労働時間からブラック企業を判断しよう!3つの基準と取るべき行動


この記事を読んで理解できること
- ブラック企業の労働時間と36(サブロク)協定
- ブラック企業の労働時間とブラック企業度
- ブラック企業と年間休日数
- ブラック企業が残業時間をごまかす手口
- 残業代を正しく計算し請求する方法
- まずは証拠集めから始める
あなたは、
「ブラック企業の労働時間はどれくらいだろう?」
「うちの会社は労働時間が長いけどブラックかな?」
「労働時間は長いのに残業がつかないから辛い」
などとお考えではないですか?
ブラック企業の一番の特徴としては、労働時間が長くサービス残業が常態化していることがあげられます。
会社から「人手不足」などを理由に毎日遅くまで残業させられて、おまけに休日も少なく、残業代もなかなか認めてもらえないといった状態です。
残念ながら、このようなブラック企業では、あなたのことを都合の良い労働力としか考えていません。
しかし、労働基準法に定められた、時間外労働の上限を超えた長時間労働は違法です。
法律で定められた労働時間の限度は、原則として「1日8時間、1週40時間以内」(法定労働時間)とされていて、これを超えて労働させるには、労使間の協定の締結・届出が必要となります。
また、それを超えた時間外労働時間(残業時間)に対しては、会社は適正に残業代を支払わなければなりません。
そのため、今の会社の労働時間に関する労使の合意内容を調べて、自分の労働時間や残業代は適正なものかどうか、しっかり理解することが重要です。
この記事では、1章でブラック企業の労働時間と労使間の協定である36(サブロク)協定について、2章では残業時間で分かるブラック企業度を、そして3章ではブラック企業の年間休日数について解説します。
さらに、4章ではブラック企業が残業時間をごまかす手口を、5章では残業代を正しく計算し請求する方法を、6章では残業代の請求に必要な証拠集めについて解説していきます。
最後までしっかり読んで、ブラック企業から自分を守るための知識を身につけてください。
目次
1章:ブラック企業の労働時間と36(サブロク)協定
ブラック企業の特徴として長時間労働を上げましたが、そもそも法定労働時間「1日8時間、週40時間」を超えて労働させるためには、36(サブロク)協定を労使間で締結し、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。
そこでこの章では、
- 36協定と残業時間の意味
- 残業時間の上限「月45時間」と特別条項
- 残業時間を計算してみよう
この3つを順番に解説します。
1-1:36協定と残業時間の意味
36協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といい、1日8時間・週40時間の「法定労働時間」を超えた労働(残業)をするために、会社と従業員との間で締結される協定です。
従業員一人一人と協定を結ぶのではなく、労働組合や労働者の代表と会社の間で締結します。
36協定は、従業員が誰でも確認できるように周知されている必要があります。
例えば、
- PCの従業員が誰でも見られるフォルダ内に入っている
- 職場の壁に貼ってある
- 休憩室に置いてある
などです。
これらの方法で共有、掲示・備え付けされていない場合は、労働基準法違反(第106条)となります。
また、36協定があると、法定労働時間を超えた労働(残業)が可能になりますが、これから紹介するように、残業時間には上限が設定されています。
1-2:残業時間の上限「月45時間」と特別条項
36協定が締結された場合は、以下のように残業時間のルールが適用されます。
つまり、36協定が締結されている場合でも、⽉45時間・年360時間を超える残業時間は「違法」なのです。
ただし、上記の残業時間の上限を超えて残業している場合もあると思います。
実は、「特別条項付き36協定」を締結することで、上記の残業時間の上限を延長することができます。
【特別条項付き36協定で残業時間の上限を延長できる】
特別条項付き36協定とは、「⽉45時間・年360時間」という残業時間の上限を超えた残業を可能にするために、会社と従業員との間で締結される協定のことです。
ただし、月単位なら何時間でも残業時間が延長できますが、
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2~6ヶ⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
- 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度
といった条件があります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
長時間残業に注意!特別条項付き36協定の3つのルールを弁護士が解説
ここで、あなたの残業時間が、どのくらいなのか計算してみましょう。
1-3:残業時間を計算してみよう
お伝えした通り、36協定があっても「⽉45時間・年360時間」を超えた残業時間が日常的にある場合、違法である可能性が高いです。
あなたの残業時間は、以下のように計算することができます。
①1日に8時間を超えて労働した時間を計算する
例えば、10:00-19:00(途中休憩1時間)が定時の会社の場合、19:00時以降に働いた時間はすべて残業になります。
さらに、会社の指示で9:00時には出勤して働いているという場合、9:00~18:00時(途中休憩1時間)で8時間労働になりますので、たとえ定時が19:00時までであったとしても、18:00時以降に働いた時間が、すべて残業時間です。
②週40時間を超えて労働した時間を計算する
1日8時間を超えて労働した日がなかったとしても、週40時間を超えて働いている週があれば、その時間はすべて残業になります。
例えば、1日8時間の労働を、月曜日から土曜日まで続けた場合、労働時間の合計は48時間になりますので、8時間は「残業時間」になります。
③月の合計残業時間を足す
①と②で計算した残業時間を、全て足し合わせましょう。すると、あなたの1ヶ月の残業時間が分かります。
こうして計算した残業時間が、45時間を遙かに超えていたり、毎月45時間を超えているようなら、あなたの会社は違法行為をしている可能性が高いです。
2章:ブラック企業の労働時間とブラック企業度
あなたの会社の「ブラック企業度」を残業時間から判断できるのが、以下の3つの基準です。
- 1ヶ月の労働時間が45時間を超えている
- 1ヶ月の労働時間が80時間を超えている
- 1ヶ月の労働時間が100時間を超えている
それぞれについて、詳しく解説します。
2-1:ブラック企業度★☆☆:1ヶ月の残業時間が45時間を超える
1章でも解説したように、あなたの会社の1ヶ月の残業時間が「45時間」を超えている場合は、あなたの会社はブラック企業の疑いがあります。
会社と従業員の間で36協定が結ばれていても、時間外労働の上限は原則として次のように決められています。
- 1ヶ月に45時間
- 1年間に360時間
また、特別条項付き36協定が結ばれていても、
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2~6ヶ⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
- 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6ヶ⽉が限度
といった条件があります。
そのため、これらの時間を超えて残業させられている場合は、違法となり労働基準監督署の指導対象になります。
次に目安になるのが「過労死ライン」と言われる労働時間の限度の時間です。
2-2:ブラック企業度★★☆:1ヶ月の残業時間が80時間を超える
あなたの会社の1ヶ月の残業時間が2ヶ月以上にわたって80時間を超えている場合は、あなたの会社はブラック企業である可能性が高いです。
なぜなら、この残業80時間は、「過労死ライン」と言われているからです。
「過労死ライン」とは、厚生労働省の通達に基づいて目安とされている残業時間の基準のことです。
あなたがもしも、働き過ぎで脳や心臓に疾患を抱えてしまった場合、その発症前の2ヶ月ないし6ヶ月にわたって、1ヶ月の残業時間が80時間を超えていた場合は、労働災害(労災)として認められる可能性が高いのがこの基準です。
2-3:ブラック企業度★★★:1ヶ月の残業時間が100時間を超える
あなたの会社の1ヶ月の残業時間が、100時間を超えている場合は、あなたの会社はブラック企業である可能性が非常に高いです。
なぜなら、この残業100時間も、「過労死ライン」に設定されているからです。
健康障害の発症前の1ヶ月間に100時間を超える残業時間があった場合は、労働災害(労災)として認められる可能性が高いという基準です。
※出典:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」
つまり、月に80時間ないし100時間を超えて労働していた場合は、あなたの体が危険な状態に置かれることになると政府がみなしているのです。
1章で解説した方法で自分の残業時間を計算し、残業時間がこれらの基準を超えていた場合は、かなり危険なブラック企業だといえます。
3章:ブラック企業と年間休日数
ブラック企業では、残業時間が多いだけでなく、休みが取れないといった問題があります。
毎日の残業で疲れが貯まっていても、休日が少なくては体を癒すこともできず、身体的ストレスが増していくばかりです。
ここでは、ブラック企業の基準となる年間休日数と、ホワイト企業の基準となる年間休日数を比較していきます。
3-1:【ブラック企業】年間休日数が105日未満
ブラック企業の年間休日数の基準としては、105日未満となります。
1年は52週ですから毎週土日が休みの場合は、それだけで104日となるため、祝日や年末年始は休みなく出勤する形になります。
法律では、休⽇は原則として毎週少なくとも1回与えることとされています。
また、労働時間の上限は、週40時間と定められているので、1年間の労働時間は、
52.14週 × 40時間 = 2085.6時間
となります。
さらに、1日に8時間を超えて労働させてはならないため、
2085.6時間 ÷ 8時間 = 260.7日
よって、1日8時間のフルタイムで働く場合、1年間の最大労働日数は260日となります。
そのため、1年365日から最大労働日数260日を引くと、1日8時間労働の場合における年間休日数の最低ラインは105日ということになります。
厚生労働省が発表している就労条件総合調査結果の概況によれば、労働者1人あたりの年間休日数の平均は107.0日となっています。
この数字より極端に少ないようであれば、ブラック企業の可能性が高いでしょう。
3-2:【ホワイト企業】年間休日数が125日以上
ホワイト企業の年間休日数の基準は、125日以上となります。
例えば、週休2日制で毎週土日を休むと104日になり、国民の祝日が16日(2022年)なので、カレンダー通りの休みが取れれば、年間休日数は120日になります。
さらに、年末年始休暇や夏季休暇などで5日が与えられた場合は、年間休日数は125日になります。
ブラック企業の年間休日数と比べた場合、1年間で20日も休日数が多いことになります。
4章:ブラック企業が残業時間をごまかす手口
ここまで読んで、「やっぱりうちの会社の労働時間は異常みたいだな・・・」そう思ったあなたは、これから解説するブラック企業の手口についてもチェックしてみましょう。
ブラック企業はさまざまな手口で、あなたの労働時間をごまかそうとしています。
あなたに対しては
「残業はしょうがないこと」
「残業するのは自分のためになること」
というように言っておいて、実際には人件費を抑えて働かせることで、会社だけが利益を得ようとしています。
また、もしも労働基準監督署などに訴えられても
「それは残業時間ではなかった」
「残業は自主的なもので会社から強制したわけではない」
と言うために、巧妙なテクニックを使っています。
主な方法としては、次のようなものがあげられます。
- サービス残業が当たり前の空気をつくる
- みなし残業を使って残業時間をごまかす
- 勤怠管理をせず残業時間をごまかす
- 残業は禁止していると主張する
- 名ばかり管理職にして残業代を払わない
- 個人事業主として外注して経費削減
- 裁量のないプログラマーに裁量労働制を適用して残業代を払わない
- 変形労働時間制を適用して残業代を払わない
- フレックスタイム制を適用して残業代を払わない
会社がこのようなやり方をとっている場合、残業代を取り戻せる可能性があります。
それぞれ解説していきます。
4-1:サービス残業が当たり前の雰囲気を作る
ブラック企業では、次のような言葉でサービス残業を正当化し、社内で「サービス残業をすることが当たり前」という空気を作っています。
- 「残業するのは仕事のできないやつ」
- 「自分の仕事を時間内に終わらせられないのは自分の責任」
この手口の悪質なところは、本人に対して「会社に貢献できてなくて申し訳ない」と思わせることです。
ブラック企業の意図は、「サービス残業が当たり前」と従業員に思わせて、人件費を抑えてあなたを安くこき使うことです。
サービス残業をさせて、適正な残業代を支払わないことは違法なので、あなたには支払われていない残業代をもらう権利があります。
4-2:みなし残業を使って残業時間をごまかす
ブラック企業では、
- 「営業手当」「役職手当」などが残業代の代わりとして支払われていると言われている
- 「基本給の中に45時間分の残業代3万円が含まれている」と言われている
このようなケースが多いです。
しかし、手当が残業代の代わりとして支払われていることや基本給の中に残業代が含まれていることが、契約書や就業規則(賃金規程)に明記されていない場合、残業代として認められません。
これは、みなし残業代(固定残業代)を使って、毎月一定の金額を払うだけで、会社が従業員を違法に働かせています。
この手口では、あなたに残業代を払っているように見せかけておいて、実は残業代をごまかして人件費を抑えようとしています。
4-3:勤怠管理をせず残業時間をごまかす
ブラック企業では、
- タイムカードがない
- 誰も労働時間を記録してない
- 給料はシフト表の通りにしか出ないが実働は異なる
といったケースがあります。
これはブラック企業が勤怠管理をわざと行わず、あえて証拠を残さないことで労働時間をごまかす手口です。
適切な勤怠管理を行わず労働時間をごまかすことで、賃金を不当に安く抑えようとしています。
4-4:残業は禁止していると主張する
ブラック企業では、残業を禁止にして
- 就業時間内に終わらないような量の仕事をあえてやらせる
- 就業時間後の労働を黙認している
といったケースがあります。
これは建前上残業を禁止し、実際にはサービス残業をさせるブラック企業の手口です。
実際には残業しているのに、会社は「残業を指示してない」と言うことで、従業員から残業代を請求された時に「会社としては残業を強制してないし、自分たちで自主的に残っていただけだから残業代は払えない」と主張するためです。
4-5:名ばかり管理職にして残業代を払わない
ブラック企業は、ほとんど一般社員と変わらない従業員に、「店長」や「課長」「部長」という役職をつけて、残業代ゼロで働かせようとすることがあります。
法律上、管理監督者にあたる人は、残業代を払わなくて良いということになっています。
それを悪用して、合法的に残業代ゼロで働かせようというのがブラック企業の意図です。
しかし、実は「店長」「課長」「部長」という役職がついているだけでは、法律上の管理監督者にはなりません。
つまり、役職をつけたから残業代を払わないというのは、違法であることが多いのです。
さらに、昇進させることで本人の承認欲求や自己充足感を満たし、愛社精神や会社への帰属意識を高めることで、会社側の手口に一切の疑問を持たせないという点でも悪質です。
4-6:個人事業主として外注して経費削減
ブラック企業では、会社から「雇用契約」ではなく「業務委託契約」を結ばされて、個人事業主として働かされる手口があります。
実際は、会社の事業所で会社の命令の下に拘束して働かせているのですが、見た目上は外注にしてしまうというやり方です。
この場合、ブラック企業には次のような意図があります。
- 残業代を払う必要がない
- 仕事に必要な経費を負担させることができる
- 報酬をいつでも大幅に下げられる
- 社員ではないのでボーナスを払う必要がない
- 会社の都合で契約をいつでも解除できる
- 休日に休ませる必要がない
- 社会保険、雇用保険、失業保険、労災保険に入らせずに済む
会社側は、雇用契約ではなく業務委託にすることで大幅な経費削減ができるため、このような手口を使うのです。
4-7:裁量のないプログラマーに裁量労働制を適用して残業代を払わない
ブラック企業では、システムエンジニアや弁護士、コピーライターなどの専門職に適用できる、 「裁量労働制」を悪用して、プログラマーなどを違法に働かせる手口があります。
「裁量労働制」とは、「仕事の自由度が高く、労働時間を会社が管理することが出来ないため、何時間働いても一定時間労働したものとみなす」という制度です。
この「裁量労働制」が適用される業務の中に「情報処理システムを開発する人」というものがあるため、上長の管理下で働かされているプログラマーも、裁量労働制が適用できる専門職とみなされて働かされていることがあります。
ブラック企業の意図としては、プログラマーに残業させたいが残業代を払いたくないため、プログラマーも裁量労働制が適用できることにして働かせて、残業代を払わなくて済むようにしています。
「裁量労働制」は、IT業界における「エンジニア」という言葉の曖昧さを利用して、残業代を払わずに社員をこき使うために行っている場合があるので注意が必要です。
4-8:変形労働時間制を適用して残業代を払わない
ブラック企業の手口として、変形労働時間制を適用させることによって、残業代を支払わない場合があります。
変形労働時間制とは、一定の期間内で特定の日に8時間を超えて働かせたり、特定の週に40時間を超えて働かせたりしても、残業代を出さなくて良いという制度です。
本来であれば変形労働時間制は、変形期間、期間中の労働日とその所定労働時間等を定める必要があります。
しかし、ブラック企業では、そのようなことを定めずに、変形労働時間制を悪用した手口が使われることがあります。
これも、従業員の無知を利用して残業時間をごまかそうとする、ブラック企業のやり方です。
4-9:フレックスタイム制を適用して残業代を払わない
ブラック企業では、フレックスタイム制を適用して、残業代を払わないケースがあります。
フレックスタイム制とは、従業員が契約時間の中で始業時間と終業時間を自由に決めることができる制度です。
フレックスタイム制が採用されていれば、1ヶ月の労働時間のトータルが法定労働時間を超えていなければ、1日8時間、週40時間の労働時間を超えて働いた分も残業代にはなりません。
本来であれば、フレックスタイム制は、清算期間、総所定労働時間等を定める必要があります。
しかし、ブラック企業では、そのようなことを定めずに、フレックスタイム制を悪用して残業時間をごまかすことがあります。
ブラック企業では、従業員が残業代を請求しても、「フレックスタイム制だから残業代は発生しない」と言い逃れをしています。
ブラック企業が残業時間や残業代をごまかすためにどんな手口を使っているのか、理解できたでしょうか。
これらの手口は、専門家が見れば違法とみなされる可能性が非常に高いです。
もし、1つでも思い当たることがあるなら、自分の働いた分の残業代を取り戻すために行動を起こすことをおすすめします。
次の章から、残業代を取り戻すための方法を解説します
5章:残業代を正しく計算し請求する方法
残業代を払ってもらうためにあなたがやらなければならないことは、まず自分の残業代がどれくらいになるのか正確に把握することです。
それから、次の3つのいずれかの方法で、残業代をもらうための行動を起こしましょう。
- 自分で請求する:おすすめ度★☆☆
- 労働基準監督署に申告する:おすすめ度★★☆
- 弁護士に相談する:おすすめ度★★★
特におすすめなのは、一番残業代をもらえる可能性が高い「弁護士に相談すること」です。
それでは、まずは計算方法から解説しましょう
5-1:自分の本当の残業代を計算する
残業代は、以下のような簡単な計算式で計算することができます。
残業代=基礎時給×割増率×残業時間
ここでの「残業時間」とは、第1章で説明したように「1日の労働時間の8時間を超える部分」もしくは「週の労働時間の40時間を超える部分」のことです。
「基礎時給」とは、あなたの時給のことです。
月給制で働いている人は、自分の月給を170時間で割るとおおよその基礎時給を割り出すことができます。
※時給の計算について、詳しくは以下の記事を参照してください。
【図解】残業代の時給の計算方法と損しないために注意すべきポイント
「割増率」とは「1日8時間、週40時間」を超えた残業時間の時給にかけられるもので、中小企業の場合は以下の4つがあります。
- 通常の残業時間:1.25倍
- 法定休日(週1日は必ず休まなければならない日):1.35倍
- 通常の深夜残業(22:00〜翌朝5:00):1.5倍
- 法定休日の深夜残業:1.6倍
それでは、実際に計算してみましょう。
あなたの基礎時給が1,200円で、1ヶ月の残業時間が60時間、深夜や法定休日の残業がなかったとすると、1ヶ月の残業代は以下のように計算できます。
基礎時給1,200円×割増率1.25倍×残業時間60時間=9万円
残業代を3年分さかのぼって請求するとすれば、
9万円×36ヶ月=324万円
3年間の合計で最大324万円ももらうことができます。
5-2:残業代を請求する2つの方法
自分の残業代を計算する方法が理解できましたか?
では、どうすればごまかされている残業代をもらうことができるのでしょうか。
これから具体的な方法を解説します。
5-2-1:自分で請求する方法
自分で請求する方法には、
- 自分で会社に内容証明郵便を送る
- まずは労働基準監督署に相談する
の2つがあります。
まず、自分で会社に請求するという選択肢があります。
【自分で会社に内容証明を送る:おすすめ度★☆☆】
残業代の請求は3年間の時効があるので、時効を止めるために、請求書は「配達証明付き内容証明郵便」で出すのが確実です。
しかし、相手はさまざまな手口で残業代を払わないようにしようとするブラック企業ですので、請求書を届けたところですんなり払ってくれる可能性は低いでしょう。
そこで、次に労働基準監督署に申告する方法が考えられます。
【労働基準監督署に申告する:おすすめ度★★☆】
労働基準監督署に申告して労働基準監督署が動いてくれれば、労働基準監督署から会社へ「是正勧告」があり、会社が勧告に従わない場合は、逮捕に踏み切ることもあります。
しかし、全国の労働基準監督署は人員不足で、すべての申告を十分に相手にしてくれるわけではありません。
また、経営者が逮捕されるのは、よほど悪質なケースのみです。
5-2-2:弁護士に依頼する−裁判になることは少ない
先に紹介した2つの方法には、
- 会社が相手にしてくれない可能性がある
- 労働基準監督署が動いてくれるとは限らない
というデメリットがあります。
そのため、もっとも有効な方法は、残業代請求に強い弁護士に相談することです。
【弁護士に相談する:おすすめ度★★★】
弁護士に相談するというと
「裁判みたいな大事になるのはちょっと・・・」
「百万円近くかかるんじゃないの?」
と考えてしまう人もいるかもしれません。
しかし、「弁護士に頼む=裁判」ではありません。
残業代請求のためにいきなり裁判になることは少なく、たいていは「交渉」や「労働審判」という段階で回収していきます。
【交渉】
「交渉」とは、弁護士が会社に対して請求書を送ったり、電話で残業代の督促をしたりすることです。
あなたが直接会社に行ったり、連絡をとったりする必要はなく、時間やお金の面での負担は少ないです。
【労働審判】
「労働審判」とは、交渉で解決しなかったときにとられる選択肢で、あなた側、会社側、裁判官の三者が裁判所の会議室のようなところに集まって話し合うものです。
早ければ1回裁判所に行けば終わることもあり、最大でも3回までしか行く必要がありません。
裁判官を交えるため、会社に対して非常に強力な圧力になります。
これらの手段で解決できなかったときにとられるのが「裁判」です。
【裁判】
裁判は金銭的な負担が大きく、時間もかかってしまいますが、実際に残業代が戻ってきたときに、回収できた残業代から報酬を払うという「完全成功報酬制」をとる事務所も増えています。
残業代請求をする上で、実際に裁判になってしまうことは少ない上に、完全成功報酬制の事務所なら、あなたの金銭的負担も極めて低いのです。
まずは相談してみると良いでしょう。
6章:まずは証拠集めから始める
残業代をもらうための方法を理解していただけましたか?
自分で請求するとしても、弁護士に頼むとしても、その前にやるべきことがあります。
それが「証拠集め」です。
これから集めるべき証拠について解説します。
6-1:勤怠管理している会社で有効な証拠
証拠として有効なものには、以下のものがあります。
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
これらの証拠になるものがなくても、諦める必要はありません。
6-2:勤怠管理してない会社でも証拠集めができる
タイムカードを置いていなかったり、日報をつけないような勤怠管理をしていない会社でも、次のようなものが証拠になり得ます。
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
できれば3年分の証拠があることが望ましいですが、なければ一部でもかまわないので、写真にとったりコピーをとったりして、できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。
6-3:証拠は必ず正確に取ろう
ただし、注意点があります。
勤怠管理してない会社なら、自分で記録したものも有効な証拠になるとお伝えしましたが、このとき、絶対に「ウソ」を書いてはいけません。
意図的に実際に働いた時間と異なることを書くと、それがばれてしまったときに、証拠の信用性が疑われて不利になってしまいますので、気をつけてください。
6-4:残業代がさかのぼってもらえるのは3年間
残業代請求の時効は、「3年」と決められています。
つまり、3年よりも前の残業代分はもらえなくなってしまいます。
そのため、残業代をもらいたい場合は、早めに行動することがとても大事です。
まとめ:ブラック企業の労働時間
あなたの労働時間がどのようにごまかされているのか、そしてごまかされた残業代はどうやってもらうことができるのか、理解することができたでしょうか?
最後に、今回のポイントをもう一度振り返りましょう。
- 1ヶ月45時間を超える残業(ブラックの疑いあり)
- 1ヶ月80時間を超える残業(ブラック企業の可能性が高い)
- 1ヶ月100時間を超える残業(確実にブラック企業)
- サービス残業が当たり前の雰囲気を作る
- みなし残業を使って残業時間をごまかす
- 勤怠管理をせず残業時間をごまかす
- 残業は禁止していると主張する
- 名ばかり管理職にして残業代を払わない
- 個人事業主として外注して経費削減
- 裁量のないプログラマーに裁量労働制を適用して残業代を払わない
- 変形労働時間制を適用して残業代を払わない
- フレックスタイム制を適用して残業代を払わない
- 自分で請求する:おすすめ度★☆☆
- 労働基準監督署に申告する:おすすめ度★★☆
- 弁護士に相談する:おすすめ度★★★
- タイムカード
- 会社のパソコンの利用履歴
- 業務日報
- 運転日報
- メール・FAXの送信記録
- シフト表
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
あなたも不当に長時間働かせるブラック企業から残業代を取り戻すために、まずは証拠集めからはじめてみてはいかがでしょうか。