労働審判とは?手続きの流れや費用、裁判との違いなど弁護士が徹底解説

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

労働審判とは?手続きの流れや費用、裁判との違いなど弁護士が徹底解説
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 労働審判とは
  • 労働審判を有利にすすめるカギは「証拠」にありの重要性
  • こんな方法もある!労働審判以外でトラブルを解決する方法

労働審判とは「専門家と裁判官が一緒になって、すばやく労働問題の解決を図る制度 」を言います。

裁判は長期化してしまう可能性がありますが、労働審判は回数が決まっているので早期解決に役立ちます

この記事では、労働審判の正しい意味や流れ、労働審判で必要な証拠など、労働審判に臨むために必要な情報を集めました。

労働審判を正しく活用し、スムーズに会社と交渉しましょう!

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■労働審判とは

専門家と裁判官が一緒になって、すばやく労働問題の解決を図る制度。

■労働審判の対象となるトラブル

  • 残業代請求
  • 不当解雇
  • セクハラ
  • パワハラ
  • 労働審判に適さない場合

■裁判と比べた場合の労働審判のメリット

  • 結果が出るまでが審理がスピーディー
  • 労働審判は非公開だからプライバシーが守られる
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:労働審判とは


まずは労働審判の正しい意味や労働審判の流れ、必要な証拠などを知りましょう。

労働審判の流れ

1-1:労働審判の対象となるトラブル


あなたが今抱えている悩みは、果たして労働審判で解決できるものなのでしょうか。まずは、

労働審判で解決できるトラブルの種類を確認しましょう。

1-1-1:残業代請求


会社に対し、未払いの残業代がある場合には、労働審判を使ってこれを払うよう求めることができます。

1-1-2:不当解雇

不当解雇とは「労働法や就業規則の規定を守らないで行われる、会社による一方的な解雇」のことを言います。

この場合には、お金をもらったり、会社に戻るという解決方法があります。

1-1-3:セクハラ

あなたは上司などから性的な言動を受け、働きにくいと感じていませんか?

そのような行為は、セクハラに当たる可能性があり、損害賠償請求をすることができます。

ただし、労働審判の対象となるのは、会社に対して賠償金を請求する場合だけです。

上司や同僚に対して賠償金を請求する場合には、民事裁判になりますので注意してください。

1-1-4:パワハラ

パワハラと言うと暴言や暴力が思い浮かびますが、精神的な攻撃も含みます

パワハラをされた場合には、これをやめるよう求めることもできますし、少し難しいですが賠償金を貰うこともできます。

ただし、ここでも労働審判の対象となるのは、会社に対して賠償金を請求する場合だけです。

上司や同僚に対して賠償金を請求する場合には、民事裁判になります。

1-1-5:労働審判に適さない場合


労働審判では解決できないものとして、以下のものがあります。

・社員同士のトラブル
・整理解雇により、同時に多くの社員が解雇された場合
・過労死などの損害賠償事件で、会社の責任が認められるかの判断が難しいケース
・公務員に関するトラブル・会社が団体交渉を拒否した、などの不当労働行為に関するトラブル

1-2:裁判と比較したときのメリット


労働審判は裁判と違い、判決が出るわけではありません。

しかし、判決と同じ効力があるため実効性があり、かつ審理結果も早く出終わるため、労働問題を解決するにはぴったりな制度と言えます。

ここでは、労働審判と裁判を比べた時のメリットについて紹介します。

・結果が出るまでが審理がスピーディー
裁判が終了するまで長ければ数年かかるのに比べ、
労働審判は3回以内の期日で審理が終わるのが原則ですときには1回や2回の審理で終わることもあります。

なお、労働審判の申立てから手続きがすべて終了するまでかかる日数は、平均して71.6日(平成23年度最高裁判所調べ)と なっています 。

 

・労働審判は非公開だからプライバシーが守られる
裁判の多くは公開の法廷で行われますが、労働審判は非公開です。プライバシーを害されることがないので、安心して手続きを進めることができます。

1-3:労働審判全体の流れ

労働審判手続き全体の流れ

労働審判は、上記の図のように、申立て、期日における話し合い、労働審判または調停成立というプロセスで進みます。
*期日とは労働審判の話し合いのために指定された時間のことを言います。

期日は原則3回までとされますが、1回や2回で終わることもあります。

1-4:弁護士に依頼するのがオススメ【特に残業代請求に強い弁護士がよい理由】


労働審判は、自分で行うよりも弁護士に依頼するのがオススメです。これはどうしてなのでしょうか?

【弁護士をおすすめする理由】
①法的知識が豊富
法的に見て、申立書をどのように書くか、どのような証拠を集めるかが労働審判で良い結果を残す重要なポイントになってきます。これは、法律の素人にはなかなか難しいところです。

②裁判官の説得に負けない
弁護士以外の人が労働審判を行うと、必ずぶつかるのが「裁判官の説得」です。裁判官は法律のプロですから、何とかしてあなたを丸め込もうとしてきます。 説得し、早く結果を出そうとしてきます。しかし、弁護士に頼めば対等にやりあうことができ、裁判官が無理な説得をしてくることもありません

なお、労働審判は、弁護士の得意不得意がはっきりする手続きです
どれだけ長く弁護士をやっていようとも、労働審判の経験自体が少ないと、会社や裁判官の説得に簡単に騙されて少ない額になってしまうこともしばしばです。
また、労働審判は、その地方ごとや裁判官ごとに傾向が違うので、全国の労働審判の情報を入手できる残業代に強い弁護士とそれ以外では、対策のとり方が違うのです。

労働審判の圧倒的な経験がある弁護士とそれ以外の弁護士で結果が変わる可能性が高いのです。

労働審判を申し立てたい場合は、残業代に強い弁護士を選ぶようにしましょう。

1-5:一回の手続きの流れ

労働審判手続き全体の流れ

労働審判手続きの流れのうち、ここでは申立てから終了までの個別の流れについて紹介していきます。

【申立て】
裁判所に申立書を提出することです。

【第一回期日】
第一回期日では、争点整理と証拠調べを行います。争点整理とは、あなたと会社が何を争っているのか、明確にすることです。

証拠調べとは、きちんとしたやり方が決まっているものではなく、書類を調べたり、必要があれば証人を呼んで証言してもらったりします。


実際の経過ですが、提出された証拠などをもとに、裁判官や専門家が質問形式で話を進めていく形になります。

【第二回・第三回期日】
第一回で裁判官の心証が形成されているので、第二回以降は金額について交渉するだけです 。

【審判】
調停がうまくいかなかった場合には、今までの手続きを踏まえ、裁判官と専門家が審判を下します。書面で通知されることもありますが、対面で言い渡される場合がほとんどです。

【調停】
調停とは、あなたと会社の話し合いによりトラブルを解決することです。この場合には労働委員と裁判官が調停案を作り、それをもとに話し合いを進めていきます。

【法24条による終了】
労働審判をするのに適切な事案ではない、と判断されると、そこで労働審判が終了し、裁判へと移行します。
例えば、
・就業規則不利益変更など、多くの社員が当事者として関係してくる場合
・多数が同時に解雇された場合

などがこれにあたります。

審判の内容に納得がいかなければ2週間以内に裁判所に異議の申し立てをすることになります

異議の申し立てがあると、審判は効力を失い、地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます

1-6:労働審判の費用

労働審判に係るお金の内訳は

・裁判所の手数料
・弁護士費用

になります。

【裁判所の手数料】
労働審判にかかる費用は、1000万円までは民事調停の半額とされます裁判所に支払う手数料は、請求する金額、つまりあなたがいくらの金額を相手方(会社)に訴えたかによって変動します。

具体的には、以下の通りです。

《残業代・パワハラ・セクハラなど(不当解雇以外のトラブルの場合)》
請求する金額に応じる
手数料:請求額10万円まで―500円
    請求額50万円―2500円
    請求額100万円―5000円
※詳しくはこちら(https://www.courts.go.jp/vcms_lf/315004.pdf)を参照してください。

費用はすべて収入印紙で払います。収入印紙は郵便局や法務局で購入できます。

 

(例1)
会社に対し、パワハラを理由に50万円の損害賠償をする場合
請求額は50万円なので、2500円かかる

《不当解雇の場合》

不当解雇の場合は、「解雇から申立てまでの賃金と将来1年分の賃金を合計した金額」と「160万円」とを比べ、多い方が請求額となります。


(例2)解雇から労働審判を申し立てるまでの賃金が60万円、将来1年分の賃金が200万円の場合
→解雇の場合は、解雇から申立てまでの賃金と将来1年分の賃金を合計した金額と160万円との多い方が請求額となる
60+200=260万円の方が160万円より大きいので、請求額は260万円

手数料は9000円となる

【弁護士費用】

弁護士に依頼する場合には、その料金も別途かかりますので注意してください。

相談料:1時間5000円が相場です。
着手金:10~20万円が相場です。
報酬:最終的に認められた額の15~30%が相場です。

ただし、完全成功報酬の弁護士事務所を選べば、着手金・相談料が無料になります。

2章:労働審判を有利にすすめるカギは「証拠」にありの重要性


労働審判をするにあたって有利に進めるためには、証拠を集めておくことがとても重要です

ここでは、トラブル別に主な証拠を一覧にしました。

必要な証拠をしっかり確認し、自分に有利な結果を残しましょう!

2-1 :残業代請求の場合

・就業規則や労働契約書
・タイムカード
・会社のパソコンの利用履歴
・業務日報
・運転日報
・メール・FAXの送信記録
・シフト表
・給与明細

残業代請求について詳しくは以下を参考にしてください。

【退職後でも可!】残業代請求の2つの方法と在職中から集めることができる証拠

2-2:不当解雇の場合

・就業規則や労働契約書
・解雇通知書
・日記やメールなど
・ICレコーダーで録音した音声

あなたが不当解雇に悩んでいるのなら、以下の記事を参考にしてください。

不当解雇した会社を訴える!丸わかり訴訟マニュアル

2-3:セクハラ

・セクハラによってけがをした/病気になったことを示す病院の診断書
・日記やメールなど
・ICレコーダーで録音した音声

あなたがセクハラに悩んでいる場合には、以下の記事を読みましょう!

会社でセクハラされた!セクハラの判断基準と3つの相談先とは?

2-4:パワハラの場合

・パワハラによってけがをした/病気になったことを示す病院の診断書
・日記やメールなど
・ICレコーダーで録音した音声

パワハラのチェックリストや具体的な対処法についてはこちらのリンクを参照してください。

【弁護士が徹底解説】パワハラのチェックリストと4つの対処法

3章:こんな方法もある!労働審判以外でトラブルを解決する方法


労働問題を解決する方法は、労働審判に限られません。

ここでは、さまざまなトラブル解決方法とそのメリット・デメリットについて紹介していきます。

労働問題のトラブル解決方法としては、以下のものがあります。

【労働組合に相談する】
労働問題を解決するためには、労働組合に相談するのも良いでしょう。労働組合とは、給与や労働時間などの、労働条件を良くするために働く団体のことをいいます。

労働組合に相談をした場合、組合があなたに代わり、会社と話し合いをしてくれます。

■メリット
・会社は労働組合との話し合いに応じなければならないので、逃げることができない 
・組合があなたに代わって交渉してくれるので、心理的な負担が少ない

■デメリット

・労働組合との交渉では、基本的には解雇予告金など多少のお金をもらえるにすぎない。そのため、会社に戻りたい場合や、賠償金を欲しい場合には向かない。

【都道府県の相談窓口に相談する】
都道府県の相談窓口もトラブル解決に一役買っています。都道府県の相談窓口に相談すると、センターが会社とあなたの間に立って、話し合いのあっせんをしてくれます。

■メリット
・都道府県が話し合いの仲介役になってくれるため、比較的スムーズに会社と話し合いをすることができる

■デメリット
・都道府県はあくまで仲介役なので、自分で会社と話し合わなければならない。直接会社と話し合うため、ストレスを感じることもある

【労働基準監督署に相談する】
三つ目の方法として、労働基準監督署への相談があります。労働基準監督署とは、会社が法律違反をしていないか取り締まるところです。ここでは、法律違反があるか調べ、これがあるとわかれば立ち入り検査や指導を行ってくれます。

■メリット
・労働基準監督局は、会社に対して罰則を科すなどことができ、会社に対して影響力があるといえる

■デメリット
・労働基準監督局はとても忙しいため、個人の問題だとなかなか動いてくれない                    
・賠償金をもらうなど、個別的な解決は難しい

【弁護士に交渉を依頼する】

労働審判や裁判に移行する前に、弁護士に交渉を依頼する方法があります。特に残業代請求などでは、ほとんどのケースで弁護士の交渉により解決することができます。

弁護士費用はかかりますが、柔軟な解決を図ることができるのでオススメです。ができます。

■メリット
・早期に解決することができる
・柔軟な解決を図ることができる

■デメリット
・弁護士費用がかかる。

【裁判を起こす】
最終的な解決方法は、裁判を起こすことです。裁判では法的な主張やテクニックが必要になってきますので、必ず弁護士に相談しましょう。

■メリット
・話し合いが難航しても、判決によって勝敗がはっきりつく。
判決が出るので実効性がある。

■デメリット
結果が出るまでに時間がかかる

まとめ:労働審判


労働審判についてのイメージはつかめたでしょうか。最後に簡単にまとめてみましょう。

【労働審判の流れ】

・自分で労働審判をやると、裁判官の説得に負けてしまうので、弁護士に頼むのがオススメ
・労働審判にかかる費用は、裁判所の手数料と弁護士費用
・労働審判に臨む前に、証拠を集めておくことが重要
・労働審判以外のトラブル解決方法として、労働組合、都道府県の相談窓口、労働基準監督署、弁護士による交渉、裁判がある

労働審判は、あなたが思っているより簡単にすることができます。

残業代未払いやセクハラなど、今抱えている問題があれば、労働審判ですっきり解決しましょう。

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