- 更新日:2024.08.28
- #交通事故示談金計算
【弁護士がわかりやすく解説】交通事故示談金の相場と各項目の計算方法
この記事を読んで理解できること
- 交通事故にあった場合にもらえる示談金の内訳と計算するための条件
- 示談金が大きく変わる慰謝料の3つの基準と計算方法
- その他の示談金の計算方法
- 示談金は弁護士に依頼すれば増額できる可能性が高い
あなたは、
「交通事故の示談金がいくらになるか計算したい」
「交通事故の示談金の計算方法が知りたい」
「提示されている示談金の金額が妥当かどうか確認したい」
などの悩み、疑問をお持ちではありませんか?
弁護士として私が最初にお伝えしたいのは、加害者(の保険会社)から提示される示談金の金額は、本来もらえる金額より大幅に少ない可能性があるということです。
示談金には3つの基準があり、保険会社が提示する金額をそのまま受け入れてしまうと金銭面で大損することもあります。
※後遺障害慰謝料の示談金の基準の例(14級の場合)
そのため、交通事故の示談金を加害者(の保険会社)から提示された場合、正しい計算方法が適用されているかを確認することが大事です。
そこでこの記事では、示談金の内訳とそれぞれの計算方法と基準について詳しく解説し、さらに弁護士に依頼して示談金を増額する方法についても解説します。
最後までしっかり読んで、妥当な示談金がもらえるように行動をはじめましょう。
目次
1章:交通事故にあった場合にもらえる示談金の内訳と計算するための条件
それでは、交通事故の示談金の計算方法について説明する前に、まずは、
- 示談金を計算するための条件
- 示談金に含まれるもの
を確認しましょう。
計算方法から知りたい場合は、2章からお読みください。
1-1:示談金を計算するための条件
交通事故の示談金を計算するためには、治療が完了、もしくは症状固定し「後遺障害等級」が認定されている必要があります。
なぜなら、交通事故の示談金は、治療が完了した時点での「治療にかかった期間」「治療にかかったお金」「残ってしまった後遺障害」などを基準に計算されるからです。
つまり、示談金を計算できるのは、治療が完了してからなのです。
そのため、あなたがまだ「治療中」の場合は、まずは治療を完了してからでないと、示談金を計算できないことに注意してください。
※ただし、後に解説する「治療費」など保険会社が実費で負担してくれるものは、治療中からでも計算可能です。
1-2:示談金に含まれるもの
示談金には、以下のものが含まれます。
「示談金」と「慰謝料」を同じものと思われている方もいらっしゃいますが、被害者が加害者からもらえるお金をまとめて「示談金」と言い、慰謝料はもらえるお金の一つに過ぎません。
そして、それぞれ、
- 財産に対する損害(財産的損害)
- 精神的苦痛という損害(精神的損害)
という2つに分けられます。
それでは、簡単に解説します。
それより先に示談金の計算方法を知りたいという場合は、2章からお読みください。
■財産に対する損害(財産的損害)
交通事故の被害にあった場合、怪我の治療や仕事を休んだ間の収入減など、様々な金銭面での損害が発生します。
これをまとめて「財産的損害」と言います。
交通事故の被害者は、財産的損害について加害者(の保険会社)から補償を受けることができます。
具体的には、下記のような項目について示談金として受けとることができます。
【財産的損害の詳細】
- 治療費・・・治療にかかったお金で、保険会社から病院に直接支払われることがほとんど。
- 交通費・・・治療のための通院にかかった交通費。
- 入院雑費・・・入院の際にかかった生活必需品などの雑費。
- 付添看護費・・・被害者の症状が重い、被害者が乳幼児などの場合で、看護が必要な場合に支払われる。
- 介護費・・・怪我により介護が必要になった場合に支払われる。
- 装具・器具費・・・事故により歩行が困難になるなど、装具・器具が必要になった場合に支払われる。
- 家屋改造費、自動車改造費・・・車椅子生活になるなどで、家や自動車の改造が必要になった場合に支払われる。
- 葬儀費用・・・事故によって亡くなった場合に支払われる。
- 休業損害・・・事故によって仕事を休まざるを得ず、損害が発生した分について支払われる。
- 逸失利益・・・後遺障害が残り、将来得られるはずの収入が減少してしまう場合に支払われる。
交通事故の示談で、あなたが必ず上記の全部の項目について示談金をもらえるというわけではありません。
状況に応じてもらえる財産的損害の項目は異なります。
■精神的苦痛という損害(精神的損害)
交通事故にあうと、入通院の辛さ、大変さや後遺障害が残ったことによるその後の生活のストレスなど、直接的な金銭面以外にも損害が発生することがあります。
その精神的苦痛という損害のことを「精神的損害」と言い、必要に応じて下記のように慰謝料が支払われます。
- 入通院慰謝料・・・入院、通院した日数に応じて支払われる。
- 後遺障害慰謝料・・・後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害の度合いに応じて支払われる。
示談金の各項目の中でも、慰謝料の金額は高額になることが多いです。
そのため、慰謝料が妥当な金額で計算されているかどうかは、特に確認が必要なのです。
2章:示談金が大きく変わる慰謝料の3つの基準と計算方法
示談金の中でももっとも高額になることが多いのが慰謝料です。
しかし、加害者側の保険会社が提示する慰謝料の額は、本来もらえる金額より低いことがほとんどです。
なぜなら、慰謝料は3つの基準を元に計算されるもので、どの基準が適用されるかによって大幅に金額が変わってしまうからです。
そこで、当記事の2章では、
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
のそれぞれの基準と計算方法について解説します。
なお、「まずは症状ごとの慰謝料相場の一覧を知りたい」という方はこちらの記事もご覧になってみてください。
【症状別一覧つき】交通事故の慰謝料相場と金額アップのポイント
2-1:入通院慰謝料の基準と計算方法
それでは、入通院慰謝料の3つの基準と慰謝料の計算方法を解説していきます。
そもそも入通院慰謝料とは、治療のために病院に入院・通院する場合にかかる、あなたの精神的負担に対して支払われるものです。
入通院慰謝料には、以下の3つの基準があります。
- 自賠責基準・・・法律で定められた最低限の補償
- 任意保険基準・・・自動車の保険会社が独自に定めている基準
- 裁判基準・・・裁判例を参考にした基準
大事なのは、自賠責基準が一番低く、裁判基準が一番高額になり、任意保険基準は、自賠責基準と変わらないか、少し高いくらいで、裁判基準よりは低い金額になる、ということです。
一般的に、自分で加害者(の保険会社)と示談交渉する場合は、自賠責基準か任意保険基準になることが多いですが、弁護士に依頼すればほぼ確実に裁判基準が適用されます。
それぞれの基準の示談金の計算方法について、詳しく解説します。
■自賠責基準の計算方法
自賠責基準は、
- 加害者が任意保険に入っていない
- 加害者が任意保険を使わない
- 被害者に一定の過失がある場合
などに適用される基準です。
自賠責基準の場合、
- 実通院日数(病院に通った日数)×2
- 治療期間(病院に通った期間)
のどちらか短い方の日数に「4200円」をかけて計算します。
【自賠責基準の計算方法の具体例】
①病院に通った日数・・・60日
②病院に通った期間・・・6ヶ月(180日)
上記の条件の場合、①60日×2=120日の方が②の180日より少ない日数になるため、120日に4200円をかけた金額が慰謝料の金額になります。
120日×4200円=50万4000円
■任意保険基準の計算方法
任意保険基準は、被害者であるあなたが、自分だけで示談しようとする場合に適用される基準です。
各保険会社が独自に設定している基準ですので、具体的な金額は公開されておらず、正確に計算することができません。
一般的に言って、裁判基準より自賠責基準に近い金額になるとお考えください。
■裁判基準の計算方法
裁判基準とは、弁護士に示談交渉を依頼した場合に適用される基準です。
自分だけで示談しようとしても、保険会社からは相手にしてもらえず、裁判基準を適用してもらえる可能性は少ないです。
裁判基準は、過去の裁判所の判例から、以下のように定められています。
【弁護士基準の入通院慰謝料(通常のもの)】
※単位は万円
上記の場合、入院が0日、通院が6ヶ月の場合は「116万円」になります。
先ほどの例では、自賠責基準の入通院慰謝料は6ヶ月で120日通院した場合で「50万4000円」でしたので、金額が大きく異なることが分かると思います。
※「むちうち症で他覚症状(他人から見て負傷の有無が分かる症状)がない場合等」は、下記のように、裁判基準の慰謝料の金額が少し少なくなります。
他覚症状がない場合とは、他人から見て負傷しているのかどうか確認できない、という状態のことです。
【弁護士基準の入通院慰謝料(むちうち症で他覚症状(他人から見て負傷の有無が分かる症状)がない場合等)】
2-2:後遺障害慰謝料の基準と計算方法
次に、後遺障害慰謝料の基準と計算方法について解説します。
後遺障害慰謝料とは、交通事故後に治療を受けても、痛みやしびれ、障害が残り、それ以上の改善が見込めないと判断された場合に支払われるものです。
後遺障害が残れば、それ以降の生活で精神的な苦痛を受けることがありますよね。その苦痛に対して支払われるのが後遺障害慰謝料なのです。
後遺障害慰謝料にも、以下の3つの基準があります。
- 自賠責基準・・・法律で定められた最低限の補償
- 任意保険基準・・・自動車の保険会社が独自に定めている基準
- 裁判基準・・・裁判例を参考にした基準
後遺障害慰謝料の場合も、入通院慰謝料と同じく、自賠責基準が最も低く、裁判基準が最も高額です。そして、保険会社が提示してくる任意保険基準の慰謝料は、自賠責基準より高く、裁判基準より低いのが一般的です。
それでは、それぞれの計算方法を説明します。
■自賠責基準の計算方法
後遺障害慰謝料の自賠責基準では、以下の通り「後遺障害等級(※)」によって、金額が決められています。
【後遺障害慰謝料(介護が必要な場合)】
【後遺障害慰謝料(介護が必要でない場合)】
※後遺障害等級とは、適切な手続きを経て認定される、後遺障害の度合いを示すものです。等級が高いほど慰謝料の金額も高くなります。
たとえば、むち打ちの場合は「14級9号」であり、自賠責基準における後遺障害慰謝料の金額は、32万円であると計算できます。
■任意保険基準の計算方法
次に、任意保険基準での後遺障害慰謝料の計算方法ですが、任意保険基準は、保険会社が各社独自に定めている基準で、公開されていません。
そのため、正確に計算することができません。
一般的に言って、裁判基準より自賠責基準に近い金額になるとお考えください。
■裁判基準の計算方法
次に、最も高額になる裁判基準の計算方法は、以下の表を基準に計算します。
後遺障害慰謝料は、裁判基準では、あなたが認定された後遺障害等級に応じて、上記の表の通りに計算できます。
たとえば、むちうちの場合は後遺障害等級が14級9号になりますが、裁判基準での後遺障害慰謝料は、110万円になることが分かります。自賠責基準では32万円でしたから、3倍以上の金額になるのです。
なお、交通事故の慰謝料について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧になってみてください。
【弁護士が解説】交通事故の慰謝料を1円でも多くもらうための全知識
最大460万円?むちうちの交通事故慰謝料の相場と高額請求のポイント
【弁護士直伝】交通事故の死亡慰謝料の相場と円滑に高額請求する方法
3章:その他の示談金の計算方法
次に、財産に対する損害(財産的損害)の中でも主要な項目について、計算方法を解説します。
ここでは、以下のものについて計算方法をお伝えします。
- 治療費
- 交通費
- 入院雑費
- 付添看護費
- 介護費
- 装具・器具費
- 家屋改造費
- 葬儀費用
- 休業損害
- 逸失利益
順番に解説します。
3-1:治療費の計算方法
交通事故にあった時に、一番に必要になるお金が治療費だと思います。
そこで、治療費がいくらもらえるのか気になる場合もあるかもしれません。
しかし、実は治療費の金額を計算する必要は基本的にありません。
なぜなら、治療費は原則的に「実費(実際にかかった金額)で計算され、しかも保険会社が直接病院に支払うため、あなたが請求する必要はないからです。
ただし、治療費の全額を、保険会社が必ず負担してくれるというわけではありません。
以下の場合は、治療費の一部をあなたが負担しなければならないことが多いです。
【認められにくい治療費】
- 最先端の医療技術(保険外治療など)
→過剰診療と判断され、保険会社が治療費を支払ってくれないことがある - 民間療法(マッサージ、鍼、カイロプラクティックなど)
→医師が指示したもののみしか認められないのが一般的 - 入院時の個室利用
→医師が個室の利用を指示した場合のみ
3-2:交通費の計算方法
何週間、何ヶ月と通院していると、交通費もかなりの負担になります。
交通費は、
- 公共交通機関を使っている
- 経済的合理性のある経路を利用している(無駄に遠回りしたりしていない)
という場合は、原則として全額が認められます。
したがって、決まった計算方法はありません。
ただし、自家用車を利用した場合は、以下の計算式で計算できます。
交通費=利用した距離(㎞)×15円
【具体例】
自家用車を利用し、往復10㎞の通院を30日行った場合
10㎞×30日×15円=4500円
3-3:入院雑費の計算方法
入院雑費とは、入院していたときにかかった寝具、衣類、消耗品費などの出費のことです。
入院雑費の計算方法は、以下の通りです。
仮に、実際にかかった入院雑費が1日あたり1500円以下だったとしても、裁判基準で請求すれば1日あたり1500円の金額が認められます。
しかし、保険会社が提示する入院雑費は、自賠責基準の以下の計算方法で計算されることがほとんどです。
従って、保険会社が提示する入院雑費の金額は、本来もらえるはずの金額より少なくなることが多いのです。
【具体例】
30日入院していた場合の入院雑費の金額
裁判基準の場合
30日×1500円=4万5000円
自賠責基準の場合
30日×1100円=3万3000円
3-4:付添看護費の計算方法
付添看護費とは、被害者が入通院する場合に、付添人が必要な場合の、付添人が負担する費用のことです。
付添看護費は賠償の対象になり、以下の通り計算できます。
①付添人がプロの場合
基本的に、実費(実際に支払った金額)の全額が認められます。
②家族などが付添人の場合
入院なら日額6500円、通院なら日額3300円で計算します。
ただし、付添看護費が認められるかどうかは、医師の指示や後遺症の程度、被害者の年齢などから判断されるため、絶対に認められるというわけではありません。
認められるか心配という場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
【具体例】
30日間の入院時に、家族に付き添って看護してもらった場合
6500円×30日=19万5000円
3-5:介護費の計算方法
介護費とは、生活に支障があり、介護が必要なレベルでの後遺症が残ってしまった場合に支払われるものです。
介護費は、
- 一時的な介護の場合
- 一生介護が必要な場合
で、計算方法が異なります。
①一時的な介護の場合
一時的な介護の場合は、以下の通り計算することができます。
- プロの付添人が付く場合
→基本的に、実費相当額が認められる - 家族などが付き添う場合
→「介護費=1日8000円×介護日数分」として計算される
②一生介護が必要な場合
重度の後遺症で、一生介護が必要な場合は、以下の通り計算して請求することができます。
「1年間に必要な介護費」は、症状によって異なりますが、基本的には日額8000円が基準になっていますので、8000円×365日で計算することができます。
「平均余命」は、厚生労働省が発表しているものがありますので、以下のページを参照してください。
「ライプニッツ係数」についても、年齢ごとに決まっています。
※計算が難しいため、詳しくは弁護士にご相談ください。
【具体例】
交通事故の被害者が35歳男性の場合
- 1年間の介護費=8000円×365日=292万円
- 平均余命・・・約46年
- 平均余命に対応するライプニッツ係数・・・17.880
292万円×17.880=5220万9600円
ただし、これは家族が付添人になった場合の計算例であり、実際にはプロの付添人が必要な場合もあり、さらに介護の雑費も含めて計算できることもあります。
したがって、弁護士に相談して計算し直すことで、さらに高額になることもあります。
3-6:装具・器具費の計算方法
後遺症の状況によっては、義肢、松葉杖、歯科補てつ、義眼、メガネ、補聴器などの装具・器具が必要になることがあります。
この場合は、基本的に実費(実際にかかった金額)の全額が示談金として認められます。
そのため、装具・器具費を計算するためには、実際にかかった費用を合計する必要があります。
ただし、装飾的な高級品などは認められず、差額が自己負担になることがあるので注意してください。
3-7:家屋改造費の計算方法
後遺症の状況によっては、
- 車椅子でも生活できるように家屋を改造する
- 階段、廊下、風呂などに手すりをつける
- トイレの改造
- 車椅子用に自動車を改造する
などのように、自宅や自動車を改造する必要があります。
家屋や自動車の改造費や、後遺症の程度から必要性があれば、実費に相当する金額が認められます。
ただし、家屋改造費も全額が必ず認められるということではなく、様々な要因から必要性が判断されますので、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。
3-8:葬儀費用の計算方法
交通事故で被害者が亡くなってしまった場合、葬儀費用についても示談金として請求することができます。
葬儀費用には、
- 葬儀や四十九日などの法要、供養のための費用
- 仏壇、仏具の購入費
- 墓碑の建立費用
など、葬儀だけでなく関連して行われる儀式や必要となるものも含めて請求できます。
葬儀費用は、以下の基準から賠償額も決められます。
- 自賠責保険基準・・・原則60万円、必要かつ妥当であれば100万円が上限
- 任意保険基準・・・自賠責保険基準と同じくらいであるのが一般的
- 裁判基準・・・原則150万円まで(実際の支出が150万円を下回る場合は、実際の支出額が認められる)
3-9:休業損害の計算方法
休業損害とは、交通事故の被害者が事故のために働けず、失った収入に対する賠償のことです。交通事故で休んだために会社から支払われなかった給与やボーナスなどが対象です。
また、会社員じゃなくても自営業や専業主婦、アルバイトの場合でも、条件を満たせば休業損害が認められます。
※ただし、株式の配当、家賃収入、会社役員の利益配分などは労働の対価ではないため、休業損害の対象に入りません。
休業損害は、保険会社と被害者の間でもめることが非常に多いので、注意してください。
休業損害は、以下の計算式で計算されます。
注意すべき点は、あなたの状況によって「日額基礎収入」や「休業日数」の計算方法が異なることです。
これから状況別の休業損害の計算方法を紹介します。
3-9-1:会社員(給与収入)の場合
会社員の場合、日額基礎収入は、以下のように計算します。
※3ヶ月で年間収入の平均を計算できない場合は、事故前1年間の収入を365で割ります。
給与の合計額には、税金などが引かれる前の「額面」で計算しますが、ボーナスは含みません。
また「休業日数」には、交通事故の治療のために有給休暇を使った場合、その有給休暇も含めて計算できます。
給与の金額は、会社から「休業損害証明書」と「源泉徴収票」を作成してもらい、それを保険会社に提出する必要があります。
■ボーナスが減った場合は、ボーナス分も請求できる
交通事故で会社を休んだ結果、ボーナスが下がってしまったという場合、その分も休業損害として請求することができます。
ボーナス分については、賞与がどれだけ下がったかを証明できる「賞与減額証明書」を会社に作成してもらい、それを保険会社に提出する必要があります。
3-9-2:個人事業主(事業収入)の場合
個人事業主の休業損害における日額基礎収入は、以下のように計算します。
※固定経費とは、事務所の賃料、光熱費、従業員給与、借入の利息、減価償却費などです。
個人事業主の場合、前年分の収入、所得について確定申告で把握しているはずですが、注意すべきなのは「課税所得」ではなく、「総収入から固定経費を引いた金額」を元に計算するという点です。
なぜなら、休業中もやむを得ず発生する固定費(家賃、給与など)については、賠償の対象になるからです。
したがって、個人事業主の場合は、総収入や固定費の証拠として「確定申告書」や「課税証明書」などを保険会社に提出する必要があります。
3-9-3:経営者(役員報酬)の場合
経営者を含む会社役員の場合、報酬の中に「労働の対価」である部分と「会社の利益配分」の部分があると考えられます。
※どの部分が労働の対価で、どの部分が利益配分になるのかは、事業規模や事業の形態などによって総合的に判断されます。
休業損害として請求できるのは「労働の対価」と認められる部分のみです。
役員報酬における労働の対価として認められる部分の「日額基礎収入」は、以下のように計算されます。
会社役員の場合は、保険会社が役員報酬の請求を認めないことも少なくないので、弁護士に相談することをおすすめします。
3-9-4:専業主婦の場合
専業主婦の場合「働いてお金をもらっているわけではないから、休業損害も発生しない」と思われがちですが、家事も労働ですので、実は休業損害をもらうことができます。
専業主婦の場合の「日額基礎収入」は、以下のように計算します。
※「賃金センサス」とは厚生労働省の統計のことで、以下のものです。
3-9-5:アルバイトの場合
アルバイトの場合は、基本的に会社員(給与所得者)と同じように、以下のように「日額基礎収入」を計算します。
※3ヶ月で年間収入の平均を計算できない場合は、事故前1年間の収入を365で割ります。
具体的に計算すると、以下のようになります。
【休業損害の計算の具体例】
以下の条件の場合の休業損害を計算します。
- 事故前3ヶ月の給与→60万円
- 事故前3ヶ月の出勤日数→60日
- 休業日数→90日
(60万円÷60日)×90日=90万円(休業損害)
休業損害として請求できるのは90万円です。
3-10:逸失利益の計算方法
交通事故によって後遺障害が残ると、被害者は「将来得ることができたであろう収入」を一部失ってしまいます。
また、被害者が死亡した場合も、将来得られたであろう収入が失われます。
この「将来得ることができたであろう収入」のことを、逸失利益と言います。
3-9で解説した「休業損害」は交通事故後の治療中に得られたはずの収入に対する賠償ですが、「逸失利益」は将来得られたはずの収入に対する損害であるという点に違いがあります。
一見難しく見えるかもしれませんが、それぞれの言葉の意味が分かれば簡単に計算できます。
■基礎収入の計算
基礎収入は、あなたの状況によって計算方法が異なります。
基本的に「休業損害」の基礎収入の計算方法と同じだと考えてください。
【会社員(給与所得者)】
会社員の場合は、事故前1年間の実際の収入額を、基礎収入として計算します。
【個人事業主(事業所得)】
個人事業主の場合は、前年の確定申告で申告した金額を実際の収入として計算します。
【会社役員(役員報酬)】
会社役員の場合は「労働の対価」として認められる部分のみが、基礎収入として計算できます。会社の利益配当分とみなされる部分は、基礎収入に入れられない傾向にあります。
【学生】
学生の場合は「賃金センサス」における全年齢平均賃金を基礎収入として計算することが多いですが、その場合も、実際に働くことができる年までの分は控除されます。
■労働能力喪失率とは
労働能力喪失率とは、後遺障害等級に応じて決められたものです。
軽い後遺障害の場合は、下記の表の通りに決められることが多く、重い障害の場合は、下記の表を元にしつつ、後遺障害の程度や年齢、仕事の内容などの要素から総合的に決められることがあります。
【介護が必要な後遺障害の場合】
【介護が不要な後遺障害の場合】
■労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
まず「労働能力喪失期間」とは、「症状固定(治療してもこれ以上改善されないという診断)」の日から、67歳までの期間か、平均余命までの年数の半分のいずれか長い方のことです。
つまり、「67」から、あなたが症状固定になった時の年齢を引くことで、労働能力喪失期間を算出できます。
40歳で症状固定になった場合は、
67歳-40歳=27年
と計算でき、労働能力喪失期間は27年になります。
そして、上記の年数に対応した「ライプニッツ係数」を下記の表から探します。
40歳(労働能力喪失期間は27年)なら、ライプニッツ係数は「14.643」であることが分かります。
【逸失利益計算の具体例】
それでは、以下の条件で実際に計算してみます。
- 会社員(年収400万円)→基礎収入400万円
- 後遺障害等級10級→労働能力喪失率27/100
- 症状固定時40歳→ライプニッツ係数14.643
400万円×0.27×14.643=1581万4440円
逸失利益は1581万4440円請求できる。
4章:示談金は弁護士に依頼すれば増額できる可能性が高い
交通事故の被害者になってしまった場合、示談金の計算や請求などの手続きは、弁護士に任せることをおすすめします。
なぜなら、弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあるからです。
【弁護士に依頼するメリット】
- 示談金が増額する可能性がある
- 手間、時間、心理的ストレスが最小限になる
- トラブルを避けられる
当記事の4章ではこれらについて、簡単に解説します。
なお、交通事故の弁護士選びについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説
さらに、弁護士費用の相場や、弁護士費用特約について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
【事例別】交通事故の弁護士費用を最大限安くおさえる方法を徹底解説
4-1:示談金が増額する可能性がある
交通事故の示談金の計算や請求を弁護士に依頼すると、示談金が増額する可能性が高いです。
なぜなら、この記事の中でも繰り返し解説しましたが、保険会社が提示する示談金は「任意保険基準」という、本来もらえる金額より少ない基準になる傾向があるからです。
最大限の示談金をもらうためには「裁判基準」での請求が必要なのです。
弁護士に依頼すれば、ほぼ自動的に示談金の各項目が裁判基準になるため、示談金の高額請求が可能になるのです。
4-2:手間、時間、心理的ストレスが最小限になる
示談金の計算や請求を弁護士に依頼すれば、手間、時間、心理的ストレスが最小限になります。
交通事故の被害にあい、治療をしながら保険会社との交渉や手続きを行うのは大変なことです。
適正な金額の示談金をもらうためには、この記事で紹介したような専門的な知識を勉強する必要もあり、手間、時間、ストレスの負担が大きいのです。
しかし、弁護士に依頼すれば、治療中からでのどんな対応をすれば良いのかアドバイスをもらえますし、示談金の計算から交渉まで、ほとんどの作業を任せられます。
あなたは、示談金の手続きから解放され、治療に専念することができるのです。
4-3:トラブルを避けられる
交通事故の被害者に多いのが、
- 治療中なのに、治療費の支払いを保険会社に打ち切られた
- 保険会社から「このまま治療を続けたら慰謝料が出ない」と言われた
- 事故で受けた損害なのに、事故と因果関係がないと言われた
- 過失割合や後遺障害等級に納得できない
などのトラブルが発生することです。
これらのトラブルは、主に保険会社との間で生まれるものです。
交通事故対応の実績がある弁護士なら、保険会社側の考え、手口も熟知しているため、こうしたトラブルの対応も可能です。
弁護士法人新橋第一法律事務所では、交通事故被害者の無料相談を実施していますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
示談金の内訳は、以下の通りです。
示談金のそれぞれには、以下の3つの基準があり、裁判基準が最も高額になります。
- 自賠責基準・・・法律で定められた最低限の補償
- 任意保険基準・・・自動車の保険会社が独自に定めている基準
- 裁判基準・・・裁判例を参考にした基準
示談金の計算、請求を弁護士に依頼するメリットは、以下の通りです。
【弁護士に依頼するメリット】
- 示談金が増額する可能性がある
- 手間、時間、心理的ストレスが最小限になる
- トラブルを避けられる
まずは大体の示談金の金額を計算し、請求のための行動をはじめてください。
【症状別一覧つき】交通事故の慰謝料相場と金額アップのポイント
【弁護士が解説】交通事故の慰謝料を1円でも多くもらうための全知識
最大460万円?むちうちの交通事故慰謝料の相場と高額請求のポイント
【弁護士直伝】交通事故の死亡慰謝料の相場と円滑に高額請求する方法