降格処分とは?タイプ別違法性チェックリストと裁判例や対処法を解説

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

降格処分とは?タイプ別違法性チェックリストと裁判例や対処法を解説
Share
  • lineシェア

    lineでシェアする

  • twitterシェア

    twitterでシェアする

  • facebookシェア

    facebookでシェアする

  • hatenaシェア

    hatenaでシェアする

  • pocketシェア

    pocketでシェアする

チェック
この記事を読んで理解できること
  • 降格処分とは
  • タイプ別!降格処分の違法性チェックリストと対処法
  • 降格処分された場合にあなたがとるべき選択肢

降格処分とは、「社内の地位を下げること」を言います。ただし、降格処分と一口に言っても、降格処分の方法や被る不利益の内容は様々です。

この記事では、降格処分の定義や違法になるケース、降格された際に取るべき選択肢について解説します。

この記事を読んで、降格処分とは何かをおさえましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■降格処分とは、「社内の地位を下げること」

■降格処分は大きく分けて2つの方法による

①懲戒処分としての降格
②人事異動としての降格
(a)降職(解任)
社員の役職やポストを下げること
(b)降格(降給)
降格とは、社員の職能資格や給与等級を下げること

※降格処分が違法であれば、賃金の差額を請求することができます。

■降格処分について、弁護士に相談する際に集めておくべき証拠

  • 就業規則
  • 降格処分について書かれた書面やメール
  • 降格処分に至る経緯をまとめたメモ
  • 退職する際には①残業代請求②失業保険の受給を忘れない
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

1章:降格処分とは

降格処分とは「社内の地位を下げること」を言います。降格処分の方法は、大きく2つにわかれています。

それぞれ、内容を見ていきましょう。

① 懲戒処分としての降格
懲戒処分とは、社員として果たすべき義務や規律に反した人に対し、制裁を与えることです。

このうち、懲戒処分としての降格とは、あなたが会社に不利益を生じさせた場合に、罰として会社内の地位を下げる、というものです。

例えば、

・社外で痴漢行為をしたため、部長から課長に降格する
・セクハラをしたため、支店長から平社員に降格する

などが懲戒処分としての降格にあたります。

懲戒処分としての降格をする場合には、あらかじめ就業規則に処分理由が書かれている必要があります。

具体的には、以下のような記載が就業規則に書かれていないといけません。

業規則に処分理由が書かれている必要がある


② 人事異動としての降格
人事異動としての降格は、会社がもともと持っている権利として、あなたを降格することを言います。

そのため、就業規則に書かれている必要もなく、懲戒処分としての降格より適法と認められやすい、という性質があります。

人事異動としての降格は、さらに2つに分類することができます。

(a)解任(降職)
解任とは、社員の役職やポストを下げることを言います。例えば、部長から課長にポストを下げる、などがこれにあたります。
解任をされる場合、必ずしも基本給が減るわけではありません。もっとも、役職手当がなくなることによって、実質もらえる賃金は減ってしまいます。

 

(b)降級(降格)
降級とは、社員の職能資格(能力ごとのランク分け)や給与等級(ランク別に給与を決めること)を下げることを言います。
この場合には、資格や等級に準じて、基本給が減ってしまいます。

まとめると、以下のようになります。

 
人事異動としての降格

実際のところ、降格処分が懲戒処分として行われたのか、人事異動として行われたのかは、判断が難しいところがあります。

適性不足や能力がないことを理由として降格処分がなされる場合、裁判所は人事異動としての降格と判断する傾向にあります。
 
次の章では、降格処分のタイプ別に違法性チェックリストを用意しました。

2章:タイプ別!降格処分の違法性チェックリストと対処法

1章で解説した降格処分のタイプ別に、違法なケースと対処法を説明します。

2-1:降格処分の2つのタイプと違法性チェックリスト

先ほど、降格処分には①懲戒処分として行われる場合と、②人事異動として行われる場合があることを解説しました。

2-1-1:タイプ①懲戒処分の場合

懲戒処分としての降格は、以下のような条件を満たさない場合には違法です。

①就業規則に懲戒の根拠があること
②懲戒処分に相当性があること

①就業規則に懲戒の根拠があること

就業規則に書かれていないことを理由として、懲戒処分をすることは許されません。

② 懲戒処分が行為に対して適切なものであること

あなたがしてしまった行為に対し、降格処分が適切と言えなければ、懲戒処分は違法と言えます。

具体的には
・社内の同様のケースでは降格処分がなされたか
・あなたのしたことに対して、降格という処分が重すぎないか

などの点から、適切な処分かを判断します。

降格という処分が重すぎないか などの点から、適切な処分かを判断

 では、具体的にどのような事情があれば違法になりやすいのでしょうか。

【違法性チェックリスト】
ひとつでも該当すれば違法!
□就業規則に懲戒処分の根拠が書かれていない

多く当てはまれば違法の可能性が高い
□同じ事案と比べて、自分だけ降格処分になっている
□規律違反の内容に比べて、降格処分という処分が重すぎる
□就業規則に書かれた手続きを踏んでいない

2-1-2:タイプ②人事異動の場合

人事異動としての降格は、ある程度会社が自由に行うことができます。

もっとも、会社が権利を濫用しているような場合には、降格処分は違法になります。

また、降格により賃金がカットされる場合には、あなたの同意または就業規則の根拠が必要です。

【違法性チェックリスト】
□あなたを降格する業務上の必要がない
□会社が能力不足を補う措置をとっていない(必要な講習を開かない、など)
□賃金カットなどあなたが受ける不利益が大きい
□会社全体を見ても、降職処分をされることは稀である
※賃金カットを伴う場合
□あなたの同意がない
□就業規則に賃金カットを伴う降格処分ができる旨が書かれていない

【コラム】退職願を出したら降格された

「会社に退職願を出したら、正社員からアルバイトに降格されてしまった… 」


悪質な会社の中には、退職金を出したくなかったり、単にいやがらせをするつもりで、退職前にあなたを降格する会社があります。

「退職は降格の理由にはならず、基本的には許されません。このような降格処分を受けたら、弁護士に相談しましょう。」

2-2:降格処分が認められた場合・認められなかった場合

この章では、降格処分が認められた場合と認められなかった場合の実際の裁判例についてみていきます。

2-1-1:懲戒処分のケース

まず、懲戒処分としての降格が認められた例や認められなかった例には、どのようなものがあるのでしょうか。

実際の裁判例を見てみましょう。

【パワハラを理由とする降格が有効とされた裁判例】
Xは部下に対し「今までどうせ適当に生きてきたんだろう」「責任を取れ」などと繰り返し述べた。この行為がパワハラにあたるとして、会社はXを営業部長から担当部長へと1階級、等級を下げた。
→まず、裁判所は「Xの行為はパワハラにあたる」と認定した。その上で、Xは幹部としての地位にあるにもかかわらず、悪質なパワハラ行為をしたとして、降格処分にするのはやむを得ないとした。
(東京地裁平成27年8月7日)

降格処分が懲戒処分として有効とされるためには、社員のやった行為が降格処分に見合ったものといなければなりません。
 

行為が悪質であればあるほど、逆に処分が軽ければ軽いほど、降格処分は有効となりやすいです。

【勤務態度を理由とする降格処分が無効となった裁判例】
Yは高校の数学科教師であるが、①Yの担当するクラスは教室が騒がしく、生徒の管理が不十分である②学習指導計画の提出を怠ったなどの理由から、非常勤講師に降格された。
→降格処分は解雇の次に重い処分であるが、Yの行為は降格処分にするほど悪質なものとは認められない。そのため、降格処分は処分として重過ぎであり、無効である。

懲戒処分は懲戒処分の中でも重い処分であり、重大・悪質な行為をしなければこれは認めらません。
 
このケースでは、確かにYの勤務態度は良好ではないが、降格処分にすべきとまではいえない、と判断されました。このように、懲戒処分としての降格処分は厳しく判断される傾向にあります。

2-1-2:人事異動のケース

次に、人事異動としての降格が認められた例や認められなかった例には、どのようなものがあるのでしょうか。

【セクハラを理由とする降格が有効とされた裁判例】
Xは派遣社員の女性に対し、「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんなところで何してんの。親泣くで。」などと常日頃発言しており、会社はこれをセクハラにあたると認定した。そして、Xに対し、懲戒処分として出勤停止を科すとともに、降格処分として等級を1ランク下げた。
→Xのセクハラ行為は悪質であり、出勤停止という重い処分を科せられている。そのため、降格処分も重過ぎるとは言えず、有効である。
(最高裁平成27年2月26日)

 社員がした行為に対し、降格処分が重すぎないか、というのが判断のポイントになっています。 
 

この事件では1年以上セクハラ行為を繰り返しており、行為が悪質と言えるため、降格処分も相当だと判断されました。

【能力不足を理由とする降格が無効とされた裁判例】
大学教授のYは、授業のスキルが低いという理由で助手に降格されてしまった。
→大学教授から助手に降格するには、授業のスキルが低いというだけでなく、教育や研究に関する能力や実績についても検討しなければならない。しかし、大学は単に授業スキルが低いことを理由として降格処分にしている。そのため、助手に降格する理由がないといえ、降格処分は無効である。
(名古屋地裁平成26年9月18日)

能力不足を理由とする降格が認められるかは、難しい問題です。

能力不足を理由に降格をする場合には、能力不足といえるだけの十分な証拠が必要です。

もっとも、証拠があっても、それが降格処分に値するか、というのは非常に難しい判断になります。

そのため、あなたが能力不足を理由に降格をされたのなら、弁護士に相談するのがベストでしょう。

ただし、能力不足は表向きの理由であり、実際は会社が不当な目的を持って降格処分にした場合は、人事権の濫用として降格処分が認めらません。

【コラム】妊娠を機に降格処分にされた~マタハラのケース

育休をとったことを理由に、降格処分をされた場合にはどうなるのでしょうか。

【マタハラによる降格が無効とされた裁判例】
Yは理学療法士であり、病院のリハビリ科で、訪問リハビリチームの副主任として働いていた。Yは妊娠をきっかけに、訪問リハビリ科より負担の少ない病院リハビリ科への異動を希望した。病院側はこの希望を受け入れたが、異動に際し、Yを副主任から外すことにした。Yは渋々これを受け入れたが、その後副主任に戻してもらえることはなかった。
→法は妊娠・出産や育休を理由に解雇などの不利益な取り扱いをしてはならないと定めており、妊娠中の軽い業務への転換をきっかけに降格をすることは不利益取り扱いにあたる。ただし、①降格をされた本人が、降格処分に心から納得しているか、②法の趣旨に反しないといえるような特別な事情がある場合には法の禁止する不利益取り扱いにあたらない
本件で、Yは「いったん副主任を外されたら、二度と副主任に戻れない」という不利益な処分を受けている。しかし、この内容について病院からYへの説明はなく、Yは降格処分に心から納得していたとはいえない。よって、降格処分を有効とした判断はおかしいといえる。
(最高裁平成26年10月23日)

妊娠や出産を機に降格処分をする場合、本人が納得して降格処分を受け入れなければ、降格処分は無効になります。


本人が納得しているかは、降格処分による不利益の大きさや処分に至る経緯などから判断
されます。不利益が大きければ大きいほど、処分の内容について会社がしっかりと説明をする必要があります。

2-3:降格処分が違法だった場合の対処法

降格処分が違法であった場合、もとの地位に戻してもらったり、賃金の差額を請求することが可能です。

降格処分が違法だった場合
 
もっとも、あなたが「降格処分は違法だ」と主張しても、会社は聞いてくれないことがほとんどです。

そのため、降格処分に対し、賃金の差額を請求したい場合には、弁護士に依頼することをお勧めします

弁護士に依頼する場合には、以下のような証拠を集めておくと良いでしょう。

【必要な証拠】
・就業規則
・契約書
・給与明細
・降格処分について書かれた書面やメール
・降格処分に至る経緯をまとめたメモ

3章:降格処分された場合にあなたがとるべき選択肢


降格処分をされた場合に考えるべきことは①退職と②会社からお金をもらうことです。

3-1:退職する


降格された場合、もとの地位に戻ることは難しく、「もう一度頑張る気力がない」という人も多いでしょう。そこで、思い切って退職するのも一つの手です。

では、降格処分をきっかけに退職する場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

【メリット】
・気持ちを切り替えることができる
・転職をすれば昇格の見込みがある

【デメリット】
・転職時の理由に困ることがある
・退職金が減額されたり、もらえないことがある

3-2:お金をもらう(2種類) 

お金をもらう方法としては①失業保険をもらう②賠償金をもらうことが考えられます。

3-2-1:失業保険をもらう


降格処分がきっかけで退職する際には失業保険をもらいましょう。

失業保険をもらう際のポイントは、離職の理由を会社都合にすることです。
 
この方が、自己都合退職に比べ、失業保険の受給期間が長くなります。

自己都合よりも会社都合の方が、最大60日も受給期間が長くなっています。 
 

では、会社理由退職となるのはどのような場合なのでしょうか。

・正当な理由なく降格処分がなされるなど、パワハラといえる事情があった
・降格に伴い賃金カットがされ、以下のような状況になった
① 賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が2か月以上続いた、または退職半年の間に3か月以上あった。
②残業手当を除いた賃金が、それまでの85%になった。

このような事情があったことをハローワークの担当者に伝えれば、会社理由退職として処理してもらえることがあります。

失業保険について、詳しくは以下の記事を参照してください。

失業保険とは?貰える金額から手続きの方法、受給資格などを徹底解説

【コラム】残業代を請求する

「降職されたために退職金が出なくても、代わりに今までの労働の対価として残業代請求をして、会社からお金をもらいましょう。」
 

残業代の計算式は以下の通りです。

残業代=基礎時給×割増率×残業時間
基礎時給=月給÷所定労働時間

残業が多かった人であれば、降格前の退職金と同水準の金額をもらえる場合もあります

「未払いの残業代は、最後の給料日から3年間で時効にかかり、消滅してしまいます。早めに行動を起こしましょうね。」
 

残業代請求について、以下の記事で詳しく説明しています。

弁護士が解説!会社に残業代を請求する2つの方法と集めるべき「証拠」

 

3-2-2:給与の差額をもらう

降格処分をされ、給与をカットされた場合には、今までの給与との差額を請求することができます。

給与との差額がもらえるのは、降格が違法になる場合です。降格処分が違法かどうかは、2-1の違法性チェックリストで確認しましょう。
 

給与の差額を請求する流れとしては、はじめに会社と交渉をし、うまくいかなければ労働審判をします。

それでも会社が賠償金を支払うことに納得しなければ、裁判へと進みます。

労働審判についてはこちらの記事を参照してください。

労働審判とは?手続きの流れや費用、裁判との違いなど弁護士が徹底解説

給与の差額の請求は自分でできないこともありません。

しかし、有利に進めるためには、法律のプロである弁護士に依頼するのが良いでしょう。

まとめ:降格処分について


いかがだったでしょうか。最後に簡単にまとめてみましょう。

・降格処分とは、「社内の地位を下げること
・降格処分は大きく分けて2つの方法による

①懲戒処分としての降格
②人事異動としての降格

(a)降職(解任)
社員の役職やポストを下げること
(b)降格(降給)
降格とは、社員の職能資格や給与等級を下げること

・降格処分が違法であれば、賃金の差額を請求することができる

・弁護士に相談する際には、証拠があると良い

【必要な証拠】
・就業規則
・降格処分について書かれた書面やメール
・降格処分に至る経緯をまとめたメモ

・退職する際には①残業代請求②失業保険の受給を忘れない

降格処分をされてしまたったら、退職も視野に入れつつ、しっかり対策を立てましょう。


 

『残業代請求に強い弁護士』があなたの悩みを解決します

あなたは、こんな悩みをお持ちではありませんか?

  • これから退職予定で、未払い残業代を請求したい
  • すでに退職しているが、以前勤めていた会社に残業代を請求したい
  • 自分の残業代、残業時間に納得がいかない

会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

弁護士法人新橋第一法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

"残業代を取り返したい"
というあなたへ

1人で悩まずに!残業代請求に強い弁護士法人新橋第一法律事務所にご相談ください

今すぐお電話ください!

tel. 0120-649-026 電話で問い合わせる

携帯・PHS可

相談無料土日祝受付

24時間365日対応

Share
  • lineシェア

    lineでシェアする

  • twitterシェア

    twitterでシェアする

  • facebookシェア

    facebookでシェアする

  • hatenaシェア

    hatenaでシェアする

  • pocketシェア

    pocketでシェアする