
あなたも、以下のようなことを考えたことがあるのではないでしょうか。
長時間残業の原因は自分にある場合もありますが、会社が人件費を削減する手段として、社員に長時間の残業を強いているケースも多いです。
そこで、この記事では、
- あなたの残業は多いのか?法律上の基準と業界平均からの判断
- 残業が多いのは自分のせい?そんな場合の改善方法
- 自分ではどうしようもない、長時間残業を強いる会社の手口
- 現状を改善するための具体的な方法
などについて解説します。
最後までしっかり読んで、現状を変えるための行動をはじめましょう。
【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】
■残業の多さからブラック度を判断する基準
- 1ヶ月の残業時間が45時間を超える
- 80時間を超える残業が2ヶ月以上続く
- 1ヶ月の残業時間が100時間を超える
■残業が多い現状を変える手段
①自分でできる残業時間を減らす工夫
- 計画を立てる・優先順位をつける
- 自分だけで抱え込まない
- 早く終わったらすぐ帰るキャラ作り
- 上司に仕事量の改善を要求する
②行政機関を使って会社に長時間残業の改善を要求
- 労働基準監督署への相談
- 労働局の「あっせん」を利用する
③転職して会社に未払い残業代を請求する
- 会社に内容証明を送って自分で交渉する方法
- 弁護士に依頼する
目次
1章:どのくらいから「残業が多い」と言われるのか?判断基準と違法性
あなたの会社の「残業の多さ」は、
- 法律上の基準
- 業界平均との比較
で判断することができます。
法律上の基準を超えている、もしくは業界平均より遙かに多いなどの場合は、あなたの働き方は違法な状況にある可能性があります。違法であるなら、早急に現状を改善するための行動をはじめる必要があります。
そこで、まずは、
- 法律上の基準と「過労死ライン」から、あなたの会社のブラック度を判断する
- 業界平均ランキングと比較してみる
という順番で判断基準をお伝えします。
1−1:そもそも残業時間とは?
そもそも、残業時間とは
- 1日8時間を超えて働いた時間
- 週40時間を超えて働いた時間
のどちらか一方に当てはまる時間のことです。残業した時間について、会社は必ず社員に対して残業代を払わなければなりません。
また、当然のようにこの時間を超えて残業している人は多いですが、この時間を超えて働くことができるのは、会社との間で「36協定」を締結している場合のみです。
もしあなたの会社で、適切に36協定が締結されていなければ、あなたの会社で「1日8時間・週40時間」を超えて働くことはできません。
36協定について、詳しくは以下の記事で解説しています。
36協定とは?5分で分かる定義・役割と、違法性が分かる判断基準
それでは、法律上の基準と「過労死ライン」からの残業の多さの基準についてお伝えします。
1-2:残業の多さからあなたの会社のブラック度をチェック
あなたの会社の残業時間を判断できるのは、以下の3つの基準です。
それぞれの基準について、詳しく解説します。
1−2−1 ブラック度★:1ヶ月の残業時間が45時間を超える
あなたの会社の1ヶ月の残業時間が「45時間」を超えている状況が継続していたら、あなたの残業はかなり多く、あなたの会社はブラック企業の疑いがあります。
会社と従業員の間で36協定が結ばれていても、下記の時間を超えて残業させられていたら違法です。
- 1週間に15時間を超える
- 1ヶ月に45時間を超える
毎日2時間ちょっとも残業していたら、1ヶ月で45時間を超えてしまいますので、一度確認してみてください。これを超えていたら労働基準監督署の指導対象になります。
ただし「特別な事情」がある場合は、会社はあなたと上記の時間以上働かせても良いという協定を結ぶことができます。これを「特別条項付き協定」といいます。
そのため、実際には「週15時間、1ヶ月45時間」という限度をはるかに超えて働かせている会社がたくさんあるのです。
そこで、次に目安になるのが「過労死ライン」と言われる労働時間の限度の時間です。
1−2−2 ブラック度★★:80時間を超える残業が2ヶ月以上続く
あなたの会社の月の残業時間が2ヶ月以上にわたって「80時間」を超えていたら、あなたの会社がブラック企業である可能性がかなり高いです。この「80時間」は「過労死ライン」と言われており、厚生労働省から「命の危険がある」と定められているくらい危険な水準なのです。
あなたがもしも、働き過ぎで脳や心臓に疾患を抱えてしまった場合、その発症前の2ヶ月ないし6ヶ月にわたって、1ヶ月の残業時間が80時間を超えていたら、労働災害(労災)として認められる可能性が高いのがこの基準です。
労災が認められると、治療費や休業補償などが給付されます。
1−2−3 ブラック度★★★:1ヶ月の残業時間が100時間を超える
あなたの会社の1ヶ月の残業時間が「100時間」を超えていたら、あなたの会社はブラック企業です!この「100時間」も「過労死ライン」で設定されています。
発症前の1ヶ月間に100時間を超える残業時間があった場合、労働災害(労災)として認められる可能性が高いという基準です。
「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(基発第1063号 平成12年12月12日)
一度自分の残業時間を計算してみてください。これらの基準を超えていたら、かなり危険なブラック企業です。
法律や政府が規定している残業時間の長さに関する基準について、理解できたでしょうか。あなたの会社はどうですか?
それでは、次に、調査データから残業時間の業界平均とあなたの会社の残業時間の長さを比べてみましょう。
1−3:職種別残業時間ランキング
厚生労働省の発表する調査データから、業界別ランキングをみてみましょう。
もっとも多いのが「運輸業・郵便業」で月23.5時間、最も少ないのが「医療・福祉」で月5時間という結果になりました。
また、残業時間の全業種での平均は、この調査では「10.3時間」という結果になっています。
「うちの会社はもっと多い!こんなに低いわけない!」と思っている人が多いのではないでしょうか?
実際、大手転職口コミサイトVorkersの口コミからの分析によると、残業時間の全業種の平均は「約47時間」という結果が出ています。
※Vorkers調査レポートVol.4「約6万8000件の社員口コミから分析した“残業時間”に関するレポート」から引用
調査の値に大きな差があるのは、厚生労働省の調査は会社の自己申告をもとにしているため、少なく申告している会社がとても多いからだと考えられます。
2章:残業が多いのは自分のせい?まずは自分で残業を減らせないか検討しよう
あなたの長時間の残業は、あなたの行動によって改善される部分があるかもしれません。
そこで、
- 自分で仕事を効率化する
- 自分だけで抱え込まない
- 仕事が早く終わったらすぐに帰るキャラ作り
- 平日の夜に予定を入れる
などの方法について紹介します。
「そんなこともう試したよ」
「職場でそんなことができる空気じゃない」
という場合は、「3章:残業の改善が個人でもどうしようもない?会社が残業時間をごまかす手口」に進みましょう。
2-1:自分で仕事を効率化する
一番取りかかりやすいことからご紹介します。仕事を効率的にできるように工夫して、同じ仕事でも効率的に終わるようにするのは、今すぐにでもはじめられることではないでしょうか。
たとえば、
- ルーティン作業はストップウォッチなどで時間を測って少しでも短くしていく
- 仕事をすぐに取りかかれるように細分化する
- 細分化した仕事に優先順位を付けて、計画的に進めていく
などの方法が考えられます。
これらの方法を意識して行うだけで、毎日の残業を短くできる可能性があります。
2-2:自分だけで抱え込まない
あなたの残業が多いのは、あなたが自分で抱えきれないほどの量の仕事を抱えているからかもしれません。
あなたは「この仕事はすべて自分でやらなければいけない」と思っているかもしれませんが、会社とは社員の間で分担して仕事をするところです。
そのため、思い切って同僚などに、
「この仕事やってくれないかな?」
と提案してみるのも一つの選択肢です。
また、頼まれた仕事をすべてOKせず、よく考えてから受け入れる、もしくは断る勇気を持つようにすることも、あなたの仕事量を減らす工夫の一つです。
2-3:早く終わったらすぐ帰るキャラ作り
あなたが残業してしまうのは、
「みんな残っているのに、自分だけ先に帰るのは気が引ける」
という気持ちがあるからかもしれません。
そこで、思い切って「仕事が早く終わったらすぐに帰る」という行動を繰り返し、周りに「そういうやつだ」と思わせるという手段があります。
ただし、これはそれが許されるような空気が職場にあることが前提です。
2-4:平日の夜に予定を入れる
仕事の後に何も予定がないと、定時を過ぎてもずるずると仕事を続けてしまい、残業時間が増えることになってしまいます。
平日の夜に友人や恋人と会う約束を入れたり、習い事の予定を入れたりしておくと、「仕事を早く終わらせなければ」という気持ちになり、仕事を早く終わらせることにつながります。
また、仕事以外の時間があればリフレッシュできて、仕事にもメリハリがつくでしょう。
もちろんこれは、自分の工夫で早く帰れるようにできる職場であることが前提です。
そもそも早く帰れる空気がなかったり、とても定時では終わらないような仕事量を押しつけられているとしたら、別の手段で解決する必要があります。
3章:会社があなたに長時間残業を強いる5つの手口
社員に長時間の残業を強いる会社は、さまざまな手段を使って残業時間をごまかそうとします。そのため、残業の規定を知らない社員からすると、一見「違法性はない」ように感じてしまいます。
しかし、ほとんどのケースは、専門家から見ると「違法」です。
どのような手口が使われるのか、ご紹介します。
3−1:「サービス残業当たり前」という空気をつくる
1.ブラック企業の手口
「残業するのは仕事のできないやつ」
「自分の仕事を時間内に終わらせられないのは自分の責任」
このような言葉でサービス残業を正当化し「サービス残業をすることが当たり前」という空気を作る手口があります。
この手口の悪質なところは、本人に対して「会社に貢献できてなくて申し訳ない」と思わせることです。
2.ブラック企業の意図
ブラック企業の意図は、「サービス残業が当たり前」と従業員に思わせて、人件費を抑えてあなたを安くこき使うことです。サービス残業は違法なので、あなたには払われてない残業代をもらう権利があります。
3-2:勤怠管理をせず残業時間を把握できないようにしている
1.ブラック企業の手口
・タイムカードがない
・誰も労働時間を記録してない
・給料はシフト表の通りの労働時間でしか出ないが実働は異なる
これらに思い当たることがありませんか?これはブラック企業が勤怠管理をわざと行わず、あえて証拠を残さないことで労働時間をごまかす手口です。
2.ブラック企業の意図
この手口には、残業時間をごまかすことで賃金を不当に安く抑えようとするブラック企業の意図があります。
3−3:残業は禁止していると主張する
1.ブラック企業の手口
・就業時間内に終わらないような量の仕事をあえてやらせる。
・就業時間後の労働を黙認している。
これらは、建前上残業を禁止し、実際には残業させるブラック企業の手口です。
2.ブラック企業の意図
実際には残業しているのに、会社は「残業を指示してない」と言うのは、従業員から残業代を請求された時に「会社としては残業は強制してない、自分たちで自主的に残っていただけだから残業代は払えない」と主張するためなのです。
3-4:管理職の肩書を悪用
1.ブラック企業の手口
ブラック企業は、ほとんど一般社員と変わらない従業員に「店長」や、「課長」「部長」という役職をつけることがあります。これは、役職をつけて「管理職だから残業時間に上限はない」と言って、長時間の残業を正当化しようとする手口です。
2.ブラック企業の意図
法律上の管理職の規定である、「管理監督者」にあたる人には、会社は残業代を払わなくて良いということになっています。それを悪用して合法的に残業代ゼロで働かせようというのがブラック企業の意図です。
しかし、実は「店長」「課長」「部長」という役職がついているだけでは、法律上の「管理監督者」にはなりません。
つまり、役職をつけたから残業代を払わないというのはほとんどの場合で違法なのです。
3-5:年俸制・フレックスタイム制・裁量労働制だから残業時間は発生しない
1.ブラック企業の手口
・年俸制
・フレックスタイム制
・裁量労働制
・変形労働時間制
・みなし残業代制
・歩合給制
などを理由に、○○制だから残業しても残業時間にはカウントされないんだと主張して、長時間残業を強いる手口です。
2.ブラック企業の意図
これらの制度を適用していても、残業時間は発生しますし、残業代が発生する可能性は高いです。しかし、ブラック企業は社員が法律に無知であることを利用して、これらの制度を理由に残業時間をカウントせず残業代を払わないことを正当化します。
4章:現状を改善する方法
残業が多く、なんとか現状を改善したい、でも2章で紹介した自分でできる方法では改善できそうにないという場合は、現状を変える選択肢として、
- 転職して会社に未払いの残業代を請求する
- 会社に対して長時間の残業の是正を要求する
という2つがあります。
なお、長時間の残業を強いられてきたために、退職するのであれば、退職後に、残業代請求をしてしまうのが強くお勧めです。
残業代請求というと、大変なことだと思われがちですが、今は、まじめに働いていた普通の人が会社に残業代を請求して、数百万円の残業代を訴訟することなく回収している時代です。
せっかくたくさんの時間働いたのですからその分の残業代を請求してみてはいかがですか?
未払いの残業代を請求するには「弁護士に依頼する」のがもっとも効果的な手段です。
弁護士に頼んだからと言って、即訴訟ということにはなりません。むしろ、以下で説明しますように、訴訟になることはかなりまれなケースです。
これらの方法について、まずは弁護士に依頼して解決する方法からご紹介します。
4-1:未払い残業代を請求する2つの方法
2章で紹介した、自分で現状を変える方法が使えない、効果がないような職場の場合、それ以上在籍し続けても現状の改善は望めません。
そのため、ブラック企業から、より良い環境で働くことができる会社に転職することをおすすめします。
ブラック企業からの転職する上でのポイントについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
5分で分かる!ブラック企業から転職する流れと知っておくべき2つのこと
ブラック企業では、残業代が未払いにされていることが多いです。そのため、転職の準備を進めつつ、残業代請求の準備も進めておくことをおすすめします。
残業代を請求する手段としては、
- 弁護士に依頼して請求する方法
- 自分で会社に内容証明を送って請求する方法
の2つがあります。
順番に解説します。
4-1-1:弁護士に依頼して請求する方法
未払いの残業代を請求する手段として、もっとも有効なのが、弁護士に依頼する方法です。
弁護士に依頼すると、残業代の請求はほとんど「交渉(=弁護士が会社と電話や書面で交渉する)」だけで解決します。そのため、訴訟(裁判)のように手間や時間がかからないことがほとんどなのです。
会社から残業代を取り返すための方法の詳細については、以下の記事を参考にしてください。
弁護士が解説!会社に残業代を請求する2つの方法と集めるべき「証拠」
次に、自分で会社に直接請求する方法について解説します。
4-1-2:自分で会社に内容証明を送って請求する方法
自分で会社に残業代を請求するためには、会社に「配達証明付き内容証明郵便」で、請求書を送る必要があります。
そのため、より成功する確率の高い「弁護士に依頼する」方法がおすすめなのです。
4−2:行政機関を使って会社に長時間残業の改善を要求する
あなたの会社で、労働基準法に違反する長時間労働が行われている場合、行政機関を使って会社に是正を訴える手段として、
- 労働基準監督署への相談
- 労働局の「あっせん」の利用
という2つがあります。
それぞれの方法について、ご紹介します
4−2-1:労働基準監督署への相談
このような流れで労働基準監督署に申告することができるのですが、この方法は「残業時間を改善したい場合」は、あまりおすすめではありません。
なぜなら、労働基準監督署は、労働基準法に違反している会社の行為を「正す」機関であり、残業時間を改善してくれる機関ではないからです。
また、労働基準監督署は、労働者からのすべての申告で動くわけではありません。それは、全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約2400人しかおらず、明らかに人員不足だからです。そのため、「人命に関わる問題」などが優先して処理されるため、「残業時間の改善」では、動いてもらえない可能性が高いのです。
4-2-2:労働局の「あっせん」を利用する
つまり、労働基準監督署への申告や、労働局のあっせんの利用には、
- 確実に解決する可能性が低い
- あっせんの場合は、明確に会社と対立することになり、その後の職場での関係に不安が残る
などのデメリットがあるのです。
そのため、本当に会社の長時間労働に悩んでいるならば、弁護士に依頼して残業代を取り返し、その職場から転職してしまうのがもっともおすすめなのです。
5章:残業が多い会社の見分け方
就職・転職活動をするときは、「残業が多い」ことが予想される会社は避けたいものです。
残業が多い会社を見分けるポイントとしては、以下のものなどがあります。
- 離職率が高く、常に求人をかけている
- みなし残業・裁量労働制での採用と書かれている
- 夜遅くや休日にも電話が繋がる
- 説明会・面接などで「残業時間」の質問をすると濁される
残業の多いブラック企業の見分け方として、詳しくは以下の記事を参照してみてください。
5分で分かる!選考〜入社の全ての段階から見るブラック企業の見分け方
まとめ:残業が多いあなたに
いかがだったでしょうか?
最後にもう一度、今回の内容を振り返ってみましょう。
【残業の多さからブラック度を判断する基準 】
- 1ヶ月の残業時間が45時間を超える
- 80時間を超える残業が2ヶ月以上続く
- 1ヶ月の残業時間が100時間を超える
これらの基準を超えている場合、現状を改善する必要があります。
【現状を変える手段】
①自分でできる残業時間を減らす工夫
- 計画を立てる・優先順位をつける
- 自分だけで抱え込まない
- 早く終わったらすぐ帰るキャラ作り
- 上司に仕事量の改善を要求する
②行政機関を使って会社に長時間残業の改善を要求
- 労働基準監督署への相談
- 労働局の「あっせん」を利用する
③転職して会社に未払い残業代を請求する
- 会社に内容証明を送って自分で交渉する方法
- 弁護士に依頼する
現状を変えなければ、いつまでも会社に良いようにこき使われることになりますので、すぐにでも行動をはじめることをおすすめします。
【関連する記事の紹介】
以下の記事には、転職する上でのポイントについて書いています。
5分で分かる!ブラック企業から転職する流れと知っておくべき2つのこと
また、再びブラック企業に入らないためにブラック企業を見分ける方法として、以下の記事に詳しく書いています。
5分で分かる!選考〜入社の全ての段階から見るブラック企業の見分け方
残業代請求の詳しい方法について知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。