- 更新日:2024.09.09
- #休日出勤
休日出勤とは?その定義と手当・残業代の計算方法や対処法を弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- 休日出勤の定義についてまず知っておくべきこと
- 休日出勤の休日手当の計算方法
- 休日出勤になる可能性がある2つのケース
- 36協定を締結している場合は休日出勤を拒否できない
- 休日出勤の改善方法
あなたは、
「休日出勤の法的な決まりが知りたい」
「休日出勤の割増賃金や計算方法は?」
「休日の研修も休日出勤になるかな?」
などとお考えではないですか?
結論から言うと、法定休日に労働した場合は、休日出勤として3割5分以上の割増賃金の対象になります。
法定休日とは、労働基準法で定められた「週に1日以上、もしくは4週に4日以上の休日」のことで、週休2日制の会社であればいずれか1日が法定休日で、もう1日は会社が定めた法定外休日になります。
法定外休日に労働した場合も一般的には休日出勤と呼ばれますが、「1日8時間、週40時間」の法定労働時間を超過した場合だけ、時間外労働(残業)として2割5分以上の割増賃金の対象になります。
また、休日出勤した場合であっても、振替休日が設定されている場合は、割増賃金は発生しません。
このように休日出勤は、会社で定められた休日に出社し仕事を行うことですが、そこには労働基準法で定められた休日や労働時間、割増賃金等の規定や、労使間の協定など様々な要素が含まれています。
そこでこの記事では、1章で休日出勤の定義についてまず知っておくべきことを、2章では休日出勤の休日手当の計算方法を、3章では休日出勤になる可能性がある2つのケースについて解説していきます。
さらに4章では、休日出勤の改善方法を解説していきます。
あなたが知りたいところからしっかり読んで、休日出勤や休日手当の正しい知識を身につけてくださいね。
目次
1章:休日出勤の定義についてまず知っておくべきこと
そもそも、休日労働や法定労働時間を超えた労働をさせるためには、労使間で36(サブロク)協定が締結されている必要があります。
36協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条に基づいて行われる手続きです。
会社が労働者に対して、法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超える時間外労働及び休日労働などを命じる場合は、労働組合又は労働者の過半数を代表する者と書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。
そのため、36協定が結ばれていないのに、会社が休日出勤をさせることは違法行為であり、36協定が結ばれていても、一定基準を超えた残業は違法になります。
以上のことを踏まえたうえで、法定休日・法定外休日それぞれの定義とルール、休日出勤の割増賃金について解説していきます。
※36協定について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
36協定とは?基礎知識や残業が違法となるケース、未払残業代の請求方法
1-1:法定休日の定義とルール
法定休日とは、使用者が労働者に対して必ず与えなければならない休日のことで、労働基準法では次のように定められています。
【法定休日】
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
(労働基準法第35条)
要約すると、週に1日以上、もしくは4週に4日以上の休日を、会社は社員に与えなければならないということです。
そのため、法定休日に出勤をした場合は、休日出勤になるため休日手当として3割5分以上の割増賃金が発生します。
1-2:法定外休日の定義とルール
法定外休日とは、労働基準法では定められていない会社が独自に決めた休日のことです。
例えば、土日が休みの完全週休2日制の会社の場合は、いずれか1日が法定休日で、もう1日は会社が定めた法定外休日になります。
※週2日ある休日のどちらを法定休日にするかは、会社で決めることができます。
上記のように、日曜日が法定休日と定められている場合、土曜に出勤すると「法定外休日」出勤になります。
この場合、月曜日から金曜日まで毎日8時間労働すると、金曜日で40時間になってしまいます。
そのため、土曜に休日出勤した場合は、週40時間の法定労働時間を超えて労働することになるため、会社は時間外労働(残業)として2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。
ただし、休日労働も週40時間を超える労働も、会社と従業員の間で、「36協定」を締結し合意していなければ違法となります。
1-3:休日出勤の割増賃金は3割5分増
休日出勤とは、本来なら労働義務がない休日に出勤し労働する行為です。
そのため、
- 法定休日に出勤した場合(休日手当)
- 法定外休日に出勤し、かつ1日8時間・週40時間を超えている場合(時間外手当)
は、通常の賃金ではなく、「割増賃金」が発生することになります。
割増賃金とは、通常の就業時間内の労働の賃金に、一定の「割増率」をかけた賃金のことです。
休日出勤をした場合、次のように割増賃金が発生します。
- 法定休日の出勤・・・1.35倍の割増賃金
- 法定外休日の出勤(1日8時間・週40時間を超えている場合)・・1.25倍の割増賃金
つまり休日出勤した場合は、次のような計算式になります。
法定休日の出勤
労働時間×1時間あたりの賃金×1.35
法定外休日の出勤
(法定内労働時間×1時間あたりの賃金)+(法定外労働時間×1時間あたりの賃金×1.25)
次の章でそれぞれ解説していきます。
2章:休日出勤の休日手当の計算方法
先にあげたように、休日出勤のケースとしては、次の3つがあげられます。
- 法定休日出勤の場合
- 法定外休日出勤の場合
- 振替休日・代休を取得した場合
それぞれ、休日手当の計算方法を、順番に解説していきます。
2-1:法定休日出勤の休日手当の計算方法
法定休日出勤の休日手当は、次の3つのステップで計算します。
① 基礎時給を計算する
② 割増率をかける
③ 法定休日に出勤した日の労働時間をかける
① 基礎時給を計算する
基礎時給とは、あなたの「1時間あたりの賃金」のことです。
時給制の場合は普段通りの時給であり、月給制の場合は以下の計算式で計算します。
基礎時給=月給÷一月平均所定労働時間(※)
※一月平均所定時間とは、会社によって定められた1か月あたりの平均労働時間のことで、170時間前後であることが一般的です。
② 割増率をかける
割増率は、法定休日の出勤の場合は、「1.35倍」です。
基礎時給に割増率をかけることで、「休日出勤1時間あたりの時給」を計算できます。
③ 法定休日に出勤した日の労働時間をかける
法定休日に出勤した日の、それぞれの労働時間を合計します。
法定休日出勤の休日手当
労働時間×1時間あたりの賃金×1.35
休日出勤手当の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
休日出勤に手当が出る場合と出ない場合、計算・請求方法を弁護士が解説
2-2:法定外休日出勤の休日手当の計算方法
法定外休日出勤の休日手当(残業代)は、次の3つのステップで計算します。
① 基礎時給を計算する
② 割増率をかける
③ 法定外休日に出勤した日の労働時間を計算する
① 基礎時給を計算する
基礎時給の計算は、法定休日の場合の計算方法と同じです。
② 割増率をかける
法定外休日の休日手当は、法定内労働時間と法定外労働時間に分けて計算します。
法定外労働時間(1日8時間・週40時間を超えている場合)の割増率は、「1.25倍」です。
③ 法定外休日に出勤した日の労働時間を計算する
法定外休日に出勤した場合の、法定内労働時間と法定外労働時間を計算します。
法定外休日出勤の休日手当
(法定内労働時間×1時間あたりの賃金)+(法定外労働時間×1時間あたりの賃金×1.25)
例えば、1-2で解説した完全週休2日制の土曜日(法定外休日)に出勤した場合は、その日の労働時間は全て法定外労働時間になるため、割増賃金が発生します。
法定外休日の休日手当(残業代)の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【図解】残業手当をきっちり貰う!3ステップでわかる正しい計算方法
2-3:振替休日・代休を取得した場合の計算方法
振替休日と代休を示すと、次の図のようになります。
振替休日とは、あらかじめ休日出勤が発生する休日を、労働日と入れ替えることです。
振替休日を同じ週の労働日に設定することで、その週の休日数は変わらないため、休日出勤の割増賃金は発生しません。
例えば、
「今週は土曜に出勤してもらいたいから、先に水曜日に休みを取ってくれるかな?」
この場合は振替休日になります。
代休とは、法定休日に休日出勤した場合に、その後の労働日を休日として設定することです。
この場合、法定休日の休日出勤に対して1.35倍の割増賃金が発生します。
ただし、代休日の賃金は発生しません。
例えば、
「今週は日曜日に出勤してもらったから、次の水曜日に休みを取ってくれるかな?」
この場合は代休になります。
3章:休日出勤になる可能性がある2つのケース
休日出勤は、会社から明示的に出勤の命令があった場合のみではありません。
以下の場合も、休日出勤として休日手当が発生する可能性があります。
- 参加必須の休日の研修
- 業務上休日に出勤せざるを得ない場合
それぞれ、順番に解説します。
3-1:参加必須の休日の研修
休日に、研修や社内イベントなどが行われることがあると思います。
この場合、参加が義務づけられていて、欠席すれば「減給」「評価に影響」「欠勤扱いになる」という場合は、休日出勤扱いで、休日手当が出なければ違法です。
ただし、上司とのゴルフ、参加が任意の勉強会など会社から義務づけられているわけではなく、欠席してもペナルティがない場合は、休日出勤にはなりません。
3-2:業務上休日に出勤せざるを得ない場合
会社から明らかに命令されたわけではなくても、
- 納期がひっ迫している
- 業務量が多すぎて、平日の出勤だけではとても終わらない
という場合は、休日出勤扱いになる可能性があります。
なぜなら、過去の判例から、労働時間としてカウントされるのは、「使用者の指揮命令下に置かれている」時間だとされているからです。
そのため、会社から「休日出勤は命令していない」と言われていても、休日出勤せざるを得ない事情が分かる証拠があれば、休日手当が発生します。
4章:36協定を締結している場合は休日出勤を拒否できない
「急だけど、今週の日曜日は出勤してほしい。」
急に休日出勤を命令されて「都合が悪いから拒否したい」と思うこともあると思います。
しかし、
- 会社と従業員の間で、休日出勤を可能にする36協定を締結している
- 就業規則や雇用契約書で「休日出勤の命令には従うこと」「従わなければペナルティの対象になる」などのルールが記載されている
という場合は、従業員は基本的には休日出勤を拒否することはできません。
これらの条件を満たす場合、あなたが無理矢理休日出勤を拒否しようとすると、会社から何らかの処分の対象にされる可能性があります。
上記の条件を満たしていない場合は、休日出勤を断ることが可能ですので、まずは36協定や就業規則を確認してみましょう。
5章:休日出勤の改善方法
- 休日出勤が多く、現状を改善したい
- 休日出勤したのに、休日手当が出ていない
という場合は、これから紹介する方法で現状を改善することをおすすめします。
なぜなら、現状を変えなければ、
- 連続の出勤で、心身に疲労を蓄積させてしまう
- 不当に低い賃金で働かせられ続けることになる
という可能性があるからです。
休日出勤の改善方法として、次の4つがあげられます。
- 上司に相談する
- 労働基準監督署に相談する
- 転職する
- 休日手当が出ていない場合は請求する
それぞれ解説していきます。
5-1:上司に相談する
あなたが休日出勤してしまう原因として、次の2つがあげられます。
- あなた個人の能力の問題
- 上司の管理能力の問題
あなたがまだ新人で、能力が求められるレベルに達していない場合は、あなたは自分の能力を高めて、出勤日だけで仕事が終わるようにするしかありません。
しかし、あなたが自分の能力をはるかに超える業務を押しつけられ、どうしても通常の出勤日だけでは仕事が終わらない場合は、それは上司の管理能力が悪いことが原因かもしれません。
その場合、上司に、
- 休日出勤なしでは仕事が終わらないこと
- もっと休みを取りたいこと
を伝えて、改善できないか相談してみましょう。
理解のある上司なら、あなたの相談を受けて何らかの対応策を取ってくれる可能性があります。
しかし、
「そんなことはもう試した」
「そんなことが言えるような上司ではない」
という場合は、他の方法を実践する必要があります。
5-2:労働基準監督署に相談する
あなたが、週に1日も休めないような連勤が何週間も続いているという場合は、労働基準監督署に相談することで解決できる可能性があります。
労働基準監督署とは、労働基準法にのっとって全国の会社を監督・指導する行政機関です。
労働者の方は、誰でも無料で相談することができます。
労働基準監督署に相談すると、
- 会社に立入調査する
- 会社に是正勧告(改善命令)が出される
- 再三の是正勧告に従わない場合、経営者が逮捕される
- 違法行為をした会社として、厚生労働省のHPで公表される
などの対応が取られることがあります。
その結果、休日出勤が連続するような現状を変えられる可能性があります。
労働基準監督署に相談する流れやポイントについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【労働基準監督署】相談できることと相談前の準備、相談するメリット
5-3:転職する
休日出勤が多い現状を変えるもっとも確実な方法は、休日出勤が少ない労働環境の会社に転職することです。
「休日出勤が続くくらいで転職するべきなのかな?」
と思われるかもしれませんが、休日出勤が続くということは、それだけプライベートの時間がなくなっているということです。
月に4日の休日出勤があれば、年48日も余分に働いていることになります。
そのため、休日出勤が少ない会社に転職することで、プライベートも充実でき、メリハリをつけた生活ができるようになります。
5-4:休日出勤手当が出ていない場合の対処法
もし、休日出勤しているのに、休日手当がもらえていない、もしくは不当に少ない金額しか支払われていないという場合は、「休日手当を会社に請求して取り返す」ことをおすすめします。
請求方法には、
- 自分で会社に直接請求する
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
という2つがあります。
【自分で会社に直接請求する】
自分で会社に休日手当や残業代を請求するためには、会社に「配達証明付き内容証明郵便」で、請求書を送る必要があります。
ただし、自分で会社に内容証明を送って休日手当や残業代を請求しても、会社側にも顧問弁護士が付いていて、うまく丸め込まれてしまう可能性が高いです。
つまり、あなたが休日手当や残業代を請求しても、1円も取り戻せないかもしれないのです。
残業代請求に強い弁護士に依頼すると、手間、時間、ストレスの負担なく休日手当や残業代を請求することができます。
その場合、休日手当や残業代が出ていない証拠があれば、取り返せる可能性が高いです。
未払いの休日手当の金額は、具体的には以下のようになることがあります。
- 月給20万円
- 一月平均所定労働時間170時間
- 毎月、法定休日に2日、法定外休日に2日休日出勤している(ともに8時間労働)
以上の条件の場合、法定休日の手当と法定外休日の手当(残業代)の1か月の合計は、4万8,941円になります。
休日手当を3年分さかのぼって請求するとすれば、
4万8,941円×36か月=176万1,876円
と高額になります。
さらに、休日出勤の手当を正しく支払わない会社は、毎日の残業代についてもごまかしている可能性があります。
その場合は、さらに高額請求ができます。
弁護士に依頼すると、あなたの「会社と戦う」という精神的負担を、弁護士が肩代わりしてくれるだけでなく、時間・手間を節約することもできるのです。
さらに、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼することで、初期費用もほぼゼロにできるのです。
ただし、弁護士に依頼する場合は「弁護士なら誰でもいいだろう」とは考えないでください。
実は、法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の専門分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いです。
そのため、残業代請求に強い弁護士に依頼することをおすすめします。
依頼する上でのポイントや詳しい方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説
まとめ:休日出勤の定義と休日手当
最後に今回の記事を振り返ってみましょう。
まず、休日出勤には以下の2つの種類があります。
- 法定休日出勤
- 法定外休日出勤
① 基礎時給を計算する ② 割増率をかける ③ 法定休日に出勤した日の労働時間をかける
- 参加必須の研修
- 業務上出勤せざるを得ない場合
- 上司に相談する
- 労働基準監督署に相談する
- 転職する
- 自分で会社に直接請求する
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
正しい知識をしっかり覚えて、休日出勤について損することがないように行動していきましょう。