- 2024.03.25
- 2024.11.18
- #労働基準法休憩
労働基準法における休憩時間の「3つの原則」正しいルールを弁護士が解説
この記事を読んで理解できること
- 労働基準法上の休憩時間のルール
- 労働基準法における休憩時間の3つの原則
- 休憩に関するよくある疑問とその回答
- 職場で休憩が取得できない場合の対処方法
あなたは、以下のような悩み・疑問をお持ちではありませんか?
「労働基準法上では、休憩についてどのように決められているのだろう?」
「法律通りの休憩が取得できなかったら、どうしたら良いのだろう?」
「うちの会社の休憩の取得の仕方は、違法ではないのかな?」
労働基準法では、「6時間を超える労働」に対しては、休憩を取得することが決められており、その取得方法にはルールがあります。
しかし、多くの職場では、
- 上司や経営者が間違った知識を持っており、正しく休憩が取得できていない
- 経営者が従業員を都合良く使うために、わざと間違った方法で休憩を取得させている
という状況があるようです。
あなたも、もしかしたら知らず知らずのうちに違法な状況に置かれており、本来なら取得できるはずの休憩が取得できていないかもしれません。
そのような状況を回避・改善するためには、まずは基本的な知識を持っておくことが大事です。
そこでこの記事では、まずは労働基準法上の正しい休憩の定義・ルールと、3つの原則について詳しく解説します。
さらに、休憩のル-ルに関するよくある疑問、そして違法な場合の対処方法についても紹介します。
最後までしっかり読んで、正しい方法で休憩を取れるようにしていきましょう。
1章:労働基準法上の休憩時間のルール
労働基準法では、
- 6時間以内の労働
- 6時間を超えて8時間までの労働
- 8時間を超える労働
という3つのケースで、取得できる休憩の時間が決められています。
それではさっそく、労働時間ごとの休憩時間のルールから解説します。
1-1:労働基準法と休憩時間
労働基準法では、6時間を超える労働について休憩を与える義務を課しているため、6時間以内の労働には、休憩時間を与える必要はありません。
労働時間が6時間ちょうどの場合は休憩時間を与える必要はなく、6時間を1分でも超えると休憩時間を与えなければなりません。
1-1-1:労働時間が6時間を超える場合は休憩時間が義務付けられている
労働基準法では、労働時間が6時間を超えて8時間以内の労働には、少なくとも45分の休憩を与えなければならないと規定しています。
所定労働時間が8時間の会社では、最低限の休憩時間は45分ですが、ほとんどの会社は、1時間の休憩時間を与えています。
労働基準法は、最低限の休憩時間を規定しているため、休憩時間が45分を超えても問題はありません。
1-1-2:労働時間が8時間を超える場合は1時間の休憩が義務付けられている
そして、労働基準法では、8時間を超える労働には少なくとも1時間の休憩時間を与えなければならないと規定しています。
ここでの労働時間は、所定労働時間だけでなく残業時間を含みます。
つまり、所定労働時間が8時間の会社の場合、1分でも残業すれば最低限の休憩時間は45分ではなく1時間となるのです。
所定労働時間が8時間の会社では、休憩時間を45分に設定していても問題はありませんが、1分でも残業時間があると、休憩時間不足で労働基準法違反となるため注意してください。
ここまでをまとめると、次のようになります。
- 6時間以内の労働:休憩を付与する義務なし
- 6時間超え、8時間以内の労働:少なくとも45分の休憩を付与する
- 8時間を超える労働:少なくとも1時間の休憩を付与する
(労働基準法34条1項)
1-2:休憩時間の定義とは?
休憩時間は、
「労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保証された時間(昭22.9.13発基17号)」
と定義されます。
労働基準法が労働者に休憩時間を与えなければならないと規定したのは、労働時間が長時間になると労働者の疲労が蓄積され、生産性が落ちたり労働災害につながったりする可能性があるためです。
次の章では、休憩時間の定義をふまえた休憩時間の3つの原則について解説します。
2章:労働基準法における休憩時間の3つの原則
休憩時間は、先ほど解説した時間の通りに付与されているだけでなく、これから紹介する3つの原則も守られている必要があります。
- 休憩は労働時間の途中で与えられる
- 休憩中は労働から解放されている必要がある
- 休憩は一斉に付与されなければならない
それぞれ順番に解説します。
原則の1つめは、休憩は労働時間の途中で付与される必要がある、ということです。
先ほども解説しましたが、労働基準法34条1項では、休憩は「労働時間の途中に与える」と決められているからです。
そのため、たとえば「8時間の勤務時間が終わった後に、1時間の休憩が付与される」というような形式は違法です。
もし会社で、労働時間の途中で休憩が取得できていなければ、4章で解説する方法で対処することをおすすめします。
2-2:休憩中は労働から解放されている必要がある
原則の2つめは、休憩中は労働から解放されている必要があるということです。
会社によっては、休憩時間中も、
- 電話対応の必要があり自分の机から離れられない
- 来客対応のため、職場にいなければならない
などの行為が当たり前になっていることがあります。
しかし、労働基準法では、休憩中、労働者は労働から解放されている必要があり、会社は従業員の行動を制限してはならないと決められています。
そのため、もし休憩中でも「電話番」「来客対応」などのために職場から離れられないことが日常化している場合、その時間は労働時間としてカウントされる可能性があります。
もし上記のようなケースに該当する場合は、4章で紹介する対処方法を行うことをおすすめします。
2-3:休憩は一斉に付与されなければならない
原則の3つめは、休憩は一斉に付与されなければならないということです(労働基準法34条2項)。
つまり、あなたの職場の従業員が、全員一斉に休憩を取得できなければならないということです。
ただし、以下の業種の場合は、この規定が適用されません。
そのため、会社が従業員との間で「労使協定」を締結しなくても、従業員に交代で休憩を与えることができます。
※労使協定とは、「休憩」「残業」「休日」などの雇用条件について、会社と労働者の間で結ぶ協定のことです。
- 運輸交通業
- 商業
- 金融、広告業
- 映画、演劇業
- 通信業
- 保健衛生業
- 接客娯楽業
- 官公署の事業
(労働基準法施行規則第31条)
先ほどの業種に該当しない業種の場合、原則的には、会社は従業員に休憩を一斉に付与しなければなりません。
しかし、従業員が一斉に休憩を取ると、事業の運営に支障をきたす会社もあるため、「労使協定」を締結することで、休憩を交代で取れるようになります。
この3つの原則は、あくまで原則であり、実際に違法性を判断したい場合は専門家に相談することをおすすめします。
労働基準法上の休憩のルール、原則について理解できたでしょうか?
次に、休憩に関してよくある疑問とその回答を紹介します。
3章:休憩に関するよくある疑問とその回答
休憩の取得について、よくあるのが以下のような疑問です。
- 休憩が分割して与えられるのは問題ないのか
- アルバイト・パートでも休憩が取得できるのか
- 残業中にも休憩が発生するのか
会社の上司や経営者も間違っていることがありますので、正しい扱いをチェックしてください。
3-1:休憩が分割して与えられるのは問題ない
休憩時間の悩みとして多いのが、休憩時間が分割される場合についてのものです。
例えば、あなたの会社でも、
- 休憩時間が15分ずつ数回に分けて与えられる
- 勤務時間内に45分休憩と15分休憩がある
ということがありませんか?
実は、労働基準法では、休憩時間を分割して与えることについて、ルールが定められていません。
そのため、休憩時間の合計が、
- 労働時間が6時間超え、8時間以内→45分
- 労働時間が8時間超え→1時間
の条件を満たしていれば、分割されていても違法ではありません。
3-2:アルバイト・パートでも休憩が取得できる
休憩に関して、「アルバイトやパートでも取得できるのか」お悩みの人もいるようです。
労働基準法では、アルバイト・パートや契約社員、派遣社員であっても、正社員と同じルールが適用されます。
そのため、あなたがアルバイトやパートであっても、休憩について1章、2章でお伝えしたルールが守られていなければ「違法」です。
しかし、悪質なブラック企業の中には、「どうせ正しいルールを知らないだろう」と考えて、「バイト・パートには休憩はない」と主張し、休憩を与えずに従業員を働かせていることもあります。
そんな場合は、4章でお伝えする方法で対処することで、改善できる可能性があります。
3-3:残業中に休憩を与える義務はない
「残業中にも休憩は発生するのだろうか」ということも、よくある疑問の一つです。
1章でお伝えしたように、休憩は、
- 労働時間が6時間超え、8時間以内→45分
- 労働時間が8時間超え→1時間
というルールがありますが、残業が発生し、労働時間がそれ以上に延びても、会社にはそれ以上の休憩を従業員に付与する義務がありません。
そのため、労働基準法上は、残業中に休憩がなくても違法にはなりません。
ただし、会社によっては、長時間の残業が発生する前提で、残業中に休憩を与える規定を設けていることもあります。
これは、労働基準法とは関係なく、会社と従業員との間で決めたルールです。
そのため、基本的に従う必要があります。
【コラム】残業について必ず知っておいてほしいこと
ここでは、残業についてあなたに必ず知っておいてほしいことをお伝えします。
1つ目は、「残業しているのに残業代がもらえない」という場合は、正しい手順で残業代を請求することが大事だということです。
2つ目は、「実は、あなたは正当な残業代をもらえていない可能性がある」ということです。
具体的には、例えば以下のようなケースでは、あなたは正当な残業代をもらえていない可能性が高いでしょう。
- みなし残業代制(固定残業代制)で働いている
- 管理職なので残業代は出ないと思っている
- 店長なので残業代は出ないと思っている
以上の内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
気になる方はぜひ読んでみてください。
失敗しない残業代請求!有効な証拠と請求方法、ブラック企業の対処法
4章:職場で休憩が取得できない場合の対処方法
あなたが職場で、労働基準法上適切な形で休憩を取得できていない場合、
- 会社のしかるべき部署・担当者に報告する
- 労働基準監督署に相談する
という方法で対処することをおすすめします。
なぜなら、現在の状況をそのまま放置していると、いつも適切に休憩を取得できず、疲労回復する機会を失い続けることになるからです。
それでは、この2つの方法について順番に解説します。
4-1:会社のしかるべき部署・担当者に報告する
職場で適切に休憩が取得できない場合、まずは会社内のしかるべき部署や担当者に報告し、対応を求めることをおすすめします。
なぜなら、会社側がそもそも休憩について正しい知識を持っておらず、間違った状態が慣習になっている可能性もあるからです。
そのため、人事部などに、
- 休憩のルールが間違っていること
- 適切な形式に改善して欲しいこと
を相談してみましょう。
また,会社に対し,休憩が取れないことについてきちんと抗議をし,抗議文等を証拠で残しておけば,後で休憩が取れないことについて争った場合において,休憩が取れていなかったことの一つの証拠となりえます。
しかし、
「相談しても対処してくれる可能性が低い」
「職場全体に、休憩を取得させないような空気があるため、担当者に言えない」
などの場合もあると思います。
そんな場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。
4-2:労働基準監督署に相談する
労働基準監督署とは、労働基準法にのっとって会社を監督・指導する行政機関で、全国に321署が存在します。
労働基準監督署は、労働者が安全かつ働きやすい環境で働くことができるように、誰でも無料で、会社の行為について相談できるようになっています。
あなたの会社で適切に休憩が取得できない場合、それは「違法行為」である可能性がありますので、労働基準監督署に相談することができるのです。
労働基準監督署に相談した場合、
- 労働基準法にのっとった適切なアドバイスがもらえる
- 会社の行為に違法性が疑われる場合、「調査」や「こう改善しなさい」という「是正勧告」などの行動をとってくれる
ということが期待できます。
労働基準監督署に相談できることや、具体的な手順、相談できる時間などについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【労働基準監督署】相談できることと相談前の準備、相談するメリット
まとめ:労働基準法上の休憩時間
いかがでしたか?
最後に今回の内容を振り返ってみましょう。
【休憩時間の定義】
「労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保障された時間(昭22.9.13発基17号)」
- 6時間以内の労働:休憩を付与する義務なし
- 6時間超え、8時間以内の労働:少なくとも45分の休憩を付与する
- 8時間を超える労働:少なくとも1時間を超える休憩を付与する
(労働基準法34条1項)
- 休憩は労働時間の途中で与えられる
- 休憩中は労働から解放されている必要がある
- 休憩は一斉に付与されなければならない
- 休憩が分割して与えられるのは問題?
→労働基準法上の規定はないため、問題ない - アルバイト・パートでも休憩は取得できる?
→アルバイト・パートでも正社員と同じルールが適用されるため、休憩が取得できる - 残業中も休憩は発生する?
→8時間を超える労働には1時間の休憩を付与する義務があるが、それ以上の休憩の規定はないため、法律上は残業中に休憩は発生しない。
- 会社のしかるべき部署・担当者に報告する
- 労働基準監督署に相談する
この記事で覚えた知識を活かして、しっかりと休憩を取得できるように行動していきましょう。
【参考記事一覧】
当記事で紹介した記事を一覧で掲載します。
【労働基準監督署】相談できることと相談前の準備、相談するメリット
失敗しない残業代請求!有効な証拠と請求方法、ブラック企業の対処法