- 更新日:2024.08.21
- #未払い賃金立替制度
すぐ実践できる!未払い賃金立替制度の利用条件・もらえる金額と手続き方法
この記事を読んで理解できること
- 未払い賃金立替制度とは?利用できる条件・給料が返ってくる範囲などを詳しく解説
- 未払い賃金立替制度を利用する具体的な手続きの流れ
あなたは、倒産したときの未払いの給料が国から立替払いしてもらえる「未払い賃金立替制度」をご存知ですか?
「給料が未払いのまま会社が倒産してしまった」
「業務が停止したまま、経営者と連絡が取れなくなってしまった」
こんなことがあったら、もうこのままお金が返ってこないのかと焦ってしまいますよね。
こんな場合に、一定の条件を満たせば「未払い賃金立替制度」を利用することができ、最大8割までの給料を取り返すことができます。
そこで、この記事では、
- 未払賃金立替制度の利用できる条件
- 取り返せる給料の金額
- 必要な手続きの流れ
などについて詳しく解説します。
最後までしっかり読んで、行動をはじめましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■未払い賃金立替制度とは
「倒産した会社で働いていた従業員に、国が給料の一部を立替払いしてくれる制度」であり、利用するには一定の条件を満たす必要がある。
■対象となる賃金の期間
退職日の6か月前から、立替払い請求日までの間に支払期日が到来する未払い賃金
■支払われる賃金の金額
- 原則的に賃金の8割
- 以下の上限内で支払われる
■未払賃金支払いの上限
退職日時点の年齢 |
未払い賃金の上限 |
立替払いの上限 |
30歳未満 |
110万円 |
88万円 |
30歳以上45歳未満 |
220万円 |
176万円 |
45歳以上 |
370万円 |
296万円 |
利用する流れは、以下のようになっています。
目次
1章:未払い賃金立替制度とは?利用できる条件・給料が返ってくる範囲などを詳しく解説
「未払い賃金立替制度」とは、会社が倒産したときに、その会社で働いていた従業員が給料を取りっぱぐれることがないように、国が給料の一部を立て替えて支払ってくれる制度です。
それでは、これから詳しく解説します。
手っ取り早く自分が未払い賃金立替制度を利用できるのかどうか判断したい場合は、以下のチェックリストをやってみてください。
これらに全て当てはまれば、あなたは制度を利用して、給料を取り返すことができます。
もし、すぐに手続きの方法が知りたい場合は、3章から読んでください。
《未払い賃金立替制度を利用できるか分かるチェックリスト》
自分の働いている会社が倒産した
倒産した会社が1年以上事業を行っていた
定期賃金(基本給、固定手当、残業代など)と退職金の未払い分の合計が2万円以上である
未払い賃金がある期間に従業員で、かつ手続きの開始日から1年半以内に退職した
1-1:概要-未払い賃金立替制度とは-
会社が倒産してしまった場合、そこで働く従業員は、給料が未払いのまま解雇されることもあります。
しかし、従業員からすると突然会社が倒産し、予定されていた給料が払われずに解雇されてしまえば、路頭に迷ってしまいます。
そこで、倒産した会社で働いていた従業員の給料の一部を、国(正確には独立行政法人労働者健康安全機構)が立替払いしてくれるのが「未払い賃金立替制度」です。
倒産した会社は給料の支払いから開放されるわけではなく、国がまずは従業員に立替払いし、国が後から会社に請求します。
この制度は、従業員からの反発を避けるために会社側が準備していることもあります。
しかし、準備されていなかった場合は、従業員が自分で手続きをしなければなりません。
そのため、利用するための正しい知識が必要なのです。
1-2:自分は利用できるのか?-利用できる条件-
未払い賃金立替制度は、基本的に倒産した会社の従業員は誰でも利用が可能ですが、利用には条件があります。
詳しい条件について、詳しく解説します。
【制度を利用できる会社の条件】
会社の条件は以下の通りです。
- 事業主(会社)が1年以上労働者を雇って事業を行っていたこと
- 会社が倒産していること
倒産とは、以下の2つのことです。
A.法律上倒産
事業主(会社)が、法的な破産手続き(※)を取っている
※破産法に基づく破産手続、会社法に基づく特別清算手続、民事再生法に基づく民事再生手続、会社更生法に基づく会社更生手続
B.事実上倒産
事業主(会社)が事業を続けることができなくなり、従業員の給料の支払いができず、その状態を労働基準監督署が認定している
つまり、会社が1年以上事業を継続しており、かつ倒産状態にある場合に条件を満たすことができるのです。
会社の倒産状態には、2つがあり、①法的な手続きが取られている場合(法律上倒産)と、②法的な手続きが行われていなくても、事実上は倒産状態にあり、それを労働基準監督署が認定している状態(事実上倒産)のことです。
労働基準監督署に認定されていない場合は、従業員の誰か1人が、申請に行く必要があります。
【制度を利用できる従業員の条件】
従業員の条件は以下の通りです。
制度を利用できる人は、①と②の両方の条件を満たしている人です。
詳しい手続きの方法については、3章から詳しく解説します。
1-3:いくらもらえるのか?-給付される賃金の種類と範囲-
未払い賃金立替制度を利用して返ってくる金額は、給料の全額ではなく、以下のように限られています。
【対象となる賃金】
①毎月定期的に支払われる賃金(基本給、残業代、深夜手当、休日手当など)
※毎月一定の期日に支払われていた給料で、税金や社会保険料などの控除を差し引く前の金額
※賞与、福利厚生費、通勤手当などは含まれない
②退職金
つまり、ボーナスや祝い金は対象にならないことに注意しておきましょう。
【支払われる賃金の金額】
- 原則的に賃金の8割
- 以下の上限内で支払われる
《未払賃金支払いの上限》
退職日時点の年齢 |
未払い賃金の上限 |
立替払いの上限 |
30歳未満 |
110万円 |
88万円 |
30歳以上45歳未満 |
220万円 |
176万円 |
45歳以上 |
370万円 |
296万円 |
なお、税金(所得税、住民税等)や社会保険料などは控除される前のものです。
すなわち、額面額がもらえます。
※ただし、未払い賃金が2万円以下の場合は、未払い賃金立替制度を利用することができません。
たとえば、
- 年齢32歳
- 未払い賃金の合計200万円(定期賃金が80万円、退職金が120万円)
の場合
「未払賃金の上限」の220万円を超えていないため、
200万円×80%=160万円
の立替金を受け取ることができます。
仮に、同じ条件で未払賃金の合計が240万円の場合、220万円の上限を超えているため、上限の220万円で計算されます。
そのため、
220万円×80%=176万円
の立替金を受け取ることができます。
未払い賃金立替制度を利用できる条件や、対象となる給料などについて理解することはできたでしょうか?
次に、あなたが未払い賃金立替制度を利用するための手続きの流れについて解説します。
2章:未払い賃金立替制度を利用する具体的な手続きの流れ
未払い賃金立替制度の手続きは、「法律上倒産」の場合と「事実上倒産」の場合とで、必要な手続きが異なります。
まずは、法律上倒産の場合から解説します。
2-1:法律上倒産の場合
破産手続きにも費用がかかるため、お金のない中小企業などでは、倒産時に法的な手続きが行われないことも多いです。
そのような場合は、3-2を読んでください。 法律上倒産の場合、手続きは以下のような流れになります。
- 破産管財人等か裁判所から「証明書」を交付してもらう
- 証明書に必要事項を記入し、労働者健康福祉機構に提出
- 立替金が口座に入金される
法律上倒産の場合、手続きは破産管財人等の「証明者」が行ってくれることが多いです。
しかし、自分でやらなければならない場合もあるため、簡単に解説します。
①破産管財人等や裁判所から「証明書」を交付してもらう
会社が破産手続きを行っている場合は、まず、破産管財人等の「証明者」に、あなたの未払い賃金の金額や倒産日などについて証明してもらう必要があります。
この証明者に、まず破産等の申立日や退職日、立替払いが必要な金額などが記載された「証明書(未払賃金の立替払事業様式第10号)を交付してもらいます。
会社が破産手続きをしている場合は、会社から「証明書」が送られてきますし、来なければこちらから、知らされている破産管財人に問い合わせてみましょう。
②証明書に必要事項を記入し、労働者健康福祉機構に提出
次に、もらった証明書に必要事項を記入して、「労働者健康福祉機構」に提出します。
※労働者健康福祉機構とは、厚生労働省の管轄の組織で、証明書の審査や未払賃金の立替払いを行います。
ステップ①でもらった「証明書」の左半分の請求書の部分に必要事項を記入し、破産管財人等の証明者に見せ、その請求書・証明書を労働者健康福祉機構に送付して、手続きは完了です。
ただし、立替払の請求ができるのは、裁判所による破産等の決定の日の翌日から「2年以内」ですので、必ずその期間内に手続きを完了するようにしましょう。
この「証明書」は、労働者健康福祉機構のHPからダウンロードすることも可能です。
未払賃金立替払請求書・証明書及び立替払請求における各種届出一覧
③立替金が口座に入金される
送付した請求書は、労働者健康福祉機構によって審査され、法律上の要件を満たしていれば、あなたの銀行口座に未払賃金の一部が入金されます。
2-2:事実上倒産の場合
あなたの会社が、「事実上倒産」のケースなら、手続きは以下の流れになります。
- 労働基準監督署に行って「認定申請」を行う
- 労働基準監督署で「確認申請書」を提出
- 交付された「確認通知書」を「労働者健康福祉機構」に提出
- 未払い賃金立替制度があることを証明する
- 立替金が口座に入金
順番に解説します。
①労働基準監督署に行って「認定申請」を行う
「事実上倒産」の場合は、まずはその会社が倒産状態にあるのかどうか、労働基準監督署に認定してもらう必要があります。
そのため、まずは労働基準監督署に相談に行き、「認定申請書」を交付してもらい、記入・提出する必要があります。また、e-GovのHP上からも申請することができます。
「e-Gov:事実上の倒産認定申請」
認定申請には、3つ注意点があります。
- 同じ会社の人が既に申請していれば、あなたが行く必要はない
- 退職日から6ヶ月以内に「認定申請書」を提出する
- 倒産した会社の所在地の労働基準監督署に「認定申請書」を提出する
「認定申請」をすると、労働基準監督署が会社が倒産しているのかどうか調査します。
そして、あなたの会社が「事実上の倒産」状態にあることが認められたら、次にあなたに未払いの賃金があることを証明する必要があります。
それが次のステップです。
②労働基準監督署で「確認申請書」を提出
「確認申請書(未払賃金の立替払事業様式第4号)」には、認定の申請日や退職日、未払賃金の金額などを記載します。こちらも、e-GovのHP上から申請することができます。
これは、ステップ①の申請とは異なり、従業員それぞれが自分で行う必要があります。
これも、①のステップで行った労働基準監督署で行います。
「確認申請書」を提出したら、労働基準監督署から「受け取りましたよ」という「確認通知書」が交付されます。
ただし、確認通知書が交付されたからと言って、あなたの未払賃金の交付が決まったわけではありません。
あくまで「申請書を受け取りましたよ」という通知であり、引き続き手続きが必要です。
③交付された「確認通知書」を「労働者健康福祉機構」に提出
ステップ②でもらった「確認通知書」の左半分には、
- 未払賃金の立替払請求書
- 退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書
が印刷されています。
これらに必要事項を記入し、労働者健康福祉機構に提出すれば、あなたの手続きは完了です。
ただし、立替払の請求ができる期間は、労働基準監督署によって倒産が認定された翌日から「2年以内」ですので、それまでの間に必ず手続きを行ってください。
④未払賃金が存在することを証明する
労働者は、未払い賃金が存在することを証明する書類の提示を求められる場合があります。
そのため、以下のものを集めておき、求められたらすぐに提示できるようにしておきましょう。
- 給与明細
- タイムカード
- 労働契約書
- 就業規則
⑤立替金が口座に入金
送付した請求書は、労働者健康福祉機構によって審査され、法律上の要件を満たしていれば、あなたの銀行口座に未払賃金の一部が入金されます。
まとめ:未払い賃金立替制度について
いかがでしたか?
最後に今回の内容を、もう一度振り返りましょう。
まず、未払い賃金立替制度とは、
「倒産した会社で働いていた従業員に、国が給料の一部を立替払いしてくれる制度」
のことです。
この制度が利用できる条件は、以下のようになっています。
《会社の条件》
- 事業主(会社)が1年以上労働者を雇って事業を行っていたこと
- 会社が倒産していること
《従業員の条件》
- 未払い賃金がある期間に、その会社の従業員であったこと(未払賃金があること)
- 会社が法的な破産手続きの申立をした日、もしくは倒産状態の認定を労働基準監督署に申請した日の6ヶ月前の日から2年以内に退職した人
《対象となる賃金の期間》
退職日の6か月前から、立替払い請求日までの間に支払期日が到来する未払い賃金
《対象となる賃金の種類》
- 定期賃金(基本給、残業代、深夜手当、休日手当など)
- 退職金
《支払われる賃金の金額》
- 原則的に賃金の8割
- 以下の上限内で支払われる
《未払賃金支払いの上限》
退職日時点の年齢 |
未払い賃金の上限 |
立替払いの上限 |
30歳未満 |
110万円 |
88万円 |
30歳以上45歳未満 |
220万円 |
176万円 |
45歳以上 |
370万円 |
296万円 |
利用する流れは、以下のようになっています。
手続きができる期間は限られていますので、できるだけ早く行動を開始しましょう。