固定残業代とは?正しい定義と7つの違法性チェックポイントを解説

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監修者 住川佳祐

弁護士法人QUEST法律事務所
住川 佳祐

固定残業代とは?正しい定義と7つの違法性チェックポイントを解説
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 固定残業代制(みなし残業代制)とは
  • 実は違法なケースが多い固定残業代制
  • 固定残業代制(みなし残業代制)の違法性を判断するための7つのチェックポイント
  • 残業代はいくら返ってくる?

固定残業代(みなし残業時間制)とは「一定の残業時間分の残業代を最初から給料として支払っておく制度」を言います。

会社の中には、この制度を悪用して、定額の残業代で社員をこきつかうところがあります。しかし、固定残業代を支払っているからと言って、社員をいくらでも働かせて良いわけではありません。

そこで、この記事では固定残業代制の正しい意味や悪用されるケース、違法となる場合について解説します。

この記事を読み、固定残業代の正しい知識を身に着けましょう!

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■固定残業代制とは

一定の残業時間分の残業代を最初から給料として払っておく制度のこと

■固定残業代の支払い方法

固定残業代の支払い方法には、以下の2つの種類がある。

①手当支給型

②基本給組み込み型

■残業代を基本給に組み込むことは、以下の条件を満たしていなければ違法

①基本給のうち残業代にあたる部分を明確に分けることができること
(例)「基本給のうち5万円を時間外手当として支給する。」
②実際に働いた時間で計算した残業代が、定額の残業代を超えた場合には、会社が差額を支払うこと

■ブラック企業が固定残業代を悪用する手口

①各種手当を残業代と偽る手口

②基本給に一定の残業代を含む手口

固定残業代についてのポイント

未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:固定残業代制(みなし残業代制)とは

固定残業代(みなし残業時間制)とは「一定の残業時間分の残業代を最初から給料として支払っておく制度」を言います。

例えば、毎月30時間の固定残業に対し、3万円の固定残業代が 支払われる契約になっているとしましょう。

この場合、月30時間までの残業なら、一律3万円が支給されます。つまり、実際に残業した時間が2時間でも、15時間でも、3万円が支払われるのです。

一方、残業が月30時間を超えてしまった場合は、3万円に加えて別途残業代が支払われないといけません

弁護士
弁護士
固定残業代といっても働かせ放題なのではなく、あらかじめ決められた残業時間を超えた場合には、会社が残業代を支払う必要があるのです。

固定残業代(みなし残業代)の払われるイメージ

固定残業代の支払い方には2つの方法があります

① 手当支給型
残業代の支払いの代わりに定額の手当を支給するもの

② 基本給組み込み型
残業代を基本給に組み込んで支給するもの

固定残業代の種類

特に注意を要するのが②の場合です。残業代が基本給に組み込まれている場合、一見して固定残業代制を採っているのかわかりません。そこで、基本給組み込み型が認められるのは以下の場合であるとされます。

【残業代を基本給に組み込むことが許される場合】
① 基本給のうち残業代にあたる部分を明確に分けることができること
(例)就業規則に「基本給のうち5万円を時間外手当として支給する。」 と書かれている
②実際に働いた時間で計算した残業代が、定額の残業代を超えた場合には、会社が差額を支払うこと

この2つの条件を満たしていない場合には、会社は基本給に残業代が組み込まれていた、と主張することができません

弁護士
弁護士
この場合には、基本給をもとに計算した残業代を請求することができます。

2章:実は違法なケースが多い固定残業代制

固定残業代制は違法に導入されているケースが多いです。ここでは、なぜブラック企業で固定残業代制が導入されるのか、どのように悪用されるのかについて解説します。

2-1:なぜブラック企業は固定残業代制を導入するのか

経営者(建前)
経営者(建前)
固定残業代でしっかり残業代を払いますよ!
社員
社員
毎月ちゃんと残業代が出るなんて、良い会社だな!
経営者(本音)
経営者(本音)
一定の残業代で残業させ放題だ!

固定残業代は毎月一定の残業代が出るため、残業代がまったく出ない会社に比べて良心的なようにも思えます。また、多くの人は、固定残業代でも残業代を請求できることを知りません

会社は、このような心理に付け込んで、一定の金額でいくらでも社員を働かせようとするのです

では、固定残業代を悪用する手口として、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

2-2:手口の種類


固定残業代を悪用する手口は、大きく分けて2つあります。


2-2-1:各種手当を残業代と偽る手口


社員
社員
何か月も残業代をもらっていません!

経営者(本音)
経営者(本音)
何を言っているんだ。営業手当として、毎月残業代を支払っているだろう。

このように、「営業手当や役職手当が残業代の代わりである」と会社が説明することがあります。

毎月一定の手当を払うことで、一定の残業代を払っているように見えるからです。


2-2-2:基本給に一定金額の残業代を含む手口


会社によっては、基本給に一定の金額の残業代を組み込むことがあります。これにより、基本給の水増しをすることができるからです。

例えば、以下のような求人が出ていたとしましょう。

A社:基本給30万円(45時間分の残業代3万円を含む)
B社:基本給27万円

A社は固定残業代制を導入している会社です。この求人だけを見ると、A社のほうが給料が高いようにも思えます。

しかし実際には、45時間を超えた残業について残業代が支払われないことが多いのです。

固定残業代制を悪用する手口について、詳しくはこちらの記事を参照してください。

【弁護士が解説】「固定残業代制だから残業代は無し」は違法?

では、具体的にどのような場合に固定残業代制は違法となるのでしょうか。

3章:固定残業代制(みなし残業代制)の違法性を判断するための7つのチェックポイント


7つのチェックポイントから、固定残業代制(みなし残業代制)が違法となる場合をおさえましょう。

□就業規則がないor就業規則がどこにあるか知らされていない
→固定残業代制が導入されるためには、これが就業規則に記載されている必要があります。

 

□基本給部分と残業代部分の区別がつかない
→固定残業代制は、基本給と残業代にあたる部分を明確に分けることができないといけません。さらに、残業代については残業時間と金額の両方が記載されている必要があります

 

□残業代に対する対価でないものを残業代として払っている
→会社が営業手当、役職手当などの手当を残業代として払っていることがあります。しかし、このような手当が残業代の代わりといえるためには、「各種手当が残業の対価として支払われた」と言えなければなりません。

 

□固定残業を超えた分の残業代が支払われない
→固定残業の定める労働時間を超えて残業をした場合、会社は実際の残業時間分の残業代と固定残業代の差額を支払う必要があります

 

□固定残業が想定する残業時間が異常に長い
固定残業として想定されている時間が月45時間を超える場合、固定残業制は違法となる可能性があります
これは、厚生労働省の出している過労死基準との関連によるものです。

 

□基本給が最低賃金を下回っている
→給料のうち、基本給部分が最低賃金を下回っている場合には、固定残業代制は違法となります

 

□給与規定が改定されている
今まで純粋に手当として支払われていたものが、名前を変えずに、残業手当として支払われるようになっていることがあるため、給与規定が改定されている場合には注意が必要です。

固定残業代制が違法となる場合について、詳しくは以下の記事を参照してください。

みなし残業(固定残業)の違法性を判断する7つのポイントを徹底解説

社員
社員
固定残業代制が違法になる場合はわかったよ。じゃあ、具体的に残業代はいくら返ってくるんだろう?

4章:残業代はいくら返ってくる?

固定残業代制を導入している会社では、適正な残業代が支払われていないことが多いです。まずは、残業代がいくら返ってくるのかを自分で確認してみましょう。

《固定残業代が合法なケース》
固定残業代が合法な場合、以下の式で残業代を求めることができます。

固定残業代制の計算式

① 基礎時給

基礎時給とは、あなたの1時間当たりの賃金のことです。基礎時給は以下の式で計算することができます。

基礎時給の計算式

ここで月給には固定残業代が含まれないので注意しましょう

② 割増率

割増率は以下の通りです。

残業代計算の割増率

③残業時間

残業時間とは、「1日8時間・週40時間」を超えて働いた時間を指します

(例)Aさんのケース・基本給:20万円
・所定労働時間:170時間
・固定残業代:3万円
・残業時間100時間

基礎時給は

基本給20万円÷170時間

約1176円となる

そのため、残業代は

1176円×1.25倍×100時間-3万円

11,7000円となる

《固定残業代が違法なケース》
固定残業代が違法なケースでは、固定残業代も含めた額が月給になります。

(例)Bさんのケース
・基本給:20万円
・所定労働時間:170時間
・固定残業代:3万円
・残業時間100時間

基礎時給は

(基本給20万円+固定残業代3万円)÷170時間
約1353円となる

そのため、残業代は

1353円×1.25倍×100時間
16,9125円となる

【弁護士】残業代は最後の給料日から3年間請求できるため、Bさんのケースでは最大608万8500円も請求することができます。

固定残業代の計算方法について、詳しくはこちらをご覧ください。

あなたも違法?正しい固定残業代の計算方法と残業代を取り返す2つの手段

まとめ:固定残業代について

いかがだったでしょうか。最後に簡単にまとめてみましょう。

固定残業代制とは「一定の残業時間分の残業代を最初から給料として払っておく制度」のこと

・固定残業代の支払い方には①手当支給型②基本給組み込み型の2種類がある
・②基本給組み込み型は、以下の条件を満たしていなければ違法になる

【残業代を基本給に組み込むことが許される場合】
①基本給のうち残業代にあたる部分を明確に分けることができること
(例)「基本給のうち5万円を時間外手当として支給する。」
②実際に働いた時間で計算した残業代が、定額の残業代を超えた場合には、会社が差額を支払うこと

・ブラック企業が固定残業代を悪用する手口は主に2つある

①各種手当を残業代を偽る手口
②基本給に一定の残業代を含む手口
・固定残業代を導入している会社では、正確な残業代が支払われていないことが多いので、自分で確認する

固定残業代について正しい知識を身に着け、働いた分のお金はしっかりもらいましょう。

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弁護士法人QUEST法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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