- 更新日:2024.10.09
- #うつ病休職
うつ病で休職する流れとメリットや復職・退職後にやるべきことを解説
この記事を読んで理解できること
- うつ病を理由に休職するには
- うつ病で休職するメリット・デメリット
- うつ病で休職した後にやること
あなたは、
「うつ病を理由に休職はできる?」
「うつ病で休職する場合は、何をすれば良いんだろう?」
「うつ病で休職したいけれど、休職後のことが心配」
などとお考えではありませんか?
うつ病になってしまうと、とても仕事などしていられなくなりますよね。
そのため、「休みたい」と思うことは当然です。
しかし、休職の手続きが分からなかったり、「お金のこと」「仕事のこと」など心配事があって、行動できずにいるのではないでしょうか?
でも、安心してください。
休職のための正しい手続きや流れを知っておけば、一つずつ進めていくことで、会社に認められた形で休職することができます。
そこでこの記事では、まずはうつ病を理由に休職するにはどうすればいいか、うつ病で休職するメリット・デメリットについて解説します。
そして、うつ病で休職するためにやるべき全手順と、うつ病で休職した後にやることについても解説します。
しっかり読んで、次の行動のために活用してください。
目次
1章:うつ病を理由に休職するには
うつ病を理由に休職するために、休職手続きをする流れは、次のようになります。
- 専門機関に相談する
- 会社の休職制度を確認する
- 傷病手当金の申請をする
それぞれ解説していきます。
1-1:専門機関に相談する
うつ病を理由に、会社に休職を申し出る際には、必ず医師の診断書の提出が求められます。
そのため、まずはかかりつけの心療内科や精神科の医師に、現在の状況をきちんと説明して、体調不良で仕事に支障が出たり、仕事の続行が難しいことを理解して貰うことが重要です。
そのうえで、医師の診察を受けて診断書を発行してもらいましょう。
かかりつけの医師がいない場合は、勤め先の産業医に相談することをおすすめします。
産業医とは、労働者の健康管理を目的として選任される医師のことで、労働安全衛生法に基づき、労働者数が50人を超える会社では配置が義務づけられています。
1-2:会社の休職制度を確認する
うつ病になってしまった場合、休職できるかどうかは、会社の就業規則に休業に関する規定(休職制度)が定められているかによります。
休職制度とは、社員が病気やケガなどの事情によって働くことができない場合に、会社が一定期間の労働義務を免除して社員の身分を保証する制度です。
ただし、休職制度は、労働基準法などで規定されたものではないため、適用される条件や休職期間、待遇などは会社ごとに異なっています。
そのため、あなたが休職できるかどうかは、
- 就業規則を確認する
- 上司や人事部に聞いてみる
という方法で分かります。
就業規則に以下のような文章があれば、申請すれば休職できる可能性があります。
【就業規則の一例】
(休職)
第〇条
1.社員が以下の各号の一に該当するときには休職を命ずることがある。
①業務外の傷病により継続、断続を問わず30日以上欠勤があるとき
②精神または身体上の疾患により労務提供が不完全なとき
③家事の都合、その他やむを得ない事由により1か月以上欠勤したとき
④公の職務につき、業務に支障があるとき
⑤出向をしたとき
⑥前各号のほか、特別の事情があって、会社が休職をさせることを必要と認めたとき
2.ただし、第〇条の定める休職期間中に治癒(回復)の見込みがないと認める場合、会社は休職を命じないことがある。
3.会社は前項における休職の要否を判断するに当たり、社員からその健康状態を記した診断書の提出を受けるほか、会社の指定する産業医もしくは専門医の意見を聴き、これらの意見に基づき要否の判断を行うものとする。
4.社員は、会社が前項の検討を行う目的でその主治医、家族等の関係者から必要な意見聴取等を行おうとする場合には、会社がこれらの者と連絡をとることに同意する等、必要な協力をしなければならない。
5.社員が必要な協力に応じない場合、会社は休職を発令しない。
(休職期間)
第〇条
1.休職期間は次のとおりとする。ただし、試用期間中の社員は対象者から除外する。
①前条1項、1号・2号の場合 6か月
ただし情状により期間を延長することがある。
②前条1項、3号から6号の場合 その必要な範囲で、会社の認める期間
2.休職期間中、賃金は支給しない。
3.休職期間中は、原則として勤続年数に通算しない。ただし、年次有給休暇の定例付与日数の基準となる勤続年数には通算する。
4.休職中の社員は、休職期間中は、療養に専念しなければならない。
5.休職中の社員は、従業員の資格を持つ者であるため、会社の規則・命令等を守らなければならない。
6.会社は、休職中の社員に対し、会社指定医師の受診を命じることができ、社員は正当な理由がない限り、これに応じなければならない。
7.休職中の社員は、会社の求めに応じ次の書類を提出し、自己の傷病等について、原則として1か月に1回以上報告しなければならない。ただし、会社が認めた場合は省略することがある。
①主治医の診断書
②会社が指定した医師の診断書
③その他会社が必要と判断したもの
(復職)
第〇条
1.私傷病等で休職した者の復職にあたっては、主治医、および、会社が指定した医療機関で受診させ、診断書の提出を命じる。その結果を基に産業医を含めて、復職の可否、および復職時の業務軽減措置等の要否・内容について決定するものとする。正当な理由なく、この受診および診断書の提出を拒否する場合には、復職は認めない。
2.休職の事由が消滅したと会社が認めたときは、業務の都合もしくは当該社員の職務提供状況に応じて会社の決定した職務に配置する。この場合、労働条件の変更を伴うことがある。
3.復職直後に、所定労働時間より短い勤務が妥当と会社が判断した場合で、当該社員が希望する場合は、期間を定めて短時間勤務とする。この場合、労働条件の変更を伴うことがある。
(休職期間の通算)
第〇条
1.休職後に復職した社員について、復職後6か月以内に同一傷病または類似傷病と会社が判断した場合、または欠勤を繰り返すなどして勤務に耐えないと判断された場合、会社はその従業員に対し、復職を取り消し、ただちに休職させる。
2.その場合における休職期間は復職前の休職期間の残日数(ただし、残日数が30日に満たないときは30日)とする。
(自然退職)
第〇条
休職期間終了日に復職できないときは、自然退職とする。
そこで、うつ病で休職できるか、また何日まで休職できるかなど、まずは就業規則もしくは人事部等に聞いて確認してみましょう。
多くの会社では、就業規則で精神または身体上の疾患(病気)を理由にした休職を認めているようです。
1-3:傷病手当金の申請をする
傷病手当金とは、健康保険に加入している人が、在職中に何らかの病気になった場合に、療養中の生活を保障するために受けとることができるお金のことです。
ここでは、傷病手当金の申請条件と申請方法、受給金額と受給期間を、それぞれ解説していきます。
1-3-1:申請条件と申請方法
傷病手当金は、次の4つの条件をすべて満たしたときに支給されます。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
以上の条件を満たしている場合は、全国健康保険協会ホームページの「健康保険傷病手当金支給申請書※」(4枚)をダウンロードし、「被保険者記入用」の2枚を作成します。
次に、担当医師に支給申請書の「療養担当者記入用」1枚の記入を依頼します。
これは、休職期間中に「働けない状態」であることを、証明してもらうための書類です。
支給申請書の残りの1枚「事業主記入用」の記入を、会社に依頼します。
これは、休職期間中に給与が支払われていないことを、証明してもらうための書類です。
支給申請書の書類4枚が揃ったら、加入する保険者(協会けんぽや組合健保)に傷病手当金の支給申請をします。
傷病手当金の申請は、一般的には会社(事業主)が行いますが、本人(被保険者)が直接申請することも可能です。
1-3-2:支給金額と支給期間
傷病手当金の1日当たりの支給金額は、次の計算式で算出します。
(傷病手当金が支給される日以前の連続した12か月の標準報酬月額の合計÷12か月)÷30日×2/3
※標準報酬金額については全国健康保険協会のホームページに一覧表があります。
傷病手当金が支給される期間は、待期3日間の成立後、1年6か月となります。
「待期3日」とは、申請条件にある病気やケガによって仕事に就けなかった連続する3日間を指します。
休職期間中に出勤日があっても、1年6か月のカウントに含まれます。
ここまで解説したように、休職中は健康保険の制度の、傷病手当金を受給することで、生活費を賄うことができます。
詳しい条件や申請の方法等について、以下の記事をご覧ください。
休職とは?休職中のお金の話から申請方法~復職・退職まで徹底解説!
2章:うつ病で休職するメリット・デメリット
うつ病で休職する際は、復職できるのかどうかや、休職中の収入などデメリットにばかり目が行ってしまうかもしれません。
しかし、うつ病の場合は、休職のメリットの方が大きいですので、とにかくすぐにでも休職手続きを開始して、会社を休んでしまうことをおすすめします。
そこでここでは、休職のメリットとデメリットについて解説します。
2-1:うつ病で休職するメリット
うつ病で休職するメリットには、以下の2つがあります。
- 心身を休めることができる
- 就業規則で定められた期間内なら復職できる
順番に解説します。
2-1-1:心身を休めることができる
うつ病で休職する最大のメリットは、仕事を完全に休んで心身を休めることができるということです。
うつ病は、
- 環境要因:家族や職場での人間関係
- 性格要因:義務感、責任感が強い、完璧主義
- 遺伝的要因:生まれつきの脳神経の機能
- 慢性的な身体疾患
など、様々な原因から発症すると考えられています。
そのため、たとえあなたが、うつ病の原因は仕事ではないと考えているとしても、仕事を休んで日々の緊張感から解放されることが、快復に繋がる可能性はあるのです。
また、うつ病の治療には、
- 休養
- 精神療法
- 薬物療法
が必要と言われています。
もちろん、働きながら治療することもできますが、働きながらでは、せっかく治療してもストレスで後戻りし、効率的に治すことができません。
そのため、会社を休職することで、集中的に治療することが何より大事なのです。
2-1-2:就業規則で定められた期間内なら復職できる
うつ病の場合、今の時点で「休職後」のことを考えることは、心の負担になるためおすすめしません。
とは言え、休職する以上先のことは気になりますよね。
以下の場合は、休職後に復職できる可能性が高いです。
- 就業規則で定められた期間内であること
- 休職前の業務を行うことができる状態まで快復していること
1章でお伝えしたように、休職のルールは会社ごとの就業規則によるため、あなたが復職できるかどうかは会社次第ではあります。
しかし、就業規則で休職の期間が定められている場合は、その期間内に快復した場合は、復職できると考えて良いでしょう。
なぜなら、復職ができないなら、それは解雇を延長しているだけに過ぎないからです。
あなたが上記の条件を満たしているのに、会社が復職を拒否することは、過去の判例から「無効」になる可能性が高いです。
万が一、復職時に会社との間でトラブルになった場合は、労働基準監督署や弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。
2-2:うつ病で休職するデメリット
次に、うつ病で休職する場合に「デメリット」として捉えられがちなことを紹介します。
- 収入が減る
- 会社での評価に影響する
それでは順番に解説します。
2-2-1:収入が減る
うつ病で休職する場合、一番のデメリットは「収入が減ること」です。
休職中は、原則として給与・賞与が出ません。
なぜなら、休職はあくまで社員が自分の都合で休むものとされるためです。
また、1章で解説した傷病手当金を支給されたとしても、これまでもらっていた給与の満額はもらえないため、得られる収入は少なくなってしまいます。
さらに、休職期間中は欠勤として扱われるため、有給休暇がつかないというデメリットもあります。
しかし、収入面のデメリットはありますが、無理をしてうつ病の症状を悪化させるよりは、しっかり休んで復職したほうが大きなメリットになり得ます。
2-2-2:会社での評価に影響する
うつ病で休職する場合、「会社での評価に影響するかも」ということが心配になるかもしれません。
確かに、休職すればその分会社での実績は少なくなりますし、ブランクができてしまします。
そのため、会社での評価に影響し、昇進スピードが遅くなったり、賞与が少なくなったりする可能性はあります。
しかし、もしあなたが休職せずに働き続けたら、
- 普通ならあり得ないミスをしてしまう
- 遅刻、欠席が多くなる
- コミュニケーションがうまくできず、社内外での人間関係に影響
- 負担に耐えられなくなって重い健康障害を発症してしまう
などになりかねません。
このようなことになれば、むしろ休職する場合よりも、会社での評価には悪影響を及ぼします。
そのため、評価を気にするより、自分の健康を第一に考えて、休職することをおすすめします。
それではこれから、休職後の復職や退職の方法についてお伝えします。
3章:うつ病で休職した後にやること
今の時点で休職した後のことまで決めておく必要はありませんが、先のことも気になりますよね。
休職した後の選択肢としては、
- 元の会社に復職する
- 会社を退職する
という2つがあります。
また、退職する場合には、労災の申請をしたり、未払い残業代の請求をすることもできますので、これからこの4つについて解説します。
3-1:復職手続きをする
休職後に復職を望む場合は、会社に「自分が快復したこと」「再び働けること」を示さなければなりません。
そのために、
- 医師の診断書を提出する
- 産業医による復職の可否の判断を受ける
- 会社から復職の可否の判断を受ける
という必要があります。
会社員の中には、復職後に再び休職するケースもあるため、会社は復職の判断に慎重な場合が多いです。
無理に復職できる状態を装っても、あなたのためにはなりませんし、会社にもばれてしまいます。
そのため、復職は、本当に健康になってからにしましょう。
会社によって復職手続きは異なりますので、詳しくはある程度快復してから、人事部等に問い合わせてみましょう。
3-2:退職手続きをする
休職しても、
- 休職できる期間内に快復できない
- 仕事に戻る気になれない
ということもあると思います。
その場合は、そのまま退職手続きを行いましょう。
退職は、正しい手続きを取れば会社が拒否することはできませんので、あなたは退職届の提出から、最短2週間で退職することが可能です。
退職する場合にあなたがすることは、次の2つです。
①退職届を出す
休職中に退職したくなったら、まず人事権のある人に退職する旨を伝えます。
直接会社に行くことが望ましいですが、メールや電話でも構いません。
その場合には、後日退職届を郵送しましょう。
②失業保険を受給する
退職後の転職先が決まっていない場合は、失業保険を受給できる可能性がありますので、まずはハローワークでその手続きを行いましょう。
失業保険とは、あなたが解雇・退職になった後、再就職するまでの間に、毎月一定額の保険金が支払われる制度です。
一定の条件を満たせば、90日から最大330日の間貰うことができます。
失業保険は、
- 退職前の2年間に12ヶ月以上雇用保険に加入していた
- 積極的に求職活動をしている
- 転職先が決まっていない
などの条件に当てはまる場合、受給することができます。
ただし、うつ病で退職する場合は、一つ注意点があります。
それは、失業保険の受給条件の一つに、再就職のために転職活動していること、という条件があることです。
そのため、うつ病でしばらくしっかり休みたいという場合は、失業保険を申請しても、貰うことができないのです。
退職手続きについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【労働基準法の退職のルール】手続きとありがちな悩みや対処法を解説
3-3:労災認定してもらう
うつ病を理由に退職した場合、労働災害保険で休業補償給付を受けられる可能性もあります。
うつ病の原因が、
- 100時間を超えるような異常な長時間残業が続いている
- 職場での厳しいノルマや責任
- いじめ、パワハラ、セクハラ
などの場合は、労災認定されやすくなるからです。
ただし、労働基準監督署にうつ病についての労働災害を認めてもらうためには、これが業務に起因することを示す、客観的な証拠が必要となります。
例えば、証拠としては次のものがあげられます。
- タイムカード、業務日報、会社のパソコンの利用履歴など労働時間に関する記録
- パワハラ・セクハラ発言のICレコーダー、スマホなどによる録音
- パワハラを受けた日時や内容について詳細に記録したメモ
- 上司や同僚による供述書 など
退職後に申請して受給する場合も、休職中に受給し、そのまま退職してしまう場合も、受給が可能です。
詳しい条件は手続きの方法については、以下の記事で解説しています。
労働災害とは?保険が貰えるケース・申請方法・トラブル解決法まとめ
3-4:未払い残業代を請求する
会社を退職する場合、会社に未払い残業代を請求することも可能です。
たとえばあなたが、
- サービス残業をしていた
- みなし残業代制や歩合給制、年俸制、管理職などを理由に残業代が出ていなかった
などの場合は、未払い残業代を請求できる可能性があります。
未払い残業代の金額は、以下の例のように、あなたが思っているより高額になることが多いです。
- 基本給20万円
- 月の残業100時間
- 一月平均所定労働時間170時間
※一月平均所定労働時間とは、会社によって定められた1か月の平均労働時間のことで、170時間前後であることが一般的です。
以上の条件で計算してみると、
(20万円÷170時間)×1.25倍×100時間=14万7000円
と、1か月分の残業代だけでも高額になります。
さらに、残業代は3年分までさかのぼって請求することもできますので、
14万7000円×36か月=529万2000円
となり、請求できる金額は300万円を超えるのです。
未払い残業代の詳しい請求方法について、詳しくは以下の記事で解説しています。
失敗しない残業代請求!有効な証拠と請求方法、ブラック企業の対処法
まとめ
いかがでしたか?
最後にもう一度、今回の内容を振り返ります。
- 専門機関に相談する
- 会社の休職制度を確認する
- 傷病手当金の申請をする
- 心身を休めることができる
- 就業規則で定められた期間内なら復職できる
- 収入が減る
- 会社での評価に影響する
- 復職手続きをする
- 退職手続きをする
- 労災認定してもらう
- 未払い残業代を請求する
あなたの健康のために、今すぐにでも行動をはじめてしっかり心身を休めましょう。