
「毎日働いて稼いだ給料が、給料日に払われない!なんとかして請求したい!」
給料日に予定していた給料が支払われないと、生活に響いて大変ですよね。
ブラック企業の経営者は、口では「払う」と言っていても、本音ではまったく払う気がなく、踏み倒そうとしていることもあります。
給料日に給料が支払われないことはもちろん違法ですので、
- すでに退職してしまった
- 会社が倒産してしまった
- 給料の金額が少額で踏み倒されそう
- 自分が会社をバックレてしまった
などの場合でも、「正しい行動」をすることで給料を取り返せる可能性はぐっと上がります。
そこで、この記事では、まずは給料を「自分で」もしくは「弁護士を使って」請求する方法について詳しく解説します。さらに、請求するために必ず知っておかなければならない「時効」「証拠」についてもお伝えします。そして最後に、給料が少額の場合や会社が倒産してしまった場合などの対応方法についても説明します。
長文ですので、ブックマークした上で、読みながら行動をはじめてみてください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■未払い給料の請求方法
①自分で直接請求する方法
- 会社に連絡する
- 自分で会社に直接「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する
- 労働基準監督署に申告する
②弁護士に依頼する方法
■未払い給料請求のためにやるべきこと
- 「未払い給料」の金額を確定させる
- 「労働を行った事実」を証明する証拠を集める
※未払い給料が少額の場合や、会社が倒産してしまった場合でも対処可能です。
目次
1章:未払い給料を取り返そう! すぐに始められる2つの方法
繰り返しになりますが、あなたの未払いの給料は、適切な方法をとることで会社から取り返せる可能性があります。
そのために、あなたが自分でできる方法としては、
- 会社に直談判する
- 会社に配達証明付き内容証明郵便で請求書を送る
- 労働基準監督署に申告して解決を図る
などがあります。
ただし、会社は社員とのトラブルには慣れており、一社員が動いたところで取り合ってくれないことがあります。
また、会社に顧問弁護士がいた場合、 丸め込まれてしまい、あなた個人で戦っても未払い給料を回収できなかったり、回収できても金額が少なくなってしまう可能性が高いです。
そこで、「少しでも多額の給料を取り返したい!」という場合におすすめなのは「弁護士に依頼する」方法です。
以下の請求の流れとメリット・デメリットから分かるように、弁護士に依頼する方法の法が、あなたの手間・時間・心理的負担が大きく削減できるのです。
とはいえ、「まずは自分で請求する方法を知りたい」という場合もあると思いますので、「手続きの難易度」「手間」「給料を取り返す成功確率」の3つの点から紹介していきます。
1-1:自分で直接請求(手間が多い・回収金額が少ない可能性アリ)
自分で直接会社に請求する方法には、
- 会社に直談判する
- 配達証明付き内容証明郵便を送って請求する
- 労働基準監督署に申告する
という3つの方法があります。
順番に解説します。
1-1-1:会社に直談判する
未払い給料を取り返す最も簡単で手間のかからない方法は、「会社に直談判する」という方法です。
あなたの会社が支社や支店などなら、自分が勤務していた支社や店舗ではなく、本社に直接連絡し、未払い給料を請求することをおすすめします。
なぜなら、あなたの会社の上司が給料を未払いにしていることを、本社は知らない可能性がある上、本社は問題になることを恐れて、あなたの上司よりも誠実な対応をしてくれる可能性があるからです。
しかし、
「そんなことはもう試した!」
という場合は、これから紹介する他の方法を試してみてください。
1-1-2:自分で会社に直接「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する
内容証明とは、差し出した日付、差出人の住所・氏名、宛先の住所・氏名、文書に書かれた内容を、日本郵便が証明してくれる手紙の一種です。そして、配達証明とは、配達した日付や宛名を証明してくれる郵便の制度です。
「配達証明付き内容証明」で会社に請求書を送ることで、会社は「そんなもの届いていない」としらばっくれることができなくなります。
また、口頭での直談判とは異なり、内容証明郵便で請求することにより、会社に対し、こちらの本気度を示すことができます。
「配達証明付き内容証明郵便」を送って未払い給料を請求する流れは、以下の4つのステップからなります。
- 証拠を集める
- 未払い給料を計算する
- 会社に配達証明付き内容証明郵便を送る
- 自分で会社と交渉する
それでは解説します。
【①証拠を収集する】
未払いの給料を請求するために、最も重要なポイント「未払いの給料がある」ことを証明することです。そのため、証拠集めをする必要があります。必要な証拠について、詳しくは2章で解説しています。
【②未払い給料を計算する】
①で集めた証拠をもとに、未払いの給料がどれだけあるか計算します。
弁護士に頼むと、正確に請求金額を計算してもらうことができます。
【③時効を止める】
未払いの給料を請求できるのは、3年の時効が成立するまでの間と、法律で決められています。そのため、もし時効を止めなければ、毎月の給料日が来るたびに、請求できる給料が1ヶ月分消滅してしまいます。
■給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合】
たとえば、給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合、2020年2月16日から3月15日までの給料は、2020年4月30日に支払われます。そのため、2020年3月15日締めの給料は、2023年の4月30日経過時に時効を迎えます。
そこで、2020年3月15日締めの給料の時効を止めるためには、2023年の4月末までに「時効を止める」手続きを行う必要があります。
ただし、「配達証明付き内容証明」を会社に郵送することで時効を半年間止めることが可能です。
つまり、内容証明を送ることで、手続きや交渉を進めることができる期間が半年延びるのです。
そのためできるだけ早く、会社に対して、未払いの給料などを記載した内容証明を送ることが重要です。
内容証明のひな形を下記に示しますので参考にしてください。
<内容証明ひな形>――――――――――
私は○○年○○月○○日,貴社に入社し,○○年○○月○○日に退社した者です
私は,平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日(以下「請求期間」とします。)まで,貴社において、労働に従事いたしましたが,貴社からは,一切,給料をお支払いただいておりません。
よって,私は,貴社に対し,請求期間内の未払賃金の合計額である★円の支払を請求いたしますので,本書面到達後1週間以内に,以下の口座に振り込む方法によるお支払をお願いいたします。
○○銀行○○支店
○○預金(普通・定期などの別)
口座番号○○
口座名義人○○
なお,本書面到達後を1週間を過ぎても貴社から何らご連絡いただけない場合は,やむを得ず労働基準監督署への申告,訴訟の手段をとらせていただくことをあらかじめ申し添えます。
―――――――――――――――――――
内容証明の書き方・出し方などについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
「内容証明とは」
【④会社と交渉する】
ステップ③で内容証明を送ったところから会社との交渉がスタートします。運が良ければ、内容証明が届いた時点で支払いに応じる会社もあるかもしれません。
しかし、多くのブラック企業は、あなたになるべく給料を払いたくないため、顧問弁護士等を介して減額の交渉をしてくるでしょう。
どの金額で折り合いがつくかは、あなた次第ですが、相手は、法律のプロである弁護士なので本来もらえる額より少ない金額で妥協しなくてはならない可能性が高いです。
また、一人で交渉してもブラック企業に対してはあまり圧力とならないため、相手にしてもらえず、内容証明を送っても無視されるという可能性もあります。
そんな場合は、次に紹介する「労働基準監督署」に相談するのも一つの選択肢です。
1-1-3:労働基準監督署に申告する
このような流れで労働基準監督署に申告することができるのですが、この方法は「未払い給料を請求したい場合」は、あまりおすすめではありません。
そこで、未払い給料を取り返す場合には、最初から弁護士に依頼することをオススメします。
1-2:弁護士に依頼して請求(手間・時間がかからず回収金額が高くなる可能性アリ)
という流れで、解決に向けて手続きが進められていきます。その内容について順番に解説します。
1-2-1:ほとんどこれで解決!弁護士と会社の「交渉」
また、あなたが在職中で、これから退職を考えている場合、実際に交渉を開始する時期については相談可能です。つまり、会社にばれないようにこっそり準備を進め、退職と同時に未払い給料を請求し、交渉を開始するということも可能です。
交渉で合意に至らなかった場合に、労働審判や訴訟に進むことになります。
1-2-2:交渉で解決しなかった場合は「労働審判」
多くの場合、「交渉」か「労働審判」で決着が付きますが、労働審判において決定されたことに不服がある場合は、訴訟(裁判)へ移行します。
1-2-3:最後の手段が訴訟(裁判)
訴訟の流れはこのようになっています。
最高裁まで行くことはほとんどないため、多くは地方裁判所までの1〜2年程度で終わるようです。
裁判所で「原告(あなたもしくは、あなたが依頼した弁護士)」と「被告(会社)」が主張し合い、裁判官が判決を下します。
裁判になると数年単位で争うこともありますが、先ほどお伝えした通りで裁判まで行くことは、ほとんどなく労働審判で決着がつきます。
1-3:労働問題に強い弁護士に依頼することが重要!
未払い給料の請求方法について、理解することはできたでしょうか?
ただし、弁護士に依頼して請求する場合は、一つ注意点があります。それは、「未払い給料の請求に強い弁護士」を選ぶということです。
【未払い給料の請求方法】弁護士が教えるあなたが取るべきベストな選択肢
2章:未払い給料を請求する前に必ずやるべき2つのこと
未払いの給料の請求方法について、しっかり理解することはできましたか?
- 未払い給料の金額を確定させること
- 労働していた事実を証明すること
という2つです。
これから、詳しく解説します。
2−1:「未払い給料」のの金額を確定させる
まずは「未払い給料」を確定させるために、
- もらえるはずの給料の金額
- 未払い給料が存在すること
という2つを証明する必要があります。
これらについて証明しないと、会社から以下のように言われてしまう可能性があります。
【本来の給料の金額を示す証拠】
まずは、そもそもあなたがいくらの給料をもらう契約になっていたのかを示す証拠が必要です。そこで、以下のものなどが証拠になります。
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
【実際に払われた給料の金額を示す証拠】
次に、もらえるはずだった給料が未払いにされていることを証明する証拠が必要です。以下のものが、証拠になります。
- 給与明細
- 給与口座の取引明細(通帳)
- 源泉徴収票
「本来の給料の金額を示す証拠」と「実際に払われた給料の金額を示す証拠」を比較して、実際に払われた給料の金額が少なければ、未払いになっていることが証明できるのです。
2−2:「労働を行った事実」を証明する証拠を集める
次に、あなたが会社で労働していたという実態を示す証拠が必要です。そこで、以下のものを証拠にすることができます。
【まず集めるべき証拠】
- タイムカード
- シフト表
- 業務日報
- 運転日報
【ポイント】
日報などは、正確に書いていないことも多いと思います。正確ではない記録が残っていると、交渉になったときに不利になりやすいです。また、タイムカードやシフト表は会社側が都合良く改ざんしている可能性もあります。
このように、以上の証拠の正確性が期待できない場合は、以下に示す証拠を使うこともできます。
【証拠になるようなものがない場合でも証拠にできるもの】
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
- メール(証拠能力は低い)
- 会社のパソコンの利用履歴
- メール・FAXの送信記録
【ポイント】
証拠として一番良いのは①です。毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。具体的な業務についても書くのがベストです。②のメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。
【証拠集めの注意点】
- 毎日の労働・出退勤が分かるように集める
証拠は、できれば3年分の証拠があることが望ましいですが、なければ半月分でもかまいません。できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。 - ウソの内容を書かない
「手書きのメモ」や「日報」など、出退勤時間を手書きで記録しておく方法もご紹介しましたが、その場合絶対に「ウソ」の内容のことを書いてはいけません。
証拠の中にウソの内容があると、その証拠の信用性が疑われ、裁判官の心証が悪くなり、有効な証拠として認められない可能性があります。
そのため、証拠は「19時30分」ではなく、「19時27分」のように、1分単位で記録するようにし、正確に記録していることをアピールできるようにしておきましょう。
未払い給料を請求する方法について、理解できたでしょうか?
最後に、給料が未払いになっている人にありがちな3つの悩みとその対処方法について解説します。
3章:未払い給料請求をしたい人にありがちな悩みの解決方法
多くの給料が未払いになっている人は、以下のような悩みを持っています。
- 給料が少額だから踏み倒されそう
- 会社が倒産してしまった
- 会社をバックレてしまった
これらの場合も、適切な方法を取ることで給料を取り返すことができる可能性が高いです。
順番に解説します。
3-1:給料が少額でも請求方法がある
また、少額の給料の請求には、以下の制度が使われることも多いです。
- 支払督促
- 少額訴訟
- 民事調停
3-1-1:「とりあえず自分で請求してみる」場合は支払督促
支払督促を行い、相手の会社が、給料を払わないと「異議申立て」した場合は、通常の訴訟に持ち込まれることになります。これは後ほど紹介する「少額訴訟」ではなく「通常訴訟」なので、支払督促で解決しなかったから、少額訴訟や労働審判にしよう、ということはできません。
しかも、会社は強制執行は避けたいので、訴訟に持ち込まれることが多く、最初から訴訟をした方が良い場合も多いです。
支払督促は、このようにあまり効果があるとは言えないため、「とりあえずやるだけやってみる」という程度の方法と覚えておいてください。
3-1-2:「早く解決してしまいたい」という場合は少額訴訟
少額訴訟の場合も、会社が判決に満足せず「異議申立て」した場合は、通常の訴訟に移って争うことになります。少額訴訟のみで解決することもありますが、通常訴訟に移行することになれば時間・手間が余計にかかることになり、結局弁護士に依頼しなければならなくなることもあります。
3-1-3:「第三者の前で会社と話し合って解決したい」場合は民事調停
民事調停の場合は、強制的に結論を出すことはないため、合意に至らなければそこで終了となります。ただし、その後あらためて訴訟など他の方法をとることはできます。
民事調停はあくまでも「話し合い」なので、あなたと会社の間で意見が食い違っている場合などに、利用することがオススメです。「会社がまったく払う気がない」「会社に無視される」などの場合は「少額訴訟」や、弁護士に依頼して解決を図ることをおすすめします。
3-2:バックレてしまった会社の給料も請求できる
とはいえ、法律上は、バックレてしまった会社の給料でも、あなたにもらう権利があります。そのため、未払いの給料があるなら、2章で紹介した方法を使って会社に請求しましょう。
ただし、以下のようなことが発生する可能性があります。
①損害賠償請求される
あなたが急に会社を辞めたことで、会社に損害が発生している可能性があります。そのような場合は、会社から損害賠償請求される可能性もあるので注意してください。
※ただし、労働者に対する損害賠償請求は、法律で厳しく制限されています。そのため、よっぽど悪質でない限り多額の損害賠償請求をされることは少ないです。
②制服等の実費を請求される
あなたが会社を急に辞めて、制服などの会社の備品を返却していなかった場合、その分の実費を会社から請求されることがあります。どうしても会社に行きたくなければ、宅急便を使って会社に返しましょう。
3-3:会社が倒産してしまった場合は国の制度が利用可能
利用の流れは、以下のようになっています。
ただし、利用するにはいくつか条件があり、未払いの給料が2万円以下の場合は利用することができません。
未払い賃金立替制度について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
すぐ実践できる!未払い賃金立替制度の利用条件・もらえる金額と手続き方法
まとめ:未払い給料の請求について
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
まず、残業代の請求方法には、以下のものがあります。
①自分で直接請求する方法
- 会社に連絡する
- 自分で会社に直接「配達証明付き内容証明郵便」を送って請求する
- 労働基準監督署に申告する
②弁護士に依頼する方法
どちらの方法にしても、まずやるべきなのは以下の2つのことです。
- 「未払い給料」のの金額を確定させる
- 「労働を行った事実」を証明する証拠を集める
給料が未払いになっている人には、以下のような悩みがありがちですが、それぞれ対応方法があります。
「未払い給料が少額だから踏み倒されそう」
少額の場合でも、以下の3つの手続きが使える。
- 支払督促
- 少額訴訟
- 民事調停
「会社をバックレてしまった」
バックレた会社の給料も請求することは可能だが、場合によっては損害賠償請求や実費を請求されることもあり得る。
「会社が倒産してしまった」
会社が倒産して給料が未払いになった場合は、「未払い賃金立替制度」を利用できる。
働いて稼いだ給料は、あなたにもらう権利があります。絶対泣き寝入りせず、会社に堂々と請求しましょう。