【雛形付き】交通事故の示談書の作成方法と作成時の4つの注意点

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

【雛形付き】交通事故の示談書の作成方法と作成時の4つの注意点
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 交通事故における示談書とは
  • 示談書の雛形
  • 示談書のチェックポイントと作成方法
  • 要チェック!示談書作成・確認時の注意点
  • 示談書の作成は弁護士に依頼しよう 

あなたは、

交通事故の示談書ってどんなものなんだろう?」
「すぐに示談書を作成したい」
「示談書を書く上でのポイントが知りたい」

などの悩み、疑問をお持ちではありませんか?

交通事故の示談書とは、交通事故の被害者と加害者(の保険会社)が話し合い、まとまった内容について記載した書面のことです。

示談書を作成することで、被害者に支払われる示談金の額や支払い方法について合意したことになります。

つまり、示談書は交通事故の被害者、加害者の双方にとってとても大事な書面なのです。

そこであなたに知っておいて欲しいのは、示談書に必ず記載することを知った上で作成、確認をすることが大事ということです。

なぜなら、いったん示談書を作成すると、撤回することができなくなるため、後から「そんなつもりじゃなかったのに」「え、本当はもっと高い示談金になった可能性があったの?」といったことになっても、取り返しがつかなくなってしまうからです。

そこでこの記事では、まずは示談書の基礎知識について説明し、それから示談書の雛形を使って作成方法を詳しく解説します。

また、示談書を作成する上での注意点と、弁護士に依頼して作成してもらう方法についても解説します。

最後までしっかり読んで、正しい方法で示談書を作っていきましょう。

交通事故被害者のあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:交通事故における示談書とは

それではまずは、交通事故における示談書について、基本的な知識から解説していきます。

それより先に、示談書の雛形が欲しいという場合は2章から、具体的な書き方を知りたいという場合は3章からお読みください。

■示談書とは

示談書とは、交通事故の被害者と加害者の間で、主に示談金の金額や支払い方法について決めた書面のことです。

交通事故示談書の例

通常、加害者には保険会社がついているため、示談書は加害者の保険会社が案文を作成し、被害者であるあなたに送付してきます。

これはあくまで示談の提案であり、それに合意するかどうかはあなたの判断です。

■示談書を作成する意味

示談書を作成するのは、交通事故で発生した損害や、それに対する示談金の金額について「この内容で、お互いに合意しました」と分かるようにするためです。

示談は口頭でも可能ですが、口頭だと、後から「こんな内容じゃなかった」「示談金は〇〇円のはずだった」などのトラブルになりかねません。

そのため、書面として残し、互いにサインすることで、合意した内容を明確に残しておくのです。

これにサインし返送したら、そこで示談が成立し、それ以降は示談書の内容について、一切交渉することができません。

そのため、保険会社から送られてきた示談書に、すぐにサインして送付しないように注意してください。

大事なのは、示談書の内容について、それが本当に適正な内容かどうかしっかりチェックし、場合によっては保険会社と交渉することです。

また、軽微な事故や自転車の事故などで保険会社が間に入らない場合は、自分で示談書を作らなければならないこともあります。

※示談書の確認方法や作成方法は3章で解説します。

■示談書を作るタイミング

示談書は、以下の通りあなたに後遺障害があるかどうかで作るタイミングが異なります。

治療で完治した場合

後遺障害が残った場合

示談書は通常、保険会社から送付されますが、送付されるのは、以下のタイミングです。

  • 治療で完治した場合→完治したタイミング
  • 後遺障害が残った場合→後遺障害等級の認定結果が判明したタイミング

送付されてきた示談書に同意する場合は、サインして返送すれば示談が成立します。

また、内容に不満がある場合は、それから交渉をはじめて、互いに合意できた時点で示談書を作成し、サインして返送すれば示談交渉終了です。

ただし、軽微な事故、自転車事故などで保険が使えず、保険会社を通さずに示談書を作成しなければならない場合もあります。

その場合は、3章で紹介する作成方法を知っておくことが大事です。

2章:示談書の雛形

示談書は以下のようなものです。

あくまで一例ですが、参考にしてください。

【交通事故示談書の例】

■示談書に書かれている項目

示談書には、以下のことが書かれている必要があります。

  • 被害者、加害者の名前
  • 事故が起きた日程、時刻、車両、状況
  • 発生した損害の内容
  • 示談金の金額
  • 支払い方法や支払い日
  • 清算条項(これで事故に関する交渉は終わりです、という文章)
  • (早めに示談金の一部をもらいたい場合などは)将来の後遺障害

詳しいチェックポイントは3章で解説します。

3章:示談書のチェックポイントと作成方法

これから、示談書に書くべき項目についてそれぞれ詳しく解説していきます。

示談書は保険会社が作成したものが郵送されてくるのが一般的ですが、場合によっては自分で作成しなければならないこともあります。

そこでここでは、それぞれの項目で書く必要があることについて解説します。

また、保険会社から示談書が送られてきた場合、その内容が正しいかどうか自分でチェックすることも大事です。

なぜなら、保険会社が提示する示談金の額は、来あなたがもらえるはずの金額より、少なく設定されていることが多いからです。

そこで、作成方法と合わせて、それぞれの項目でチェックすべきポイントも解説します。

3-1:交通事故の当事者を正しく明記する

交通事故示談書のタイトル

まず、この書面のタイトルを付けます。

一般的には「示談書」ですが、決まりはないため示談書であることが分かれば、どのようなタイトルでも構いません(保険会社からは、タイトルを「免責証書」「承諾書」として郵送してくることがあります。)。

次に、示談書には最初に示談の当事者について記載します。

上記の通り、当事者である被害者と加害者の名前を、フルネームで記載することが大事です。

3-2:事故の詳細(事故の特定)

 交通事故示談書の事故の詳細

次に、交通事故の詳細について記載します。

ここでは、

  • 事故が起こった日時、時刻
  • 事故が起きた場所
  • 加害者と加害者の車両について
  • 被害者と被害者の車両について
  • 事故がどのような状況で起こったのか(事故態様)

について正確に書くことが大事です。

警察が「交通事故証明書」を発行してくれますので、それを見て記載すれば問題ありません。

交通事故証明書

交通事故証明書の発行は、警察署もしくは以下のインターネット上のページでも可能です。

「交通事故証明書の発行について」

ここで内容を間違うと、示談書としての強制力がなくなってしまうので気をつけて正しく記載してください。

また、保険会社から示談書が送付されてきた場合は「交通事故証明書」の通りの内容が書かれているか確認してください。

3-3:示談金額、支払い方法、期日

交通事故示談書の示談内容

次に、示談交渉で合意した示談金の金額と、その支払い方法、支払い期限について記載します。

また、実際に支払うために必要な、被害者であるあなたの銀行口座もここに書きます。

保険会社が示談書を作成して送付してきた場合は、ここで示談金の金額を確認してみましょう。

多くのケースで、示談金の金額は本来あなたがもらえるはずの適正な金額より、ずっと少なくなっています。

その場合、弁護士に依頼して示談交渉をすると保険会社の提示よりも増額された、適正な金額を獲得できることが多いです。

示談金の詳しい金額については、以下の記事をご覧ください。

【交通事故の示談金相場】1円でも多く請求する方法を弁護士が解説

3-4:示談金が支払われなかった場合の記述

交通事故示談書の違約金

次に、示談金が支払われなかった場合のことについて記載します。

保険会社が相手の場合は、示談書を作成したのに示談金が支払われないということは少ないですが、保険会社を通さず被害者と加害者が当事者同士で示談書を作成する場合は、相手が踏み倒す可能性もあります。

そのため、示談金が支払われなかった場合のペナルティ(違約金)を記載し、必ず示談金を支払わせるようにすることが大事なのです。

ペナルティの金額は、示談金よりも少ない金額にするのが一般的です。

詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

3-5:清算条項

交通事故示談書の清算条項

次に「清算条項」を記載します。

清算条項とは、この示談書の内容で交通事故に関する紛争は終わったので、これ以降、示談書に書かれていること以外は何もありません、という取り決めのことです。

示談書を作成した後に、再度お金を請求したり「やっぱりお前の方が悪かった」と事故を蒸し返したりすることを防ぐために記載します。

ただし、交通事故の場合は、事故後に時間がたってから後遺障害が出てくることもあります。

その場合にそなえて、次に解説する条項を入れることもあります。

3-6:早めに示談金の一部をもらいたい場合

交通事故の場合は、事故から時間が経過してから後遺障害が出てくることがあります。

そんな可能性がある場合に備えて、将来の後遺障害に関する「留保事項」を記載することがあります。

また、治療費や生活費の不安から早めに示談金をもらいたいという場合も、後遺障害部分以外を先に支払ってもらう「留保事項」を活用することがあります。

交通事故の示談書における「留保事項」とは、一般的には、後遺障害が残る可能性がある場合に、後遺障害部分に関係する示談金のみ後から決めて支払うと取り決めることです。

交通事故の被害者は、事故後すぐにでも治療費や生活費が必要になるため、早めに示談する必要があります。

一方で、交通事故の場合は、後遺障害があったとしても、後遺障害等級が認定されるのは、通院が終了してからになりますので、軽傷であったとしても、事故発生から認定までに半年以上かかることが多いです。

その場合、後遺障害等級が認定される前の最初の時点で示談してしまうと、示談金の金額が少なくなってしまいます。

そのため、後遺障害が後から出る可能性がある場合は、後遺障害に関する部分の示談金のみ、後遺障害が出てからあらためて協議する、という内容の条項を入れるのです。

また、保険会社が示談書を作成して送付してきた場合、この後遺障害に関する留保条項が記載されているかどうかチェックすることが大事です。

もし、あなたに後遺障害の心配があるのに、この留保条項が記載していなければ、保険会社と交渉して入れてもらうことが必要です。

4章:要チェック!示談書作成・確認時の注意点

示談書を作成する上では、以下の注意点があります。

【示談書を作成する上での注意点】

  • 被害額、治療費、後遺障害が決まってから作成する
  • 公正証書にする
  • 示談書は再作成できない
  • 示談には時効がある

順番に解説します。

4-1:被害額、治療費、後遺障害が決まってから作成する

示談書を作成する、もしくは送られてきた示談書にサインする時に大事なのが、被害の内容(修理や治療費、後遺障害等級)が分かってから、示談を成立させることが大事だということです。

保険会社によっては、できるだけ示談金の金額を少なくしたいがために、あなたの治療が終わっていないのに「そろそろ示談にしたいのですが」と連絡してくることがあります。

ここで焦ったり、「保険会社が言うのだから間違いないだろう」と思って示談してしまうと、本来もらえるはずの適正な示談金よりずっと少ない示談金で合意してしまう可能性があります。

そのため、物損の場合は修理費等が明らかになってから、人身の場合は、完治もしくは後遺障害等級が認定されてから、示談交渉をはじめることが大事です。

タイミングが分からない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

4-2:公正証書にする

示談書は「公正証書」にすることで、加害者が示談金を支払わない場合に、訴訟をせずに強制的に支払わせることができます。

通常、交通事故の場合は加害者の保険会社との間で示談するため「示談金を支払ってもらえないかもしれない」という心配はありません。

しかし、もし当事者のみで示談する場合は、相手が示談金を踏み倒す可能性もなくはありません。

その場合、示談書があるだけでは、強制的に相手に示談金を支払わせることができないのです。

そこで、加害者が示談金を支払ってくれない可能性がある場合は、示談書を「公正証書」にするという手段があります。

公正証書とは、公証人という専門家が作成する特別な示談書だとお考え下さい。

詳しくは、近隣の公証役場で教えてもらえるので「住んでいる地域名+公証役場」で検索してみてください。

4-3:示談書は再作成できない

示談書は、一度作成してサインし、返送すると、それで示談が成立してしまいます。

3章で解説したように、示談書には「清算条項」がありますので、一度サインしてしまうと、後から「やっぱり示談金が少なかった」「内容に間違いがあった」と思っても、修正することができなくなります。

示談が成立した後に、示談の内容を覆すことは100%無理というわけではありませんが、覆せる可能性は限りなく低いです。

そのため、保険会社から示談書が郵送されてきた場合は、まずは示談書の内容を慎重にチェックし、少しでも分からないところや、疑問点があれば弁護士に依頼して確認してもらうことも大事です。

また、自分で示談書を作成する場合も、一度成立させると再作成できないと思って、慎重に作成することが大事です。

4-4:示談には3年の時効があるため先延ばしにしない

交通事故の示談金の請求には、時効があります。

今の法律では、

  • 物損や、後遺障害と関係がない部分…事故日から3年
  • 後遺障害に関係する部分…症状固定(※)日から3年

であると言われています。

ただし、ちょうど法律が改正される予定で、予定通り改正されると、

事故日が2017年4月1日以降のものについては、

  • 物損…事故日から3年
  • 後遺障害と関係がない部分…事故日から5年
  • 後遺障害に関係する部分…症状固定(※)日から5年

になると言われています。

症状固定とは、これ以上治療をしても症状が改善しませんよ、というタイミングのことです。

この3年の時効を過ぎると、交通事故でどれだけ被害があっても、示談金を加害者(の保険会社)に請求することができなくなります。

そのため、時効がくる前に、できるだけ早い段階で示談交渉をはじめ、示談書を作成することが大事なのです。

5章:示談書の作成は弁護士に依頼しよう

交通事故の示談書の作成や確認は、弁護士に依頼することをおすすめします。

なぜなら、弁護士に依頼することには以下のメリットがあるからです。

【示談書の作成、確認を弁護士に依頼するメリット】

  • 示談交渉をして、示談金を妥当な金額まで引き上げてくれる
  • 精神的負担が少ない
  • 保険会社とのやりとりを代理で行ってくれるため、手間や時間がほとんどかからない

当記事の5章では、これらについて、それぞれ簡単に解説します。

なお、交通事故の弁護士選びについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説

5-1:示談交渉をして、示談金を妥当な金額まで引き上げてくれる

繰り返しになりますが、保険会社が提示する示談金の金額は、本来もらえる金額より少ないことがほとんどです。

しかし、法的な知識や示談金が決まる基準について知らなければ、保険会社が提示する示談金が相場と比べてどのくらい低いのか、交渉して示談金を増やすにはどうしたら良いのか分かりません。

また、仮に知識があったとしても、弁護士でないと相手にしてくれません。

弁護士に依頼すれば、示談金の中でも大きな割合を占める慰謝料全般や、逸失利益などについて、基準が自動的に変わるため、多くの場合、示談金が大幅にアップします。

他の示談金の項目についても、正しい方法で計算して請求するため、場合によっては、最初に提示された示談金の2倍以上になることもあります。

したがって、交通事故の示談は弁護士に依頼した方が、金銭的な面で有利になるのです。

「でも、弁護士費用が高くつくのでは?」

と思われるかもしれませんが、実はあなたが加入している保険に「弁護士特約」がついている場合、多くの場合で弁護士費用が一切かかりません。

また、弁護士特約がついていなくても、弁護士に依頼したことで、あなたが損するようなことがないような費用体系を導入している事務所も多いです。

そのため、弁護士費用について心配する必要はありません。

多くの法律事務所では無料相談をしていますので、まずは一度、直接相談してみることをおすすめします。

※弁護士費用の相場や、弁護士費用特約について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

【事例別】交通事故の弁護士費用を最大限安くおさえる方法を徹底解説

5-2:精神的負担が少ない

交通事故にあうと、ご自身の治療や生活のためのことでいっぱいになり、それに加えて保険会社とお金のことを話し合うのはとても大きなストレスです。

しかし、弁護士に依頼すれば、あなたの代わりに弁護士が窓口になりますので、あなたが保険会社と直接話し合うことはなくなります。

そのため、弁護士への依頼で精神的負担を最小限にすることができるのです。

5-3:保険会社とのやりとりを代理で行ってくれるため、手間や時間がほとんどかからない

弁護士に依頼すると、保険会社との間でのやりとりのほとんどの代理で行ってくれるため、あなたの手間や時間を最小限にすることができます。

交通事故にあうと、自分の治療や生活のことでいっぱいいっぱいになりますよね。

そんな中、保険会社との対応まで自分で行うのは大変です。

弁護士に依頼すれば、必要な手続きはほとんど弁護士がやってくれ、たまに電話やメール、郵送で進捗を確認する程度です。

あなたは治療や生活に集中して取り組めるようになります。

まとめ

いかがでしたか?

最後に今回の内容を振り返ってみましょう。

【示談書の作成、確認を弁護士に依頼するメリット】

  • 示談交渉をして、示談金を妥当な金額まで引き上げてくれる
  • 精神的負担が少ない
  • 保険会社とのやりとりを代理で行ってくれるため、手間や時間がほとんどかからない

しっかりポイントを抑えて示談書を作成、確認していきましょう。

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