介護士で残業代が出ないケース・出るケースと、残業代の請求方法

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

介護士で残業代が出ないケース・出るケースと、残業代の請求方法
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 介護士は残業代が出ない?介護士の残業の実態
  • 介護士が残業代を請求できるケース
  • 介護士で残業代が出ないときは請求しよう

あなたは、

  • 介護士は残業代が出ないのか知りたい
  • 介護士はサービス残業が多い理由は?
  • 未払いの残業代を請求したい

などとお考えではないですか?

結論から言うと、介護士でサービス残業が多く残業代が出ない場合は、未払い残業代を請求できます。

しかし、未払い残業代を請求するためには、

  • 介護士のサービス残業の実態や違法性
  • 介護士が残業代を請求できるケース
  • 会社に対して未払い残業代を請求する方法

等について十分に理解することが重要です。

そこでこの記事では、

1章では、介護士の残業の実態と違法性を

2章では、介護士が残業代を請求できるケースを

3章では、介護士が残業代を請求する方法

について解説します。

この記事を読んで、介護士の残業代についてしっかり理解し、サービス残業の改善に役立ててください。

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:介護士は残業代が出ない?介護士の残業の実態

介護士は、待遇・体力・精神面で厳しい職だというイメージがありますが、残業代が出ないのも当たり前になっていませんか?

介護士に残業代を支給せず、サービス残業をさせるのは労働基準法違反です。

しかし、違法であるにもかかわらず、多くの介護士がサービス残業を行っているのが実態です。

そこで、この章では

  • 介護士で残業代が出ないのは違法
  • 介護士の残業の実態

について、それぞれ説明します。

1-1:介護士で残業代が出ないのは違法

介護士で残業代が出ないのは違法です。

なぜなら、労働基準法により、法定労働時間を超えた労働については、残業代を支払わなければならないと定められているからです。

なお、法定労働時間は、基本的に「1日につき8時間、1週間につき40時間まで」と定められています。

労働者が常時10人未満の事業所については例外が認められていますが、その場合でも44時間を超えてはなりません。

つまり、週に40時間又は44時間を超えて労働しているのに、残業代が支払われていない場合は、雇用者が法律に違反しています。

そのため、介護士のサービス残業については、残業代を請求できます。

1-2:介護士の残業の実態

次に、介護士の残業の実態について解説します。

介護士の残業の実態は、下記のとおりです。

  • 1週間の平均残業時間数は1.7 時間
  • 介護士はサービス残業が多い 

それぞれ説明します。

1-2-1:1週間の平均残業時間数は1.7 時間

「公益財団法人 介護労働安定センター」が実施した「令和4年度介護労働実態調査」によると、介護士の1週間の平均残業時間数は、1.7時間です。

月間ベースへ換算すると、1か月あたり7時間程度の残業が発生していることになります。

つまり、他の職種と比較して残業時間が際立って長い状況ではないものの、毎月一定程度の残業が発生していることが分かります。

※公益財団法人 介護労働安定センター

「令和4年度介護労働実態調査」

<資料編P20、21 表Ⅱ-1(3)①②参照>

1-2-2:介護士はサービス残業が多い

介護士は、サービス残業が多いです。

残業代を請求しづらい雰囲気があったり、そもそも残業代を請求できる上限時間が決められているなどの理由で、サービス残業が多く発生しています。

たとえば、全労連が実施した介護労働実態調査によれば、時間外労働をした人の4人に1人に不払い残業があると報告されています。

※全国労働組合総連合「介護労働実態調査報告集」

しかし、前述のとおり、法定労働時間を超えた労働時間に対しては、残業代を支払わなければならないことが労働基準法で決まっています。

これに違反してサービス残業をさせていた場合、雇用者は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

もし、過去に支払われていない残業代があるという方は、この記事を参考に、未払いの残業代を請求することを検討してみましょう。

2章:介護士が残業代を請求できるケース

この章では、介護士が残業代を請求できるケースについて解説します。

残業代を請求できるにもかかわらず、介護士にとって、サービス残業になりがちな業務は、以下の5つです。

  • 法定時間外の労働
  • みなし残業時間外の労働
  • 夜勤の仮眠時間
  • 利用者やその家族への緊急対応
  • 労働時間外の勉強時間

順番に説明します。

2-1:法定時間外の労働

介護士が残業代を請求できるケースの1つ目は、「法定時間外の労働」です。

労働基準法で定められている、「1日8時間、1週間あたり40時間又は44時間」の法定労働時間を超えて労働した場合、残業代を請求できます。

これが、残業代を請求するうえでの基本的な考え方であり、業務の種類によって違いはありません。

法定時間外の労働の具体例として、勤務時間後に介護記録の記入を行ったケースや、利用者のケアの準備や片付けを行ったケースが挙げられます。

なお、サービス残業の約7割が、始業前後の情報収集や記録、利用者のケアの準備や片付けだというデータも出ています。

※全国労働組合総連合「介護労働実態調査報告集」

法定時間外に労働を行った場合には、始業前後の準備や記録の作成等であっても、労働時間として認められるため、残業代を請求することを考えましょう。

2-2:みなし残業時間外の労働

介護士が残業代を請求できるケースの2つ目は、「みなし残業時間外の労働」です。

契約条件として、「◯◯時間分の残業代を含む」等という条件で雇用されていた場合、「みなし残業制度」が導入されている可能性があります。

この場合、実際の残業時間にかかわらず、事前に決められた一定時間分の残業代が、定額として支給されています。

ただし、「◯◯時間分の残業代を含む」として定められていた時間を超えて労働した場合には、超過分の残業代が発生します

しかし、事業者によっては、みなし残業制を導入していることを理由に、規定時間を超過した労働時間について、追加で残業代を支払っていないケースがあります

みなし残業時間制度が導入されていても、みなし残業時間を超えて労働した場合には、超過分の残業代をしっかり請求しましょう。

2-3:夜勤の仮眠時間

介護士が残業代を請求できるケースの3つ目は、「夜勤の仮眠時間」です。

夜勤中の仮眠時間でも、入居者の緊急呼び出しなどで対応が必要な場合、残業代が請求できる可能性があります。

仮眠時間と設定されていても、労働者が使用者の指揮命令下にあったと考えられる場合には、労働時間とみなされるからです。

例えば仮眠中でも、随時対応が求められる等の理由から、「労働からの解放が保障されていない場合には仮眠時間全体を労働時間である」とする最高裁判所の判例(最判平14年2月28日)も出ています。

※最高裁判所判例集:割増賃金請求事件( 平成14年2月28日)

このため、夜勤中の仮眠時間についても、実態によっては、労働時間として残業代を請求できる可能性があります。

2-4:利用者やその家族への緊急対応

介護士が残業代を請求できるケースの4つ目は、「利用者やその家族への緊急対応」です。

介護士の業務では、通常の勤務時間外に、予期せぬ緊急事態への対応が発生することがあります。

たとえば、勤務時間終了後に利用者が急に体調を崩したり、家族からの急な相談があった場合です。

当然、これらの業務についても、法定労働時間外であれば残業代が発生します。

しかし一部の事業所では、緊急時であったため、対応した時間が分からない等の理由で、残業代の支払いがされていないケースも発生しています。

決められた勤務時間外に緊急対応を行った場合には、対応時間を記録しておく等して、残業代を請求しましょう。

2-5:労働時間外の勉強会

介護士が残業代を請求できるケースの5つ目は、「労働時間外の勉強会」です。

介護施設では、業務時間中は、常時利用者のケアを行う必要があるため、業務時間外に研修会や勉強会を実施しているケースが多くあります。

業務時間外に、これらの勉強会への参加が義務付けられている場合には、労働時間として認められ、残業代が発生します。

しかし、多くの事業所で、残業代が支払われていない実態が散見されます。

たとえば、全労連が実施した「介護労働実態調査」によれば、残業代が払われていない業務のうち40%近くが、始業前又は始業後の勉強会や研修会等であったと報告されています。

※全国労働組合総連合「介護労働実態調査報告集」

勉強会だとしても、職場からの指示で参加している場合には、残業代が支払われます。

出席時間については、残業代を請求しましょう。

3章:介護士で残業代が出ないときは請求しよう

2章で説明したとおり、法定時間外に介護士が労働を行った場合には、残業代を請求できます。

しかし、不払いの残業代を請求しようと思っても、会社とトラブルになることが怖かったり、そもそも請求する方法が分からないケースも多いですよね。

そこで、この章では、介護士が残業代を請求する方法について解説します。

介護士が残業代を請求する方法は、主に下記の4つです。

  • 会社に書面で請求する
  • 労働組合に相談する
  • 労働基準監督署に申告する
  • 弁護士に依頼する

順番に説明します。

3-1:会社に書面で請求する

介護士が残業代を請求する方法の1つ目は、「会社に書面で請求する」です。

前提として、残業代を請求するにあたっては、「消滅時効」という制度があることを知っておく必要があります。

もしも、未払いの残業代を請求していない状態で、残業代の消滅時効期間である「3年」を経過してしまうと、時効により残業代の請求権が消滅します。

つまり、未払いの残業代を請求できなくなります。

消滅時効の完成は、「書面」で残業代を請求することで防ぐことができます。

そのため、まずは会社に対して、残業代の支払いを求める旨の通知書を「書面」で送付する必要があります。

送付にあたっては、「内容証明郵便」を利用して、「残業代を請求した事実」、「請求した日」が証明できる状態にしておくことをオススメします。

請求したことが証明できる状態にしておけば、残業代を支払ってもらえなかった場合にも、時効の完成を防ぐことができます。

まずは会社に、書面で残業代の支払いを請求してみましょう。

3-2:労働組合に相談する

介護士が残業代を請求する方法の2つ目は、「労働組合に相談する」です。

会社に残業代を請求しても支払ってもらえない場合には、労働組合に相談してみましょう。

労働組合に相談することで、個人対組織ではなく、組織対組織という構図で残業代を請求できるため、交渉がうまくいく可能性が高くなるからです。

また、労働組合に相談することで、不払いの残業代を請求できるだけでなく、今後の労働環境の改善も期待できます。

労働組合には、同じ企業で組織された「企業別組合」と、個人でも加入できる「ユニオン」があります。

働いている会社に「企業別組合」が無い場合には、「ユニオン」へ相談することを検討してみましょう。

3-3:労働基準監督署に申告する

介護士が残業代を請求する方法の3つ目は、「労働基準監督署に申告する」です。

前述のとおり、残業代を支払わずサービス残業を行わせる行為は、明確な法律違反です。

サービス残業を証明するための資料や記録を準備して、管轄の労働基準監督署に相談することも一つの手段です。

なお、労働基準監督署に対しては、匿名で相談することも可能です。

ただし、労働基準監督署は、あくまでも労働基準法に違反している会社を取り締まるための国家機関です。

職場環境は是正されますが、未払いの残業代の回収自体は行わない点を理解しておくことが必要です。

3-4:弁護士に依頼する

介護士が残業代を請求する方法の4つ目は、「弁護士に依頼する」です。

未払いの残業代を会社に請求する場合は、弁護士に依頼することをオススメします。

自分で残業代を請求すると、知識や経験が不足しているため、結局払ってもらえなかったり、仮に払ってもらえても十分な金額ではない可能性が高くなるからです。

弁護士に相談することで、サービス残業の証拠収集や、未払いの残業代の正確な金額の算出、会社との交渉などの必要な手続きを一任できます。

また、会社からの連絡の窓口にもなってくれるため、精神的な負担も大きく軽減されます。

未払いの残業代を回収できる可能性が高くなることを踏まえると、弁護士費用等の経済的な負担も大きく心配する必要はありません。

未払いの残業代を請求する場合は、弁護士に相談することをオススメします。

まとめ:介護士で残業代が出ない場合はきちんと請求しよう!

最後に、今回の内容を振り返ります。

【介護士の残業の実態】

  • 時間外労働をした介護士の4人に1人に不払い残業がある
  • 法定時間を超えて働いた場合には、残業代が支給される
  • サービス残業は違法で罰則もある

【介護士が残業代を請求できるケース】

  • 法定労働時間外の労働
  • みなし残業時間を超えた労働
  • 夜勤の仮眠時間
  • 時間外の緊急対応
  • 業務前後の勉強会など

【残業代の請求方法】

  • 会社に書面で請求
  • 労働組合に相談
  • 労働基準監督署に相談
  • 弁護士に依頼

この記事では、介護士のサービス残業の実態や違法性、未払いの残業代の請求方法についてお伝えしました。

サービス残業が蔓延している介護業界ですが、十分な知識を持って、正しい方法で請求すれば、過去の未払い残業代についても支払ってもらえます。

とはいえ、時間的・精神的な負担を考えると、自分で請求するのは難しいと感じることも多いはず。

残業代の請求で悩んだ場合は、ぜひ弁護士に相談することをオススメします。

弁護士は、十分な法律知識と経験値を兼ね備えているため、未払いの残業代を回収するための最善の方法を提案してくれます。

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弁護士法人QUEST法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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