- 更新日:2024.08.22
- #有給取れない
有給が取れない方必見!基本的ルールと上手な取得方法を弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- 有給休暇は労働者の権利です
- 有給申請する場合の3つのトラブル回避マナー
- 有給が取れない場合の2つの方法
- それでも有給休暇がとれない方へ…代わりにお金をもらう2つの方法
あなたの会社は、きちんと有休を取得することができますか?
「遊びでは休めない」
「前もって許可が必要」
このような有給のルールがあるのは当たり前…ではないのです。
実は、法律上、有休は理由なく、原則自由に取ることができます。
ブラック企業の多くは、こういったことを言って、有休を取得させまいとしてきます。
しかし、有給取得は労働者の権利です。
そこで、この記事では、
・有給取得の方法
・有給申請する際のトラブル回避マナー
・有休がとれなかった場合の金銭的解決
について説明していきます。
この記事を読み、しっかり有休を取得しましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■有給休暇は労働者の権利で、理由なく取得できる
- 有給を取るにあたり、会社に理由を話す必要もなく、会社は理由なく有給休暇を拒否することもできない(有給休暇の拒否は原則違法)。
- 会社にとって都合が悪ければ日程を調整することはできる。
■有給休暇が取れるケース・取れないケース
■有給休暇が取れない場合の対処法
- 弁護士に相談する
- 労働基準監督署に相談する
目次
1章 有給休暇は労働者の権利です
「なかなか有給休暇が取れない…」
あなたはこのような悩みを持っていませんか?実は、有給休暇は法律に定められた労働者の権利なのです。
有給を取るにあたり、会社に理由を話す必要もありませんし、会社は理由なく有給休暇を拒否することもできません。
では、早速有給休暇の基本的なルールを見てくことにしましょう。
1-1 法律上の有給とは
あなたの会社には、有給休暇に関するこのようなルールはありませんか?
・1か月前に予告しなければ有給が取れない
・理由を言わなければならない
・有給取得に際し許可が必要である
・アルバイトは有給休暇が取れない
・長く務めた正社員でも1日しか有給がない
実は、このような有給休暇のルールは全て法律に反しているのです。
簡単に流れを確認すると、
有給休暇の申請(許可は不要)→会社にとって都合が悪ければ日程を変更
となります。
有給休暇については、労働基準法39条に定めがあり、基本的な有給休暇日数も記載されていますので、一度目を通してみましょう。
1-2 有給が取れるケース/取れないケース
では、有休休暇はどのような場合に取得できるのでしょうか。
具体例を見てみましょう。
ここで、よくみなさんが間違えるポイントがあります。
それは、有給休暇を取るためには、まず、あなたの側で有給の取得「時季」を指定する必要があります。「時季」とは具体的な「時期」または「季節」のこと。「○月○日に休みます」と言うことですね。
・会社の許可は必要ない
・理由もいう必要がない
ということ。そのため、遊びのために休むことも許されるのです。
もっとも、いつでも自由に有給が取れるわけではありません。
自由に休まれてしまうと、会社にとって都合が悪い場合があるからです。
そこで会社側は、一定の場合のみ、あなたの休みを他の日程に変更することができます(労基法39条5項但書き)。
では、ここでいう一定の場合とはどのような場合を指すのでしょうか。
判例によれば、これは「有給休暇を取らせると仕事に支障がでる」場合を指します。
【コラム】「事業の正常な運営を妨げるとき」とは
「事業の正常な運営を妨げるとき」について、判例は2つの要件を示しています。
①有給休暇を取ることで営業に支障が出ること
➁会社側が有給休暇を取れるように配慮をしていること(シフト調整など)
このうち、➁使用者が状況に応じた配慮をしているとは、労働の内容やシフトの従前の取り扱い、忙しさ、申し出の時期から判断されます。
例えば、あなたが引越し屋さんの運転手だったとします。
この場合、①引越しの多い3月に休まれると、人手が足りなくて困ってしまいます。
➁特に、運転資格のいるドライバーだと、会社もすぐに代わりの人を用意することができません。
そのため、「事業の正常な運営を妨げるとき」にあたり、会社は有給休暇を他の日にずらすことができるのです。
1-3 有給の拒否は原則違法
会社はあなたが「有休を取りたい」といえば、時季を変更する権利しかありません。しかし、きちんとした理由がなかったり、何回も有給休暇を拒否し結局年休が取れないような場合は違法になります。
あなた「7月2日に有給休暇を取りたいです」
【NGな場合】
上司「忙しいから無理」→NG
【OKな場合】
上司「その日は繁忙期で人手も足りないので他の日にしてください」→OK
また、有休休暇といいながらも休みの分の給料がでなかったり、上記のように理由がなく「忙しいから無理」ということも違法です。
2章 有給申請する場合の3つのトラブル回避マナー
スムーズに有給休暇を取るためには、申請する側の姿勢も重要です。具体的には
・なるべく早く伝える
・引継ぎ、連絡は早めに行う
ということが重要です。
2-1 なるべく早く伝える
有給を取得する際には、事前にトラブルを回避しておきたいですね。
そこで、トラブルを回避するためのマナーをご紹介していきます。
まず、重要なポイントは「有給取得をなるべく早く伝える」ということです。
有休のため社員が一人抜けるとなると、その穴をふさぐ必要が出てきます。
会社側も、代わりの人材を見つける必要があり、いきなり有休を申請されても「今は人手が足りないから別の日にしてください」ということになりかねません。
また、直前に有休申請をした場合には、会社の時季変更権が認められやすくなってしまいます。
有給を取得したい日が決まっているのなら、できるだけ早めに上司に伝えておきましょう。具体的には
・2~3日の休み→1週間前
・1か月程度の休み→1か月前
が目安になります。
なお、有給取得の理由を話す必要はありませんが、「理由を話さないと有休を取りづらい」という場合もありますよね。
このような場合には、法事や家族の予定などあたりさわりのない理由をつけると良いかもしれません。
2-2 引継ぎ、連絡は早めに行う
有給を取得している間、職場に混乱をきたさないよう、引継ぎ、連絡は早めに行うようにしましょう。
「せっかくの休みに会社から連絡がきた…」などということにもなりかねませんので、あなたがいない間にしてほしいこと、伝えるべきことがあれば、しっかり引き継いでおきましょうね。
2-3 退職前に有休を取りたい
退職が決まっているため、残りの勤務日数で有休休暇を取りたい、という方もいることでしょう。
この場合も、できるだけ早く上司に有給休暇の申請をしましょう。
ただし、ブラック企業の中には、退職の際に有休を消化させまいとする会社もあります。
その場合には、「仕事を辞めます」「有給休暇を取りたいです」という内容の内容証明郵便を出しましょう。これにより、スムーズに有休休暇を取ることができます。
3章 有給が取れない場合の2つの方法
「きちんと前もって有給休暇を申請したのに、会社が休みを取らせてくれない…」
このような場合には、どうしたらよいのでしょうか。
方法としては2つあります。それは、
・弁護士に相談する
・労働基準監督署に相談する
という方法です。
では、早速それぞれの方法について見ていきましょう。
3-1 弁護士に相談する
では、有給休暇を申請したにもかかわらず、認めてもらえない場合、どうしたら良いのでしょうか。
まずひとつ有効な方法として、弁護士に相談するという手があります。
弁護士に相談したからと言っていきなり裁判になるわけではなく、弁護士があなたに代わり、会社に対して交渉をしてくれます。
また、弁護士に相談すれば、有休休暇を取れない場合でも、金銭的な解決をするなど、多方面から解決策を考えてくれるでしょう。
最近では、法テラスや自治体の相談会など、無料で弁護士に相談ができる機会も増えています。
あまりハードルが高いと思わずに、まずは弁護士に相談してみましょう。
【コラム】法テラスとは
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法テラスとは、無料で法律相談ができる窓口のことです。もし実際に弁護士に依頼することになれば、弁護士費用を立て替えてくれる制度もあります
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「お金はないけど弁護士に相談したい」という場合に活用してくださいね。
3-2 労基署に相談する
もう一つの方法が、労基署に相談する方法です。
労基署に相談した場合には、あなた個人の有給が認められるというより、「会社全体に指導が入り、会社自体の社風が変わる」というメリットがあります。
しかし、実際には労基署は人手不足のことが多く、なかなか動いてくれません。
そのため、あまり実効性は期待できないでしょう。
4章 それでも有給休暇がとれない方へ…代わりにお金をもらう2つの方法
ここまでの方法を試しても、有給休暇が取れない場合…まだあきらめてはいけません。
有給休暇が取れない代わりに、お金を請求したいところです。
しかし、4-1にご覧の通り,ブラック企業では,有給分を買い取ってくれることは基本的にはできません。
そこで、4-2と4-3で、有給休暇の取得や買い上げに代えて
・拒否されても休み,その後有給分の給料を請求する
・残業代を請求する
という方法をご紹介していきます。
4-1 有給の買い上げは原則できない
では、はじめから休みをとることをあきらめ、有休を買い取ってもらうことはできるのでしょうか。
この答えは
・有給に対し、一定の金銭を与える「買い上げ」をすることは、原則として違法
となります。
しかし、例外的に2つの場合には有給の買い上げも適法となります。
①「会社が法定日数を上回る日数を設けた有休」の買い上げ
この場合には、法定日数でしっかりと休むことができるので、プラスされた部分の買い上げをしても違法ではないのです。
➁2年間の消滅時効(労基法115条)によって消滅する有給の買い上げ
「消滅時効で消えてしまうぐらいなら、買い上げを認めてあげよう」という配慮ですね。
このように、一定の場合に限り、有休を買い取ってもらうことも適法なのです。
ただし、結局は、会社が買取をしないと判断した場合は、買取をしてもらうことができません。権利として、有給買取を請求することはできないのです。
4-2 拒否されても有給を取り,有給分の給料を請求する
その他の方法として、拒否されたとしても有休を取ったうえ、その分の給料の支払いを求める、というものがあります。
あなたが有休を申請すれば、会社はきちんとした理由をもとに、「別の日程にしてください」と言わない限り、有休休暇を認めなければなりません。
1-2の早見表の右側記載(取れる可能性が低いケース)の理由がない限り,基本的に会社の時季変更権の行使は違法でしょう。
その場合,あなたはどうどうと有給をとりお休みしましょう。
そこで、会社の日程変更に理由がないことを前提に、有休を申請した上で実際に休みを取り、あとから給料を請求するのです。
この方法は、もちろん適法な方法です。
しかし、場合によっては職場の人間関係には亀裂をもたらしかねません。そのため、退職を控えている場合にしかおすすめできない方法です。
4-3 残業代を請求する
弁護士に相談しても、なお有休休暇を認めてくれない場合には、お金で解決するという道もあります。
といっても、有給休暇が取れないことを理由として、損害賠償請求をすることはかなり難しいのです。
そこで、ひとつ考えられる方法が「未払いの残業代を請求する」ということです。
有休を取得させないような会社では、サービス残業が横行していることが多々あります。
そこで、本来支払われるべき残業代を請求し、金銭的に解決を図るのです。
残業代が出ないのは違法!会社から残業代を取り戻す2つの方法とは?
有給も取らせてくれないブラックな会社へは残業代請求してしまうのが一番よいと思います。
まとめ:有給休暇
この記事では、
・有休休暇を申請するのに理由はいらない
・有休をスムーズに取るためには1週間前には伝える
・有休がとれない場合には弁護士や労働基準監督署に相談する
・お金がほしいときには会社を無視して有休をとり有給休暇分の給料を請求したり,残業代請求をする
ということをご説明してきました。
有給は「労働者の権利」とはいうものの、実際職場の人間関係や評価を考えると、なかなか有給申請しづらいという方も多いと思います。
しかし、仕事を能率的に進めるためにも、リフレッシュは重要です。
あまり気にせず、取りたいときに有休を取るようにしましょう。
なお、有休取得を理由として、降格をしたり、評価を下げたりすることも違法な行為にあたります。
有休を取ったことによって何か不利益を受けたら、弁護士や労基署に相談するようにしましょう。