- 2024.03.25
- 2025.02.10
- #交通事故後遺障害
【時系列】交通事故で後遺障害が残った時にやるべきこと


この記事を読んで理解できること
- 交通事故の後遺障害とは
- 後遺障害等が認定されると、等級に応じた示談金がもらえる
- 後遺障害等級申請の流れ
- 後遺障害の示談金相場
- 交通事故で後遺障害が残ったらやるべきこと
- 交通事故被害に遭ったら弁護士に相談しよう
あなたは、
「交通事故の後遺障害ってどういうもの?」
「後遺障害ってどうやって認定してもらうの?」
「妥当な後遺障害等級を認定してもらいたい!」
などの悩み、疑問をお持ちではありませんか?
交通事故で大きな怪我をすると、後遺障害が残りその後の生活が不安になりますよね。
でも、安心してください。
後遺障害等級が認定されれば、等級に応じた示談金が支払われ、お金の心配は緩和されるからです。
たとえば、むちうちで後遺障害等級が認定されると場合によっては、290万円の後遺障害慰謝料がもらえますが、認定されなければ後遺障害慰謝料が0円になってしまうのです。
正しい後遺障害等級が認定されないと、本来もらえる示談金より少なくなってしまうこともあるため、これから紹介するポイントを知っておくことが大事です。
そこでこの記事では、まずは後遺障害や等級に関する基礎的な知識を解説し、それから、今後やるべきことや少しでも多くの示談金をもらうためのポイントを説明します。
さらに、後遺障害が残った場合に弁護士に依頼することがおすすめな理由についても紹介します。
知りたいところから読んで、落ち着いて行動をはじめてください。
目次
1章:交通事故の後遺障害とは
それではさっそく、後遺障害とはどのようなものか、基本的なことから解説していきます。
■後遺障害とは、等級認定の対象になる障害のこと
後遺障害とは、「後遺障害等級認定」の対象になる障害のことです。
後遺障害等級とは、「痛み」「しびれ」「運動障害」などの障害が残った場合に、その後遺障害の度合いに応じて認定されるものです。
認定するのは「損害保険料率算出機構」という機関で、医療機関が作成してくれる「後遺障害診断書」やレントゲン写真、CT、MRIなどの資料を元に審査されます。
後遺障害等級には1級から14級まであり、最も重い後遺障害等級が1級、最も軽いものが14級です。
この認定の対象になるのが「後遺障害」であり、一般的に使われる「後遺症」と同じ意味ではないということに注意してください。
■後遺障害の具体例
具体的には、以下のものなどが後遺障害等級の認定の対象になっています。
【後遺障害等級に認定される症状の例】
- 脳や神経系統に大きな障害が残り、介護が必要だったり仕事に影響する場合(むちうちによるものも含む)
- 失明や視力の低下、眼やまぶたの運動機能の低下など
- 聴力の低下、耳の欠損
- 鼻の欠損による鼻の機能の低下
- そしゃくや言語機能の低下、歯を失った場合
- 脊柱や鎖骨、肋骨、胸骨、肩甲骨、骨盤などの変形、脊柱の運動障害など
- 腕や足の一部の欠損や運動障害、変形、醜い怪我の跡
- 手指や足指の欠損、運動障害
- 臓器の機能に障害が残った
- 大きな傷跡や欠損により見た目に醜状が残った場合
※参照元:国土交通省「後遺障害等級表」
2章:後遺障害等が認定されると、等級に応じた示談金がもらえる
後遺障害等級の認定について重要なことは、後遺障害等級に応じて示談金が決まるということです。
後遺障害を負うと、様々な面で生活に影響が出ますよね。
場合によっては、働けなくなったり、できる仕事が限定されたり、介護が必要になることもあります。
そのため、認定された後遺障害等級に応じて、示談金が請求できるのです。
■後遺障害等級が認定されると示談金が増える
交通事故の被害にあった場合、以下の示談金を請求することができます。
上記の示談金の中には、実費(実際にかかった金額)を保険会社が支払ってくれるものもありますが、「逸失利益」「後遺障害慰謝料」については、後遺障害の等級に応じて支払われるものです。
そのため、後遺障害等級が認定された場合は、請求できる示談金額が増えるのです。
■後遺障害等級が高いほど請求できる示談金が増額する
後遺障害等級が認定されると、等級に応じて示談金の金額が決まります。
後遺障害等級には1級から14級までがあり、自賠責保険では、別表1の1級に認定された場合、最大で4000万円、最も軽い14級の場合、75万円の保険金額が支払われると決められています。
大事なのは、より高い等級が認められるほど、高い示談金をもらうことができるということです。
そのため、あなたが、本来認定されるはずの等級よりも低い等級しか認められなかった場合、大幅に低い示談金しかもらえないのです。
たとえば、あなたが本来認められるはずの等級が「10級」なら、自賠責基準でも「461万円」の保険金をもらうことができます。
しかし、後遺障害等級が「11級」しか認められなかった場合、もらえる保険金は「331万円」まで減ってしまいます。
つまり、妥当な後遺障害等級をもらえないことで、130万円も保険金が減ってしまうのです。
したがって、後遺障害等級を認定してもらうこと、それも「妥当な等級を認定してもらう」ということがとても大事なのです。
※後遺障害等級と示談金について、詳しくは以下の記事で解説しています。
【部位別・後遺障害等級表】交通事故で損しないための方法を弁護士が解説
3章:後遺障害等級申請の流れ
交通事故の被害にあって怪我をした場合、示談金請求間での流れは以下の通りです。
図を見ると分かるように、後遺障害等級を申請するのは「症状固定」という診断の後になります。
症状固定とは「もうこれ以上治療をしても症状が改善しませんよ」というタイミングのことです。
医師が症状固定と診断したら、医師が作成する「後遺障害診断書」やレントゲン写真、CT、MRIなどの資料を審査機関に提出し、後遺障害等級の認定の可否が通知されます。
重要なのは、あなたがまだ治療中の場合、後遺障害等級を申請することはできないということです。
場合によっては、保険会社から「症状固定にしてください」「示談のための話し合いをはじめたいです」と連絡が来ることもあると思いますが、こんな連絡が来ても鵜呑みにしてはいけません。
なぜなら、症状固定になるとそれ以降の治療費を保険会社が支払ってくれなくなるからです。
症状固定にするかどうか、医師と相談して決めてください。
4章:後遺障害の示談金相場
交通事故で後遺障害を負った場合、示談金として様々なものをもらうことができますが、特に高額になるのが「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」です。
症状や状況によって金額は異なりますが、相場は以下の通りです。
示談金の相場について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【交通事故の示談金相場】1円でも多く請求する方法を弁護士が解説
5章:交通事故で後遺障害が残ったらやるべきこと
交通事故で後遺障害が残った場合、これからやるべきこととポイントは以下の通りです。
それでは、流れに沿って説明します。
5-1:後遺障害診断書を作成してもらう
医師から「症状固定」と診断されたら、医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
【後遺障害診断書とは】
後遺障害診断書とは、後遺障害が残った場合に、医師に依頼して作成してもらう診断書です。後遺障害等級の認定には、必ず必要なものです。
後遺障害診断書には、あなたの症状について詳しく書かれ、その内容に基づいて後遺障害等級が認定されます。
後遺障害診断書の作成を医師に依頼すると、早ければその日の内、遅くとも2週間程度で作成にかかります。
後遺障害診断書の内容と、あなたの自覚症状に違いがあれば、医師に相談して、必要であれば再作成してもらいましょう。
なぜなら、後遺障害診断書に書かれた後遺障害の症状から、あなたの後遺障害等級が決定されるからです。
納得の行く後遺障害診断書を作成してもらったら、それを提出する手続きに進みます。
■後遺障害診断書作成時のポイント
後遺障害診断書は、適切な書き方をしてもらうことで、妥当な後遺障害等級が認められやすくなります。
ただし、「どのような書き方をすれば良いのか」は状況によって異なり、医師も知らないことが多いです。
そこで、より妥当な後遺障害等級を認定してもらうためには、交通事故に強い弁護士や医師と連携している弁護士に依頼するのがポイントです。
弁護士に依頼すれば、弁護士から後遺障害診断書に書くべき内容について伝えたり、表現を変えてもらうようにお願いしてもらうことができます。
後遺障害診断書は、同じ内容でも、より適切な書き方にすることで後遺障害等級が認定されやすくなることがあります。
そのため、弁護士に依頼することで、妥当な後遺障害等級が認定してもらえる可能性が高まる。つまり、より高い示談金をもらえる可能性が高まるのです。
5-2:後遺障害等級の認定手続きをする
後遺障害診断書を作成してもらったら、次に後遺障害等級の認定手続きをする必要があります。
後遺障害等級の認定手続きには、以下の2つのものがあります。
- 事前認定:保険会社に手続きを任せる方法
- 被害者請求:自分で手続きを行う方法
それぞれ、以下のような特徴、メリット、デメリットがあります。
共に、症状固定後に手続きを開始するという点では同じですが、事前認定は加害者側の保険会社に手続きを任せる方法、被害者請求は自分で手続きを行う方法です。
■事前認定では妥当な等級が認められない可能性が高い
ここで注意して頂きたいのが、事前認定の方法では、妥当な等級が認められない可能性が高いということです。
後遺障害等級は高いほど示談金が高くなるものですが、保険会社は「示談金をできるだけ安くしたい」と考えます。
そのため、あなたに不利な手続きをするとまでは言えませんが、少なくともあなたに有利に手続きを行ってくれるとは限らないのです。
少しでも多くの示談金をもらうためには、「被害者請求」で手続きすることが大事です。
とは言え、「自分でやりたい」という方もいらっしゃるかもしれないので、両方の手続きの方法を説明します。
5-2-1:加害者の保険会社に任せる「事前認定」の方法
「事前認定」とは、被害者であるあなたが自分で、加害者が入っている任意保険会社に「後遺障害診断書」を提出し、任意保険会社に手続きを任せる方法です。
事前認定は、以下の流れで手続きを行います。
事前認定では、加害者側の保険会社が、必要な書類集め、提出、審査のための手続きなどを行いますので、あなたの手間はほとんどありません。
一方で、あなたにはデメリットもありますので、これから詳しく解説します。
事前認定手続きのSTEP1:加害者が加入している任意保険会社に後遺障害診断書を提出する
作成してもらった後遺障害診断書を、加害者が加入している任意保険会社に提出します。
「事前認定」の手続きでは、後遺障害診断書を任意保険会社に提出すれば、それ以降の病院や自賠責損害調査事務所との間での手続きを、すべて任意保険会社が代わりにやってくれます。
つまり、あなたの手間がほとんどかからないのです。
■事前認定では、あなたに有利な資料を集めてもらえない可能性がある
事前認定とは、「示談金を支払う側」である保険会社に、手続きを任せる手続きの方法です。
後遺障害等級の申請には、交通事故による後遺障害の症状に関する書類(レントゲン写真、CT、MRIなど)を病院から集める必要があります。
それを保険会社に任せると、あなたに有利な資料集めをしてくれない可能性が高いのです。
有利な資料を集めてもらえなければ、あなたにとって妥当な後遺障害等級が認められない可能性もあります。
そうなれば、本来もらえるはずだった示談金額より、少ない金額の示談金しかもらえなくなる可能性があるのです。
事前認定手続きのSTEP2:後遺障害等級が認定される
「事前認定」では、後遺障害等級の認定手続きを任意保険会社に任せるため、認定の可否についての通知も、任意保険会社から受けます。
後遺障害等級が認定されれば、それから任意保険会社との間で示談交渉(裁判外交渉)をすることもできますし、示談交渉でまとまらなければ裁判(訴訟)を提起することもできます。
後遺障害等級の認定について不服がある場合は、4章で説明する「異議申立」という手続きで、再審査を要求することもできます。
5-2-2:自分で手続きをする「被害者請求」の方法
被害者請求とは、被害者であるあなたが自分で医療機関から資料を集め、それを加害者が加入している自賠責保険会社に提出し、後遺障害等級の認定を請求する手続きのことです。
被害者請求の手続きは、自分で書類を集めて提出しなければならないため、事前認定よりも手間がかかります。
ただし、妥当な後遺障害等級を得るために、自分に有利な書類を集めることができるというメリットがあります。
また、弁護士に手続きを依頼し、弁護士から医師にアドバイスし、妥当な等級を得るためのサポートをすることもできます。
それでは、被害者請求の手続きを順番に解説します。
被害者請求手続きのSTEP1:後遺障害等級認定に必要な資料を集める
後遺障害等級の認定には、
- 受傷時(最初に医療機関で診断、治療を受けた時)
- 症状固定時(医師から症状固定と診断された時)
の2つのタイミングでの「レントゲン写真」「CT」「MRI」などの資料を集めることが大事です。
なぜなら、より詳しい資料があるほど、あなたの後遺障害について正確に判断する情報が得られるため、妥当な後遺障害等級が認定される可能性が高まるからです。
被害者請求手続きのSTEP2:加害者の自賠責保険会社に必要書類を提出する
後遺障害診断書やレントゲン写真、CT、MRIなどの資料がそろったら、それを加害者が加入している「自賠責保険会社」に提出します。
事前認定の場合は加害者の「任意保険会社」に提出するのですが、被害者請求の場合は、加害者の「自賠責保険会社」に提出する、という点に注意してください。加害者の「自賠責保険会社」がどこかというのは、交通事故証明書を見ればわかります。
被害者請求手続きのSTEP3:後遺障害等級が認定される
被害者請求の場合、後遺障害等級の認定結果は、あなたに直接通知されます。
後遺障害等級が認定されたら、あなたが認定された等級に応じた保険金が、あなたの口座に振り込まれます。
支払われる金額については、2章でお伝えした通りです。
後遺障害等級の認定結果に不満がある場合は、4章で説明する「異議申立」をすることもできます。
※実際には、一度決まった後遺障害等級の認定結果について、異議申立が認められることは極めて稀です。そのため、最初から、妥当な後遺障害等級の認定を受けられるように資料を集め、提出することが大事です。
5-3:等級に不満がある場合にできる2つのこと
後遺障害等級の認定結果に納得できない場合は
- 異議申立
- 紛争処理の申請
という手続きで、後遺障害等級の再審査を要求をすることができます。
順番に解説します。
5-3-1:異議申立
異議申立とは、「後遺障害等級の認定結果に納得いかないので、再審査してください」と要求することです。
異議申立の書類を提出する相手は、最初に申請した時の方法によって、以下の通り異なります。
- 事前認定で申請した場合・・・加害者の任意保険会社
- 被害者請求で申請した場合・・・加害者の自賠責保険会社
ただし、異議申立は簡単に認められるものではありません。
後遺障害等級の認定結果が間違っている医学的な根拠を示さなければ、異議申立を認めてもらうことはできないのです。
そのため、認定結果が間違っていることが分かる、新たな医学的な資料を提出する必要があります。
また、異議申立してから認定結果が出るまでは、2〜3ヶ月程度、長ければ半年以上かかることもあります。
5-3-2:紛争処理の申請
紛争処理とは、後遺障害等級の認定結果の再審査を、「自賠責保険・共済紛争処理機構」という機関に要求することができる手続きです。
手続きは無料で行うことができ、中立的な立場の機関が再審査してくれます。
紛争処理の申請をする場合、以下のページから申請書を作成し、最寄りの「自賠責保険・共済紛争処理機構」のセンターに提出する必要があります。
「紛争処理の申請について」https://www.jibai-adr.or.jp/enterprise_04.html
■紛争処理の申請時の注意点
ただし、紛争処理の申請をする上で、注意点があります。
①医学的な資料を集める必要がある
1つは、紛争処理をするためにも、あなたが自分で再審査のための医学的な資料を集めなければならないということです。
そのため、集めるべき資料について弁護士などに相談することが大事です。
②紛争処理は1回しか利用できない
もう1つは、紛争処理は異議申立と違って1回しか利用することができないということです。
保険会社への異議申立は何度でもできるのが一般的ですので、異議申立で要求が通らない場合に、最終手段として紛争処理手続きを利用することをおすすめします
6章:交通事故被害に遭ったら弁護士に相談しよう
繰り返しになりますが、交通事故の後遺障害等級の申請手続きは、弁護士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、後遺障害等級の認定手続きを自分だけで行おうとすると、
- 必要な書類を十分に集めることができず、妥当な後遺障害等級が認定されない
- 手続きを行う手間や時間の負担が大きく、治療に専念できない
- 妥当な後遺障害等級が認定されなかった時に、異議申立に失敗する
などの可能性があるからです。
弁護士に依頼すれば、
- 専門家の立場から、必要な書類を集めてくれる
- 妥当な後遺障害等級が認定できるように、後遺障害診断書の作成時に医師に指示できる
- 異議申立したい場合も、スムーズに手続きできる
- 後遺障害等級の申請だけでなく、示談交渉、裁判など、様々な手続きを丸投げできる
といったメリットがあります。
しかも、あなたやあなたの家族が加入している保険に「弁護士特約」がついていれば、弁護士費用は基本的に0円で依頼できます(※)。
※示談金の金額や依頼する法律事務所によっては、費用がかかることもあります。
ただし、弁護士に依頼する場合、弁護士なら誰でも良いというわけではありません。
弁護士の選び方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容を振り返ります。
交通事故の後遺障害になるのは、以下のような症状です。
【後遺障害等級に認定される症状の例】
- 脳や神経系統に大きな障害が残り、介護が必要だったり仕事に影響する場合(むちうちによるものも含む)
- 失明や視力の低下、眼やまぶたの運動機能の低下など
- 聴力の低下、耳の欠損
- 鼻の欠損による鼻の機能の低下
- そしゃくや言語機能の低下、歯を失った場合
- 脊柱や鎖骨、肋骨、胸骨、肩甲骨、骨盤などの変形、脊柱の運動障害など
- 腕や足の一部の欠損や運動障害、変形、醜い怪我の跡
- 手指や足指の欠損、運動障害
- 臓器の機能に障害が残った
- 大きな傷跡や欠損により見た目に醜状が残った場合
後遺障害がある場合、示談まで以下の流れで手続きが進みます。
後遺障害等級の申請方法には2つのものがありますが、より妥当な等級をもらうためには「被害者請求」がおすすめです。
この記事の内容を参考に、損しないように行動をはじめてくださいね。