、実は、これらは残業代が出ない理由にはなりません。

そこで、

  • 年俸制で残業代が出ないケース
  • 年俸制で残業代が出るケース

に分けて解説します。

2-1:年俸制で残業代が出ないケース

年俸制で残業代が出ないのは、

  • 労働基準法上の管理監督者を満たす管理職の場合
  • みなし残業代制で、残業時間がみなし残業時間内の場合

という2つです。

順番に解説します。

2-1-1:労働基準法上の管理監督者を満たす管理職の場合

労働基準法で定められた「管理監督者」の場合は、会社は残業代を支払わなくても良いと決められています。

そのため、もしあなたが管理監督者の要素を満たしている場合、年俸制でも残業代は出ません。

しかし、実はほとんどの管理職の人は、労働基準法上の管理監督者の要素を満たしていません。

なぜなら、管理監督者は、

  • 出退勤の時間や日程が自由で、自分で決められる
  • 自分の店舗、営業所等以外にも、人事権がある
  • 一般社員とは異なる突出した待遇を受けている

などの要素を満たす必要があるからです。

管理職について、詳しくは以下の記事で解説しています。

管理職でも残業代が出る?管理職の3つの定義と判断基準を徹底解説

2-1-2:みなし残業代制で、残業時間がみなし残業時間内の場合

1章でもお伝えしたように、年俸制はみなし残業代制と併用されることが多いです。

みなし残業代制は、一定の時間(みなし残業時間)に対して、毎月一定額のみなし残業代を支払うということですので、あなたの残業時間が、みなし残業時間より短ければ、残業代は発生しません。

たとえば、「月のみなし残業時間が40時間」と決まっている会社なら、実際の残業時間が40時間以内なら、残業代は出ません。

ただし、そもそもみなし残業代制は、適切に運用されていないことも多いため、詳しくは以下の記事をご覧ください。

みなし残業(固定残業)の違法性を判断する7つのポイントを徹底解説

2-2:年俸制で残業代が発生するケース

次に、年俸制を理由に残業代が出ないと勘違いされることが多いですが、実は残業代が出るという以下の2つのケースを紹介します。

  • 外資系企業の場合
  • ベンチャー企業の場合

2-2-1:年俸制の外資系企業でも残業代が出る

外資系企業には、年俸制を採用している会社も多いです。そして、一般的に、外資系企業の場合は、

「日本とルールが異なる」

と思われ、残業代が出ないと思われていることもあるようです。

しかし、年俸制の外資系企業でも、残業代が出なければ違法です。

なぜなら、たとえ外資系企業でも、日本に会社があるなら日本の労働基準法のルールに従う義務があるからです。

2-2-2:年俸制のベンチャー企業でも残業代が出る

ベンチャー企業も年俸制を採用している会社が多いですが、そのために残業代が出ないと思われていることが多いようです。

しかし、もちろんこれも間違っています。

ベンチャー企業であっても労働基準法のルールに従わなければなりませんので、年俸制を理由に残業代が出ていなければ違法です。

3章:年俸制における残業代の計算方法

それでは、年俸制の場合の残業代の計算方法について解説します。

残業代は、以下の3ステップで計算します」。

残業代の計算式

順番に解説します。

①基礎時給を計算する
年俸制の場合、「基礎時給(※)」の計算方法が特殊です。

基礎時給とは、残業1時間当たりの賃金のことです。

年俸制の場合、以下の計算式で計算します。

年俸制の場合の基礎時給の計算

※一月平均所定労働時間とは、会社によって定められた労働時間の平均ことで、170時間前後であることが一般的です。

具体的には、以下のようになります。

(例)年俸500万円の場合

500万円÷12ヶ月÷170時間=約2450円(基礎時給)

②割増率をかける
割増率とは、基礎時給にかけるもので、残業や深夜労働、休日出勤などによって異なります。

残業代計算の割増率

この割増率を基礎時給にかけることで、残業1時間当たりの賃金を出すことができます。

(例)基礎時給2450円の場合

2450円×1.25=約3063円

③残業時間をかける
最後に、②で出した残業1時間当たりの賃金に、実際に残業した時間をかけることで、あなたの本来の残業代を出すことができます。

では、計算してみましょう。

(例)

  • 年俸500万円
  • 一月平均所定労働時間170時間
  • 月の残業が50時間の場合

基礎時給を計算

500万÷12ヶ月÷170時間=2450円

残業1時間当たりの賃金を計算

2450円×1.25倍=3063円

残業代を計算

3063円×残業50時間=15万3150円

このように、実際の残業代は高額になります。

もしご自身で計算してみた結果、もらえている残業代が計算結果より少ないようなら、未払い残業代が発生しています。

未払い残業代は、3年分までさかのぼって請求できるため、総額では、

15万3150円×36ヶ月=551万3400円

と高額になります。

4章:年俸制で残業代を請求する方法

未払い残業代がある場合、会社に請求することで取り返せる可能性が高いです。

未払い残業代は先ほども計算したように高額になっている可能性があるため、取り返さなければ大きな損になります。

「でも、残業代請求の手続きって面倒くさそう、、それに失敗するのもイヤだし。」


あなたはこのように思うかも知れませんが、実は弁護士に依頼すれば、請求手続きのほとんどを丸投げでき、手間や時間の分はもちろん、会社と連絡や交渉をする精神的ストレスもありません。

しかも、完全成功報酬制の弁護士に依頼すれば、初期費用もゼロ円で請求できます。

最近では、会社を退職する時や、すでに退職した会社に対して、残業代請求の手続きを行う人は少なくありません。

多くの人が、手軽に残業代を取り返しているのです。

詳しい手続きの方法については、以下の記事をご覧ください。

失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用

まとめ

いかがでしたか?最後に今回の内容をまとめます。

【年俸制の残業代のルール】

→1日8時間、週40時間のどちらか一方を超えて働いた場合、残業代が発生する

【年俸制で残業代が出ないケース】

  • 管理職の場合
  • みなし残業代制で、残業時間がみなし残業時間を超えない場合

【年俸制で残業代が出るケース】

  • 外資系企業
  • ベンチャー企業

【年俸制の残業代の計算方法】

残業代=基礎時給×割増率×残業時間

未払い残業代の請求には、3年という時効があります。

そのため、もし未払い残業代がある場合は早めに行動をはじめることをおすすめします。

【参考記事一覧】

管理職の残業代のルールについて、詳しくは以下の記事で解説しています。

管理職でも残業代が出る?管理職の3つの定義と判断基準を徹底解説

みなし残業代制の場合の残業代のルールについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

みなし残業(固定残業)の違法性を判断する7つのポイントを徹底解説

未払い残業代を請求する場合の手続き方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用

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会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

弁護士法人新橋第一法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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