
このように、頑張って残業をしたのに、給与明細を見たら残業代が少ないと感じ、自分がみなし残業制度で雇われていることを知る人も少なくありません。
会社員であれば、一度は耳にしたことがあるであろう「みなし残業制度」ですが、あなたはこの制度について、ちゃんと知っていますか?
もしかしたら、会社がみなし残業制度を誤って利用し、あなたが損をしている可能性もあります。
そこで、この記事では、みなし残業制度とは?からはじまり、みなし残業制度が認められる条件、ブラック企業が悪用するみなし残業制度の違法手口、みなし残業制度のメリット、デメリットまで、みなし残業制度について徹底的に解説します。
最後までしっかり読んで、参考にしてみてください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■みなし残業代制度とは
みなし残業制度とは、固定残業代制のことで、「一定の残業時間分の残業代を、最初から給料として払っておく制度」を意味します。
■みなし残業制度が認められるための条件
- 従業員への周知・同意が得られている
- 固定残業代の金額・時間が明確にされている
■みなし残業代制度はブラック企業から悪用されることが多い
- 給料を多く見せる方法として、各種手当を付けたり、固定残業代を含むことがある
- ブラック企業は、みなし残業代制を理由に「何時間残業しても、残業代は固定」と言って、残業代をごまかすことがある
目次
1章:みなし残業制度の仕組み
1-1:みなし残業制度とは、固定残業代のこと
みなし残業制度とは、「一定の残業時間分の残業代を、最初から給料として払っておく制度」です。
残業代があらかじめ固定給(基本給や手当)に含まれていることから、別名「固定残業代制」とも言われています。
こう聞くと、あたかも従業員だけが不利益をこうむる制度にも感じられますが、だからこそ、法律では厳しい条件があり、それをクリアできた会社だけが導入できる制度でもあるのです。
また,クリアできたとしても,みなし残業を超える残業をした場合,超える分の残業代は支払わなければなりません。
1-2:みなし残業制度が認められる条件
みなし残業制度は、どの会社でも無条件に利用できるものではありません。
ここでは、法律で定められた、みなし残業制度が適用される2つのポイントを解説します。
1-2-1:従業員への周知・同意が得られている
みなし残業制度が適用されるには、給料にあらかじめ残業代が含まれていることを、会社は従業員に知らせる義務があります。
口頭で「うちはみなし残業制だから、残業しても残業代は出ない」と説明するだけではダメで、就業規則など、書面できちんと周知させる必要があります。
【就業規則の記載例】
(みなし残業制度の定め)
第〇条 〇〇手当は固定残業手当として、あらかじめ設定した時間(〇〇時間)に対して支給し、実際の労働時間がこれを超えた場合は、法令に基づき割増賃金を加算して支給する。
また、仮に就業規則や賃金規程にこのような記載があったとしても、就業規則や賃金規程が、社員に見えるところにあり、いつでも見れる状況でなければ、みなし残業制は無効です。
1-2-2:固定残業代の金額・時間が明確にされている
みなし残業制度では、固定残業となる「金額」と「時間」を明確に記載する必要があります。
例えば、「月給28万円(固定残業代を含む)」だけでは、月給のうちいくらが固定残業代なのか?それは何時間に相当するのか?ということが分かりません。
そのためみなし残業制度を利用するためには、具体的に固定残業代の金額と、残業時間を明記する必要があります。
例えば、「月給28万円(50時間分の固定残業代8万円を含む)」というような形です。
2章:みなし残業制度のメリット・デメリット
みなし残業制度について理解が深まったところで、ここではみなし残業制度のメリット・デメリットを<企業側><従業員側>に分けてまとめてみます。
2-1:みなし残業制度のメリット
【メリット】
<企業側>
・みなし残業制度として定められた時間内の残業であれば、残業代の計算が楽である。
・決められた時間を超えた残業であっても、残業代の単価が安くなるため、残業代を抑えられる。
<従業員側>
・残業時間が少なくても、毎月安定して一定の給料がもらえる。
・時間内にノルマをこなせた人より、仕事の遅い人が残業をして残業代を多くもらうという不公平を防ぐことができる。
2-2:みなし残業制度のデメリット
【デメリット】
<企業側>
・従業員の残業時間が、就業規則で定められたみなし残業時間より少なくても、一定の残業代を支払わなければならない。
・みなし残業時間より、従業員が長く残業をした場合、超過分の残業代を別途支払わなければいけない。
・不適切な運用をしていると,みなし残業と思い込んでいた手当が,裁判や労働審判でみなし残業でないと扱われてしまう。
<従業員側>
・みなし残業制度があるとすでに残業代が支払われたことになるため、就業規則で定められた時間内であれば、深夜残業や休日出勤したとしても、その分の割増賃金は支払われない。
このように、みなし残業制度は、上手に活用すれば、企業にとっても従業員にとってもメリットのある制度です。
ただし、中には従業員側だけがデメリットとなる働き方をしているケースも多く見受けられます。
会社のみなし残業制度が合法か、違法かを判断したい場合は、別記事「みなし残業(固定残業)の違法性を判断する7つのポイントを徹底解説」を参考にしてみてください。
3章:ブラック企業がみなし残業制度を利用する理由
会社は給料を多く見せる方法として、各種手当を付けたり、固定残業代を含むことがあります。
そうすることで、同業他社と比べて基本給を高く見せられるため、求職者にとってはとても魅力的な会社に映るからです。
実際は、基本給が安くても、残業代をきちんともらった方が給料は高くなるのに、表向きの好条件につられてしまう求職者は、それに気づかず、知らぬ間に残業代が払われていることとして扱われてしまうのです。
結果、会社は
・入社希望者が増える
・低賃金で長時間労働させられる
という、一度に二度美味しい収穫が得られるのです。
第●条
「基本給には、固定割増賃金として、法定労働時間を超える労働40時間分の残業手当を含む。」
まとめ:みなし残業制度について
いかがでしたか?
最後にもう一度、当記事の内容を振り返りましょう。
みなし残業制度とは、固定残業代制のことで、「一定の残業時間分の残業代を、最初から給料として払っておく制度」を意味します。
みなし残業制度が認められるためには、以下2つの条件が必須になります。
・従業員への周知・同意が得られている
・固定残業代の金額・時間が明確にされている
また、ブラック企業では、「各種手当を残業代だと偽る手口」や「基本給に一定金額の残業代を含む手口」といった、みなし残業制度を悪用するやり口で、残業代を抑えることがあるので注意しましょう。