人身事故の慰謝料相場と高額請求を実現するための4つのポイント
この記事を読んで理解できること
- 人身事故の慰謝料は3つの基準から決まる
- 人身事故で請求できる3つの慰謝料と相場
- 人身事故で慰謝料以外にももらえる損害金一覧
- 人身事故で慰謝料がもらえるタイミング
- 人身事故の慰謝料を最大限もらうためのポイント
- 人身事故の慰謝料請求は弁護士に依頼しよう
あなたは、
「人身事故にあった!慰謝料はどれくらいもらえるの?」
「慰謝料をもらうためには、どう行動したら良いの?」
「できるだけ高額の慰謝料をもらいたい」
等の悩み、疑問をお持ちではありませんか?
人身事故にあうと、怪我をしたり後遺障害が残ったりして、その後の生活や仕事への影響が不安になりますよね。
結論から言えば、人身事故の慰謝料には「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」があり、さらに他にも「治療費」「休業損害」「逸失利益」など様々な損害金が請求可能です。
ただし、重要なのが請求方法によってもらえる損害金の金額が大きく異なるということです。
なぜなら、自分で請求する場合と弁護士に依頼する場合で、適用される慰謝料の算出基準が異なるためです。
そこでこの記事では、まずは1章で人身事故の慰謝料の3つの基準を説明し、それから2章で請求できる慰謝料と相場について説明します。
さらに3章では、慰謝料以外のもらえる損害金を紹介し、4章で慰謝料がもらえるタイミングを解説します。
5章、6章では、より高額の慰謝料をもらうための方法を説明します。
興味のある所から読んで、すぐに行動に移していきましょう。
目次
1章:人身事故の慰謝料は3つの基準から決まる
そもそも人身事故とは、乗っていた自動車や二輪車だけでなく乗っていた人が負傷、死亡してしまった場合の事故のことです。
人身事故に遭遇すると、「治療費」「入通院費」などの実際に発生する経済的負担に対して損害金が請求できます。
しかしそれだけでなく、入通院することや後遺障害が残ることに伴う精神的負担に対する損害金も請求できます。
これが「慰謝料」というものです。
整理すると、慰謝料とは以下のものです。
※慰謝料のそれぞれについて詳しくは2章で説明します。
■慰謝料の3つの基準
そして、慰謝料は3つの基準から計算されます。
- 自賠責基準・・・法律で定められた最低限の補償
- 任意保険基準・・・自動車の保険会社が独自に定めている基準
- 裁判基準・・・裁判例を参考にした基準
大事なのは、自賠責基準が最も少なく、裁判基準が最も高額になるということです。
保険会社は「任意保険基準」という独自の基準で慰謝料を算出しますが、これは自賠責基準に近い金額で、裁判基準で計算される金額よりずっと少ないものです。
自分だけで請求しても、「裁判基準」を適用してもらうことは困難ですが、弁護士に依頼すれば自動的に「裁判基準」で請求可能です。
2章:人身事故で請求できる3つの慰謝料と相場
それではさっそく、人身事故で請求できる3つの慰謝料とその相場を解説します。
人身事故で請求できるのは、以下の3つの慰謝料です。
【3つの慰謝料】
- 入通院慰謝料・・・入院、通院した日数に応じて支払われる。
- 後遺障害慰謝料・・・後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害の度合いに応じて支払われる。
- 死亡慰謝料・・・被害者が死亡してしまった場合に、家族構成に応じて支払われる。
これから、それぞれの慰謝料のそうなと計算方法を簡単に紹介します。
慰謝料の金額は入通院の日数や後遺障害の度合いなどによって変わってきますが、あなたのケースでどのくらいもらえるのか、参考にしてみてください。
2-1:入通院慰謝料
そもそも、入通院慰謝料とは、人身事故による怪我の治療のために入通院しなければならなくなった場合に、入通院の精神的苦痛に対して支払われるものです。
そのため、入通院にかかった治療費や交通費とは別に支払われます。
また、先ほどもお伝えした通り、入通院慰謝料は以下の3つの算出基準があります。
- 自賠責基準・・・法律で定められた最低限の補償
- 任意保険基準・・・自動車の保険会社が独自に定めている基準
- 裁判基準・・・裁判例を参考にした基準
最も高額になるのが「裁判基準」です。
入通院慰謝料の相場は、以下の通りです。
これから、入通院慰謝料の規準ごとの計算方法を説明します。
■自賠責基準
自賠責基準は、
- 加害者が任意保険に入っていない
- 加害者が任意保険を使わない
- 被害者に一定の過失がある場合
などに適用される基準です。
自賠責基準の場合、
- 実通院日数(病院に通った日数)×2
- 治療期間(病院に通った期間)
のどちらか短い方の日数に「4300円」をかけて計算した金額が、示談金の相場になります。
【自賠責基準の計算方法の具体例】
①病院に通った日数・・・60日
②病院に通った期間・・・6ヶ月(通院期間180日)
上記の条件の場合、①60日×2=120日の方が②の180日より少ない日数になるため、120日に4300円をかけた金額が慰謝料の金額になります。
120日×4300円=51万6000円
■任意保険基準
任意保険基準は、被害者であるあなたが、自分だけで示談しようとする場合に適用される基準です。
各保険会社が独自に設定している基準ですので、具体的な金額は公開されておらず、正確な相場は分かりません。
ただし、一般的に言って、裁判基準より自賠責基準に近い金額になるとお考えください。
■裁判基準
裁判基準とは、弁護士に示談交渉を依頼した場合に適用される基準です。
裁判基準は、過去の裁判所の判例から以下のように定められています。
【弁護士基準の入通院慰謝料(通常のもの)】
※単位は万円
上記の場合、入院が0日、通院が6ヶ月の場合は「116万円」になります。
先ほどの例では、自賠責基準の入通院慰謝料は6ヶ月で60日通院した場合で「50万4000円」でしたので、裁判基準の示談金相場の方が、2倍以上高額になることが分かると思います。
※「むちうち症で他覚症状(他人から見て負傷の有無が分かる症状)がない場合等」は、下記のように、裁判基準の慰謝料の金額が少し少なくなります。
【弁護士基準の入通院慰謝料(むちうち症で他覚症状(他人から見て負傷の有無が分かる症状)がない場合等)】
他覚症状がない場合とは、他人から見て負傷しているのかどうか確認できない、という状態のことです。
2-2:後遺障害慰謝料
次に、後遺障害慰謝料について説明します。
そもそも、後遺障害慰謝料とは、人身事故によって「痛み」「しびれ」「可動域の制限」「変形」「大きな傷跡などの見た目の影響」などの後遺障害が残った場合に、その精神的苦痛に対して支払われるものです。
そのため、後遺障害が残ったために、将来の収入が減った場合に支払われる「逸失利益」や、自宅を改造した場合の「家屋改造費」などとは、別に支払われます。
後遺障害等級は1級から14級まであり、どの等級が認定されるかによって、慰謝料の金額が決まります。
1級が最も重い後遺障害で慰謝料も最も高額になり、14級が最も低い後遺障害等級で、慰謝料も少なくなります。
さらに、後遺障害慰謝料にも、以下の3つの基準があります。
- 自賠責基準・・・法律で定められた最低限の補償
- 任意保険基準・・・自動車の保険会社が独自に定めている基準
- 裁判基準・・・裁判例を参考にした基準
後遺障害慰謝料の場合も、入通院慰謝料と同じく、自賠責基準が最も低く、裁判基準が最も高額です。
そして、保険会社が提示してくる任意保険基準の慰謝料は、自賠責基準より高く、裁判基準より低いのが一般的です。
このように、自分で請求した場合(自賠責基準)と、弁護士に依頼した場合(裁判基準)では、示談金の金額が異なります。
※保険会社が提示する基準は「任意保険基準」ですが、これは基準が公開されていません。
しかし、大体自賠責基準に近い金額になると考えてください。
たとえば、むち打ちの場合は「14級9号」であり、自賠責基準における後遺障害慰謝料の金額は、32万円になります。
それに対し、裁判基準での後遺障害慰謝料は、110万円になります。
自賠責基準では32万円でしたから、3倍以上の金額になるのです。
2-3:死亡慰謝料
ひどい人身事故で被害者が死亡してしまった場合、遺族は死亡による精神的苦痛に対して、死亡慰謝料を請求することも可能です。
死亡慰謝料にも、以下の3つの基準があります。
- 自賠責基準・・・法律で定められた最低限の補償
- 任意保険基準・・・自動車の保険会社が独自に定めている基準
- 裁判基準・・・裁判例を参考にした基準
■自賠責基準の死亡慰謝料
自賠責基準では、以下のように死亡慰謝料が決められています。
つまり、死亡した被害者が4人家族で、扶養家族である子供が2人いた場合、
350万円+750万円+200万円=1300万円
が死亡慰謝料として支払われるということになります。
■任意保険基準の死亡慰謝料
任意保険基準は公開されていないため、正確な慰謝料金額は分かりませんが、おおむね、自賠責基準に近い金額になると考えてください。
■裁判基準の死亡慰謝料
裁判基準では、以下の通りの死亡慰謝料金額が決められています。
弁護士に依頼した場合、ほぼ確実にこちらの基準の示談金額が適用されます。
死亡した被害者が一家を支えていた方(たとえば父親)だった場合は2800万円が基準になるのです。
さらに、もし死亡するまでに入通院して治療していた場合は、その日数もしくは期間に応じて入通院慰謝料や、実費の治療費等も請求することができます。
※死亡事故の場合の示談金や慰謝料、必要な対応について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【時系列】交通事故で家族が死亡した場合にやるべきことと示談金相場
3章:人身事故で慰謝料以外にももらえる損害金一覧
1章でも説明したように、人身事故の場合、状況に応じて以下の損害金をもらうことができます。
慰謝料が「精神的苦痛」に対する損害金であるのに対して、事故によって実際に発生した経済的負担に対して、上記の様々な項目の損害金を請求できるのです。
人身事故で後遺障害等級7級の後遺障害が残ったと仮定して、損害金を計算すると以下のようになります。
【損害金の一例(裁判基準)】
- 入通院慰謝料…入院4か月、通院10か月の場合、256万円。
- 後遺障害慰謝料…後遺障害等級7級の場合、1000万円。
- 治療費・・・治療にかかったお金で、保険会社から病院に直接支払われることがほとんど。
実際にかかった金額(実費) - 交通費・・・治療のための通院にかかった交通費。
実際にかかった金額(実費) - 入院雑費・・・入院の際にかかった生活必需品などの雑費。
入院1日あたり1500円 - 付添看護費・・・被害者の症状が重い、被害者が乳幼児などの場合で、看護が必要な場合に支払われる。
プロに依頼した場合、実際にかかった金額(実費) - 介護費・・・怪我により介護が必要になった場合に支払われる。
一時的な介護をプロに依頼した場合、実際にかかった金額(実費) - 装具・器具費・・・事故により歩行が困難になるなど、装具・器具が必要になった場合に支払われる。
基本的に、実際にかかった金額(実費) - 家屋改造費、自動車改造費・・・車椅子生活になるなどで、家や自動車の改造が必要になった場合に支払われる。
後遺障害で改造が必要な場合、基本的に、実際にかかった金額(実費) - 休業損害・・・事故によって仕事を休まざるを得ず、損害が発生した分について支払われる。
会社員で、事故前3カ月の給与(額面)が合計90万円、出勤日数66日、休業日数が88日だった場合、120万円 - 逸失利益・・・後遺障害が残り、将来得られるはずの収入が減少してしまう場合に支払われる。
事故前1年間の給与が500万円、後遺障害等級が7級、症状固定時30歳の場合、約6205万9200円
さらに、もちろん人身事故によって自動車や二輪車が壊れ、修理費が必要な場合、修理費を請求することも可能です。
このように、特に「逸失利益」という項目で高額の損害金が支払われる場合がありますので、しっかり計算して請求することが大事です。
※損害金の各項目の計算方法について、詳しくは以下の記事で解説しています。
【弁護士がわかりやすく解説】交通事故示談金の相場と各項目の計算方法
4章:人身事故で慰謝料がもらえるタイミング
人身事故で慰謝料がもらえるのは、下記のタイミングです。
- 示談交渉(裁判外交渉)で解決できた場合・・・示談した後
- 裁判で解決した場合・・・裁判における和解もしくは判決が出た後
そして「後遺障害が残ったかどうか」「過失割合で争うかどうか(※)」など、状況によってかかる期間が変わってきます。
ここではポイントを絞って紹介します。
※交通事故では、加害者だけが全面的に悪いケースだけでなく被害者にも一定の過失があるとされる場合があります。これを過失割合と言います。
4-1:示談で解決した場合
示談だけで解決した場合は、下記のように3カ月~半年程度で示談が成立し、その後慰謝料が支払われることになります。
- 後遺障害が残らなかった場合:早くて完治から2~3カ月で示談が成立し、その後慰謝料が支払われる
- 後遺障害が残った場合:早くて症状固定から半年程度で示談が成立し、その後慰謝料が支払われる
※症状固定とは、治療後に「これ以上症状は改善しません」という判断された状態のことです。症状固定後に後遺障害等級認定の手続きを行います。
4-2:期間が延びるケース
示談で合意できず裁判に持ち込むことになった場合や、過失割合で争う場合は、さらにプラスして期間がかかることになります。
- 裁判に進んだ場合:示談の期間にプラスして、半年~1年以上の期間がかかる
- 過失割合を争う場合:過失割合を争う期間が、示談の期間にプラスして1~2か月かかる
示談や裁判で解決するタイミングについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
【状況別】交通事故の示談期間を最短にする方法・前払いしてもらう方法
5章:人身事故の慰謝料を最大限もらうためのポイント
人身事故で最大限の慰謝料を請求するためには、以下のポイントを守って行動することが大事です。
【人身事故で最大限の慰謝料を請求するためのポイント】
■交通事故発生時のポイント
- その場で警察を呼ぶ
- 実況見分に立ち会う
- 交通事故証明書を確認し「人身事故」になっているか確認する
■治療中のポイント
- まずは病院で治療を受け、診断や治療の記録を残しておくこと
- 整骨院、接骨院で治療を受ける場合、外科、整形外科にも通院すること
- 健康保険や労災保険を利用すること
■後遺症が残った場合の手続きのポイント
- 「症状固定」のタイミングは医師に判断してもらう
- 「後遺障害等級認定時」は弁護士にサポートしてもらう
- 等級に不満がある場合は異議申立する
■示談交渉時のポイント
- 弁護士に依頼する
5-1:交通事故発生時
交通事故が発生したら、焦って通常の精神状態ではいられなくなると思います。
しかし、だからこそ、思い込みや加害者の言うとおりに動いてはなりません。
交通事故が発生したら、できるだけ以下の対応を行うようにしましょう。
- その場で警察を呼ぶ
- 救急車を呼んで病院に搬送してもらう
- 実況見分に立ち会う
- 交通事故証明書を確認し「人身事故」になっているか確認する
順番に見ていきましょう。
5-1-1:その場で警察を呼ぶ
事故を起こした場合、必ずその場で警察に連絡します。警察はすぐに来てくれることが多いですから、それまではその場を勝手に立ち去ってはなりません。
また、痛いところがあれば、必ず警察に伝えましょう。
なぜなら、
- その場で警察に連絡しないと、交通事故にあったことを証明できない
- 加害者の連絡先が分からなければ、示談金を請求することができない
という理由があるからです。
5-1-2:救急車を呼んで病院に搬送してもらう
けがをしている以上,無理に現場にとどまる必要はありません。
救急車を呼んで(もしくは周囲の人に呼んでもらって)、すぐに病院に搬送してもらいましょう。
無理をして自分で病院に行こうとする人もいるようですが、そうすると「自分で病院に行けるくらい軽傷だったのだろう」と考えられ、損害金が少なくなる可能性もあるからです。
下に記載している実況見分は後日でもできます。
5-1-3:実況見分に立ち会う
後日(稀に、当日)、警察と一緒に「実況見分」という、事故現場の状況を一緒に確認する手続きが行われます。
この時大事なのが、被害者のあなたもできるだけ一緒に立ち会うということです。
なぜなら、加害者の立ち会いしかないと加害者に有利な実況見分が行われる可能性があるからです。
そのため、大きな怪我をしていない場合は、警察を呼んでそのまま現場に留まり、実況見分が行われるのを待ちましょう。
5-1-4:交通事故証明書を確認し「人身事故」になっているか確認する
あなたがあった事故の詳細は、後日、警察によって「交通事故証明書」という書類に記載されます。
「交通事故証明書」をもらったら、あなたの事故が「物損事故」か「人身事故」のどちらで処理されているか確認しましょう。
もしあなたが怪我をしているのに「物損事故」で処理されていたら、警察に連絡して「人身事故」に切り替えてもらえるように手続きをしましょう。
なぜなら「物損事故」として処理されてしまうと、保険会社から治療費が出ない可能性があるからです。
切り替え手続きには、病院の診断書が必要ですので、診断書を発行してもらい、それを持って警察に手続きに行く必要があります。
次に、治療中のポイントを解説します。
5-2:治療中
交通事故で怪我をした場合、入院・通院によって治療をすることになります。
治療中に知っておいた方が良いことは、以下の通りです。
- まずは病院で治療を受け、診断や治療の記録を残しておくこと
- 整骨院、接骨院に通う場合、外科、整形外科にも通院すること
- 場合によっては、労災保険や健康保険を利用すること
順番に解説します。
5-2-1:まずは病院で治療を受け、診断や治療の記録を残しておくこと
交通事故にあったら、たとえ怪我が軽くてもまずは必ず病院に行って、しかるべき治療を受けましょう。
なぜなら、病院に行って治療を受けていなければ「治療費」をもらえないからです。
また、治療中は、あなたが感じている症状についてしっかり医師に伝え、必要な治療を行ってもらうことが大事です。
なぜなら、示談金の金額は、事故後の診断結果や治療経過も判断材料になるため、違和感があれば何でも伝えた方が良いからです。
5-2-2:整骨院、接骨院に通う場合、外科、整形外科にも通院すること
人身事故の怪我は、原則的には、整形外科に通院することが望ましいです。
しかし、整形外科に行く時間がなかなか取れない人は、症状によっては、整骨院や接骨院に通院して治してもらうこともあると思います。
その場合注意して頂きたいのが、整骨院等に通う間も、定期的に外科や整形外科に診断してもらっておくことです。
なぜなら、整骨院等は、保険会社から「治療として認められないので、整骨院等にかかった費用は支払いません」と言われることがあるからです。
外科や整形外科に通院して、医師から整骨院等に通うことの許可を受けていれば、整骨院等にかかった費用も保険会社に負担してもらえる可能性が高まります。
5-2-3:場合によっては、労災保険や健康保険を利用すること
- 保険会社が治療費を立て替えてくれないとき
- 交通事故の過失が自分に少しでもあるとき
こんな場合には労災保険を、労災保険が使えない場合は健康保険を利用して通院したほうがよいでしょう。
労災保険や健康保険を使わず、自由診療のままにしてしまうと、同じ治療内容でも、治療費が高くなってしまいますので、損をしてしまいます。
治療に必要な入通院であれば、後に保険会社に請求できる場合がありますので、まずは労災保険や健康保険で治療しておくことが大事なのです。
治療が終わり、痛みやしびれも残らず完治した場合、等級認定手続きが終わってから示談交渉がはじめられます。
示談交渉の流れについては、4-4をお読みください。
怪我が完治せず、痛みやしびれが残った場合は、後遺症に関する診断や認定手続きが必要ですので、5−3をお読みください。
5-3:後遺症が残った場合
治療が終わった状態では、怪我が完治していることが望ましいですが、場合によっては痛みやしびれ(後遺症)が残り、それ以上の改善が望めない場合もあります。
後遺症が残った場合は、治療後に以下のポイントを抑えて手続きを進めることが大事です。
- 「症状固定」のタイミングは医師に判断してもらう
- 「後遺障害等級認定時」は弁護士にサポートしてもらう
- 等級に不満がある場合は異議申立する
順番に解説します。
5-3-1:「症状固定」のタイミングは医師に判断してもらう
「これ以上治療をしても、症状が改善されない」という状態のことを「症状固定」と言います。
症状固定になると、それ以降の症状は後遺症であり、改善できないものです。
そのため、「症状固定」以降に発生した治療費や休業損害については、請求することができなくなってしまいます。
症状固定以降に治療をしても、その分は自己負担になります。
したがって、症状固定の時点で残っている後遺症については、保険会社が、後遺症の影響による収入の減少などへの補償(逸失利益)や、後遺症が残ったことに対する慰謝料(後遺障害慰謝料)を賠償することになります。
注意して頂きたいのは「症状固定」のタイミングを、保険会社が勝手に決めようとしてくることがあることです。
保険会社は、できるだけ支払う治療費や休業損害を抑えたいと考えます。
そのため、場合によっては勝手に「もう治療の必要はない」と判断し、それ以降の治療費の支払いを打ち切ろうとすることがあるのです。
まだ治療が残っている場合、勝手に打ち切られては困ってしまいますよね。
症状固定は、保険会社が勝手に判断していいものではありません。
プロであるあなたの医師の意見が重要になりますので、医師がまだ治療が必要と判断している場合、治療の支払を求めて保険会社と交渉したほうがよいでしょう。
この段階で、保険会社から勝手に「治療費の支払いを打ち切る」などと言われた場合は、弁護士に相談してその後の対応を任せることをおすすめします。
5-3-2:「後遺障害等級認定時」は弁護士にサポートしてもらう
後遺障害が残った場合、その後遺障害の度合いを「後遺障害等級」というレベルで認定してもらう必要があります。
等級には1級から14級までがあり、1級が一番重篤な障害、14級が一番軽い障害です。
後遺障害等級の認定があれば、示談交渉の際に将来の収入に関する「逸失利益」や、後遺障害が残った「後遺障害慰謝料」を請求することができます。
そのため、後遺障害が残ったら必ず後遺障害等級を申請することが必要です。
後遺障害等級の認定は「後遺障害診断書」の内容が基準になるため、
- 後遺症の詳細が十分に記載されていること
- 十分な検査結果が診断書に記載されていること
という2点が大事なポイントです。
したがって、医師にはもれがないように診断書を作成してもらうことが大事です。
後遺障害認定に必要な検査内容や提出資料は、医師ですら正確に把握していないことがあります。
交通事故のトラブルに強い弁護士に依頼すれば、必要な検査や提出資料について、弁護士が医師に指示し、後悔のないような後遺障害等級を認定してもらうことにつながりやすいのです。
後遺障害が残った場合にやるべきこと、知っておくべきことについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
ぜひご覧ください。
【後遺障害診断書とは】有利に等級認定してもらうための流れとポイント
【後遺障害診断書とは】有利に等級認定してもらうための流れとポイント
5-3-3:等級に不満がある場合は異議申立する
もし、認定された後遺障害の等級に不満がある場合「異議申立」という手続きを行うことで、再度認定し直してもらうことも可能です。
ただし、ただ単に「異議申立」すれば、等級を再度見直してくれるわけではありません。
認定のどこに誤りがあるのか、医学的な根拠に基づいて指摘しなければ、結局同じ等級にされてしまいます。
そのため、後遺障害等級の異議申立について、医学的根拠に基づいて判断できる弁護士に依頼するのが、大事なポイントです。
※ただし「異議申立」で等級が見直してもらえることは稀です。
5-4:示談交渉時
示談交渉で、最大限の示談金をもらうためには、弁護士に依頼することが重要です。
なぜなら、1章で解説したように、保険会社は「できるだけ示談金を安く抑えたい」と考えるからです。
特に、後遺障害慰謝料の場合は慰謝料の算出基準に3つのものがあるのですが、保険会社は独自の基準である「任意保険基準」で慰謝料を計算します。
そのため、慰謝料の額が本来もらえる最大の額より、ずっと少なくなってしまうことがあるのです。
弁護士に依頼すると「裁判基準」の示談金で交渉することができるため、保険会社が提示した示談金より、さらに高額が請求できる場合があります。
そこで、1円でも多く示談金を増額させるためには、交通事故の示談交渉に強い弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故の示談交渉に強い弁護士の選び方については、こちらの記事を参考にしてみてください。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説
さらに、弁護士費用の相場や、弁護士費用特約について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
【事例別】交通事故の弁護士費用を最大限安くおさえる方法を徹底解説
示談交渉はやり直しできないので、できるだけ早めに相談するのがよいでしょう。
6章:人身事故の慰謝料請求は弁護士に依頼しよう
人身事故の被害にあった場合、できるだけ早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。
6-1:弁護士に依頼すべき理由
弁護士に依頼すべきなのは、、
- 医師の指示のもと、適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらえる(適切な後遺障害認定を受けられるため、適切な慰謝料をもらえる)
- 面倒な手続きを任せられ、手間、時間、ストレスが最小限になる
- 慰謝料の金額が「裁判基準」で計算され、慰謝料が高額になる
といったメリットがあるからです。
特に重要なのが、慰謝料の計算基準が「裁判基準」になるという点です。
慰謝料の計算基準には、3つのものがあるのですが、弁護士に依頼した場合に適用される「裁判基準」が最も高額になります。
しかし、あなたが自分で請求しても、「裁判基準」が適用されることはほぼあり得ません。
そのため、より高額の慰謝料を請求したい場合は、弁護士への依頼が重要なのです。
慰謝料の基準や相場について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説
6-2:弁護士費用の負担は0円になる場合もある
弁護士に依頼するといっても「弁護士費用の負担が大きいなら依頼できない」とお考えかもしれません。
しかし、実は「弁護士費用特約」が利用できれば、あなたの弁護士費用は保険会社が負担してくれるため、あなたの負担は原則0円で依頼可能です。
詳しくは以下の記事で説明しています。
【事例別】交通事故の弁護士費用を最大限安くおさえる方法を徹底解説
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
【人身事故の3つの慰謝料】
- 入通院慰謝料・・・入院、通院した日数に応じて支払われる。
- 後遺障害慰謝料・・・後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害の度合いに応じて支払われる。
- 死亡慰謝料・・・被害者が死亡してしまった場合に、家族構成に応じて支払われる
この記事の内容を参考にして、少しずつ行動を始めてみてください。