- 更新日:2024.08.28
- #交通事故後遺障害等級
【部位別・後遺障害等級表】交通事故で損しないための方法を弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- 後遺障害等級認定の基礎知識
- 後遺障害等級認定表
- 後遺障害等級認定を申請する手続きのながれ
- 等級に不満がある場合にできる2つのこと
- 後遺障害等級の申請は弁護士に依頼しよう
あなたは、
「交通事故の後遺障害等級ってどういうもの?」
「後遺障害等級の、それぞれの示談金の金額を知りたい」
「妥当な後遺障害等級を認定してもらうための手続き方法が知りたい」
などの悩み、疑問をお持ちではありませんか?
後遺障害等級とは、交通事故で後遺障害が残ってしまった場合に、その障害の度合いを示すレベルのことです。
しかるべき審査に通ると認定され、その等級に応じて示談金が決められます。
後遺障害等級について注意しておいて欲しいのが、
「医者や保険会社に任せていたら、妥当な等級が認定されないことがある」
ということです。
そこでこの記事では、まずは交通事故の後遺障害等級について基本的な知識を解説し、それから等級別の示談金額を紹介します。
さらに、妥当な後遺障害等級を認定してもらうために必要な手続きと、認定された等級に不服がある場合にできることについても解説します。
知りたいところから読んで、これからの行動に活用してください。
目次
1章:後遺障害等級認定の基礎知識
それではさっそく、後遺障害等級の基礎知識として、
- 後遺障害等級とは何か
- 後遺障害等級が重要な理由
- 後遺障害等級認定のタイミング
について解説していきます。
後遺障害等級別の示談金額について先に知りたい場合は、2章からお読みください。
また、先にお伝えしておきますが、後遺障害等級は弁護士に依頼すると、弁護士から医師に「後遺障害診断書」作成時に指示することができるため、より妥当な等級を得られる可能性が高まります。
そのため、弁護士に手続きを依頼することで、示談金が高額になることもあるのです。
弁護士に依頼するメリットについて、詳しくは5章で解説します。
1-1:後遺障害等級とは
後遺障害等級とは、交通事故の被害で「痛み」「しびれ」などの後遺障害が残った場合に、その後遺障害の度合いに応じて認定されるものです。
認定するのは「損害保険料率算出機構」という機関で、医療機関が作成してくれる「後遺障害診断書」やレントゲン写真、CT、MRIなどの資料を元に審査されます。
後遺障害等級には1級から14級まであり、最も重い後遺障害等級が1級、最も軽いものが14級です。
1-2:後遺障害等級の認定が重要な理由
妥当な後遺障害等級を認めてもらうことは、あなたが示談金で損しないために非常に重要なことです。
後遺障害等級の重要性が分かる、2つの理由を解説します。
①後遺障害等級が認定されなければ、任意保険会社が適切な示談金を支払ってくれないため
交通事故の被害にあった場合、被害に応じて必要な示談金を保険会社に請求することができます。
示談金には、以下のものが含まれます。
上記の示談金の中には、実費(実際にかかった金額)を保険会社が支払ってくれるものもありますが、「逸失利益」「後遺障害慰謝料」については、後遺障害の等級に応じて支払われるものです。
そのため、後遺障害等級が認定されていなければ、保険会社に請求することができません。
したがって、後遺障害が残っているのなら、まずは後遺障害等級を申請し認定してもらう必要があるのです。
後遺障害等級が認定されていれば、保険会社に対してこれらの示談金を請求できますし、保険会社から提示された金額が不満なら、示談交渉することもできます。
②後遺障害等級に応じて示談金の金額が変わるため
後遺障害等級が認定されると、等級に応じて示談金の金額が決まります。
たとえば、自賠責保険では、別表1の1級に認定された場合、最大で4000万円、最も軽い14級の場合、75万円の保険金額が支払われると決められています。
※後遺障害等級と示談金額について、詳しくは2章で紹介します。
大事なのは、より高い等級が認められるほど、高い示談金をもらうことができるということです。
そのため、あなたが、本来認定されるはずの等級よりも低い等級しか認められなかった場合、大幅に低い示談金しかもらえないのです。
たとえば、あなたが本来認められるはずの等級が「10級」なら、自賠責基準でも「461万円」の保険金をもらうことができます。
しかし、後遺障害等級が「11級」しか認められなかった場合、もらえる保険金は「331万円」まで減ってしまいます。
つまり、妥当な後遺障害等級をもらえないことで、130万円も保険金が減ってしまうのです。
1-3:後遺障害等級が認定されるタイミング
後遺障害等級を申請するためには、申請できるタイミングについて知っておくことも大事です。
なぜなら、後遺障害等級を申請できるのは、治療が完了して「症状固定」と診断されたタイミングだからです。
症状固定とは「もうこれ以上治療をしても症状が改善しませんよ」というタイミングのことです。
医師が症状固定と診断したら、医師が作成する「後遺障害診断書」やレントゲン写真、CT、MRIなどの資料を審査機関に提出し、後遺障害等級の認定の可否が通知されます。
重要なのは、あなたがまだ治療中の場合、後遺障害等級を申請することはできないということです。
場合によっては、保険会社から「症状固定にしてください」「示談のための話し合いをはじめたいです」と連絡が来ることもあると思いますが、こんな連絡が来ても鵜呑みにしてはいけません。
症状固定にするかどうか、医師と相談して決めてください。
また、症状固定の診断をしてもらう前に、弁護士に依頼して妥当な後遺障害等級を得るための準備をはじめておくことも大事です。
2章:後遺障害等級認定表
自賠責保険では、後遺障害等級と自賠責保険における保険金の金額が決められています。
この章では、部位別に後遺障害等級とそれに対応する自賠責保険金を紹介します。
あなたが当てはまる部位から確認してください。
ちなみに、以下の示談金額は「自賠責基準」という基準で決められている基準です。
弁護士に手続きを依頼すれば、基本的に、「裁判基準」という基準を使って示談金を保険会社に請求できます。
したがって、弁護士に依頼すれば、これから紹介する示談金額よりも高くなる可能性もあると覚えておいてください。
2-1:脳・脊髄・その他神経に関する後遺障害の目安
脳・脊髄・その他神経に関する後遺障害における、後遺障害等級と自賠責保険金は以下の通りです。
脳の障害は重いケースもあり、1級、2級のように常に介護が必要な場合は慰謝料以外にも高額な示談が支払われます。
2-2:眼
眼の後遺障害等級は細かく決められているため、後遺障害等級を申請する時には、医師と相談してあなたの後遺障害を正確に診断してもらいましょう。
眼の後遺障害の後遺障害等級は、以下の通りです。
2-3:耳
耳の後遺障害等級も、下記のように細かく決められています。厳密には、測定方法なども指定があります。
両耳の聴力をまったく失ってしまうほどなら「1889万円」の示談金が支払われますが、「片耳の聴力が1メートル以内の小声を聞き取れない」くらいの後遺障害では、「75万円」程度の示談金になります。
2-4:鼻
鼻の後遺障害については、等級表上は、1つしか記載がありませんが、準用という形で、ほかにも嗅覚脱失、鼻呼吸困難などで後遺障害等級が認定されます。
2-5:口
口の後遺障害等級は、下記の通りです。
これも細かく決められていますので、あなたの症状がどの程度なのか、しっかり医師に診断してもらうことが大事です。
2-6:脊椎・体幹
脊椎や体幹の骨の後遺障害については、以下のように後遺障害等級が定められています。
2-7:上肢(腕)
上肢(腕)に後遺障害を負った場合、後遺障害等級は以下の通りです。
2-8:手指
手の指に後遺障害を負った場合、後遺障害等級は以下の通りです。
2-9:下肢(足)
下肢(足)に後遺障害を負った場合、後遺障害等級は以下の通りです。
2-10:足指
足の指に後遺障害を負った場合、後遺障害等級は以下の通りです。
2-11:臓器
臓器に後遺障害を負ってしまった場合、後遺障害等級は以下の通りです。
2-12:外貌醜状(見た目)
交通事故によって、あなたの外見に大きな影響が出てしまった場合の後遺障害等級は、以下の通りです。
たとえば目に見える大きな傷跡やただれなどのことです。
3章:後遺障害等級認定を申請する手続きのながれ
後遺障害等級の申請手続きには、
- 事前認定
- 被害者請求
の2つの方法があります。
どちらでも良いというわけではなく、それぞれ以下のような違いがあります。
共に、症状固定後に手続きを開始するという点では同じですが、事前認定は加害者側の保険会社に手続きを任せる方法、被害者請求は自分で手続きを行う方法です。
それぞれ、手続きの方法が異なりますので、注意してください。
それでは、それぞれの方法について詳しく解説します。
3-1:加害者の保険会社に任せる「事前認定」の方法
「事前認定」とは、被害者であるあなたが自分で、加害者が入っている任意保険会社に「後遺障害診断書」を提出し、任意保険会社に手続きを任せる方法です。
事前認定は、以下の流れで手続きを行います。
事前認定では、加害者側の保険会社が、必要な書類集め、提出、審査のための手続きなどを行いますので、あなたの手間はほとんどありません。
一方で、あなたにはデメリットもありますので、これから詳しく解説します。
事前認定手続きのSTEP1:後遺障害診断書を作成してもらう
事前認定の手続きは、「症状固定」後にはじめます。
「症状固定」と診断されたら、医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
【後遺障害診断書とは】
後遺障害診断書とは、後遺障害が残った場合に、医師に依頼して作成してもらう診断書です。後遺障害等級の認定には、必ず必要なものです。後遺障害診断書には、あなたの症状について詳しく書かれ、その内容に基づいて後遺障害等級が認定されます。
後遺障害診断書の作成を医師に依頼すると、早ければその日の内、遅くとも2週間程度で作成にかかります。
後遺障害診断書の内容と、あなたの自覚症状に違いがあれば、医師に相談して、必要であれば再作成してもらいましょう。
なぜなら、後遺障害診断書に書かれた後遺障害の症状から、あなたの後遺障害等級が決定されるからです。
納得の行く後遺障害診断書を作成してもらったら、それを提出する手続きに進みます。
事前認定手続きのSTEP2:加害者が加入している任意保険会社に後遺障害診断書を提出する
後遺障害診断書を作成してもらったら、それを加害者が加入している任意保険会社に提出します。
「事前認定」の手続きでは、後遺障害診断書を任意保険会社に提出すれば、それ以降の病院や自賠責損害調査事務所との間での手続きを、すべて任意保険会社が代わりにやってくれます。
つまり、あなたの手間がほとんどかからないのです。
■事前認定では、あなたに有利な資料を集めてもらえない可能性がある
事前認定とは、「示談金を支払う側」である保険会社に、手続きを任せる手続きの方法です。
後遺障害等級の申請には、交通事故による後遺障害の症状に関する書類(レントゲン写真、CT、MRIなど)を病院から集める必要があります。
それを保険会社に任せると、あなたに有利な資料集めをしてくれない可能性が高いのです。
有利な資料を集めてもらえなければ、あなたにとって妥当な後遺障害等級が認められない可能性もあります。
そうなれば、本来もらえるはずだった示談金額より、少ない金額の示談金しかもらえなくなる可能性があるのです。
事前認定手続きのSTEP3:後遺障害等級が認定される
「事前認定」では、後遺障害等級の認定手続きを任意保険会社に任せるため、認定の可否についての通知も、任意保険会社から受けます。
後遺障害等級が認定されれば、それから任意保険会社との間で示談交渉(裁判外交渉)をすることもできますし、示談交渉でまとまらなければ裁判(訴訟)を提起することもできます。
後遺障害等級の認定について不服がある場合は、4章で説明する「異議申立」という手続きで、再審査を要求することもできます。
3-2:自分で手続きをする「被害者請求」の方法
被害者請求とは、被害者であるあなたが自分で医療機関から資料を集め、それを加害者が加入している自賠責保険会社に提出し、後遺障害等級の認定を請求する手続きのことです。
被害者請求は、以下の流れで手続きを行います。
被害者請求の手続きは、自分で書類を集めて提出しなければならないため、事前認定よりも手間がかかります。
ただし、妥当な後遺障害等級を得るために、自分に有利な書類を集めることができるというメリットがあります。
また、弁護士に手続きを依頼し、弁護士から医師にアドバイスし、妥当な等級を得るためのサポートをすることもできます。
それでは、被害者請求の手続きを順番に解説します。
被害者請求手続きのSTEP1:後遺障害診断書を作成してもらう
被害者請求でも、事前認定と同じく、まずは後遺障害診断書を医師に作成してもらう必要があります。
【後遺障害診断書とは】
後遺障害診断書とは、後遺障害が残った場合に、医師に依頼して作成してもらう診断書です。後遺障害等級の認定には、必ず必要なものです。後遺障害診断書には、あなたの症状について詳しく書かれ、その内容に基づいて後遺障害等級が認定されます。
後遺障害診断書の作成を医師に依頼すると、早ければその日の内、遅くとも2週間程度で作成にかかります。
後遺障害診断書の内容と、あなたの自覚症状に違いがあれば、医師に相談して、必要であれば再作成してもらいましょう。
なぜなら、後遺障害診断書に書かれた後遺障害の症状から、あなたの後遺障害等級が決定されるからです。
後遺障害診断書の作成と並行して、後遺障害等級の認定に必要な資料を集めることも大事です。
被害者請求手続きのSTEP2:後遺障害等級認定に必要な資料を集める
後遺障害等級の認定には、
- 受傷時(最初に医療機関で診断、治療を受けた時)
- 症状固定時(医師から症状固定と診断された時)
の2つのタイミングでの「レントゲン写真」「CT」「MRI」などの資料を集めることが大事です。
なぜなら、より詳しい資料があるほど、あなたの後遺障害について正確に判断する情報が得られるため、妥当な後遺障害等級が認定される可能性が高まるからです。
被害者請求手続きのSTEP3:加害者の自賠責保険会社に必要書類を提出する
後遺障害診断書やレントゲン写真、CT、MRIなどの資料がそろったら、それを加害者が加入している「自賠責保険会社」に提出します。
事前認定の場合は加害者の「任意保険会社」に提出するのですが、被害者請求の場合は、加害者の「自賠責保険会社」に提出する、という点に注意してください。
加害者の「自賠責保険会社」がどこかというのは、交通事故証明書を見ればわかります。
被害者請求手続きのSTEP4:後遺障害等級が認定される
被害者請求の場合、後遺障害等級の認定結果は、あなたに直接通知されます。
後遺障害等級が認定されたら、あなたが認定された等級に応じた保険金が、あなたの口座に振り込まれます。
支払われる金額については、2章でお伝えした通りです。
後遺障害等級の認定結果に不満がある場合は、4章で説明する「異議申立」をすることもできます。
※実際には、一度決まった後遺障害等級の認定結果について、異議申立が認められることは極めて稀です。
そのため、最初から、妥当な後遺障害等級の認定を受けられるように資料を集め、提出することが大事です。
4章:等級に不満がある場合にできる2つのこと
後遺障害等級の認定結果に納得できない場合は
- 異議申立
- 紛争処理の申請
という手続きで、後遺障害等級の再審査を要求することができます。
順番に解説します。
4-1:異議申立
異議申立とは、「後遺障害等級の認定結果に納得いかないので、再審査してください」と要求することです。
異議申立する相手は、最初に申請した時の方法によって、以下の通り異なります。
- 事前認定で申請した場合・・・加害者の任意保険会社
- 被害者請求で申請した場合・・・加害者の自賠責保険会社
ただし、異議申立は簡単に認められるものではありません。
後遺障害等級の認定結果が間違っている医学的な根拠を示さなければ、異議申立を認めてもらうことはできないのです。
そのため、認定結果が間違っていることが分かる、新たな医学的な資料を提出する必要があります。
また、異議申立してから認定結果が出るまでは、2〜3ヶ月程度、長ければ半年以上かかることもあります。
4-2:紛争処理の申請
紛争処理とは、後遺障害等級の認定結果の再審査を、「自賠責保険・共済紛争処理機構」という機関に要求することができる手続きです。
手続きは無料で行うことができ、中立的な立場の機関が再審査してくれます。
紛争処理の申請をする場合、以下のページから申請書を作成し、最寄りの「自賠責保険・共済紛争処理機構」のセンターに提出する必要があります。
ただし、紛争処理の申請をする上で、注意点があります。
1つは、紛争処理をするためにも、あなたが自分で再審査のための医学的な資料を集めなければならないということです。
そのため、集めるべき資料について弁護士などに相談することが大事です。
もう1つは、紛争処理は異議申立と違って1回しか利用することができないということです。
保険会社への異議申立は何度でもできるのが一般的ですので、異議申立で要求が通らない場合に、最終手段として紛争処理手続きを利用することをおすすめします。
5章:後遺障害等級の申請は弁護士に依頼しよう
繰り返しになりますが、交通事故の後遺障害等級の申請手続きは、弁護士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、後遺障害等級の認定手続きを自分だけで行おうとすると、
- 必要な書類を十分に集めることができず、妥当な後遺障害等級が認定されない
- 手続きを行う手間や時間の負担が大きく、治療に専念できない
- 妥当な後遺障害等級が認定されなかった時に、異議申立に失敗する
などの可能性があるからです。
弁護士に依頼すれば、
- 専門家の立場から、必要な書類を集めてくれる
- 妥当な後遺障害等級が認定できるように、後遺障害診断書の作成時に医師に指示できる
- 異議申立したい場合も、スムーズに手続きできる
-
後遺障害等級の申請だけでなく、示談交渉、裁判など、様々な手続きを任せることができる
といったメリットがあります。
しかも、あなたやあなたの家族が加入している保険に「弁護士特約」がついていれば、弁護士費用は基本的に0円で依頼できます(※)。
※示談金の金額や依頼する法律事務所によっては、費用がかかることもあります。
弁護士への相談を検討されている場合は、まずは一度法律事務所に相談してみてください。
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容を振り返ります。
【後遺障害等級の認定が重要な理由】
①後遺障害等級が認定されなければ、任意保険会社が適切な示談金を支払ってくれないため
②後遺障害等級に応じて示談金の金額が変わるため
【後遺障害等級の結果に不服がある場合にできること】
- 異議申立
- 紛争処理手続き
妥当な示談金をもらえるように、この記事の内容をよく覚えて行動に移してください。