
雇い止めとは、「契約期間が終わるときに、会社に更新を拒否されること」を言います。
この記事では、雇い止めの正しい意味やその対処法について解説していきます。契約が更新されなくても泣き寝入りをせず、会社に対抗していきましょう!
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■雇い止めとは
雇い止めとは、期間を定めた労働契約の期間が終わるときに、会社が契約の更新を拒むこと。
■法律上雇い止めが制限される(無効になる)判断のポイント
- 業務の内容が臨時的なものではない
- 業務の内容が正社員と同一ないし類似
- 更新の回数が多い
- 契約期間の管理状況(更新手続きが形式的か、契約書を作成しないなど管理がずさんか)
- 雇用の通算期間が長い
- 会社から、契約の更新を期待させるような言動があった
- 雇用の継続を前提とする制度が存在する(休職、配置転換など)
- 同じような条件で働く人に関し、過去に雇い止めの事例がなかった
- 他の有期労働契約者は長年更新が繰り返されている
■雇い止めされた場合の対処法
- 証拠を集める
- 「会社に戻る」か「賃金を請求する」手続きを行う
- 弁護士に相談する
目次
1章:雇い止めとは
雇い止めに対抗するためには、雇い止めの正しい意味を確認し、何ができるのかを知ることが重要です。
1-1:雇い止めの定義
ここで注意してほしいのは、一時的な仕事だったり、季節が決まっている仕事については、契約が更新されなくても「雇い止め」とは言わない、と言うことです。
例えば、
・毎年お歳暮の時期だけレジを打つ
・冬季限定の山小屋でのアルバイト
などは、毎年働いていたとしても、雇い止めの対象にはならないのです。
1-2:雇い止めが制限される場合
法律上、雇い止めが制限される(無効になる)のは
①法律上「雇い止め」にあたること
②契約を更新しないことにきちんとした理由がないこと
という条件を満たした場合です。
この条件を満たした場合には、雇い止めが制限され、あなたは
・会社に戻る
・賃金の支払いを求める
ことができます。
2章:雇い止めの判断ポイント
あなたは雇い止めを制限されるケースにあたるでしょうか?この章では、法律上の「雇い止め」の判断ポイントを紹介していきます。
法律上の雇い止めに当たるかは、様々な事情から総合的に判断します。例えば、以下のような事情があればあるほど、雇い止めにあたると認められやすくなります。
① 業務の内容が正社員に近い
・業務の内容が臨時的なものではない
・業務の内容が正社員と同一ないし類似
このような場合は、契約社員は、自分のことを正社員と同様に「働き続けられるはず」という期待が生まれます。
なので、このような契約社員の期待は保護すべきという考えから、雇い止めが無効となりやすいのです。
②更新の手続き
・更新の回数が多い
・契約期間の管理状況(更新手続きが形式的か、契約書を作成しないなど管理がずさんか)
・雇用の通算期間が長い
契約期間が長いほど、「今まで通り働き続けられるはず」という期待が高くなり、その期待の保護の必要性が高まります。
また、更新手続が存在しなかったり、ずさんであればあるほど、社員は自分と正社員との区別を意識しなくなり、正社員と同様に「会社で働き続けられるはず」と考えるようになるので、このような期待の保護の必要性も高まります。
このような場合、雇い止めは無効と判断されやすくなります。
③更新を期待させる言動
・会社から、契約の更新を期待させるような言動があった
・雇用の継続を前提とする制度が存在する(休職、配置転換など)
会社から「契約更新の予定だよ」というようなことを言われた場合、契約社員は契約の更新を期待しても仕方がないと言えますので、契約社員の期待の保護の必要性は高まります。
また、休職や配転の制度は、継続して長く働く人を念頭においたものですから、このような制度がある場合、契約社員は更新を期待してしまいます。
このような事情があれば、雇い止めは無効とされやすいでしょう。
④会社における過去の状況
・同じような条件で働く人に関し、過去に雇い止めの事例がなかった
・他の有期労働契約者は長年更新が繰り返されている
会社において、雇い止めが過去に行われていないような場合、契約社員は、契約の更新を期待してしまうでしょう。
よって、雇い止めは無効と判断されやすくなります。
ここで、雇い止めが無効とされた例をいくつか見てみましょう。
【例】ユタカサービス事件(東京地判平成16年8月6日)
契約期間:1年間
更新回数:7回
仕事の内容:ビルの警備業務
更新手続き:形式的に行われていた
他の労働者:従業員のほとんどが期間雇用者であった
→雇い止めをすることが許されない
【例】龍神タクシー事件(大阪高判平成3年1月16日)
契約期間:1年
更新回数:0回
仕事の内容:臨時の運転手
更新手続き:期間満了の時にいつも契約書を交わしていたわけではなかった(更新手続きがずさん)
他の労働者:自己都合退職者以外は全員更新
→雇い止めをすることが許されない
3章:雇い止めをされてしまったら
雇い止めが違法であれば、
・会社に戻る
・賃金を請求する
ことができます。
しかし、そのためには入念な準備をしておくことが必要です。事前に証拠を集めたり、自分が何を請求したいのか決め、弁護士に相談に行きましょう。
3-1:集めるべき証拠
具体的には、以下のような証拠を集めておきましょう。
・雇用契約書
まずは会社とどのような契約をしていたのか確認する必要があります。はじめに交わした雇用契約書を準備しましょう。
・雇い止めの理由についての証明書
これは会社が必ず出さなければならないものです。もらっていない場合には、会社に請求しましょう。
・勤続年数や更新回数がわかる書類
雇い止めを争う場合には、何回更新したかが重要になってきますので、勤続年数や更新回数がわかる書類を用意してください。
・録音データ
会社から契約更新を期待させる発言を録音しておくとよいでしょう。
3-2:請求できるのは「会社に戻ること」と「賃金」
雇い止めが認められない場合には、会社に対し
・会社に戻る
・賃金の支払いを求める
ことができます。
【会社に戻る】
雇い止めが無効な場合には、会社に戻ることができます。その場合には「前回の労働条件を同一の労働条件」、つまり有期労働契約で会社に戻ることになります。
【賃金請求】
裁判では、「雇い止めが無効=会社の社員である」ということを争うことができます。そして、これが認められた場合、会社は本来支払うべき賃金を払う必要があります。
これを「バックペイ」と呼びます。
バックペイは、
自分の月給×雇い止めされていた期間
だけもらうことができます。
ただし、失業期間中にアルバイトをしている場合には、もらえるお金が少なくなることもあるので注意が必要です。
3-3:弁護士に頼んだときの流れ
なぜなら、雇い止めは法的に難しい問題を含んでおり、雇い止めの無効はなかなか認められにくいのが現状だからです。
では、弁護士に頼んだ場合にはどのような流れで手続きが進むのでしょうか?
①相談
まずは弁護士に相談しましょう。相談料は30分5000円が相場といえますが、無料の弁護士事務所も増えています。
②内容証明郵便
配達証明付き内容証明郵便で、会社に対して「雇い止めは無効である」との主張をします。
③交渉
弁護士と会社が交渉を行います。ほとんどのケースでは、交渉によって解決します。
④労働審判
労働審判とは「専門家と裁判官が一緒に審理し、スピーディーに労働問題の解決を図る制度」のことです。3回以内に手続きが終わりますので、早く問題を解決したい方にはぴったりです。
⑤裁判
労働審判にふさわしくない内容だったり、どちらかが審判の内容に異議を申し立てた時には、裁判になります。裁判になると、解決まで数カ月~数年を要します。
4章:「無期転換申し込み」とは
有期雇用から無期雇用へと変えてほしいときには、「無期転換申し込み」と言う制度を使いましょう。
4-1:無期転換ルール
あなたが同じ会社で5年以上更新を繰り返している場合、有期契約から無期契約にすることができます。それが「無期転換申し込み」です。
無期転換申し込みをすると、自動的に労働契約が期間の定めのない労働契約になります。ただし、契約内容はあくまで「今までの有期労働契約と同じ内容」であり、正社員と同じ労働条件になるわけではありません。
4-2:無期転換の条件
有期労働契約を無期雇用契約へと変更する「無期転換ルール」。これを使うためには、以下の条件を満たす必要があります。
①同じ会社との間で2回以上有期労働契約が結ばれ、通算5年を超えること
*5年のルールは、2013年4月1日以降に締結・更新された有期労働契約からです。
②今の契約の期間が満了するまでに無期労働契約の締結の申し込みをすること
4-3:無期転換の申し込み方法
無期転換を申し込む際には、書面で申し込みをしましょう。
具体的な書式は以下の通りです。
【申込書の書式】
まとめ:雇い止めについて
雇い止めについて、イメージはわいたでしょうか?最後に簡単におさらいしましょう。
・雇い止めとは、「契約期間が終わるときに、会社に更新を拒否されること」
・雇い止めが制限されるのは
①雇い止めの2つのパターンのうちどちらかにあたること
②契約を更新しないことにきちんとした理由がないこと
という条件を満たした場合
・雇い止めが無効の場合には、会社に戻ったり、賃金を請求することができる
・通算5年以上有期労働契約で働いている場合には無期転換申し込みと言う制度がある
雇い止めの無効が認められるのは難しいですが、方法がないわけではありません。雇い止めをされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。