ベンチャー企業の残業実態と残業代の請求方法を弁護士が解説

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
住川 佳祐

ベンチャー企業の残業実態と残業代の請求方法を弁護士が解説
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 残業時間が長くなりがちなベンチャー企業の実情
  • ベンチャー企業でも無制限な残業はNG
  • これ以上の残業に耐えられないあなたが取るべき3つの行動

ベンチャー企業で今現在働いている、あるいはこれから働くあなたは、このような疑問や悩みを持っていませんか?

「ベンチャーで働いていると残業って当然なの?」
「生産性を強調する割に残業時間が長すぎる」
「これだけ働いても残業代は出ないの?」

確かに、ベンチャー企業では後から説明する様々な要因から、労働時間が長くなりがちな一面を持っています。

将来のリターンを約束したり、成果主義だからと言い含めたり、など自己中心的な論理で社員を長時間働かせようとするブラックな会社もありますが、当然のことながらベンチャー企業にも残業や残業時間のルールは適用されます

この記事では、まずはベンチャー企業の働き方の実情について解説し、その後に裁量労働制やみなし残業制など働き方別の残業・残業時間のルールを確認します。そして未払いの残業代の計算方法や、請求する上での重要なポイントについても説明します。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■ベンチャー企業でも残業代が出なかったら違法

■ベンチャー企業で採用されることが多いルール

  • 裁量労働制
  • フレックスタイム制
  • 固定残業代制(みなし残業代制)

※これらは残業代を払わないために会社が悪用することも多いため、注意が必要です。

■これ以上の残業は嫌だという場合に取るべき行動

  • 残業時間を減らす
  • 転職する
  • 未払い残業代を請求する
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:残業時間が長くなりがちなベンチャー企業の実情

最近は同じ会社で定年まで働き続ける終身雇用が珍しくなり、大企業=安定という考えが通用しなくなったことで、就職活動で学生の人気が集まるベンチャー企業も目立っています。

ベンチャー経営者(建前)
ベンチャー経営者(建前)
急成長する当社は、あなたの夢を実現できる場所だよ。
社員
社員
新しいことや変化が多く、毎日が刺激的だな。
ベンチャー経営者(本音)
ベンチャー経営者(本音)
体力のある若手はもっと働いてもらおう。

元々「ベンチャー」という言葉は「冒険」「冒険的な企て」を指します。そこから転じて、新しい技術やアイデア、イノベーションを開発し、新しい事業を展開する企業をベンチャー企業と呼ぶようになりました。

ベンチャー企業は大手企業に比べると給料が安いことが多いと言われますが、それでも学生に人気の就職先でもあります。

よく耳にするベンチャー企業で働く魅力としては、

・新規事業に関われる
・新人の頃から仕事を任される
・会社の成長を感じられる
・経営者と距離が近い
・実力主義、成果主義な職場環境
・会社が大きくなったらリターンが大きい

といったポイントが挙げられます。ベンチャー企業はモチベーションが高い若手社員にとっては、刺激とやりがいがある職場であることがわかります。

しかし、実際には残業時間が長い会社が多く、社会的な問題も増えています。ここからは、ベンチャー企業での働き方の実情を解説したいと思います。

ベンチャー企業で働く大変さとしては、ベンチャーの残業の特徴

といった点が指摘されています。

給与は、大企業に比べると総じて低いようですが、会社の成長ステージによって、後から大きなリターンが手に入ることも珍しくありません。

もう一点の残業に関しては、ベンチャー企業は残業時間が長く、残業代もカットされやすい会社が多いと言われています。

その理由としては、次のようなものがあります。

・少人数で事業を行うので業務量が多く、業務範囲も大きい
・収益を上げるために新規事業を次々に展開する
・急な成長に人的リソースが追いつかない
・経営陣や創業メンバーが、社員に自分たちのような働き方を求める

創業直後は、残業は当たり前で残業代を出す余裕もない、という状態が当たり前。この時期から在籍する社員は、新しい社員にも同じような働き方を求めることがあるようです。

社員
社員
そういう社風だと思って、指示通り残業するしかないのか。
弁護士
弁護士
ベンチャー企業は特殊な働き方を導入したり、様々な理由をつけて長時間労働を正当化したりすることがありますが、法律で定められた残業時間や残業代のルールに従わず、社員を働かせることはできません。

2章:ベンチャー企業でも無制限な残業はNG

2章では、残業のルールを確認した上で、ベンチャー企業がよく使う手口を解説します。

2-1:残業時間と残業代のルール

労働基準法では、会社が1日8時間、週40時間を超えて社員を働かせることはできないと決められています。

会社と社員の間で「36協定※」が締結されている場合は、社員はこの時間を超えて働くことができますが、その場合でも「①1日8時間を超えて働いた時間」や「②週40時間を超えて働いた時間」はすべて残業時間になります

※労働基準法36条で定められた協定で、会社が1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて社員を働かせる場合に必要になります。

しかし、中には色々な理由をつけて、残業代を払おうとしない会社もあります。

2-2:このように言われていませんか?ベンチャー企業が使う手口

ベンチャー企業が残業代を支払わずに社員を長時間残業させるために、よく使う理由には次のようなものがあります。

・「企画型の裁量労働制だから残業代は発生しない」

ベンチャー企業では、社員に裁量労働制を適用することがあります。

次の節で詳しく説明しますが、この制度では基本的には残業代が発生しないものの、休日や深夜など割増賃金を支払わなければいけないケースも多くります。

・「残業代は固定で支払っている」

固定給にあらかじめ残業代を含む固定残業代(みなし残業代制)をとる会社もあります。

しかし、みなし残業時間が実際の労働時間より少ない場合には、会社は社員に残業代の差額分を支払う必要があります。また、みなし残業時間を極端に長く設定することも、労働基準法違反の疑いがあります。

・「成果主義なので、労働時間が長いのは仕事ができないから」

生産性を重視するベンチャー企業の中には、仕事を早く終わらせることを良しとする会社が多くあります。一方で、これを逆手にとって「仕事が長い=仕事が遅いから」という理由で残業を正当化しようとする会社もあります。

・「ベンチャー企業は残業して当然。みんな経験したこと」

長時間働かせるために、精神論を振りかざすブラックなベンチャー企業もあります。しかし、当然のことながら、こうした理由で残業代を支払わずに社員を残業させることはできません。

・「将来的なリターンが大きいので我慢して働くべき」

ベンチャー企業は上場した際に社員に、ストックオプション(※)が与えられることがあり、それが社員にとって大きな収入になることもあります。

※株式会社の経営者や社員が決められた価格で自社株を買う権利

しかし、まだ発生していない将来の報酬を理由に、違法な残業を正当化することはできません。

2-3:ベンチャー企業でよくある働き方別の残業時間ルール

ここからは、前の節でも触れた、ベンチャー企業で採用されることの多い3つの働き方のルールを確認しましょう。

自分に適用されている働き方を知って、会社の身勝手な言い分に言いくるめられないようにしょう。

2-3-1:裁量労働制

裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ会社側と協定などで決めた時間を労働時間と「みなす」制度す。

例えば、会社側と1日のみなし労働時間を8時間と決めていた場合、働いた時間が10時間でも14時間でも、その日に働いた時間は8時間とみなされることになり、残業代は発生しません。

しかし、そもそも制度が不当に適用されている場合や、適用は認められても深夜や休日など残業代が発生するケースがあります。

裁量労働制での残業については、以下の記事をご覧ください。

裁量労働制にも残業がある!制度の考え方と残業代が貰える条件を解説

2-3-2:フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、「始業や就業の時間を自分で自由に決めることができる働き方」のことです。

しかし、制度の要件を満たさず違法な適用の場合や、あらかじめ決めた労働時間よりも実際に働いた時間の方が長い場合には残業代が発生します。

フレックスタイム制については、以下の記事をご覧ください。

フレックスタイム制とは?誰でもたったの5分で理解できる正しい意味

2-3-3:固定残業代制(みなし残業代制)

固定残業代制(みなし残業代制)とは、一定の時間分の残業代を、最初から給料に含めて払っておく制度です。

ただ、この制度は会社が従業員を違法にこき使う手口として利用されることが多く、本当は残業代が発生するケースも珍しくありません。

固定残業代制については、以下の記事をご覧ください。

【弁護士が解説】「固定残業代制だから残業代は無し」は違法?

このように、特殊な働き方の場合も多くのケースで残業代が発生することがあります。自分がどのような制度で働く契約になっているか、知っておくようにしましょう。

3章:これ以上の残業に耐えられないあなたが取るべき3つの行動

ベンチャー企業で働く人の中には、これ以上残業するのに耐えられないという人も多いのではないでしょうか。

ここからは、そんなあなたが取るべき行動について考えていきたいと思います。

3-1:残業時間を減らす

自分の頑張りでどうにかできる業務量の場合は、仕事の進め方を工夫することで残業時間を減らすことです。

そのための方法としては、

・ルーティン作業を効率化する
・メールなどの外部とのやりとりは時間を決める
・資料作成に力を入れすぎない
・仕事を細かいステップに分けて優先順位をつける

といった方法が考えられます。こうしたことを意識するだけで、働く時間を短くすることができるかもしれません。

3-2:転職する

個人でどうにかできるレベルを超えた残業が求められる場合は、転職して新たな職場を探すのも良い考えです。

退職は社内で

退職の流れ

といったステップで進める必要があります。スムーズに退職するために必要な手続きについて知っておきましょう。

退職については、以下の記事をご覧ください。

今すぐ辞めよう!ブラック企業を穏便かつ確実に退職する方法と2つの注意点

3-3:未払い残業代を請求する

ベンチャー企業でも残業代が発生することがわかりました。ここからは、あなたが受け取れるはずだった残業代の計算方法と請求方法についてわかりやすく解説します。

3-3-1:残業代の計算方法

一般的に、残業代は次のような式で計算することができます。

残業手当の計算式

基礎時給とは1時間当たりの賃金のことで、月給制の場合は月給を1か月の所定労働時間で割って算出できます。

基礎時給の計算式

一月所定労働時間は雇用契約で定められている1ヶ月あたりの平均労働時間のことで、一般的に170時間前後となっています。

基本的には、残業代はこの計算式で計算できますが、先ほど説明した3つの働き方の場合は、変則的な計算が必要になります。それぞれの計算方法については以下の記事をご覧ください。

5分で分かる!正しい残業代の計算方法と実は残業になる8つの時間

弁護士
弁護士
変則的なケースの残業時間の計算は、複雑で注意しなければならない点があります。自分での計算が難しければ、弁護士に相談することをオススメします。

3-3-2:請求するための2つの方法

在職中でも退職後でも、会社から未払いの残業代を取り返すための方法には、

自分で請求する方法
弁護士に依頼する方法

という二つの方法があります。

それぞれのメリットとデメリットは次の通りです。

残業代請求を自分でやる場合と弁護士に依頼する場合の違い

証拠集めや残業代の計算には手間がかかるので、手間がかからず、残業代を取り返せる確率も高い「弁護士への依頼」が良いでしょう。

残業代請求の方法については以下の記事をご覧ください。

【退職後でも可!】残業代請求の2つの方法と在職中から集めることができる証拠

まとめ:ベンチャー企業の残業について

いかがでしたか?

最後にもう一度、今回の内容を振り返ってみましょう。

まず、働き盛りの社員にとって、ベンチャー企業には魅力が多い一方で、労働時間が長くなりがちなことを説明しました。

それから、ベンチャー企業でも残業代を支払わずに、社員をこき使うことができないことにも触れました。

ベンチャー企業で採用されることの多い働き方は次の3つです。それは

・裁量労働制
・フレックスタイム制
・固定残業代制(みなし残業代制)

です。自分の契約を見直して、残業や働き方のルールについて正しく理解するようにしましょう。

これ以上の残業は嫌だというあなたは、次のような行動を取ることをお勧めします。

・残業時間を減らす
・転職する
・未払い残業代を請求する

未払い残業代については3年で時効が成立してしまうので、請求を検討している場合は早めに行動しましょう。

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会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

弁護士法人QUEST法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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