
あなたは、
「休日出勤ってどんなルールになってるんだろう?」
「休日出勤って違法?」
「休日出勤したのに手当が出ないのはなぜ?」
「休日出勤って拒否できないの?」
などの悩み、疑問をお持ちではありませんか?
せっかくの休みの日に出勤を命じられた・・・そんなことがあると法律上のルールなどを詳しく知りたくなりますよね。
実は、あまり知られていませんが休日出勤には2つの種類があり、それぞれルールが異なります。
そのため、まずあなたが知っておくべきなのは、あなたの場合はどちらのケースに当てはまるのか、そしてその場合のルールはどのようなものなのか知っておくことです。
そこでこの記事では、まずは休日出勤の法律上の定義や違法性、ルール、休日出勤手当について詳しく解説します。
そして、実は休日出勤になる可能性が高い「研修」「業務上必要な出勤」や、休日出勤の拒否、休日出勤が多い場合の対処法などについても説明します。
あなたが知りたいところから読んで、正しい知識を身につけてくださいね。
全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点
■休日出勤の2つの種類
- 法定休日の出勤:「法律上、最低でもこれだけは休んでください」という休日が法定休日。
- 法定外休日の出勤:労働基準法では定められていないものの、会社が独自に決めた休日が法定外休日。
それぞれルールが異なるため注意が必要。
■休日手当の計算方法
①基礎時給を計算する
②割増率をかける
③法定休日に出勤した日数、時間数を把握する
■休日出勤になり得るケース
- 参加必須の研修
- 業務上出勤せざるを得ない場合
■休日出勤が多い場合の対処法
- 上司に相談する
- 労働基準監督署に相談する
- 転職する
1章:休日出勤の法律上の定義と違法性とは
そもそも、休日とは労働契約において労働義務がないとされている日のことです。つまり、会社に出勤しないことはもちろん、仕事から完全に解放されている日を休日と言うのです。
この休日に出勤することを「休日出勤」と言います。
ただし、注意点があります。
それは、休日には2種類あるということです。そこでまずは、
- 法定休日の出勤
- 法定外休日の出勤
に分けて、それぞれの定義とルールを解説します。
1−1:法定休日の定義とルール
労働基準法では「法律上、最低でもこれだけは休んでください」という休日があります。これが法定休日です、以下のように決められています。
- 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
- 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
(労働基準法第35条)
要約すると、
週に1日以上、もしくは4週に4日以上の休日を、会社は労働者に与えなければならないということです。
そのため、週に1日も休日がなかった場合、それは「法定休日出勤」になります。
(変形休日制を取らない限り)
法定休日出勤をした場合「休日手当」が発生します。
法定休日の出勤は、基本的に「違法」です。
しかし、会社と従業員との間で「36協定」を締結することで、法定休日の出勤が可能になります。
※36協定について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
36協定とは?5分で分かる定義・役割と、違法性が分かる判断基準
1−2:法定外休日の定義とルール
法定外休日とは、労働基準法では定められていないものの、会社が独自に決めた休日のことです。
たとえば、土日が休みの完全週休2日制の会社の場合、片方が法定休日、もう片方が法定外休日になります。
※週2日ある休日のどちらを法定休日にするかは、会社が決めることができます。
上記のように、日曜日が法定休日と定められている場合、土曜に出勤すると「法定外休日」出勤になります。
上記の例の場合、月曜日から金曜日まで毎日8時間労働すると、金曜日で40時間になってしまいます。そのため、土曜に出勤すると、週40時間を超えて労働することになるため、会社はその分、割増賃金(残業代)を支払わなければならなくなります。
ただし「週40時間」を超える労働も、会社と従業員の間で「36協定」を締結して合意しなければ、違法です。
1−3:休日出勤すると割増賃金が発生することがある
休日出勤とは、本来なら休日であるはずの日に出勤する行為です。そのため、
- 法定休日に出勤した場合
- 法定外休日に出勤し、かつその週の労働時間が既に40時間を超えている場合
は、普段通りの賃金ではなく「割増賃金」が発生することになっています。
割増賃金とは、普段の就業時間内の労働の賃金に、一定の「割増率」をかけた賃金のことです。
休日出勤をした場合、以下のように割増賃金が発生します。
- 法定休日の出勤・・・1.35倍の割増賃金
- 法定外休日の出勤(その週の労働時間が40時間を超えている場合)・・1.25倍の割増賃金
つまり、休日に出勤すると、普段の賃金より1.25倍、もしくは1.35倍高い賃金をもらえることがあるのです。
2章:休日出勤になる可能性がある2つのケース
休日出勤は、会社から明示的に出勤の命令があった場合のみではありません。
以下の場合も、休日出勤として休日手当が発生する可能性があります。
【休日出勤になり得るケース】
- 参加必須の研修
- 業務上出勤せざるを得ない場合
それぞれ、順番に解説します。
2−1:参加必須の研修
休日に、研修や社内イベントなどが行われることがあると思います。
この場合、参加が義務づけられていて、欠席すれば「減給」「評価に影響」「欠勤扱いになる」という場合は、休日出勤扱いで、休日手当が出なければ違法です。
ただし、上司とのゴルフ、参加が任意の勉強会など会社から義務づけられているわけではなく、欠席してもペナルティがない場合は、休日出勤にはなりません。
2−2:業務上出勤せざるを得ない場合
会社から明らかに命令されたわけではなくても、
- 納期がひっ迫している
- 業務量が多すぎて、平日の出勤だけではとても終わらない
という場合、休日出勤扱いになる可能性があります。
なぜなら、過去の判例から、労働時間としてカウントされるのは「使用者の指揮命令下に置かれている」時間だとされているからです。
そのため、会社から「休日出勤は命令していない」と言われていても、休日出勤せざるを得なかった事情が分かる証拠があれば、休日手当が発生します。
3章:休日出勤の手当・残業代の計算方法
計算方法について解説する前に、まずはあなたのケースを確認するために、以下のフローチャートをやってみてください。
上記のように、休日出勤にもいろいろなケースがありますので、あなたの場合の計算方法を確認してください。
そこで、
- 法定休日出勤の場合
- 法定外休日出勤の場合
- 代休、振替休日を取得した場合
に分けて計算方法を解説します。
3−1:法定休日出勤の休日手当の計算方法
休日手当は、
①基礎時給を計算する
②割増率をかける
③法定休日に出勤した日数、時間数を把握する
という3つのステップで、簡単に計算できます。
①基礎時給を計算する
基礎時給とは、あなたの1時間あたりの賃金のことです。時給制の場合は普段通りの時給であり、月給制の場合は以下の計算式で計算します。
基礎時給=月給÷一月平均所定労働時間(※)
※一月平均所定時間とは、会社によって定められた1ヶ月あたりの平均労働時間のことで、170時間前後であることが一般的です。
②割増率をかける
割増率は、法定休日の出勤の場合は「1.35倍」です。基礎時給に割増率をかけることで、「休日出勤1時間あたりの時給」を計算できます。
③法定休日に出勤した日数、時間数を把握する
こうして計算した「休日出勤1時間あたりの時給」に、休日出勤の合計時間をかけます。
あなたが、月に3回(1日8時間)法定休日の出勤をしたとしたら、
8時間×3日=24時間
と計算できます。
休日出勤手当の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
もう損しない!休日出勤で手当が出るケース・出ないケースと計算方法
3−2:法定外休日出勤の休日手当(残業代)の計算方法
法定外休日出勤の休日手当(残業代)については、
①基礎時給を計算する
②割増率をかける
③法定外休日に出勤した日数、時間数を計算する
という3ステップで計算できます。
①基礎時給を計算する
基礎時給の計算方法は、2−1の計算方法と同じです。
②割増率をかける
法定外休日の休日手当(その週の労働時間が40時間を超えている場合)の割増率は「1.25倍」です。
1.25倍を基礎時給にかけることで「法定外休日出勤1時間当たりの賃金」を計算することができます。
③法定外休日に出勤した日数、時間数を計算する
こうして計算した「法定外休日出勤1時間当たりの賃金」に、法定外休日に出勤した休日の数、時間をかけます。
月に3回(1日8時間)法定外休日の出勤をしたとしたら、
8時間×3日=24時間
と計算できます。
ただし、法定外休日の労働は残業代と同じ計算方法ですので、法定外休日以外に残業している場合は、それも合わせて計算する必要があります。
法定外休日の休日手当(残業代)の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【図解】残業手当をきっちり貰う!3ステップでわかる正しい計算方法
3−3:代休、振休を取得した場合の計算方法
「休日出勤した後に、別の出勤日に休んだ(代休)」
という場合も、休日手当が発生します。
ただし、
「休日出勤するために、事前に別の出勤日を休日にした(振替休日)」
という場合は、休日手当が発生しません。
代休と振替休日は、以下のように異なるものです。
たとえば、土日が休みの会社で、日曜日に休日出勤し、次の週の水曜が代休になった場合、水曜日は出勤していないため、賃金が発生しません。
しかし、日曜日に休日出勤したという事実は消えません。そのため、割増分のみの賃金である「0.35倍」の賃金が、休日手当として発生します。
この場合は、2−1で解説した休日手当の計算方法で、割増率のみ「0.35倍」に変えて計算することで、代休の分の休日出勤手当の金額を計算することができます。
4章:休日出勤は基本的には拒否できない
急に休日出勤を命令されて「都合が悪いから拒否したい」と思うこともあると思います。
しかし、
- 会社と従業員の間で、休日出勤を可能にする36協定を締結している
- 就業規則や雇用契約書で「休日出勤の命令には従うこと」「従わなければペナルティの対象になる」などのルールが記載されている
という場合、従業員は休日出勤を拒否することはできません。
これらの条件を満たす場合は、あなたは無理矢理休日出勤を拒否しようとすると、会社から何らかの処分の対象にされる可能性もあります。
上記の条件を満たしていなければ、休日出勤を断ることが可能ですので、まずは36協定や就業規則を確認してみましょう。
5章:休日出勤の改善方法
- 休日出勤が多く、現状を改善したい
- 休日出勤したのに、休日手当が出ていない
という場合は、これから紹介する方法で現状を改善することをおすすめします。
一部のブラック企業では、従業員を違法に休日出勤させていることがあるからです。
現状を変えなければ、
- 連続の出勤で、心身に疲労を蓄積させてしまう
- 不当に低い賃金で働かせられ続けることになる
という可能性があるからです。
そこで、
- 休日出勤が多い場合の対処法
- 休日出勤手当が出ていない場合の対処法
について解説します。
5−1:休日出勤が多い場合の対処法
もし現在休日出勤が多く、休日はちゃんと休みを取りたいと思っている場合、
- 上司に相談する
- 労働基準監督署に相談する
- 転職する
という対処法があります。
5−1−1:上司に相談する
あなたが休日出勤してしまうのは、
- あなた個人の能力の問題
- 上司の管理能力の問題
という2つの原因が考えられます。
あなたがまだ新人で能力が、求められるレベルに達していない場合、あなたは自分の能力を高めることで、出勤日のうちに仕事が終わるようにするしかありません。
しかし、あなたが自分の能力をはるかに超える業務を押しつけられていて、どうしても通常の出勤日のうちに仕事が終わらないという場合、それは上司の管理能力が悪いことが原因かもしれません。
その場合、上司に、
- 休日出勤なしでは仕事が終わらないこと
- もっと休みを取りたいこと
を伝えて、改善できないか相談してみましょう。
聞き分けの良い上司なら、あなたの相談を受けて何らかの対応策を取ってくれる可能性があります。
しかし、
「そんなことはもう試した」
「そんなことが言えるような上司ではない」
という場合は、他の方法を実践する必要があります。
5−1−2:労働基準監督署に相談する
あなたが、週に1日も休めないような連勤が何週間も続いている、というような場合、労働基準監督署に相談することで解決できる可能性があります。
【労働基準監督署とは】
労働基準監督署とは、労働基準法にのっとって全国の会社を監督・指導する行政機関です。労働者の方は誰でも無料で相談することができます。
労働基準監督署に相談すると、
- 会社に立入調査する
- 会社に是正勧告(改善命令)が出される
- 再三の是正勧告に従わない場合、経営者が逮捕される
- 違法行為をした会社として、厚生労働省のHPで公表される
などの対応が取られることがあります。
その結果、休日出勤が連続するような現状を変えられる可能性あがあります。
労働基準監督署に相談する流れ哉ポイントについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【労働基準監督署にできること】相談の流れとより確実に解決するコツ
5−1−3:転職する
休日出勤が多いという現状を変える、もっとも確実な方法は、休日出勤が少ないホワイト労働環境の会社に転職することです。
「休日出勤が続くくらいで転職するべきなのかな?」
と思われるかもしれませんが、休日出勤が続くということは、それだけプライベートの時間がなくなっているということです。
月に4日の休日出勤があれば、年48日も余分に働いていることになります。
そのため、休日出勤が少ない会社に転職することで、プライベートも充実でき、メリハリをつけた生活ができるようになるのではないでしょうか。
5−2:休日出勤手当が出ていない場合の対処法
もし、休日出勤しているのに、休日手当がもらえていない、もしくは不当に少ない金額しか支払われていないという場合、
「休日手当を会社に請求して取り返す」
ことをおすすめします。
請求方法には、
- 自分で会社に直接請求する
- 残業代請求専門の弁護士に依頼する
という2つがあります。
【自分で会社に直接請求する】
自分で直接請求する場合、会社に対して「配達証明付き内容証明郵便」を送る必要があります。
配達証明付き内容証明郵便の書き方や送り方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
「内容証明」
【残業代請求専門の弁護士に依頼する】
残業代請求専門の弁護士に依頼すると、手間、時間、ストレスの負担なく休日手当を請求することができます。
その場合、休日手当が出ていない証拠があれば、取り返せる可能性が高いです。未払いの休日手当の金額は、具体的には以下のようになることがあります。
【休日手当の具体例】
- 月給20万円
- 一月平均所定労働時間170時間
- 毎月、法定休日に2日出勤、法定外休日に4日出勤している
以上の条件の場合、法定休日の手当と法定外休日の手当(残業代)の1ヶ月の合計は、7万2,441円になります。
休日手当を2年分さかのぼって請求するとすれば、
7万2,441円×24ヶ月=173万8,584円
と高額になります。
さらに、休日出勤の手当を正しく支払わない会社は、毎日の残業代についてもごまかしている可能性があります。その場合は、さらに高額請求ができます。
弁護士に依頼すれば、あなたの手間や時間、心理的なストレスの負担なく請求することが可能です。
しかも、残業代請求専門の弁護士なら「完全成功報酬制」という、成功した場合のみ報酬をもらう、という仕組みを導入していることも多く、その場合はあなたの費用負担はほとんどありません。
依頼する上でのポイントや詳しい方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の記事を振り返ってみましょう。
まず、休日出勤には以下の2つの種類があります。
- 法定休日出勤
- 法定外休日出勤
【休日手当の計算方法】
①基礎時給を計算する
②割増率をかける
③法定休日に出勤した日数、時間数を把握する
【休日出勤になり得るケース】
- 参加必須の研修
- 業務上出勤せざるを得ない場合
【休日出勤が多い場合の対処法】
- 上司に相談する
- 労働基準監督署に相談する
- 転職する
【休日手当が出ていない場合の対処法】
- 自分で会社に直接請求する
- 残業代請求専門の弁護士に依頼する
正しい知識をしっかり覚えて、休日出勤について損することがないように行動していきましょう。