【状況別】交通事故で意識不明になった時に知っておくべき全知識

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

【状況別】交通事故で意識不明になった時に知っておくべき全知識
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 交通事故現場で被害者・同乗者が意識不明になった場合にやるべきこと
  • 交通事故で意識不明になった被害者のその後の経過・回復
  • 家族が交通事故で入院し意識不明になった場合にやるべきこと
  • 意識不明になった被害者の家族は示談の代理交渉ができない
  • 交通事故で意識不明になった場合の後遺障害と慰謝料相場
  • 慰謝料以外にも請求可能な損害金一覧
  • 交通事故で意識不明になった場合に弁護士に依頼すべき理由

あなたは、

「交通事故で被害者や同乗者が意識不明になってしまった。今すぐできることを知りたい。」

「家族が事故で入院して意識不明になっている場合、何をしたら良いんだろう?」

「家族が意識不明だが、これからどういう経過になるんだろう?」

などの悩み、疑問をお持ちではありませんか?

まず、現在、交通事故の現場にいて被害者や同乗者が意識不明になっているという場合、すぐに1章から読み始めてください。

そうではなく、現在家族が意識不明で入院していて、これからやるべきことが知りたいという場合は2章以降をお読みください。

結論から言えば、現在家族が意識不明という場合は、しっかり損害金をもらって治療に専念するために、以下のことを行う必要があります。

交通事故で家族が意識不明になった場合にやるべきこと

そこでこの記事では、まずは意識不明の被害者・同乗者がいる方に向けてやるべきことを1章で説明し、2章では意識不明の方のその後の経過や回復について説明します。

3章では家族が意識不明の状態という方のために、これからやるべきことを具体的に紹介し、4章では意識不明の被害者の家族が示談交渉を代理でできない理由を説明します。

5章、6章では意識不明の場合の損害金の相場を紹介し、7章で弁護士に依頼すべき理由を説明します。

知りたいところから読んで、あなたがやるべき行動にすぐに取り掛かっていきましょう。

交通事故被害者のあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:交通事故現場で被害者・同乗者が意識不明になった場合にやるべきこと

現在、交通事故の現場で被害者や同乗者が意識不明になってしまったという場合、これからの説明をよく読んで、読みながらすぐに行動を開始してください。

1-1:加害者や同乗者には救護義務がある

そもそも、交通事故を起こしてしまった加害者には、事故の被害者に対して「救護義務」があります。

つまり、被害者が事故によって怪我をしたり、意識不明状態にある、危険な状態にいる、などの場合は加害者が助けてあげる義務があるのです。

この救護義務を放棄して現場から離れた場合、下記のように刑事罰や損害金の増額、といった可能性があるのです。

  • 「ひき逃げ」であり、重大な犯罪になる
  • ひき逃げには、「10年以下の懲役または100万円以下の罰金」という重い罪が課せられる
  • 被害者に対して支払う損害金も、ひき逃げの場合は高額になる傾向がある

そのため、加害者になってしまったら必ずその場にとどまり、応急措置をしたり、救急車を呼ぶ必要があります。

1-2:被害者、同乗者が行うべき応急処置一覧

交通事故現場で、被害者に同乗者がいる場合(被害者の家族など)は、同乗者が主に救護を行います。

警察や救急への連絡は加害者が行うべきです。

被害者が意識不明になっている場合は下記のことを行ってください。

被害者が意識不明の場合にやるべきこと
  1. 車を安全な所に停め、危険ではないか確認した上で車を降りて被害者を救護に行く
  2. 救急車を呼ぶ
    けが人がいることが分かったらすぐに「119番」に電話をかけて救急車を呼びましょう。場所を聞かれますが、近くの電柱等に住所が書かれている場合があります。
  3. これらと同時に、周囲に人がいれば呼び掛けて助けてもらう
    周囲に人がいる場合は、助け、手助けをしてほしいことを呼び掛けてください。
  4. 被害者を安全な場所に移動させる
    車通りがある所は危険ですので、歩道や車が来ない所に静かに移動させましょう。同乗者や近くの人にも手伝ってもらいます。
  5. 被害者に声をかけ、あらためて意識を確認する
    被害者が本当に意識不明か声をかけて確認します。声をかけると目を覚ます可能性もあります。ただし、強く揺れ動かしたりしないようにしたほうが良いです。
  6. 意識不明の場合、呼吸と心音の有無を確認
    意識がない場合は、呼吸をしているか、心臓が動いているか確認する必要があるため、それぞれ確認する方が良いようです。
    呼吸は、被害者の口・鼻の上に自分の耳を近づけて呼吸しているか確認しましょう。心音は、胸に耳を当てて音がしているか確認してください。
  7. 心音がない場合は、心臓マッサージを行う
    心臓マッサージは、胸の真ん中に手のひらの「かかと」部分を当て、肘を伸ばしたまま、胸が5センチ程度沈むまで強く押し瞬時に力を緩めます。これを1分に100-120回ペースで行うことがよいようです。ただ、素人が無理に行うと、かえって怪我をすることがあるといわれています。以下の専門家の動画をよく見るなどしたうえで、ご自身の責任でご対応をお願いします。


AEDがあればAEDに書かれている使用方法に従って使ってください。

  1. 呼吸がない場合は人工呼吸を行う
    人工呼吸の正しい方法を知っている場合は、人工呼吸を行ってください。分からなければ心臓マッサージのみ続けましょう。
  2. 外傷がある場合は出血を止める
    外傷があり出血している場合は、清潔なタオル等で傷口を抑えて出血を防いでください。傷口には触らないようにしてください。

弁護士
弁護士
また、被害者の家族は自分が無事で、救護が終わった場合は、事故現場の写真を撮影して状況を記録しておくこともやっておくと良いでしょう。
 さて、次に被害者が意識不明になった場合、その後の経過や回復はどうなるのか、説明します。

2章:交通事故で意識不明になった被害者のその後の経過・回復

交通事故で意識不明になった場合、いつ目が覚めるのか、そのまま意識不明のままになってしまうのか不安になると思います。

ダメージが与えられた部分や状況により経過は大きく異なりますが、一般的には以下のような経過が見られます。

■2~3時間以内に目を覚ます

意識不明になっても、多くの場合は軽い脳震盪(のうしんとう)等である場合が多いです。

※脳震盪とは、外からの強い衝撃で一時的に意識障害が発生することです。

軽い脳震盪である場合は、数時間で目を覚まし、後遺障害も残らないことが多いです。

■6時間以内に刺激に反応する

意識不明になっても、6時間以内に外からの音や触覚等の刺激に反応し始めることがあります。

6時間以内に反応が見られた場合は回復する可能性が高いと言われています。

また、1日目のうちに「しゃべる」「目で物を追える」「指示に従える」「筋肉の緊張が解ける」などの変化が見られた場合は、回復する見込みが高いと言われています。

逆に6時間~24時間のうちに意識不明状態から改善が見られない場合、後遺障害が残る可能性があります。

■健忘(記憶があいまい、忘れっぽい)の継続

意識が戻っても、健忘(事故前後の記憶があいまい、事故後の記憶を忘れっぽい)が継続することがあります。

健忘状態が続く場合、意識を回復していても脳が損傷している可能性があります。

■後遺障害が残る

交通事故で意識不明になる場合、多くが「外傷性脳損傷」と呼ばれる怪我です。

外傷性脳損傷で意識不明状態が24時間以上続いた場合、

  • 50%の患者は重度の神経学的な後遺障害が残る
  • 2~6%は6か月後の時点でも植物状態

となると言われています。

(参考:MSDマニュアル「外傷性脳損傷」

男性
男性
家族が意識不明のままになっている場合、後遺障害が残る可能性が高いということなんですね。
 
弁護士
弁護士
もちろん無事に回復するケースもありますが、後遺障害が残る可能性が高いということは知っておいた方が良いでしょう。そのため、ご家族の方はこれから紹介することをやっていくことが大事です。
 

3章:家族が交通事故で入院し意識不明になった場合にやるべきこと

交通事故で家族が被害者になり、意識不明になった場合、下記のことを行ってください。

交通事故で家族が意識不明になった場合にやるべきこと

家族が交通事故で入院して、意識不明になってしまった、また意識不明状態が続いているという場合は、まずは適正な金額の損害金をもらうために、3-1に書いていることをやってください。

それではこれから、具体的なポイントを解説していきます。

3-1:適正な損害金をもらうためにやるべきこと

適正な金額の損害金をもらうためにやるべきことは下記の事です。

■適正な損害金をもらうためにやるべきこと

  • 専門医を見つけて治療を受けさせる
  • 治療、意識状態の記録を残しておく
  • 3カ月回復しなければ成年後見人を選任する
  • 弁護士に相談・依頼しておく

多くの場合、加害者や加害者の保険会社は「できるだけ支払う損害金(示談金)を抑えよう」と行動してきます。

そのため、加害者・保険会社の言う通りに行動し、示談書にサインしてしまうと、本来もらえる金額よりずっと少ない損害金しかもらえず、大きく損してしまう可能性があるのです。

上記のことを行えば、損害金を最大限もらうことができます。

これから順番に解説します。

3-1-1:専門医を見つけて治療を受けさせる

交通事故で意識不明になった場合、高次脳機能障害や麻痺、精神障害、てんかんなどの後遺障害が残る可能性があります。

そのため、脳障害を専門的に扱っている専門医にかかり、適切な治療を受けさせることが非常に大事です。

万が一、脳挫傷や脳内出血などの症状が見逃されてしまうと、命の危険や植物状態になることもあり得ます。

交通事故後にすぐに救急車で搬送された場合は、病院を選ぶことはできません。

しかし、搬送され入院している病院に不安がある場合は、脳障害に強い病院を探して転院させてもらうことをおすすめします。

3-1-2:意識状態や治療の記録を残しておく

交通事故で意識不明になり、治療を受けている場合、どのような治療を受けているのか、被害者の意識状態はどのように変化したか(変化していないか)しっかり記録を残しておくことが大事です。

特に、事故直後の意識障害は後々重要視されますので、CT検査や、JCSの点数を確認してもらうことが大事です。

なぜなら、損害金を大きく左右する「後遺障害等級(※)」の認定時に、意識障害に関する資料が必要とされる場合があるからです。

※後遺障害等級とは、後遺障害の度合いに応じて認定される1級~14級の等級のことです。

後遺障害等級の認定時には、意識はどの程度あるのか、どのような反応をするのかといったことが認定基準になる場合があります。

そのため、できるだけ毎日、被害者の状態をノートに記録して残しておくことをおすすめします。

3-1-4:3カ月回復しなければ成年後見人を選任する

交通事故で被害にあった場合は、加害者(とその保険会社)を相手に示談交渉し、適正な損害金を請求する必要があります。

この示談交渉は必ず本人が行わなくてはならないことになっています。

しかし、意識不明から3カ月経過すれば一般的に「植物状態(遷延性意識障害)」であるとされ、回復の見込みはほぼありません。

そのため、植物状態になってしまったら「本人が示談交渉することができない」ということになります。

さらに、示談交渉は家族が代理で行うこともできません。

そのため、3カ月意識が回復しなければ、成年後見人を選任することが大事です。

成年後見人を選任してもらうことで、成年後見人が代理人となって示談交渉を行ってもらうことができます。

また、次に解説するように示談交渉は弁護士に依頼すると損害金が大幅に増額できる場合が多いです。

そのため、弁護士に成年後見人を依頼し、そのまま示談交渉も依頼することをおすすめします。

弁護士
弁護士
成年後見人はとても大事な点ですので、詳しくは4章で説明します。
 

3-1-5:弁護士に依頼し示談交渉してもらう

ここまでの手続きを行ったら、加害者側の保険会社と示談交渉し、適正な損害金を請求して支払ってもらう必要があります。

しかし、繰り返しになりますが保険会社は、自社からの支払額をできるだけ少なくしたいと考えて、

「本来もらえるはずの金額より、ずっと少ない示談金しか提示しない」

「交渉しても応じてくれない」

といったことを行うことが多いです。

したがって、示談交渉は交通事故の示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼することで、

  • 示談金の算出基準が「弁護士基準」になり、適正な金額が請求可能になる
  • 適正な後遺障害等級認定や過失割合にすることができる
  • 示談交渉にかかる時間、手間、精神的ストレスが最小限になる

といったメリットがあります。

最も大きいのが、適正な損害金を請求可能になるという点です。

弁護士に依頼することで、請求額が大幅にアップするからです。

交通事故の示談金が増額する

示談金の基準の違いについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

【交通事故の示談金相場】1円でも多く請求する方法を弁護士が解説

弁護士
弁護士
成年後見人を弁護士に依頼することはとても大事なことですので、詳しくは4章で解説します。
 

3-2:被害者のためにやるべきこと

損害金を適正額もらうためのやること以外にも、被害者のためにやっておくべきことがあります。

■被害者のためにやるべきこと

  • 被害者の会社に連絡する
  • 刑事裁判に参加する

これから順番に解説します。

3-2-1:被害者の会社に連絡する

被害者が意識不明になった場合、できるだけ早い段階で務めている会社に連絡を取ることも大事です。

意識不明ですぐに回復しなかった場合は、数週間から数か月以上会社を休職しなければならなくなる可能性があります。

その場合、会社との間で休職(もしくは退職)の手続き等が発生するため、被害者のご家族が代わりに行う必要があります。

そのため、どういった手続きが必要か、何をすれば良いか聞くためにも会社に早めに連絡をするべきです。

また、後遺障害が残った場合、継続して雇用してもらえるか、雇用してもらえるとしたらどういった形態になるか、という相談をしておくことも大事です。

被害者が回復したときに、再び働ける場を残しておくことも必要だからです。

そのため、早めに連絡を取り、経過に変化があった時などにも連絡しておくようにしましょう。

3-2-2:刑事裁判に参加する

被害者が意識不明になった後死亡してしまったり、心身に重大な故障が残ってしまった場合、加害者の刑事裁判に参加できることがあります。

加害者に適正な罪を償ってもらうため、ご家族が刑事裁判に参加をすることも可能です。

この制度を「被害者参加制度」と言います。

希望する場合は、事件を担当する検察官に申し出、裁判所に認めてもらう必要がありますが、参加すれば裁判時に意見を述べたり、質問したりすることもできます。

被害者の遺族、家族が参加して意見を述べても、判決を変えるほどの力があるわけではありません。

しかし、「加害者を許せない」「しっかり罪を償ってほしい」と強い気持ちを持っている場合は、こうした制度を使って裁判に関与する方法もあるのです。

男性
男性
被害者のためにやるべきことが良く分かりました。
 
弁護士
弁護士
それは良かったです。それでは次に、被害者が意識不明から回復しなかった時のための「成年後見人」の制度について詳しく説明します。
 

4章:意識不明になった被害者の家族は示談の代理交渉ができない

あらためて確認しますが、意識不明になった被害者の代わりに家族が示談交渉を行うことはできません。

なぜなら、家族にも交渉の代理権はないためです。

(未成年の子どもの親は除きます)

したがって、被害者が意識不明のまま回復しなければ、示談交渉を行うためには「成年後見人」を必ず選任しなければならないのです。

■成年後見人とは

成年後見人とは、意識不明や精神上の障害によって自分で判断できなくなった人を詐欺等の被害から守るための制度です。

示談交渉においても、被害者が不利にならないように、成年後見人を立てることができます。

成年後見人は、被害者の生活や看護、財産の管理を行う役割を持ちます。

■成年後見人の決め方

成年後見人は、勝手に「あなたにお願いします」と頼めるわけではありません。

交通事故で植物状態という場合は、親族が家庭裁判所に申し立て、誰を後見人にするのか裁判所に審判してもらう必要があります。

■成年後見人は弁護士に依頼することが大事

成年後見人は、親族を選任することもできます。

しかし、被害者に多額の預貯金がある場合、親族では不正が行われる(勝手に使い込むなど)可能性があります。

そのため、一般的には弁護士に成年後見人が依頼されることが多いです。

弁護士に依頼すれば、親族に依頼した場合のようなトラブルが防げますし、成年後見人の申し立てに必要な手続きも任せられます。

また、前述のように弁護士にそのまま示談交渉を依頼することもできます。

以上の理由から、成年後見人は弁護士に依頼することをおすすめします。

男性
男性
知らないことばかりでした。
 
弁護士
弁護士
そうですよね。家族が意識不明になれば気が動転して、保険会社の言うままに行動してしまいがちです。そのため、ここに書いたようにしっかり適正な行動を取っていくように注意してください。
 
男性
男性
分かりました。ところで、意識不明になった場合はどんな後遺障害が残る可能性があるのでしょうか?示談金はどのくらいもらえるのでしょうか?
 
弁護士
弁護士
それではこれから、後遺障害の詳しい内容と示談金相場について紹介します。
 

5章:交通事故で意識不明になった場合の後遺障害と慰謝料相場

交通事故で意識不明になった場合、以下の後遺障害が残る可能性があります。

■意識が戻らなかった場合

植物状態(遷延性意識障害)

■意識が戻った場合

  • 高次脳機能障害
  • 麻痺
  • てんかん

これらの後遺障害が残った場合、後遺障害の度合に応じて「後遺障害慰謝料」「逸失利益」などの高額な損害金を請求することが可能です。

詳しい認定基準は弁護士に聞いてみることをおすすめしますが、ここでは参考のためそれぞれの詳しい症状と認定される後遺障害等級、認定の基準、慰謝料相場について解説します。

5-1:意識が戻らなかった場合

交通事故で意識不明になり、そのまま意識が戻らない状態が3か月以上戻らない場合、いわゆる植物状態(遷延性意識障害)であるとみなされます。

植物状態になってしまえば、被害者の方や被害者のご家族の悲しみ、今後の介護への不満等は非常に大きなものだと思います。

弁護士にその苦しみを癒すことはできませんが、悲しみ、苦しみに対する慰謝料や、治療や介護に必要な損害金を適正な金額請求することができます。

植物状態(遷延性意識障害)になった場合、後遺障害等級1級(介護を要するもの)が原則として認められます。

植物状態になってしまった場合の、

  • 認定される等級
  • 認定基準
  • 慰謝料相場

をそれぞれ解説します。

5-1-1:症状の内容・認定基準

植物状態(遷延性意識障害)というのは、3カ月以上に渡って

  • 自力での移動ができない
  • 自力での摂食ができない
  • 糞便失禁状態
  • 意味のある発語ができない
  • 簡単な従命以上の意思疎通ができない
  • 追視できない、あるいは認識ができない

という6項目を満たす状態のことであるとされています。

(参考:日本救急医学会「遷延性意識障害」

簡単に言えば、生命維持のための最低限の行為ができず、意思の疎通もできない状態です。

この植物状態の場合に認定される後遺障害等級から説明します。

交通事故の後遺障害等級は、自賠責保険(※)で定められた基準が認定の目安になります。

※自賠責保険とは、自動車の所有者が加入する義務がある、交通事故の被害者に最低限の補償を行う保険のことです。

■植物状態の後遺障害等級

植物状態(遷延性意識障害)になった場合、認定される後遺障害等級は「1級1号」です。

■1級1号の後遺障害等級の認定基準

後遺障害等級1級の認定基準は、脳に重度の障害が残り、身の回りの日常的な行為(食事、入浴、用便、更衣)などについて常に介護が必要な状態である、というものです。

植物状態の場合、もちろん日常的な動作も一切できませんので、後遺障害等級1級が認定されます。

5-1-2:植物状態の慰謝料相場

繰り返しになりますが、後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料をはじめとする損害金を請求可能です。

後遺障害等級1級(要介護)の場合の慰謝料相場は以下の通りです。

 

植物状態の後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故でもらえる損害金の中でも高額になる項目の一つです。

そのため、後遺症が残った場合は必ず後遺障害等級を申請し、妥当な等級を認定してもらうことが大事です。

他にも入通院慰謝料や逸失利益といった損害金をもらうこともできますので、より詳しく示談金の相場が知りたい場合は以下の記事をご覧ください。

【交通事故の示談金相場】1円でも多く請求する方法を弁護士が解説

弁護士
弁護士
次に、意識が戻った場合にあり得る後遺障害の症状や等級、慰謝料について紹介します。
 

5-2:途中で意識が戻った場合

交通事故による意識不明状態から、意識が戻っても、脳挫傷、頭がい骨骨折、脳内出血などによって、後遺障害が残る場合が多いです。

意識不明から回復後に残ることが多い後遺障害には主に以下のものがあります。

  • 高次脳機能障害
  • 麻痺
  • 精神障害
  • てんかん

それぞれ詳しく解説します。

5-2-1:高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、交通事故によって脳に損害が与えられることによって、「意思疎通」「問題解決」「作業負荷に対する持続力、持久力」「社会行動能力」等を喪失することです。

弁護士
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高次脳機能障害とは、簡単に言えば、事故前と同じレベルの普通の生活や仕事、人とのコミュニケーション、社会生活ができなくなった、という後遺障害のことです。
 このような後遺障害が残った場合、障害の度合いに応じてこれから紹介する等級が認定されます。

■高次脳機能障害の後遺障害等級

高次脳機能障害は、障害の度合いに応じて以下の後遺障害等級が認定され、等級に応じた慰謝料が支払われます。

高次脳機能障害の後遺障害慰謝料

弁護士
弁護士
後遺障害等級を申請する場合、医師が詳しく検査しますので、認定の基準には医師や交通事故に強い弁護士に聞いてみてください。
 後遺障害慰謝料は、交通事故でもらえる損害金の中でも高額になる項目の一つです。

そのため、後遺症が残った場合は必ず後遺障害等級を申請し、妥当な等級を認定してもらうことが大事です。

他にも入通院慰謝料や逸失利益といった損害金をもらうこともできますので、より詳しく示談金の相場が知りたい場合は以下の記事をご覧ください。

【交通事故の示談金相場】1円でも多く請求する方法を弁護士が解説

5-2-2:麻痺

交通事故で意識不明になった場合、脳の損傷によって身体の一部が麻痺し、動かなくなったり、運動能力が著しく低下する、ということがあります。

その場合は、麻痺として1級~12級の後遺障害等級が認定されます。

後遺障害等級認定においては、麻痺は下記の3つの度合いで認定されます。

  1. 麻痺が高度
    後遺障害のある上肢もしくは下肢の運動性や支持性(支えること)がほとんど失われた。また、基本動作(歩行や立っていること、物を持ち上げること等)ができなくなった場合。
  2. 麻痺が中程度
    後遺障害のある上肢もしくは下肢の運動性や支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限がある場合。
  3. 麻痺が軽度
    後遺障害のある上肢もしくは下肢の運動性や支持性が多少失われ、基本動作を行う際の巧緻性(動きの正確さ、緻密さ)や速度が相当程度損なわれている場合。

■麻痺の後遺障害等級

麻痺は、障害の度合いに応じて以下の後遺障害等級が認定され、等級に応じた慰謝料が支払われます。

麻痺の後遺障害慰謝料

弁護士
弁護士
後遺障害等級を申請する場合、医師が詳しく検査しますので、認定の基準には医師や交通事故に強い弁護士に聞いてみてください。
 後遺障害慰謝料は、交通事故でもらえる損害金の中でも高額になる項目の一つです。

そのため、後遺症が残った場合は必ず後遺障害等級を申請し、妥当な等級を認定してもらうことが大事です。

他にも入通院慰謝料や逸失利益といった損害金をもらうこともできますので、より詳しく示談金の相場が知りたい場合は以下の記事をご覧ください。

【交通事故の示談金相場】1円でも多く請求する方法を弁護士が解説

5-2-3:てんかん

交通事故で意識不明になると、てんかん(外傷性てんかん)という後遺障害が残る場合があります。

てんかんとは、

  • けいれん発作を起こす
  • 非常に短い時間の意識消失の発作を繰り返す
  • 手足を突っ張って硬直する発作を起こす
  • 手足や全身をびくっとする発作を起こす
  • 感覚や感情の変化や特殊な行動を取る

といった症状のことです。

てんかんがあると、日常生活や仕事へも大きく影響するため、3級~12級の後遺障害等級の対象になります。

■てんかんの後遺障害等級

てんかんは、障害の度合いに応じて以下の後遺障害等級が認定され、等級に応じた慰謝料が支払われます。

てんかんの後遺障害慰謝料

弁護士
弁護士
後遺障害等級を申請する場合、医師が詳しく検査しますので、認定の基準には医師や交通事故に強い弁護士に聞いてみてください。
 後遺障害慰謝料は、交通事故でもらえる損害金の中でも高額になる項目の一つです。

そのため、後遺症が残った場合は必ず後遺障害等級を申請し、妥当な等級を認定してもらうことが大事です。

他にも入通院慰謝料や逸失利益といった損害金をもらうこともできますので、より詳しく示談金の相場が知りたい場合は以下の記事をご覧ください。

【交通事故の示談金相場】1円でも多く請求する方法を弁護士が解説

弁護士
弁護士
詳しい認定基準は医師でも分かっていない場合がありますので、交通事故に強い弁護士に相談して聞いてみることをおすすめします。
 
男性
男性
分かりました。他にももらえる損害金はあるのでしょうか?
弁護士
弁護士
ここまで紹介した後遺障害慰謝料は一部に過ぎません。これから他の損害金を紹介します。
 

6章:慰謝料以外にも請求可能な損害金一覧

交通事故にあって意識不明後に後遺障害が残った場合、状況に応じて以下の損害金をもらうことができます。

よく言われる「慰謝料」とは、この損害金の中の一部に過ぎないのです。

背骨後遺症の損害金

それぞれ簡単に説明すると以下の通りです。

  • 入通院慰謝料…入院・通院の期間や日数に応じて支払われる慰謝料
    入院10か月、通院10か月の場合、335万円が支払われる。
  • 後遺障害慰謝料…後遺障害等級に応じて支払われる慰謝料。
    後遺障害等級1級の場合、2800万円が支払われる。
  • 死亡慰謝料…被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料。
  • 治療費・・・治療にかかったお金で、保険会社から病院に直接支払われることがほとんど(実費)。
  • 交通費・・・治療のための通院にかかった交通費(実費)。
  • 入院雑費・・・入院の際にかかった生活必需品などの雑費。
    入院1日あたり1500円が支払われる。
  • 付添看護費・・・被害者の症状が重い、被害者が乳幼児などの場合で、看護が必要な場合に支払われる。
    プロに依頼した場合、実際にかかった金額(実費)が支払われる
  • 介護費・・・怪我により介護が必要になった場合に支払われる。
    一時的な介護をプロに依頼した場合、実際にかかった金額(実費)が支払われる。
  • 装具・器具費・・・事故により歩行が困難になるなど、装具・器具が必要になった場合に支払われる。
    基本的に、実際にかかった金額(実費)が支払われる。
  • 家屋改造費、自動車改造費・・・車椅子生活になるなどで、家や自動車の改造が必要になった場合に支払われる。
    後遺障害で改造が必要な場合、基本的に、実際にかかった金額(実費)が支払われる。
  • 葬儀費用・・・事故によって亡くなった場合に支払われる。
  • 休業損害・・・事故によって仕事を休まざるを得ず、損害が発生した分について支払われる。
    会社員で、事故前3カ月の給与(額面)が合計90万円、出勤日数66日、休業日数が22日×3か月=66日だった場合、90万円
  • 逸失利益・・・後遺障害が残り、将来得られるはずの収入が減少してしまう場合に支払われる。
    事故前1年間の給与が400万円、後遺障害等級が1級、症状固定時30歳の場合、約8866万8000円

このように、特に「逸失利益」という項目で高額の損害金が支払われる場合がありますので、しっかり計算して請求することが大事です。

※損害金の各項目の計算方法について、詳しくは以下の記事で解説しています。

【弁護士がわかりやすく解説】交通事故示談金の相場と各項目の計算方法

男性
男性
なるほど、しっかり計算して請求しなければならないのですね。
 
弁護士
弁護士
そうなんです。そして、適正な金額を請求するためには弁護士に依頼することが大事です。最後に、弁護士に依頼すべき理由を解説します。
 

7章:交通事故で意識不明になった場合に弁護士に依頼すべき理由

交通事故で被害者が意識不明になった場合、弁護士に依頼すべきなのは下記の理由からです。

  • 損害金が高額になる
  • 成年後見人になってくれる
  • 手間、時間、精神的負担を最小限にできる

順番に説明します。

7-1:損害金が高額になる

交通事故で適正な金額の示談金を支払ってもらうためには、弁護士に依頼することが大事です。

弁護士に依頼すると、

  • 示談金の算出基準が「弁護士基準」という最も高額になる基準になる
  • 適正な後遺障害等級や過失割合になる
  • 示談交渉において、保険会社から不利なことを言われても覆せる

といったことが可能になるからです。

3章でも触れた通り、交通事故の示談交渉において、加害者の保険会社は、

「本来もらえるはずの金額より、ずっと少ない示談金を提示してくる」

「交渉に応じてくれない」

といった傾向があります。

そのため、弁護士に依頼して示談交渉や手続きをすべて任せてしまうことが大事なのです。

7-2:成年後見人になってくれる

4章でも説明したように、弁護士は成年後見人に選任することができます。

成年後見人になってもらえれば、

  • 成年後見人の選任に必要な手続きを一任できる
  • 示談交渉を代理で行ってもらえる
  • 被害者と家族が遠方に住んでいる場合も対応を依頼できる
  • 被害者の資産に関する相続問題等を回避できる

といったメリットがあります。

したがって、被害者が意識不明になった場合はできるだけ早い段階で弁護士に相談しておくことをおすすめします。

7-3:手間、時間、精神的負担を最小限にできる

家族が意識不明になると、精神的な辛さ、悲しさやこれからの生活への不安等から、示談金請求の手続きや交渉を自分たちだけで行うのは大変です。

弁護士に依頼すれば、示談金請求に関する手続きのほとんどを丸投げできるため、あなたの手間や時間、精神的負担は最小限にできます。

さらに、弁護士に依頼した場合の費用も、弁護士費用特約が利用できる場合はあなたの負担が0円になる場合があります。

弁護士費用について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

【状況別】慰謝料請求された場合の弁護士費用相場と費用を抑える方法

また、より高額請求するためには、交通事故に強い弁護士に依頼することが大事です。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説

まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

■交通事故で意識不明になった場合の経過

  • 2~3時間以内に目を覚ます
  • 6時間以内に刺激に反応する
  • 健忘の継続
  • 後遺障害が残る

■家族が意識不明の場合にやるべきこと

  • 専門医を見つけて治療を受けさせる
  • 治療の記録を残しておく
  • 刑事裁判に参加する
  • 3カ月回復しなければ成年後見人を選任する
  • 弁護士に依頼し示談交渉してもらう

■交通事故の後遺障害として多いもの

  • 植物状態(遷延性意識障害)
  • 高次脳機能障害
  • 麻痺
  • てんかん

■弁護士に依頼すべき理由

  • 損害金が高額になる
  • 成年後見人になってくれる
  • 手間、時間、精神的負担を最小限にできる

この記事の内容を参考に、すぐに行動を開始していきましょう。

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