交通事故の裁判とは?メリデメ・費用・日数などを弁護士が徹底解説
この記事を読んで理解できること
- 交通事故の裁判とは?
- 交通事故の裁判のメリット・デメリット
- 交通事故裁判の手続きの流れとポイント
- 交通事故裁判は弁護士に依頼しよう
あなたは、
「交通事故で裁判になるのはどんな場合?」
「交通事故で裁判になりそうだけれど、裁判をするメリット、デメリットって何だろう?」
「裁判にするためには何をすればいい?」
などの悩み、疑問をお持ちではありませんか?
交通事故では、示談(裁判外交渉)で解決できなかった場合に、裁判に持ち込まれることがあります。
その場合、「判決で白黒つけられる」「遅延損害金や弁護士費用を含めて慰謝料請求できる」というメリットがある一方、「時間がかかる」「負けたら慰謝料をもらえない」といったデメリットもあります。
そのため、交通事故で裁判にする場合は、慎重に判断して行動すべきです。
そこでこの記事では、まずは交通事故の裁判とはどういうものか1章で解説し、それから2章でメリットとデメリットを紹介します。
そして3章では具体的な手続きの流れを説明し、4章で弁護士に依頼するべき理由とポイントを紹介します。
この記事を読んでから、適切な方法で行動を開始していきましょう。
1章:交通事故の裁判とは?
それではまずは、交通事故の裁判に関する以下の基礎知識を解説していきます。
- 刑事裁判と民事裁判について
- 慰謝料請求の3つの方法
- 慰謝料請求で裁判になり得るケース
- 交通事故の裁判にかかる日数と費用
順番に説明します。
裁判のメリット、デメリットから知りたい場合は2章からお読みください。
1-1:交通事故裁判は民事裁判と刑事裁判の2つに分けられる
そもそも、交通事故を起こすと「刑事裁判」になる場合と「民事裁判」になる場合があります。
刑事裁判と民事裁判には下記の違いがあります。
|
刑事裁判 |
民事裁判 |
起こす人 |
検察 |
誰でもできる |
裁判になる場合 |
重大事故、飲酒事故、加害者に過去に犯罪歴のある場合など |
損害賠償金に争いがある場合 |
目的 |
加害者を罪に問い、場合によっては刑事罰を与える |
損害賠償金を決めること |
結論から言えば、あなたに直接関係があるのは「民事裁判」です。
もう少し詳しく解説します。
■刑事裁判とは
刑事裁判とは、加害者の運転が「自動車運転過失致死傷罪」「危険運転過失致死傷罪」という犯罪行為とみなされた場合に、検察が起こす裁判です。
加害者がこうした罪に問われるのは、
- わき見運転
- 前方不注意
- 方向指示器を使わずに進路変更
- 飲酒運転
- 信号無視
- ひき逃げ
といった運転をして交通事故を起こし、被害者が死亡したり重傷を負ったりしてしまった場合などです。
刑事裁判で「有罪」になれば、罰金刑や懲役が付き加害者は前科者になります。
逆に、
- 被害者の怪我が軽微である
- 加害者の運転が重大な違反ではない(飲酒運転やあおり運転などではない)
といったケースでは、刑事裁判になることは少ないです。
また、刑事裁判では、被害者に対する損害賠償請求(※)に関すること、つまり「被害者がいくらの損害金をもらえるか」は争われません。
したがって、刑事裁判になってもならなくても、被害者の損害賠償請求は、民事裁判で争われることになります。
※損害賠償金とは、交通事故の被害に対する修理費、慰謝料、休業損害等のお金のことです。
民事裁判とは、被害者が加害者に対して、損害賠償請求をする裁判のことです。
民事裁判は誰でも起こすことができるため、もちろんあなたも起こすことができます。
民事裁判では、裁判の中で「和解」になることもありますし、最後まで争って「判決」が出ることもあります。この「和解」や「判決」によって損害金の金額が決められ、その後あなたに支払われることになります。
1-2:そもそも交通事故の慰謝料請求には3つの方法がある
交通事故の裁判であなたに関係するのが「民事裁判」であると説明しましたが、そもそも、損害賠償請求するために必ず裁判を起こさなければならないというわけではありません。
交通事故で損害金を請求する方法には、以下の3つがあります。
- 示談交渉(裁判外交渉)
あなたと加害者(とその保険会社)とで、損害金について話し合いで解決すること - 調停
示談で解決しなかった場合に、簡易裁判所で第三者を挟んで話し合い、解決を図ること - 民事裁判
裁判によって「和解」もしくは「判決」により、損害賠償金を確定させること
重要なのは、どの方法でも良いというわけではないということです。
一般的に、示談交渉(裁判外交渉)で解決するのが、最も手間や時間、費用がかかりません。調停は、示談より負担がかかります。そして、裁判は最も手間、時間、費用がかかるのです。
そのため、裁判で損害賠償請求するのは、最終手段であると考えてください。
1-3:交通事故裁判にかかる日数、費用
「実際、交通事故の裁判にはどのくらいの日数や費用がかかるの?」と疑問かもしれません。
状況に応じて異なりますが、一般的には以下の程度の日数、費用がかかります。
■裁判にかかる日数
交通事故の裁判にかかる日数は、状況に応じて大きく異なります。
ただし、どれだけ早くても終わるまで6か月程度はかかりますし、1年から2年かかる場合も多いですし、2年以上かかることもあります。
そのため、裁判を起こすならそれだけ期間がかかることは、覚えておいてください。
■裁判にかかる費用
民事裁判では、裁判にかかった費用は後に加害者に負担させることができます。
ただし、最初は被害者自ら負担する必要がありますし、敗訴した場合はあなたの負担になります。
【弁護士費用】
裁判は通常弁護士に依頼する必要があります。なぜなら、裁判の手続きを個人で行うのは難しく、大きな手間や時間を負担することになるからです。
弁護士に依頼した場合、弁護士によりますが、弁護士に対して着手金や報酬金を支払う必要があります。
また、弁護士に依頼した場合、弁護士や、裁判所の場所によっては、
- 日当
- 交通費
が発生する可能性があります
※ただし,法律事務所が裁判所から遠方の場合,電話会議を利用できる可能性があり,その場合は日当や交通費が発生しない事務所もあります。
「それなら弁護士に依頼しない方が良いかも」と思われるかもしれませんが、実際には弁護士に依頼した方が、損害金の金額がアップし、トータルで得することが多いです。
さらに、弁護士費用特約を利用することができれば、弁護士費用の自己負担がゼロ円になります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
【事例別】交通事故の弁護士費用を最大限安くおさえる方法を徹底解説
【裁判所手数料(印紙代)】
損害賠償の請求額に応じて、以下の金額を収入印紙で訴状(裁判を起こすときに必要な書類)に貼って提出する必要があります。
以下に一例を示しますが、厳密には請求金額ごとに細かく決まっていますので、よくご確認ください。
■印紙代の一例
請求金額 |
印紙代 |
50万円 |
5000円 |
100万円 |
1万円 |
300万円 |
2万円 |
500万円 |
3万円 |
2章:交通事故の裁判のメリット・デメリット
交通事故の裁判には以下のメリット、デメリットがあります。
■交通事故の裁判のメリット
- 最大限の示談金を得やすい
- 遅延損害金を請求可能
- 勝訴すれば弁護士費用を加害者に負担させられる
■交通事故の裁判のデメリット
- 手間や時間がかかる
- 費用がかかる
- 敗訴すれば損害金を受け取れない
結論を言えば、裁判ではなく、できるだけ「示談交渉(裁判外交渉)で解決することをおすすめします。
その理由を先に知りたい場合は、3章をお読みください。
これから、メリット、デメリットをそれぞれ解説します。
2-1:交通事故裁判のメリット
まずは交通事故で裁判を起こすメリットから説明します。
2-1-1:適正な損害金を決められる
交通事故の裁判のメリットの1つは、適正な損害金を決められるという点です。
交通事故のトラブルでは、保険会社は、「できるだけ損害金を支払いたくない」と考えます。なぜなら、保険会社も営利企業で、損害金の負担を最小限にしたいからです。
したがって、裁判外で交渉をしても、様々な理由をつけて損害金を少なくしようとしてきます。
そのため、あなたが自分だけで交渉する場合、本来もらえる損害金よりずっと少ない金額しかもらえないことが多いです。
しかし、裁判を使えば、裁判官によって裁判官の心証に基づいた和解勧奨や判決が出されるため、明確に損害金の金額を決めることができます。
しかも、裁判では過去の判例をもとに損害金を決めるため、不当に低い額になることはなく、適正な金額になるのです。
2-1-2:遅延損害金を請求できる
交通事故の裁判では、「和解」「判決」という結果が出るまで時間がかかるとお伝えしました。
その分損害金の支払いが遅れてしまうため、遅れてしまう分、損害金を加算する「遅延損害金」を請求可能です。
遅延損害金は、事故発生日から年3%で計算されます。
たとえば、損害金の合計が1200万円で事故発生日から判決まで1年間かかった場合、
「1200万円×5%×1年=60万円」
と遅延損害金だけで60万円が請求可能なのです。
この点では、示談交渉(裁判外交渉)よりも裁判での解決の方がメリットがあるのです。
2-1-3:弁護士費用を加害者に負担させられる
さらに、裁判ではあなたが負担した弁護士費用も加害者に負担させることができます。
なぜなら、弁護士費用は敗訴した方が支払うと決められているからです。
弁護士費用は、損害金の10%程度になります。したがって、損害金の合計が1200万円なら120万円の弁護士費用を加害者に負担させることが可能なのです。
※ただし、実際に発生した弁護士費用を全額請求できるというものではないので、注意が必要です。
弁護士費用は、示談交渉(裁判外交渉)では、相手に負担させることができません。
したがって、この点で裁判のメリットがあるのです。
2-2:交通事故裁判のデメリット
これから順番に交通事故裁判のデメリットを紹介します。
2-2-1:手間や時間がかかる
交通事故で裁判を起こすと、
- 訴状(裁判を起こしますという書面)の作成、提出
- 裁判所への出廷
などの手間がかかります。
裁判は平日の昼間に行われるため、自分で裁判を起こした場合は、仕事を休んで裁判所に行かなければならないこともあります。
※弁護士に依頼した場合は、あなた自身が裁判所に行くことはほとんどのケースで必要なく、多くても1回です。
さらに、裁判は1回で終わらない場合、裁判と裁判の間が1ヶ月以上空くことも多いです。
そのため、判決が出るまでに1年以上かかることも少なくありませんし、場合によっては2年ほどかかることもあります。
結論が出るまで年単位で時間がかかってしまうことは、被害者にとって心理的負担も大きいです。
示談交渉(裁判外交渉)の場合は、数か月で示談できることが多いため、多くの人が示談交渉(裁判外交渉)で解決しています。
2-2-2:費用がかかる
1章でも説明したように、裁判を起こすと、
- 裁判所に支払う印紙代
- 弁護士の日当や交通費(裁判1回ごと)
を支払う必要があります。
後に負担させられることもできるとは言え、最初は自分で負担しなければなりません。
したがって、どうしても費用を負担したくないという人の場合は、裁判ではなく示談交渉(裁判外交渉)で解決することを目指すべきです。
2-2-3:敗訴すると示談金が受け取れない
裁判で損害賠償請求し、損害金をもらえるのは「勝訴」した場合のみです。
「敗訴」してしまうと、当然損害金を受け取ることはできませんし、敗訴した側は弁護士費用を負担する必要があります。
そのため、敗訴すると自分が金銭的な負担をしなければならなくなるのです。
3章:交通事故裁判の手続きの流れとポイント
交通事故の裁判の流れは以下の通りです。
それぞれの手続きと、各手続きの上でのポイントを順番に説明します。
3-1:弁護士への相談・依頼
まずは、裁判を使って交通事故の損害賠償請求をしたいということを、弁護士に相談、依頼しましょう。
これまでも解説したように、裁判は自分だけで行うことも可能ではありますが、手間や知識などの面で難しいことが多いです。
そのため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
相談前に、以下のことを簡単にメモしておきましょう。
- 現状について
事故直後なのか、治療中なのか、怪我の症状はどのようなものか、保険会社との連絡は取っているか、など
- 交通事故の具体的な内容について
どのような状況での事故か、自分に過失はあるのか、など
- なぜ裁判にしたいのか
示談交渉が決裂したため、などの理由
などについて簡単にメモをしておきましょう。
これらを整理しておくことで、よりスムーズに相談することができます。
3-2:訴状の提出
裁判を起こすためには、「訴状」という書類を裁判所に提出する必要があります。
訴状とは、
- 損害賠償請求する加害者について(名前、住所など
- 交通事故の内容
- 損害の内容
- 損害賠償請求金額
などについて記載した書面です。
また、以下のような、損害賠償額を決める証拠も集めて提出する必要があります。
- 実況見分調書
- 病院の診断書
- 後遺障害等級の認定書類
- 診断報酬明細書
など
なお、交通事故の場合、損害金の請求額によって裁判を起こす(つまり訴状を提出する)裁判所が異なります。
- 請求する損害金額が140万円以下→簡易裁判所
- 請求する損害金額が140万円以上→地方裁判所
裁判所は全国にありますので、提出先はこちらの裁判所のサイトから探してみてください。
3-3:裁判の進行
訴状を提出すると、いよいよ裁判が始まりますが、弁護士に依頼した場合は、基本的に弁護士が代理人となって法廷に行きますので、あなたが行く必要はありません。
通常、訴状提出から1か月~1か月半すると「口頭弁論」が行われます。
自分だけで裁判する場合、裁判のたびに「準備書面」という、主張の追加や反論をする書面を作成、提出します。
そして、それに基づいて裁判官が判断し、判決が出るまでこれが繰り返されます。
裁判では、あなたの主張に対し、請求相手側が反論をしてきますので、裁判は1回で終わることはまずありません。
裁判は、次の裁判まで1ヶ月前後間隔があきますので、裁判の回数が増えるほど期間も延びていきます。
3-4:和解勧告・判決
両者の主張が出尽くし、裁判所が判断できる段階まで来たら、それから判決が言い渡され、裁判が終了します。
また、裁判官の判断によっては、途中で「和解勧告」さることもあり、両者が合意すれば和解で決着がつくこともあります。
判決では、
- 損害賠償を認める(もしくは認めない)という結論
- 損害金の金額や支払い方法
- 上記の結論に至った理由
等が言い渡され、書面でもあなたや請求相手に届けられます。
判決に納得できない場合は、判決から2週間以内に「控訴」することで、再度裁判を行うこともできます。
どちらも控訴しなければ、判決が確定します。
繰り返しになりますが、実際には、裁判前に「示談交渉(裁判外交渉)」や「調停」が行われることが多いです。
どうしても裁判でなければならないという理由がない限り、これらの他の手段についても検討するべきですし、弁護士に依頼した場合は、裁判外で決着が付くことも多いです。
4章:交通事故裁判は弁護士に依頼しよう
交通事故の裁判は、弁護士に依頼することをおすすめします。
その理由と弁護士の選び方について、これから説明します。
4-1:損害金を増額させるためには弁護士に依頼すべき
ここまで説明してきたように、裁判は交通事故の損害賠償請求における最終手段です。
そのため、できる限り裁判の前に示談交渉(裁判外交渉)で解決することをおすすめします。
ただし、自分だけで示談交渉や裁判の手続きを進めることは、大きな手間、時間の負担がかかりますので、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、示談交渉(裁判外交渉)で裁判より早く決着をつけ、損害金を支払わせることも可能です。
それだけではありません。
実は、交通事故の損害金を決める基準には以下の3つの種類のものがあります。
- 自賠責基準
法律で決められた最低限の金額
- 任意保険基準
保険会社が独自に決めている基準で、自賠責基準に近い金額であることが多い
- 裁判基準
過去の判例をもとに決められた基準で、弁護士に依頼した場合に適用される
保険会社は「任意保険基準」という独自に作った基準に基づいた損害金を掲載し、提示してきます。
そのため、保険会社が提示する金額は、本来より少ない金額になっていることが多いです。
弁護士に依頼すると「裁判基準」になり、損害金を本来もらえる適正な金額までアップさせることが可能です。
あなたが自分だけで保険会社に交渉しても、裁判基準にすることは困難ですので、弁護士に依頼することが大事なのです。
他にも、
- 医師の指示のもと、適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらえる
- 面倒な手続きを任せられ、手間、時間、ストレスが最小限になる
- 慰謝料の金額が「裁判基準」で計算され、慰謝料が高額になる
といったメリットもあります。
まずはお気軽に相談してみてください。
4-2:交通事故に強い弁護士を選ぼう
弁護士に依頼することをおすすめしましたが、「弁護士なら誰でも良い」とは思わないでください。
弁護士にも「労働問題」「不倫・離婚」「交通事故」などの得意分野があるため、交通事故が苦手な弁護士に依頼してしまうと、請求に失敗する可能性があるからです。
交通事故に強い弁護士の選び方について、以下の記事で詳しく解説しています。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説
4-3:弁護士費用の負担は0円になる場合もある
弁護士に依頼するといっても「弁護士費用の負担が大きいなら依頼できない」とお考えかもしれません。
しかし、実は「弁護士費用特約」が利用できれば、あなたの弁護士費用は保険会社が負担してくれるため、あなたの負担は原則0円で依頼可能です。
詳しくは以下の記事で説明しています。
【事例別】交通事故の弁護士費用を最大限安くおさえる方法を徹底解説
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
■交通事故の裁判のメリット
- 最大限の示談金を得やすい
- 遅延損害金を請求可能
- 勝訴すれば弁護士費用を加害者に負担させられる
■交通事故の裁判のデメリット
- 手間や時間がかかる
- 費用がかかる
- 敗訴すれば損害金を受け取れない
■交通事故裁判の流れ
- 弁護士への相談・依頼
- 訴状の提出
- 裁判の信仰
- 和解勧告・判決
この記事の内容を参考にすぐに行動をはじめていきましょう。