- 更新日:2024.08.28
- #残業代請求勝率
残業代請求の勝率は何%?現役弁護士が勝率を上げる全ポイントを解説
この記事を読んで理解できること
- 残業代請求の勝率を上げるために知っておくべきこと
- 残業代請求の勝率が高いケース
- 残業代請求の勝率を上げる方法
あなたは、
「残業代を請求したいけれど、勝率はどのくらいなんだろう?」
「勝率が低いなら請求するのは不安だな」
などと悩んでいませんか?
確かに、残業代請求など経験したことがない人が大多数ですので、勝率が気になるのは当然のことです。
しかし、残念ながら、「あなたの場合の勝率は○%」などと言い切ることはできません。
なぜなら、残業代請求の勝率は、あなたが集められる証拠や請求方法等によって大きく変わるからです。
そのため、残業代請求の勝率を上げるためには、「集めるべき証拠」と「より確実な請求方法」を知っておくことが大事です。
そこでこの記事では、まずは、私のこれまでの経験から分かった、残業代請求の勝率が高いケース・低いケースについて紹介します。
さらに、残業代請求の勝率を上げるための2つのポイントについても解説します。
あなたの残業代請求が成功するように、この記事の内容をしっかり理解してください。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■残業代請求の勝率が高いケース
- 十分な証拠がある
- 管理職を理由に残業代が出ていなかった
- みなし残業代制だが、みなし残業時間を超えて残業した分が未払い
- 残業代請求に強い弁護士に請求手続きを依頼した
■残業代請求の勝率が低いケース
- 証拠が一切ない
- 手続きを全て自分でやろうとしている
- 残業代請求に強くない弁護士に依頼する
■残業代請求の勝率を上げるポイント
- 認められやすい証拠を集める
- 弁護士選びに注意する
目次
1章:残業代請求の勝率を上げるために知っておくべきこと
あなたは、「早く残業代請求の勝率を知りたい」「勝率を上げる方法を知りたい」と思っているかもしれませんが、その前に知っておくべきことがあります。
それは、間違った方法を取れば、勝率が一気に下がってしまう、つまり残業代請求に失敗してしまうということです。
未払い残業代を会社に請求する場合、あなたは「何としても支払ってほしい」と考えているのではないかと思います。
しかし、多くの会社は、あなたとは逆に「できる限り社員に残業代を支払いたくない」と考えています。
なぜなら、あなたに残業代を支払うと、
- 残業代を出さずに社員を働かせていたことを認めることになる
- 数十万円〜数百万円単位のお金を失う
ということになるからです。
そのため、勝率を上げるためには、「第三者から見ても、残業代請求の正当性が明らか」であるように行うことが必要です。
2章:残業代請求の勝率が高いケース
弁護士として残業代請求に積極的に取り組んできた私の経験上、残業代請求には勝率が高いケースと低いケースがあります。
そこで、これからそれぞれのケースを解説しますので、あなたの状況と似たものはないかチェックしてみてください。
残業代請求の勝率が高いケースは、以下のものです。
それぞれ詳しく解説します。
2-1:残業していたという十分な証拠がある
以下のチェックリストに当てはまるものがあれば、あなたは残業代請求の勝率が高いです。
最も残業代請求の勝率が高いケースは、未払い残業代の存在が証明できる証拠が十分にある場合です。
なぜなら、証拠があることで、
- 会社から「残業代は支払った」「残業した事実はない」などと言われても反論できる
- 弁護士や労働基準監督署などの第三者の力を借りる場合に、未払い残業代の存在を客観的に証明できる
という強みあがるからです。
証拠がなくても請求できないわけではありませんが、勝率は低くなります。
より勝率をあげるために、在職中から、証拠を集めておきましょう。
集めるべき証拠や、証拠集めのポイントについて、詳しくは3章で解説しています。
また3章で詳しく解説する通り、仮にタイムカードや日報等がなくても、家族へ毎日「仕事終わったよ」とメールをしたり、メモを取ったりして証拠を在職中に作成することも可能です。
2-2:管理職・店長を理由に残業代が出ていなかった
管理職・店長を理由に残業代がもらえていない場合、以下のチェクリストに一つでも当てはまるものがあれば、ほぼ違法です。
そのため、残業代請求の勝率が高いです。
あなたは、会社から「肩書きが管理職や店長であること」を理由に、残業代をごまかされていませんか?
このような場合は、残業代請求の勝率が高いです。
多くの会社では、肩書きが管理職や店長だと「残業代が出ない」と思われているようです。
しかし、実は、法律上の「管理監督者」の要素を満たしていなければ、残業代が出ていなければ違法です。
そして、ほとんどの管理職や店長は、法律上の管理監督者の要素を満たしていない実態があるのです。
あなたが「管理監督者」の要素を満たしているかどうかは、待遇や出退勤の自由度、会社全体の意思決定に参加できるか、といったことから判断されます。
過去の判例では、多くの場合で、肩書きが管理職や店長でも、「管理監督者ではない」と判断されていますので、あなたも、管理監督者ではないことを会社に認めさせ、残業代を取り返せる可能性が高いです。
実際、私は過去に、肩書きが管理職の人から残業代請求を依頼されたことが何度もありますが、ほとんどのケースで請求を成功させることができました。
このような理由、経験から、管理職を理由に残業代が出ていない場合は、勝率が高いのです。
管理職や店長の場合の残業代のルールについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
残業代なしは違法!管理職でも残業代が出る理由と2つの請求方法を解説
2-3:みなし残業代制だが、みなし残業時間を超えて残業した分が未払い
まずは、以下のチェックリストをやってみてください。
みなし残業代制とは、残業代が毎月固定で支払われる仕組みのことです。
あなたも、チェックリストに当てはまる場合は、みなし残業代制で残業代が支払われていると考えられます。
みなし残業代制は、毎月一定のみなし残業時間に対して、あらかじめ決められた一定の残業代を支払う仕組みです。
そのため、みなし残業時間を超えて残業した場合は、その分の残業代が発生しますし、もらえていなければ違法です。
したがって、みなし残業代制でみなし残業時間を超えて働いた分の残業代が出ていない場合は、残業代請求の勝率が高いと言えます。
2-4:残業代請求に強い弁護士に請求手続きを依頼している
残業代請求を、残業代請求に強い弁護士に依頼した場合も、勝率が高いです。
理由は2つあります。
①弁護士が代理人になることで会社に圧力をかけられる
弁護士があなたの代理人になることで、会社には「専門家を立てるくらい本気なんだな」「専門家が相手ならごまかせないかもしれない」と、圧力をかけることができます。
その結果、交渉を有利に進められる可能性があるのです。
②残業代請求の経験が豊富
残業代請求に強い弁護士なら、過去に多数の残業代請求の実績があるはずです。
そのため、あなたのケースではどのくらいの残業代を回収できるか、どのように交渉を進めれば良いのか、熟知しています。
豊富な経験があるため、残業代請求の勝率が高いのです。
逆に、
- 残業代請求の手続きを全て自分でやろうとする
- 残業代請求に強くない弁護士に、手続きを依頼する
という場合は、勝率が下がってしまいますので注意してください。
なぜなら、残業代を請求するためには、
- 有効な証拠の収集
- 各書類の作成
- 残業代の請求金額の計算
- 会社との交渉
- 労働審判(※)の手続き
- 裁判(訴訟)の手続き
など、専門知識や経験がなければ難しい手続きが多いからです。
もし、自分でやったり、残業代請求に強くない弁護士に依頼すると、
- 会社に対して有利に交渉を進められない
- 本当は証拠にできるものを見逃してしまう
- 残業代の請求額の計算を間違って、少なく計算してしまう
という可能性があるのです。
※労働審判とは、会社との間のトラブルを解決するための、裁判(訴訟)よりも簡単な、裁判所で行う手続きのことです。
弁護士
- 証拠が一切無い
- 残業代請求を自分でやる
- 残業代請求に強くない弁護士に依頼する
3章:残業代請求の勝率を上げる方法
残業代請求の勝率を上げるために最も重要なのは、
- 認められやすい証拠を集める
- 弁護士選びに注意する
という2つのポイントです。
それぞれ詳しく解説します。
3-1:認められやすい証拠を集める
繰り返しになりますが、残業代請求において、最も大事なことの一つが証拠集めです。
そのため、在職中に、認められやすい証拠を集めておくことが非常に重要です。
集めるべき証拠には、
- 労働条件を示す証拠
- 残業時間を示す証拠
の2つがあり、それぞれ、以下のものが証拠になります。
【労働条件を示す証拠】
- 雇用契約書
- 就業規則
- シフト表
- 給与明細
すでに手元にあるならそのまま大事に保管しておいてください。
もし手元にないという場合は、会社のPCやネットワーク上、もしくは職場どこかから探し出して、
- 写真を撮っておく
- コピーする
などで、手元に保管しておきましょう。
【残業時間を示す証拠】
《集めやすい証拠》
- タイムカード
- シフト表
- 業務日報(上司のサインや印鑑などがあれば、より強い証拠になる)
【ポイント】
日報などは、正確に書いていないことも多いと思います。
正確ではない記録が残っていると、交渉になったときに不利になる可能性あります。
また、タイムカードやシフト表は会社側が都合良く改ざんしている可能性もあります。
このように、以上の証拠の正確性が期待できない場合は、以下に示す証拠を使うこともできます。
《証拠になり得るもの》
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
- 会社のパソコンの利用履歴
- メール・FAXの送信記録
- セキュリティカード
- 交通系ICカード
- 会社内の時計の写真
【ポイント】
証拠として一番良いのは①です。毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。
具体的な業務についても書くのがベストです。
③のメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。
証拠集めのポイントについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル
3-2:弁護士選びに注意する
残業代請求の勝率を上げるポイントのもう一つは、弁護士選びに注意するということです。
2章でもお伝えしたように、「残業代請求に強い弁護士」に依頼する、というのも重要なポイントです。
しかし、法律事務所の中には「残業代請求に強い」と言いつつ、実は実績が少ない事務所もあります。
そのため、弁護士選びは、以下の点に注意してください。
【選ぶべき弁護士の特徴】
- HPに「残業代請求に強い」と記載されている
- HPに「過去の請求額実績」が掲載されている
- 相談料無料、着手金ゼロ、完全成功報酬の仕組みを導入している
- 残業代がどれくらいとれるのか、事前に答えることができる
【避けるべき弁護士の特徴】
- 大手の法律事務所
- 企業の顧問になっている法律事務所
- 裁判の実績の多さをあえてアピールしている
残業代請求に強い弁護士を選ぶための注意点について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
【残業代請求の勝率が高いケース】
- 十分な証拠がある
- 管理職を理由に残業代が出ていなかった
- みなし残業代制だが、みなし残業時間を超えて残業した分が未払い
- 残業代請求に強い弁護士に請求手続きを依頼した
【残業代請求の勝率が低いケース】
- 証拠が一切ない
- 手続きを全て自分でやろうとしている
- 残業代請求に強くない弁護士に依頼する
- 認められやすい証拠を集める
- 弁護士選びに注意する
【労働条件を示す証拠】
- 雇用契約書
- 就業規則
- シフト表
- 給与明細
【残業時間を示す証拠】
《集めやすい証拠》
- タイムカード
- シフト表
- 業務日報(上司のサインや印鑑などがあれば、より強い証拠になる)
《証拠になり得るもの》
- 手書きの勤務時間・業務内容の記録
- 残業時間の計測アプリ
- 家族に帰宅を知らせるメール
- 会社のパソコンの利用履歴
- メール・FAXの送信記録
- セキュリティカード
- 交通系ICカード
- 会社内の時計の写真
【選ぶべき弁護士の特徴】
- HPに「残業代請求に強い」と記載されている
- HPに「過去の請求額実績」が掲載されている
- 相談料無料、着手金ゼロ、完全成功報酬の仕組みを導入している
- 残業代がどれくらいとれるのか、事前に答えることができる
【避けるべき弁護士の特徴】
- 大手の法律事務所
- 企業の顧問になっている法律事務所
- 裁判の実績の多さをあえてアピールしている
残業代の請求金額は高額になることが多いので、より確実な方法を選んで、賢く行動していきましょう。
【参考記事一覧】
管理小でも残業代が出るケースについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
残業代なしは違法!管理職でも残業代が出る理由と2つの請求方法を解説
残業代請求において集めるべき証拠とその集め方については、以下の記事で解説しています。
【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル
弁護士に残業代請求を依頼する場合の、弁護士の選び方について詳しくは以下の記事で解説しています。