【弁護士が解説】交通事故の後遺障害等級9級各症状と慰謝料相場
この記事を読んで理解できること
- 後遺障害等級9級の17種類、各号の症状
- 損害賠償金の種類と3つの算出基準
- 後遺障害等級9級の2つの慰謝料と相場
- 後遺障害等級9級で慰謝料以外にも請求できるお金がある
- 適切な等級に認定してもらうための流れとポイント
- 後遺障害等級9級の慰謝料請求は弁護士に依頼するのがおすすめ
あなたは、
「後遺障害等級9級の症状とは?」
「後遺障害等級9級の慰謝料はいくら?」
「後遺障害等級9級に認定されるにはどうしたらよいの?」
という悩みや疑問をお持ちではありませんか?
結論から言うと、後遺障害等級9級とは、視力・まぶた・指などに後遺障害が残った場合に認定されるもので、症状によって9級1号~17号まであります。
後遺障害等級が認定されることで、被害者は、「後遺障害慰謝料」という慰謝料がもらえます。
この「後遺障害慰謝料」には、算出基準が3パターンあり、以下のとおりどの基準で算出するかによって金額が大きく変わってきます。
このように、裁判基準で慰謝料を算出すると、被害者がもらえる慰謝料は最も大きくなります。
例えば、後遺障害等級9級の場合は、自賠責基準245万円と裁判基準690万円では、もらえる慰謝料の金額が400万円以上も差があります。
1番高い裁判基準での慰謝料をもらうためには、弁護士に依頼することが必須です。
というのも、保険会社は、できるだけお金を払いたくないので、自賠責基準や任意保険基準で算出することで安く済ませようとするからです。
また、弁護士に依頼することで、複雑な手続きや示談交渉なども対応してくれるので、ぜひ1度は交通事故専門の弁護士に相談することをおすすめします。
そこでこの記事ではまず、9級の各号の症状、慰謝料の3つの算出基準やもらえるお金について解説します。
さらに、後遺障害等級認定までの流れやポイント、弁護士に依頼するメリットについても解説します。
知りたいところから読んで、これからの行動に活用してください。
目次
- 1章:後遺障害等級9級の17種類、各号の症状
- 1-1:1号)両眼の視力が0.6以下になったもの
- 1-2:2号)1眼の視力が0.06以下になったもの
- 1-3:3号)両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
- 1-4:4号)両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 1-5:5号)鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
- 1-6:6号)咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
- 1-7:7号)両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 1-8:8号)1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
- 1-9:9号)1耳の聴力を全く失ったもの
- 1-10:10号)神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 1-11:11号)胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 1-12:12号)1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
- 1-13:13号)1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
- 1-14:14号)1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
- 1-15:15号)1足の足指の全部の用を廃したもの
- 1-16:16号)外貌に相当程度の醜状を残すもの
- 1-17:17号)生殖器に著しい障害を残すもの
- 2章:損害賠償金の種類と3つの算出基準
- 3章:後遺障害等級9級の2つの慰謝料と相場
- 4章:後遺障害等級9級で慰謝料以外にも請求できるお金がある
- 5章:適切な等級に認定してもらうための流れとポイント
- 6章:後遺障害等級9級の慰謝料請求は弁護士に依頼するのがおすすめ
- まとめ
1章:後遺障害等級9級の17種類、各号の症状
後遺障害等級9級については、交通事故との因果関係が認められる障害のうち、目や耳、臓器、指など、17種類の症状が各号にて規定されています。
各号の症状を表す文章はかなり難しく、わかりづらいので、一覧表の後に解説していきます。
1-1:1号)両眼の視力が0.6以下になったもの
交通事故による障害で、両眼の視力が0.6以下になった状態です。
ここでいう視力とは、眼鏡やコンタクトレンズをしたままの、矯正視力をさします。
1-2:2号)1眼の視力が0.06以下になったもの
片目(1眼)の視力が、眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正した後でも、0.06以下というのが条件です。
1-3:3号)両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
両眼に、視野の半分が見えない症状(半盲症)や、全周辺からほぼ均等に視野が狭くなる症状(視野狭窄)、視野に不規則な欠損や島状の欠損がある症状(視野変状)がある状態です。
1-4:4号)両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
両眼のまぶたに著しい欠損を残すものとは、まぶたを閉じたときに角膜を完全に覆うことができない状態です。
1-5:5号)鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
鼻の軟骨部分の、全部またはほとんどを失い、嗅覚や呼吸機能が大きく損なわれた状態です。
鼻は、顔の中心にあるので、「外貌に著しい醜状を残すもの」として、7級12号に認可される可能性もあります。
1-6:6号)咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
食べ物を噛んで飲み込む(咀嚼)機能と言葉を話す(言語)機能の両方に障害が残った場合に認定される症状です。
咀嚼機能の障害とは、堅いものが食べられず、あるいは十分に食べられないことが医学的に確認できることとされています。
言語機能の障害とは、以下の4種類の発音方法のうち、1種類の発音方法が出来なくなった場合とされています。
口唇音:ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ
歯舌音:な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、ざ行、じゅ
口蓋音:か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
咽頭音:は行
1-7:7号)両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の会話が聞き取れない状態です。
両耳の聴力が、測定値で60dB以上、または50dB以上かつ最高明瞭度が70%以下の場合となります。
1-8:8号)1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
片方の耳が、接するほど近寄っても大声が聞き取れないほどの聴力で、もう片方の耳が、1メートル以上の距離では普通の会話が聞き取れない状態です。
片方の耳の平均純音聴力レベルが80dB以上で、他方の平均純音聴力レベルが50dB以上の場合となります。
1-9:9号)1耳の聴力を全く失ったもの
片方の耳の聴力を完全に失ってしまった状態です。完全に失われた状態とは、平均純音聴力レベルが90dB以上の場合となります。
1-10:10号)神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
交通事故によって、精神に障害が残ったもの
①高次脳機能障害
②脳の損傷による手足の麻痺
③脳の器質的な損傷を伴わない精神障害
④外傷性てんかん
⑤頭痛、頭重感など
⑥めまい、平衡感覚障害など
の場合となります。
1-11:11号)胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
交通事故によって、次の各臓器に機能障害を残し、労働能力がかなり制限された状態です。
①呼吸器
②心臓
③消化器系
④ヘルニア
⑤泌尿器
1-12:12号)1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
片方の手の親指、あるいは親指を除く2本の指を失ってしまった場合です。
1-13:13号)1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
片方の手の、親指を含む3本の指、または、親指以外の4本の指全てについて、
・指の末節骨(指先の第1関節)の長さ2分の1以上を失った
・第2関節,第3関節(指の根本)の可動域が2分の1以下になったもの(親指は第1関節も含む)
・親指については、外転(橈側、掌側のいずれか)の可動域が、2分の1以下になった場合も含む
・手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの
以上のいずれかに該当する状態です。
1-14:14号)1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
片方の足の、親指を含む2本以上の指を失った状態です。
1-15:15号)1足の足指の全部の用を廃したもの
片方の足の、全部の指で、
・親指の末節骨(指先の第1関節)の長さ2分の1以上を失った
・親指を除く4本の指すべてが、末節骨から中節骨(指先の第2関節)の間で切断した
・第2関節より先の可動域が、2分の1以下になった
などの場合となります。
1-16:16号)外貌に相当程度の醜状を残すもの
交通事故によって、外見として大きな傷跡が残った場合をいいます。
具体的には、顔に長さ5cm以上の線上の傷跡が残った場合などを指し、男女の差はありません。
1-17:17号)生殖器に著しい障害を残すもの
交通事故によって生殖器に障害が残った状態です。
・陰茎の大部分を欠損したもの
・勃起障害を残すもの
・射精障害を残すもの
・膣口狭さくを残すもの
・両側の卵管に閉塞もしくは癒着を残すもの
などの場合となります。
以上、後遺障害等級9級の各号の症状を解説しましたが、わかりにくいところも多いと思います。
各号の中には、決まった検査項目や基準値などが規定されていないものも多くあります。
また、医師の方でも、後遺障害に詳しくない方もおられますし、適切な検査をする機材をどこの病院でも揃えているわけでありません。
2章:損害賠償金の種類と3つの算出基準
後遺障害に認定されることで、被害者は、後遺障害慰謝料を請求できます。
さらに、それ以外の損害賠償金も、加害者に請求することができます。
また、後遺障害慰謝料などの損害賠償金には、3つの算出基準があります。
どの基準で損害賠償金を請求するかによって、もらえるお金に大きな差が生じます。
この章では、損害賠償金の種類と、その金額を決める3つの算出基準について解説していきます。
2-1:損害賠償金の種類
交通事故で後遺障害等級が認定された場合、状況に応じて以下の損害金をもらうことができます。よく言われる「慰謝料」とは、この損害金の中の一部に過ぎないのです。
それぞれ簡単に説明すると以下の通りです。
<算出基準によって金額が大きく変わるもの>
・入通院慰謝料…入院、通院の期間や日数に応じて支払われる慰謝料。
・後遺障害慰謝料…後遺障害等級に応じて支払われる慰謝料。
・死亡慰謝料…被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料。
・休業損害・・・事故によって仕事を休まざるを得ず、損害が発生した分について支払われる。
・逸失利益・・・後遺障害が残り、将来得られるはずの収入が減少してしまう場合に支払われる。
<主に実費が支払われるもの>
・治療費・・・治療にかかったお金で、保険会社から病院に直接支払われることがほとんど。
・交通費・・・治療のための通院にかかった交通費。
・入院雑費・・・入院の際にかかった生活必需品などの雑費。
・付添看護費・・・被害者の症状が重い、被害者が乳幼児などの場合で、看護が必要な場合に支払われる。
・介護費・・・ケガにより介護が必要になった場合に支払われる。
・装具・器具費・・・事故により歩行が困難になるなど、装具・器具が必要になった場合に支払われる。
・家屋改造費、自動車改造費・・・車椅子生活になるなどで、家や自動車の改造が必要になった場合に支払われる。
・葬儀費用・・・事故によって亡くなった場合に支払われる。
このうち、金額が大きくなりやすい「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」は3章で、「休業損害」「逸失利益」は4章で詳しく説明します。
2-2:損害賠償金の3つの算出基準
損害賠償金の中には、後遺障害慰謝料や入通院慰謝料など、3つの算出基準によって大きく金額が異なるものがあります。
○自賠責基準:自賠責保険が定めた最低限度の基準
○任意保険基準:任意保険会社が独自に定めた基準
○裁判基準:過去の判例をもとに、弁護士に依頼することで得られる最も高額な算出基準
上図のように、自賠責基準は被害者救済のための最低限度の補償であり、任意保険基準は、任意保険会社が独自で定めた算出基準で、一般的には自賠責基準に多少増額した補償金額となっているようです。
一例をあげると、後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料として、自賠責基準では補償限度額が245万円、裁判基準の補償金額は690万円となっています。
裁判基準は、弁護士に依頼することで得られる過去の判例に基づいた算出基準で、最も高額な補償となります。
次の3、4章では、自賠責基準と裁判基準それぞれの賠償金額を比較しながら解説していきます。
「任意保険基準の賠償金額」
各保険会社が独自の基準で設定していますので具体的な金額は公開されておらず、正確に計算、比較することができません。
一般的には自賠責基準と同程度か多少増額した査定金額となっているようです。
3章:後遺障害等級9級の2つの慰謝料と相場
後遺障害等級9級の損害賠償項目として、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります
入通院慰謝料は、入院、通院期間によって算出され、後遺障害慰謝料はその等級によって限度額が決められています。
3-1:入通院慰謝料
入院、通院にかかる治療費や交通費だけでなく、その期間の精神的損害に対する賠償として、入通院慰謝料があります。
ここでは入院が6ヶ月、通院が3ヶ月(その内、病院にかよった日数は20日)の場合を想定して比較していきます。
■自賠責基準の計算方法
①実入通院日数
病院に入院した日数と病院に通った日数の合計です。
この場合は、入院6ヶ月180日 + 通院日数20日 = 200日
②入通院期間
病院に通った期間の合計です。
この場合は、入院期間6ヶ月180日間 + 通院期間3ヶ月90日間 = 270日間
実入通院日数を2倍した日数と入通院期間を比較して、どちらか短い方の日数に「4200円」をかけて計算します。
上記の条件の場合、②の270日の方が、①の200日×2=400日より少ない日数になるため、270日に4200円をかけた金額が慰謝料となります。
270日 × 4200円 = 113万4000円
自賠責基準の入通院慰謝料は、113万4000円となります。
ただし、自賠責保険の場合は、傷害による損害の限度額は、治療費などを含めて120万円と決められているので、実際には、自分で請求しても、自賠責基準で計算した慰謝料すらもらえないこともあります。
■裁判基準の計算方法
【裁判基準の入通院慰謝料(通常のもの)】
※単位は万円
入院が6ヶ月、通院が3ヶ月(病院にかよった日数は20日)の場合
入通院慰謝料は、267万円 になります。
自賠責基準で計算した入通院慰謝料は113万4000円でしたが、弁護士に依頼して算定される裁判基準の入通院慰謝料は267万円とかなり高額になります。
3-2:後遺障害慰謝料
交通事故が原因で後遺障害が残ったとき、医師に後遺障害診断書の作成を依頼して、後遺障害認定の申請を行ないます。
そして、後遺障害と認定された場合、その等級に対応した後遺障害慰謝料を請求することができます。
○後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料
後遺障害等級9級の、後遺障害慰謝料として、自賠責基準で定められた補償金額は245万円、裁判基準で定められた後遺障害慰謝料は690万円となっています。
後遺障害慰謝料も、自賠責基準より裁判基準のほうがかなり高額になります。
4章:後遺障害等級9級で慰謝料以外にも請求できるお金がある
前章の精神的損害に対する2つの慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)の次に、ここでは、被害者の収入に対する損害を見ていきます。
○休業損害と、逸失利益
4-1:休業損害
休業損害とは、交通事故の被害者がケガのために働けず、その期間に得られなかった収入に対する賠償のことです。
交通事故で休んだために会社から支払われなかった給与やボーナスなどが対象です。
休業損害の計算は、まずあなたが仕事で得られるはずだった1日当たりの収入「日額基礎収入」を算出し、ケガのために働けなかった「休業日数」をかけて計算します。
「休業損害」=「日額基礎収入」×「休業日数」
日額基礎収入の算出方法は所得の種類によって異なり、また休業日数は治療期間中、実際に休んだ日数ではなく、ケガの内容、程度、治療過程や仕事の内容などによって妥当な日数が算出されます。
ここで、例として被害者が会社員(給与所得者)の場合の計算方法を解説します。
○休業損害(会社員の場合)
ここでは入院が6ヶ月、通院が3ヶ月(その内、病院にかよった日数は20日)の場合を想定して比較していきます。
入通院日数は、6ヶ月180日 + 通院日数20日で、
仕事を200日休業した場合
■自賠責基準の計算方法
自賠責基準の休業損害は、日額基礎収入を5700円として計算します。
休業損害 = 5700円 × 休業日数
日額基礎収入が、5700円を超えると立証された場合は、19000円を上限としてその実額で計算されます。
■裁判基準の場合
裁判基準の日額基礎収入は、自賠責基準のように定額ではなく、交通事故前3か月分の収入をもとに、日額基礎収入を算出します。
場合によっては、交通事故前1年分の収入を元に計算を行う場合もあります。
※3ヶ月で年間収入の平均を計算できない場合は、事故前1年間の収入を365日で割ります。
給与の合計額とは、基本給に残業代や手当などを足した支給額のことです。
税金、社会保険料などの各種控除が差し引かれた差引支給額ではありません。
ここではボーナスは含みません。ボーナスも減少してしまったという場合は、別途計算して請求します。
事故前の給与の証明として、会社から「休業損害証明書」と「源泉徴収票」を作成してもらい、それを保険会社に提出する必要があります。
「休業日数」には、交通事故の治療のために有給休暇を使った場合、その有給休暇も含めて計算できます。
【休業損害の具体例:会社員の場合】
事故前3ヶ月の給与合計135万円
出勤日数70日
入院6ヶ月、通院3ヶ月(20日)
入通院日数200日
仕事を200日休業した場合
■自賠責基準の場合
5700円 × 200日 = 114万円
■裁判基準の場合
135万円 ÷ 70日 = 1万9285円
1万9285円 × 200日 = 385万7000円
例として挙げた後遺障害等級9級の会社員の、休業損害の計算では、自賠責基準の場合114万円、裁判基準の場合は、385万7000円となります。
休業損害の詳しい内容は、こちらをご覧ください。
【交通事故の休業損害とは】相場一覧と高額請求する方法を徹底解説
4-2:逸失利益
逸失利益とは、交通事故による後遺障害や死亡によって失われた、将来得られるはずの利益に対する賠償のことです。
被害者の現在の収入、年齢や後遺障害の等級をもとに計算します。
ここで、具体例として、
・42歳男性
・年収600万円
・後遺障害等級9級11号
の場合を解説します。
■自賠責保険の場合
自賠責保険の基準では後遺障害等級9級の、後遺障害による損失の限度額は(逸失利益と後遺障害慰謝料合わせて)616万円となっています。
つまり、第3章で解説した自賠責保険の後遺障害慰謝料が、限度額245万円でしたので、逸失利益の補償金としては、371万円が限度額となります。
■裁判基準の場合
後遺障害の逸失利益の計算方法は、以下の通りです。
各項目、順番に解説していきます。
○基礎収入の計算
・【会社員(給与所得者)】
会社員の場合は、事故前1年間の実際の収入額を、基礎収入として計算します。
・【個人事業主(事業所得)】
個人事業主の場合は、前年の確定申告で申告した金額を実際の収入として計算します。
・【会社役員(役員報酬)】
会社役員の場合は「労働の対価」として認められる部分のみが、基礎収入として計算できます。
・【専業主婦】
専業主婦の場合は、原則的に「賃金センサス」女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入として計算します。
「賃金センサス」とは厚生労働省の統計のことで、平成30年の女性労働者の全年齢平均給与額は382万6300円ですので、日額基礎収入は10483円となります。
・【学生】
学生の場合も専業主婦と同様に、「賃金センサス」における全年齢平均賃金を基礎収入として計算することが多いですが、その場合も、実際に働くことができる年までの分は控除されます。
こうして、それぞれの収入形態ごとに算出していきます。
○労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺症によって失われた労働力を、後遺障害の等級に応じた喪失率を定めたものです。
【介護が不要な後遺障害の場合】
○労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
「労働能力喪失期間」とは、原則として「症状固定(治療してもこれ以上改善されないという診断)」の日から、67歳までの期間とされます。
例えば42歳で症状固定になった場合は、
67歳-42歳=25年
と計算でき、労働能力喪失期間は25年になります。
ライプニッツ係数とは、この労働能力喪失期間の中間利息を控除するための数値です。
この年令に対応した「ライプニッツ係数」を下記の表から探します。
42歳(労働能力喪失期間は25年)の場合、ライプニッツ係数は「14.094」であることが分かります。
【逸失利益計算の具体例】
それでは、以下の条件で実際に計算してみます。
会社員(年収600万円)→基礎収入600万円
後遺障害等級9級→労働能力喪失率35%
症状固定時42歳→ライプニッツ係数14.094
600万円×0.35×14.094=2959万7400円
逸失利益は2959万7400円請求できる。
逸失利益の計算でも、自賠責基準の補償額は616万円(後遺障害による損害の限度額)、裁判基準の補償額は2959万7400円と、裁判基準の補償額のほうがかなり高額となっています。
5章:適切な等級に認定してもらうための流れとポイント
遺障害等級認定の審査は、妥当な後遺障害等級を認定してもらうために、以下のポイントを押さえて行動することが大事です。
特に重要なのが、保険会社の言うままに行動しないということです。
保険会社は、
「そろそろ治療費を打ち切ります」
「そろそろ症状固定にしましょう」
などと一方的に言ってくることがあります。
しかし、保険会社の言うままに行動すると、妥当な後遺障害等級が認定されず、
慰謝料の金額が大幅に少なくなってしまう可能性があります。
そのため、保険会社の言うままに行動せず、連絡が来たら弁護士に相談することをおすすめします。
後遺障害が残ってしまった場合のやるべきことについて、以下の記事で流れとポイントを詳しく説明しています。
6章:後遺障害等級9級の慰謝料請求は弁護士に依頼するのがおすすめ
交通事故で後遺障害が残った場合は、早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士のメリットと弁護士費用について説明します。
6-1:早めに弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すべきなのは、
- 医師の指示のもと、適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらえるため、妥当な後遺障害等級が認定される可能性が高まる
- 慰謝料の金額が「裁判基準」で計算され、慰謝料が高額になる
- 妥当な過失割合になり、慰謝料が増える場合がある
- 面倒な手続きを任せられ、手間、時間、ストレスが最小限になる
といったメリットがあるからです。
特に重要なのが、慰謝料の計算基準が「裁判基準」になるという点です。
2章で説明した通り、慰謝料の計算基準には、3つのものがあり、弁護士に依頼した場合に適用される「裁判基準」が最も高額になります。
しかし、あなたが自分で請求しても、「裁判基準」が適用されることはほぼあり得ません。
そのため、より高額の慰謝料を請求したい場合は、弁護士への依頼が重要なのです。
慰謝料の基準や相場について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【弁護士が解説】交通事故の慰謝料を1円でも多くもらうための全知識
6-2:弁護士費用を抑えるポイント
あなたは、
「弁護士に依頼したいけど、費用がかかりそうだから?」
と思われていませんか?
もし、あなたやあなたのご家族が加入している保険に、弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用の負担は原則0円になります。
また、弁護士費用特約がなくても、「相談料・着手金0円」「増額した場合のみ成功報酬が発生する」という費用体系を導入している事務所ならあなたの負担は非常に小さくてすみます。
まずは、弁護士にご相談ください。
弁護士費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
後遺障害等級9級の17種類、各号の症状
後遺障害慰謝料の計算で大事な3つの算出基準
後遺障害慰謝料の算出基準として、
○自賠責基準:自賠責保険が定めた最低限度の基準
○任意保険基準:任意保険会社が独自に定めた基準
○裁判基準:過去の判例をもとに、弁護士に依頼することで得られる最も高額な算出基準
この3つの算出基準があります。
後遺障害等級9級の2つの慰謝料と相場
・入通院慰謝料…入院、通院による精神的損害に対する慰謝料
・後遺障害慰謝料…後遺障害による損害に対する慰謝料。後遺障害等級ごとに補償金額が定められています。
後遺障害等級9級で慰謝料以外にも請求できるお金がある
・休業損害…治療期間の収入減に対する補償
・逸失利益…将来の減収に対する補償
適切な等級に認定してもらうための流れとポイント
弁護士に依頼するメリット
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。
弁護士選びや弁護士費用について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説