休日出勤は拒否できる?よくある疑問Q&Aと悩みを解決する3つの対処法
この記事を読んで理解できること
- 休日出勤が違法な場合は拒否できる
- 休日出勤を拒否できるケース
- 休日出勤に悩んでいる場合の対処法
- 休日出勤でよくある質問
あなたは、
- 休日出勤を命じられても拒否できる?
- 休日出勤を拒否したらどうなる?
- 休日出勤を拒否できるケースが知りたい
などとお考えではないですか?
結論から言うと、休日出勤について雇用契約書や就業規則で定められている場合は、休日出勤を命じられても原則として拒否できません。
また、正当な理由なく休日出勤を繰り返し拒否した場合は、業務命令違反として減給や懲戒処分の対象となる可能性があります。
そのため、休日出勤について雇用契約書や就業規則で定められているか、36(サブロク)協定を締結し届け出されているか、確認する必要があります。
もし、これらの2つの条件がそろっていない場合は、休日出勤を拒否することができます。
また、休日出勤を命じる労働契約上の根拠があった場合でも、休日出勤を拒否してもやむを得ない正当な理由がある場合は、認められるケースもあります。
そこでこの記事では、1章で休日出勤が違法な場合は拒否できる理由を、2章では休日出勤を拒否できるケースを、3章では休日出勤に悩んでいる場合の対処法について解説します。
さらに、4章では休日出勤に関するよくある質問を紹介します。
この記事の内容をしっかりと理解して、会社の根拠のない指示に振り回されず、自分の休みをしっかりと確保できるようにしましょう。
1章:休日出勤が違法な場合は拒否できる
先にあげたように、休日出勤を命じられても違法な場合は拒否できます。
そこでこの章では、休日出勤とはなにか、休日出勤が違法となる2つのケースを解説していきます。
1-1:休日出勤とは
休日出勤とは、労働義務のない休日とされる日に、業務を命じられることです。
例えば、土日が休みの完全週休2日制の会社で、いずれかまたは両日業務を命じられた場合は、休日出勤になります。
上図のように、土日が休みの完全週休2日制の場合、いずれか1日が法定休日で、もう1日は会社が定めた法定外休日になります。
※週2日ある休日のどちらを法定休日にするかは、会社で決めることができます。
このように、休日出勤には、「法定休日出勤」「法定外休日出勤」の2種類があります。
法定休日と法定外休日では、それぞれの休日出勤の割増賃金が異なります。
法定休日に出勤をした場合は、休日手当として3割5分以上の割増賃金が発生します。
法定外休日に出勤をした場合は、「週40時間」の法定労働時間を超えると、時間外労働(残業)として2割5分以上の割増賃金を会社は支払わなければなりません。
1-2:休日出勤が違法となる2つのケース
休日出勤が違法となるケースとしては、次の2つがあげられます。
- 雇用契約書・就業規則で定められていない
- 従業員と会社の間で36協定が結ばれていない
それぞれ解説していきます。
1-2-1:雇用契約書・就業規則で定められていない
休日出勤について、雇用契約書や就業規則で定められていない場合は、会社は休日出勤を命じることはできません。
雇用契約書とは、会社と労働者の間で、労働契約の内容を明らかにし合意したことを示す契約書です。
就業規則とは、会社が定める労働条件や社内のルールを書面にしたものです。
会社が社員に休日出勤を命じるためには、雇用契約書や就業規則に「会社は必要に応じて労働者に対し休日出勤を命じることができる。」といった内容の項目が必要になります。
こうした項目が定められていない場合は、会社や上司の休日出勤の命令は違法なため拒否することができます。
1-2-2:従業員と会社の間で36協定が結ばれていない
従業員と会社の間で36協定が結ばれていない、あるいは労働基準監督署に届け出されていない場合は、会社は休日出勤を命じることはできません。
36協定とは、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた時間外労働(残業)や法定休日の出勤を可能にするために、会社と従業員の間で締結される協定で労働基準監督署に提出する必要があります。
この36協定書を提出せずに社員を休日出勤させた場合、会社は労働基準法違反になります。
36協定については、次の記事で詳しく解説しているのでご確認ください。
36協定とは?基礎知識や残業が違法となるケース、未払残業代の請求方法
就業規則及び36協定は、以下のように「周知」されなければなりません。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
- 書面を労働者に交付すること
- 磁気テープ、磁気ディスクそのほかこれらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
- 会社の共有フォルダに入れておく
これらの手段で周知されていない場合は、従業員に残業や法定休日の出勤を命じることができません。
【コラム】休日出勤が適法に命じられている場合は
もし就業規則に休日出勤について明記され、36協定も労働基準監督署に届け出されていれば、あなたは会社の指示に従って働く義務があります。
そのため正当な理由なく休日出勤を断ると、懲戒処分(※)を受ける可能性があります。
※懲戒処分=果たすべき義務や秩序に違反した社員に対して、会社側が課す制裁の罰。処分を行うためには、内容などについて就業規則に規定されている必要があります。
過去にも、休日出勤を拒否したことに対する処分が適法かどうかをめぐって争われた事例がいくつもあります。
【休日出勤を拒否が適法かどうかについて争われた判例】
北九州市清掃局事件(S59.7.19福岡高裁判決)
年末の休日出勤命令を拒否した市清掃局職員に対して懲戒処分が下され、その取消を求めた裁判。
裁判所は、就業規則に時間外労働や休日労働を命じることができると記載されているにも関わらず、社員が正当な理由なく命令を拒否することはできず、拒否した場合には就業規則基づいて懲戒処分に処すことができるとしました。
そのため、無断欠勤を行う争いを企画したことに対する停職、減給、戒告などの処分は適法だと判断しました。
一度断ったくらいで、すぐに解雇されるケースは極めてまれですが、就業規則の懲戒に関する内容に基づいて、なんらかの罰則を受ける可能性は高いので注意しましょう。
2章:休日出勤を拒否できるケース
会社が休日出勤を命じる手続きに問題がない場合でも、休日出勤を拒否できるケースとして、次の2つがあげられます。
- 業務上の必要性がない不当な出勤命令の場合
- 正当な理由がある場合
それぞれ解説していきます。
2-1:業務上の必要性がない不当な出勤命令の場合
休日出勤する業務上の必要性が全く存在しない場合は、休日出勤を拒否できる可能性があります。
また、嫌がらせやパワハラによる不当な出勤命令も、休日出勤を拒否できる可能性があります。
休日出勤を命じられ、業務上の必要性や休日出勤する理由がないと思える場合は、会社に休日出勤する理由を求めましょう。
不当な出勤命令の場合は、休日出勤を拒否することができます。
2-2:正当な理由がある場合
一般常識に照らして正当な理由、やむを得ないと考えられる事情がある場合は、休日出勤を断ることが認められたり、出勤拒否を理由にした懲戒処分が無効とされることがあります。
休日出勤を拒否してもやむを得ない正当な理由としては、次の4つがあげられます。
- 冠婚葬祭
- 介護・付き添い
- 引っ越し
- (本人の)通院
それぞれ解説していきます。
2-2-1:冠婚葬祭
冠婚葬祭への出席のためであれば、休日出勤を断ることも認められると考えられます。
結婚式や法事などの予定が分かっている場合は、あらかじめ上司に伝えておくとスムーズに拒否できるでしょう。
急な葬儀の場合も、家族や近しい間柄であれば出席できると考えるのが一般的です。
上司に事情を説明して理解を得ましょう。
ただし、「身内に不幸が…」という理由は、休日出勤を拒否する言い訳として使われがちですが、嘘の場合は後々バレてしまうと大変なのでやめておくべきでしょう。
2-2-2:介護や付き添い
休みの日に家族の介護や付き添いを予定している場合は、急には予定を変えられないため、休日出勤を断ることも認められると考えられます。
休みの日は、高齢の家族や病気を患っている家族の、介護や病院の付き添いをしているという人もいるのではないでしょうか。
別の家族の都合などもあり、こうした予定は急には動かしにくく、「できることなら休日出勤を断りたい…」といった風に考える人も多いはず。
こうした理由がある場合は、上司や会社は出勤を強制することはできず、休みを認めてくれるケースがほとんどです。
もし家族の介護などで休日出勤を断っても、このことを理由になんらかの処分を与えることはできないでしょう。
2-2-3:引っ越し
家の引っ越しが決まっている日に、休日出勤を指示されても、急に引っ越し日を動かすことはできません。
このように、あらかじめ決まった用事があり、急には変更できない予定の場合は、事情を説明すれば理解してもらえる場合もあります。
ただし、引っ越しのように絶対に動かせない予定がある場合は、先に上司や会社に「休日出勤はできない」と伝えておく方が賢明です。
2-2-4:(本人の)通院
病院に通院しているという人の中には、平日は仕事の時間で行くことができないため、休日にまとめて通っている人もいます。
こうした場合は、休日出勤よりも通院を優先できると考えられます。
疑い深い上司の中には、病院に通った証拠の提出を求める場合もあるかもしれません。
診断書などはプライバシーに関わる部分もありますが、少なくとも領収書などを見せて実際に病院に行ったことを示しましょう。
体調不良を訴える社員を無理に出勤させ、さらに健康を悪化させた場合には、会社側は使用者責任を問われる場合もあります。
ここまで休日出勤を拒否できる理由について解説しました。
これ以外にも、上司や会社側が納得すれば調整してもらえるケースもあります。
ルール上は休日出勤の指示に従わなければならない場合でも、どうしても動かせない予定がある場合は、先に上司に伝えておくことが大切です。
3章:休日出勤に悩んでいる場合の対処法
ここまで読んでみて、あなたの休日出勤の悩みは次のどれに当てはまるでしょうか。
- 休日出勤を拒否できるはずなのに、強制されている
- ルール上は問題ないが休日出勤が多すぎる
- ルール上は問題ないが休日出勤しても、正しい賃金が支払われない
それぞれのケースについて、対処法を簡単に説明します。
3-1:休日出勤を拒否できるはずなのに、強制されている
もし会社に休日出勤を命じる根拠がないのにもかかわらず、社員が休日出勤を拒否することを認めない場合は、会社は労働基準法に違反している疑いがあります。
こうした場合は、労働基準法が守られているかをチェックする機関・労働基準監督署に相談することで解決できる可能性があります。
労働基準監督署とは、労働基準法にのっとって全国の会社を監督・指導する行政機関です。
労働者の方は、誰でも無料で相談することができます。
労働基準監督署に相談すると、
- 会社に立入調査する
- 会社に是正勧告(改善命令)が出される
- 再三の是正勧告に従わない場合、経営者が逮捕される
- 違法行為をした会社として、厚生労働省のHPで公表される
などの対応が取られることがあります。
その結果、違法な休日出勤が命じられる現状を変えられる可能性があります。
労働基準監督署への相談については、次の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
【労働基準監督署】相談できることと相談前の準備、相談するメリット
3-2:ルール上は問題ないが休日出勤が多すぎる
会社側に休日出勤を命じる根拠があるものの、そもそもその回数が多すぎるというケースも見られます。
休日出勤が多い現状を変えるもっとも確実な方法は、休日出勤が少ない労働環境の会社に転職することです。
「休日出勤が続くくらいで転職するべきなのかな?」
と思われるかもしれませんが、休日出勤が続くということは、それだけプライベートの時間がなくなっているということです。
月に4日の休日出勤があれば、年48日も余分に働いていることになります。
そのため、休日出勤が少ない会社に転職することで、プライベートも充実でき、メリハリをつけた生活ができるようになります。
ブラック企業からの転職については、次の記事をご覧ください。
5分で分かる!ブラック企業から転職する流れと知っておくべき2つのこと
3-3:ルール上は問題ないが休日出勤しても、正しい賃金が支払われない
ルール上、休日出勤が拒否できず、会社の指示に従って出勤しなければならない場合でも、会社が社員に正しい割増賃金を支払わなければ違法です。
休日出勤時の正しい賃金が受け取れていない場合は、請求することで取り戻せる可能性もあるのでしっかりと確認しましょう。
請求方法には、
- 自分で会社に直接請求する
- 残業代請求に強い弁護士に依頼する
という2つがあります。
【自分で会社に直接請求する】
自分で会社に休日手当や残業代を請求するためには、会社に「配達証明付き内容証明郵便」で、請求書を送る必要があります。
ただし、自分で会社に内容証明を送って休日手当や残業代を請求しても、会社側にも顧問弁護士が付いていて、うまく丸め込まれてしまうおそれがあります。
つまり、あなたが休日手当や残業代を請求しても、1円も取り戻せないかもしれません。
【残業代請求に強い弁護士に依頼する】
残業代請求に強い弁護士に依頼すると、手間、時間、ストレスの負担なく休日手当や残業代を請求することができます。
その場合、休日手当や残業代が出ていない証拠があれば、取り返せる可能性が高いです。
未払いの休日手当の金額は、具体的には以下のようになることがあります。
- 月給20万円
- 一月平均所定労働時間170時間
- 毎月、法定休日に2日、法定外休日に2日休日出勤している(ともに8時間労働)
以上の条件の場合、法定休日の手当と法定外休日の手当(残業代)の1か月の合計は、4万8,941円になります。
休日手当を3年分さかのぼって請求するとすれば、
4万8,941円×36か月=176万1,876円
と高額になります。
さらに、休日出勤の手当を正しく支払わない会社は、毎日の残業代についてもごまかしている可能性があります。
その場合は、さらに高額請求ができます。
弁護士に依頼すると、あなたの「会社と戦う」という精神的負担を、弁護士が肩代わりしてくれるだけでなく、時間・手間を節約することもできるのです。
さらに、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼することで、初期費用もほぼゼロにできるのです。
ただし、弁護士に依頼する場合は「弁護士なら誰でもいいだろう」とは考えないでください。
実は、法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の専門分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いです。
そのため、残業代請求に強い弁護士に依頼することをおすすめします。
依頼する上でのポイントや詳しい方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説
4章:休日出勤でよくある質問
この章では、休日出勤についてのよくある質問を紹介します。
4-1:休暇中に休日出勤を指示されたら断れるのか
会社の休みには「休日」と「休暇」がありますが、この二つには次のような違いがあります。
- 休日:会社が定めた休みで、社員は働く義務がない日
- 休暇:本来であれば労働義務がある日に社員が申請を行い、休みをもらうこと
休暇は社員が「この日は休ませてください」と申請し、認められて初めて発生するものです。
そのため、休暇を与えた日に、社員の同意なく休日出勤を命じることはできません。
4-2:休日出勤の規定がない場合はどうすればいいのか
先ほど、休日出勤を命じる根拠でも説明しましたが、
- 就業規則の条文
- 36協定の届け出
がない場合は、社員は休日出勤を拒否することができます。
もしこうした場合に休日出勤を指示された場合は、当該日に出社しなくても問題ありません。
また出勤しない理由を聞かれた場合も、説明する必要はないと考えられます。
4-3:休日出勤を拒否して就業規則にない処分を受けたらどうすれば良いのか
もし会社側に休日出勤を指示する根拠があれば、あなたが出勤を拒否したことを理由に、なんらかの処分を下すことができます。
ただ、こうした処分は就業規則に定められた懲戒処分として行う必要があり、そうした規定なしに会社が好き勝手に処分することはできません。
また、社員に出勤できない正当な理由があるのに、会社側が処分を下すことにも法律違反の疑いがあります。
こうした処分を受けた場合は、会社の人事や労働基準監督署に相談しましょう。
4-4:休日出勤したら割増賃金が発生するのか
社員が休日出勤をした場合には、会社側は割増賃金を払わなければいけません。
先に解説したように、残業代の計算方法は、その休日が「法定休日」か「法定外休日」かによって異なります。
休日に働いた分の給料が間違っていないかどうか、しっかりと確認しましょう。
- 法定休日:労働基準法によって週1回(または4週間に4回)以上労働者に与えられなければならないと定められた休日(3割5分以上の割増賃金)
- 法定外休日:会社側と社員の取り決めなどで設定された法定休日以外の休日
法定休日出勤の割増率は、「1.35倍」です。
法定外休日の休日手当は、法定内労働時間と法定外労働時間に分けて計算します。
法定外労働時間(1日8時間・週40時間を超えている場合)の割増率は、「1.25倍」です。
休日出勤時の残業代については、次の記事をご覧ください。
休日出勤に手当が出る場合と出ない場合、計算・請求方法を弁護士が解説
まとめ:休日出勤を拒否できるケース
ここで、今回の内容を振り返ってみましょう。
休日出勤とは、労働義務のない休日とされる日に、業務を命じられることです。
- 雇用契約書・就業規則で定められていない
- 従業員と会社の間で36協定が結ばれていない
- 業務上の必要性がない不当な出勤命令の場合
- 正当な理由がある場合
- 冠婚葬祭
- 介護・付き添い
- 引っ越し
- (本人の)通院
会社のルールを知った上で、休日出勤を拒否できる場合は、自分の休みをしっかりと確保できるようにしましょう。