タクシー運転手を辞めたい!辞めるべきかの判断基準と辞める方法
この記事を読んで理解できること
- タクシー運転手を辞めたいよくある理由と解決策
- タクシー運転手を辞めるべきかの判断基準
- タクシー会社を確実かつ円滑に辞める方法
- 退職後に未払い残業代を請求することもできる
あなたは、
- タクシー運転手は稼げないし、辛いから辞めたい
- タクシー運転手を辞めたいけどなかなか辞められない
- タクシー運転手を辞めて残業代を請求できるか知りたい
などとお考えではないですか?
結論から言うと、タクシー運転手の業務が辛く、稼ぎや待遇に不満がある場合は、転職を検討することをおすすめします。
また転職する際に、未払いの残業代や深夜手当、休日手当等がある場合は、会社に対して未払いになっている賃金を請求できます。
なぜなら、どんな理由があっても、あなたと会社が雇用関係にある場合は、給料や残業代の全額もしくは一部が支払われないことは違法だからです。
また、タクシー運転手の仕事は、
- 接客が辛い
- 体力がもたない
- 稼げない
などの理由から、辞めたいと思う方も多いようです。
しかし、仕事を辞めるというのは大きな決断ですので、簡単に決められることではありません。
一度立ち止まって、自分は本当に辞めるべきなのかどうか、辞める前にできることはないのか、辞める場合はその方法について、よく考えてみることが重要です。
そこでこの記事では、
1章ではタクシー運転手を辞めたいよくある理由と解決策を、
2章ではタクシー運転手を辞めるべきかの判断基準を、
3章ではタクシー会社を確実かつ円滑に辞める方法を、
4章では退職後に未払い残業代を請求することもできることを、
それぞれ解説します。
最後までしっかり読んで、今後の行動や仕事選びに役立ててください。
目次
1章:タクシー運転手を辞めたいよくある理由と解決策
タクシー運転手を辞めたいよくある理由として、次の5つがあげられます。
- 収入が不安定
- 労働時間が長い
- 接客のストレス多い
- 体力的に仕事が続けられない
- 事故や違反が心配
それぞれ解決策とともに解説します。
1-1:収入が不安定
タクシー運転手の収入は、歩合制が一般的です。
大手タクシー会社も軒並み歩合制で、歩合率は60%前後となっています。
歩合制なので、売り上げが多い月と売り上げが少ない月で、得られる収入も変わってきます。
タクシーの需要は、季節、時間帯、天気、イベント等様々な要因により変動するため、どうしても売り上げにはバラつきが出てしまいます。
そのため、収入が不安定となります。
解決策としては、売り上げ減少を抑制するため、タクシーの需要が多いエリアや時間帯を事前に把握する必要があります。
例えば、「去年のこの時期はこのエリアで需要が多かった」というデータがあれば、そのエリアに行けば売り上げをあげられる可能性が高くなります。
1-2:労働時間が長い
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の『令和4年タクシー運転者賃金・労働時間の現況』によると、
令和4年の月間平均労働時間は、
- タクシー運転者:186時間
- 全産業労働者:177時間
であり、タクシー運転者の労働時間は長めです。
解決策としては、休息時間を確保することが大切です。
シフト管理や、適切な休暇をとることも考えましょう。
1-3:接客のストレス多い
初対面のお客さんが車内にいる緊張感や、会話をしようとする焦りから、接客にストレスを感じるという人もいます。
解決策としては、お客さんのタイプ別の接客方法を知っておくと良いです。
またオフの時間は、仕事を離れて、趣味などに没頭する時間をつくることも大切です。
1-4:体力的に仕事が続けられない
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の『令和4年タクシー運転者賃金・労働時間の現況』によると、
男性の平均年齢は、
- タクシー運転者:59.0歳
- 全産業労働者:44.5歳
であり、全産業労働者と比べて、タクシー運転者の平均年齢は15歳近く高くなっています。
年齢により、体力的に仕事が続けられなくなることもあります。
解決策としては、長距離でなく短距離の配車や観光案内にシフトすることや、転職することが考えられます。
1-5:事故や違反が心配
国土交通省自動車局の『事業用自動車の交通事故統計(令和3年版)[第1分冊]』によると、タクシーによる交通事故件数は年々減少傾向にありますが、それでも令和3年に7,121件あります。
また、交通違反のリスクもあります。
最悪の場合には、免許停止や免許取り消しとなることもあります。
国土交通省大臣官房 運輸安全監理官室の資料によると、事故が発生する原因には、直接原因(例「ドライバーの不注意」)だけではなく、「焦りの意識」「現場の見通しの悪さ」「相手の急な動き」「車の故障」等、様々な背後要因があります。
解決策としては、疲労を溜めないこと、焦りを抑えること、車のメンテナンスをしっかり行うこと、などが挙げられます。
2章:タクシー運転手を辞めるべきかの判断基準
タクシー運転手の離職率は、一般的には20%から30%と言われています。
つまり、10人がタクシー運転手になった場合は、そのうち2、3人は辞めるということです。
しかし、実際にタクシー運転手を辞めるべきなのか、あるいは転職すべきなのか、その判断基準を解説します。
2-1:タクシー運転手を辞めた方がいい場合
タクシー運転手を辞めた方がいい場合として、次の2つがあげられます。
- 健康障害を起こしている
- 職場環境が劣悪で我慢できない
それぞれ解説します。
2-1-1:健康障害を起こしている
もしあなたが、あまりにも仕事でのストレスが大きく、慢性的な体調不良や不眠、うつ状態、適応障害などを発症している場合は、タクシー運転手を辞めた方がいい状況だと言えます。
なぜなら、それほどのストレスをそれ以上蓄積すると、健康状態が悪化し、事故を起こしてしまう可能性が高くなるからです。
実際、平成29年に、タクシー運転手の脳溢血による事故がありました。
多少のストレスには、耐えて克服していくことも必要ですが、それが健康に影響するほどなら話は別です。
タクシー運転手という仕事自体にストレスの原因がある場合は、タクシー運転手を辞めることを考えるべきですし、職場に原因がある場合は、現在の職場からの転職を考えるべきでしょう。
2-1-2:職場環境が劣悪で我慢できない
現在の職場環境が劣悪で、辞めたいといつも思っている場合は、タクシー運転手を辞めた方がいい状況だと言えます。
例えば、現在の職場が、給料や残業代の全額もしくは一部が支払われないなど、労働基準法を無視した雇用状況にある場合は、職場環境自体が劣悪だと言えます。
またこのような職場の場合、人手不足による過重労働や長時間勤務、いじめやハラスメントの横行など、マイナス要素ばかりが重なることが多いです。
こうした職場の場合、個人の努力で雇用条件の改善や職場の様々な問題を解決することは不可能です。
さらに、こうした職場で疲労が蓄積すると、健康被害や事故につながりかねません。
そのため、新たな就職先を探して転職することをおすすめします。
2-2:タクシー運転手を辞めない方がいい場合
タクシー運転手を辞めない方がいい場合としては、次の2つがあげられます。
- 業務に慣れず稼げない
- 不注意で交通事故を起こす不安がある
それぞれ解説します。
2-2-1:業務に慣れず稼げない
業務に慣れるまでの過程は確かに大変で、収入が不安定な時期もあるかもしれません。
何か新しいことを始める際は、最初は苦労することが多いものです。
しかし、苦労に立ち向かうことで、新しい扉が開かれることもあります。
例えば、道を覚えることや接客技術を磨くことには、時間がかかるかもしれませんが、それらのスキルを身に着けることで、自分が思ってみなかったほど稼げるようになるかもしれません。
2-2-2:不注意で交通事故を起こす不安がある
タクシー運転手を辞めたい理由が、自分の不注意で交通事故を起こす不安がある場合は、まずは辞める決断をするよりも、不注意をなくす努力と経験を積むことが先だと言えます。
タクシー運転手は、乗客を安全に目的地まで送り届ける、責任の大きな仕事のため、自分の不注意で交通事故を起こすことが不安、と思うことも当然あるでしょう。
しかし、おそらくその不安は、どの運転手も抱えているものであり、ミスを起こさないように努力を重ね、経験を積んでいくことが運転手の仕事だとも言えます。
運転時に不注意のないよう意識することや、日々の健康管理によって、不注意を起こさないようにすることができます。
よほど交通事故への不安が、日常の業務の負担になっているのでなければ、タクシー運転手を辞めるという選択は必要ないと言えます。
3章:タクシー会社を確実かつ円滑に辞める方法
会社を辞める場合、会社との間でのトラブルを避け、あなたが損をしないように手続きを進めるひつようがあります。
そのためには、これから紹介する「労働基準法にのっとった退職の手続き」を覚えておくことが大事です。
退職手続きの流れは、次のようになります。
- 退職意思を伝える
- 有給休暇を消化する
- 失業保険申請や社会保険・年金手続き
順番に解説します。
3-1:退職意思を伝える
まずは会社に対して、「退職願」や「退職届」を出して、退職する意思を伝える必要があります。
「退職願」とは、社員が会社に「退職させてください」と願い出るものです。
一方で、「退職届」とは、会社に対して一方的に「退職します」と宣言するものです。
そのため、退職願が受理されず辞められない場合は、退職届を書いて、会社に提出する必要があります。
法律上は、2週間前までに退職届を提出することで、辞めることが可能です。
ただし、会社も引き継ぎや人員補充などのために時間が必要ですので、円満に退職するなら1ヶ月以上前に退職意思を伝えることをおすすめします。
退職届には、詳しい退職の事情などを書く必要はありません。
3-2:有給休暇を消化する
労働者は、有給休暇を取得する権利を持っています。
そのため、条件を満たしていれば、誰もが申請して取得することができます。
有給休暇取得の条件は、次のようになります。
- 雇い入れの日から6ヶ月以上勤務
- 全労働日の8割以上出勤
有給休暇は、次の流れに沿って申請・取得することが可能です。
有給休暇の申請を、会社は原則断ることができないため、堂々と申請してすべての日数を消化して辞めましょう。
場合によっては、退職時に消化しきれなかった有給休暇を、会社が買い取ってくれることもあります。
その場合、残っている有給休暇の日数分の買取価格が支払われます。
ただし、有給休暇の買取は例外的なもので、法律上の規定もありません。
そのため、あくまでも有給休暇は、消化してから退職することを前提に考えましょう。
3-3:失業保険申請や社会保険・年金手続き
すぐに次の会社への入社が決まっている場合、退職後にやるべきことは必要書類を転職先に提出するだけです。
しかし、まだ転職先が決まっていない場合は、失業保険を受給できる可能性がありますので、まずはその手続きを行いましょう。
失業保険は、
- 退職前に2年以上雇用保険に加入していた
- 積極的に求職活動をしている
- 転職先が決まっていない
などの条件に当てはまる場合、受給することができます。
失業保険の受給について詳しく知りたい場合は、次の記事を参考にしてください。
失業保険とは?受給までの手続きと失業保険額・受給期間を弁護士が解説
次の会社に入るまでブランクがある場合は、健康保険を変更する手続きが必要になります。
その選択肢としては、図に示した次の3つがあげられます。
- 家族の扶養に入る
- 退職した会社の健康保険を「任意継続」する
- 自治体の窓口に行って「国民健康保険」への加入に変更する
国民健康保険に入らなければ、再就職するまでの間に病気や怪我をした場合、病院でかかった医療費を「全額」自分で支払わなければなりません。
加入していれば3割しか負担しなくていいため、必ず役所に行き加入するようにしましょう。
もし、「保険料を支払う余裕がない」という場合は、あなたに失業保険の受給資格があれば、国民健康保険の保険料の免除申請ができます。
失業保険の受給期間中は、健康保険の保険料を大幅に減らすことができるのです。
次の会社に入社するまでにブランクがある場合は、年金も変更の手続きを行う必要があります。
手続きとは、会社員の種別である「第2号被保険者」から、「第1号被保険者」に種別を変更する手続き(種別変更)を行うものです。
種別変更の手続きを行わないと、次の会社に入社するまでの間に「年金の未納期間」が発生し、将来受給できる年金額が減ってしまいます。
そのため、退職後は14日以内に、自治体の年金窓口で種別変更の手続きを行いましょう。
4章:退職後に未払い残業代を請求することもできる
退職後に、未払い残業代を請求することができます。
- 未払い残業代や深夜手当の計算方法
- 残業代の請求は弁護士に依頼
それぞれ解説します。
4-1:未払い残業代や深夜手当の計算方法
タクシー会社を辞める場合、未払いの残業代や深夜手当、休日手当等を請求することもできます。
例えば、
- 基本給28万円
- 1か月平均所定労働時間170時間
- 月の残業の合計:80時間
- 月の深夜労働の合計:28時間
1か月平均所定労働時間とは、会社によって定められた1か月の平均労働時間のことで、170時間前後であることが一般的です。
上記の場合は、
- 1か月の残業代
(28万円÷170時間)×1.25倍×80時間≒16万4,705円
- 1か月の深夜手当
(28万円÷170時間)×0.25倍×28時間≒1万1,529円
と計算でき、合計金額は17万6,234円にもなります。
残業代や深夜手当は、3年分までさかのぼって請求できるため、
17万6,234円×36ヶ月=634万4,424円
と高額になります。
タクシー運転手は歩合制であることが多いですが、歩合給があるから残業代や深夜手当が出ないということはありません。
残業代や深夜手当は、歩合給とは別のものです。
また、客待ち時間も労働時間に含まれますので、他の職種よりも残業代が高額になる可能性が高いです。
4-2:残業代の請求は弁護士に依頼しよう
残業代の計算や会社との交渉は、専門的な知識が必要なため、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に相談するというと
「裁判みたいな大事になるのはちょっと・・・」
「初期費用だけで何十万円もかかるのでは?」
と考えてしまう人もいるかもしれません。
しかし、弁護士に頼む=裁判ではありません。
残業手当請求のためにいきなり裁判になることは少なく、多くの場合「交渉」や「労働審判」という形で会社に対して残業手当を請求していきます。
また、残業代請求に強い「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。
まとめ:タクシー運転手を辞めたいとお悩みの方へ
最後にもう一度、今回の内容を振り返ります。
【タクシー運転手を辞めたい理由】
- 収入が不安定
- 労働時間が長い
- 接客のストレス多い
- 体力的に仕事が続けられない
- 事故や違反が心配
【タクシー運転手をすぐにやめた方がいい場合】
- 健康障害を起こしている
- 職場環境が劣悪で我慢できない
【タクシー運転手を円滑に辞める方法】
- 退職する意思を伝える
- 有給休暇を消化する
- 失業保険申請や社会保険・年金手続きを行う
【退職後に未払い残業代の請求もできる】
- タクシー運転手は残業代が高額になる可能性が高い
- 残業代の請求は弁護士に依頼しよう
辞めたいと思ったら、いつでもこの記事を読んで参考にして次の行動につなげてください。